俵IVFクリニック ジネコ取材済
静岡県静岡市駿河区泉町2-20
婦人科 / 不妊治療
俵IVFクリニック
静岡県静岡市駿河区泉町2-20
当院は静岡市の不妊治療・不育症治療施設の中で最も古い歴史を持ちます。その強みは、医療現場スタッフの知識・技術はもちろんのこと、10年を超える当院の歴史の中で蓄積された診療情報とそれを支える人材です。多種多様な不妊治療・不育症治療診察の現場の中で、種々の決定の指針となるのは、これまでの蓄積してきた経験(診療情報)です。
10時前可土曜も診療女性医師が診察漢方・鍼灸ジネコ推奨サプリ取り扱いインターネット予約完全予約制駅近駐車場完備フリーマガジン配布すべて見る
診療科
婦人科
不妊治療
基本診療時間
診療時間 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | 祝 |
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10:00~13:00 | ○ | ● | ○ | ○ | ○ | ● | ||
15:00~18:00 | ○ | ○ | ○ | ○ |
●:火曜・土曜10:00~13:00
休診日
日曜・祝日
住所・連絡先
静岡県静岡市駿河区泉町2-20
TEL: 054-288-2882
画一的な治療ではなく、お一人お一人にあった治療の選択をします。
特に体外受精、顕微授精の際のプロトコールにはたくさんのバリエーションがあり、 それぞれにメリット、デメリットがあります。 卵巣機能、年齢、治療歴などを考慮し、最も効果的と思われる治療法を選択し、ご提案していきます。
治療に関するメリット、デメリット、妊娠率などを説明し、理解納得いただいた上で治療方針を決めていきます。
不妊治療は、残念ながらすべての方が1回で妊娠に到達できる治療ではないという現実があります。タイミング、人工授精(AIH)、体外受精(IVF)、顕微授精(ICSI)を希望された場合の期待率(妊娠率)を、考えられる原因や過去のデータ等を元にご説明します。奥様だけでなく、ご主人様にも納得していただいた上で治療方針を決めていきましょう。
自然妊娠を目指した一般不妊治療にも力を入れています。
当院ではタイミング療法や人工授精で妊娠される方も大勢いらっしゃいます。すべての方がすぐに体外受精というのではなく、自然妊娠の可能性があると思われる方については一般不妊治療から進めていきます。当院で採用している子宮鏡検査(腫瘍外来)・卵管鏡下卵管形成術(FT)は、不妊症の原因が卵管因子の場合は、手術によって自然な妊娠が期待できる可能性があります。詳しくは、卵管鏡下卵管形成術:FTのページをご覧ください。
ベストな条件で治療に臨めるよう、治療時期、治療計画を立てていきます。
月経周期によって良い卵が育ってくる時と、そうでない時があります。できるだけ良い条件のもとで治療を開始することが妊娠への近道です。長期の不妊治療で卵巣が疲れている方は休薬をしつつ、卵巣機能の回復を待つ必要があります。
妊娠しやすい体質づくりを目指し、生活習慣指導にも力を入れています。
浜松医科大学産婦人科金山教授による専門的な知見からのアドバイスを受けられる体質改善外来や、東洋医学的観点から体質改善を目指す漢方外来、鍼灸治療も提供しております。また、生活習慣を改善していただくための日々のサポートを看護師師・栄養士が行います。
俵史子 院長プロフィール
俵史子 院長略歴
開院以来、約3年間で1000組以上のお子様に恵まれないご夫婦に妊娠が成立し、当院を卒業されました。妊娠までの道のりは様々ですが、最後は皆様最高の笑顔で卒業されておられます。その喜びを共感させていただけることが、私達にとってもさらなる糧となり、生きがいとなっております。
当院での不妊治療の特徴は、「納得・理解して進む治療」そして「オーダーメードの治療」です。10年以上不妊症の患者様に携わり、多くの実績を重ねてきた経験から、妊娠に近づく第1歩は患者様と医療側の信頼関係だと確信しております。
妊娠したいという強い気持ちを持ち、私共を信じて治療を受けていただくことが、いい結果に繋がる近道と考えます。そのためには、日々の通院で疑問や不安を残さずに、十分納得しながら進まれる必要があります。当院では医師による診察の他、皆様の理解を深めていただくために十分な知識と経験を持ったスタッフがサポートをしております看護師や培養士等も医師と同じレベルで患者様に治療内容の説明や情報提供が行えるような体制を整えておりますので、ご安心してお気軽に声をかけて下さい。
オーダーメードの治療とは、画一的な治療にとどまらず個々に応じた治療を選択していくということです。原因、年齢、治療歴など、皆様それぞれに不妊治療を受けられる際の条件、背景は異なります。当然のことながら、その方に適した治療も異なるため、多くの治療法を熟知し適切に選択できることが不妊治療に携わる者として必要不可欠と考えます。
心や体への負担を最低限に抑えつつ、最大の効果が得られるようお一人おひとりにあった治療を選択していきたいと思っております。
初めて受診しようとされる方にとっては、不安や緊張の中でお越しいただくことも多いと思います。
前向きな気持ちで妊娠に向けた大きな一歩を踏み出していただくために、そして一人でも多くの方にお子様を授かっていただくために、私たちは全力で皆様をサポートすることをお約束いたします。
浜松医科大学臨床講師
日本産婦人科学会専門医
東海不妊内分泌研究会 世話人
東海ARTカンファレンス 世話人
静岡生殖医療研究会 世話人
■所属学会
・日本産科婦人科学会
・日本生殖医学会
・日本受精着床学会
・日本哺乳動物卵子学会
■経 歴
浜松医科大学医学部卒
平成8年~ 産婦人科・麻酔科研修後、産婦人科医として総合病院に勤務。
平成12年~ 静岡厚生病院 不妊治療担当。
平成15年~ 愛知県豊田市 竹内病院トヨタ不妊センター勤務。
平成16年~ 竹内病院トヨタ不妊センター所長に就任。
年間500~600件の体外受精・顕微授精に携わる。
平成19年9月 俵史子IVFクリニック開院
平成22年4月~ 国立大学法人 浜松医科大学 臨床講師に就任。
山口 和香佐 先生プロフィール
山口 和香佐 先生略歴
●所属学会
日本産科婦人科学会
日本生殖医学会
日本受精着床学会
日本婦人科腫瘍学会
滋賀医科大学卒業後、国立がんセンター中央病院で婦人科病理学を学ぶ。東京都内の不妊治療専門クリニックと滋賀医科大学付属病院で不妊治療に携わる。それまでの不妊治療の実績と経験・知識を俵院長に見初められ、平成22 年に俵IVFクリニックに入職。
鈴木 裕明 鍼灸師プロフィール
施術を行う際は、いつも患者様の立場に立って治療することを念頭に置いています。俵IVFクリニック明生鍼灸院では、鍼灸を通して全てのご夫婦に幸せを届けるため、全力で対応します。
鈴木 裕明 鍼灸師略歴
出身大学:明治鍼灸短期大学(現 明治国際医療大学)卒業
資格:はり師・きゅう師
略歴
昭和61年 明生鍼灸院 開業
平成7年 金山レディースクリニック鍼灸ブース 開設
平成12年 竹内病院トヨタ不妊センター内鍼灸ルーム 開設
平成13年 明生鍼灸院金山分院 開院
趣味:愛犬の散歩
Life Work:鍼灸治療のエビデンス(根拠)を構築して行き、世の中の人に鍼灸治療の素晴らしさ伝えること。
メディア掲載
ALL About明生鍼灸院訪問記(明生鍼灸院瑞穂本院の取材記事)
明治国際大学
不妊情報サイト ながいき本舗
メンタルヘルス外来
心の健康について、気になることってありませんか? 不妊治療をしていると、どうしてもストレスを溜め込みがちです。健やかな妊娠、出産のためにも、一度いっしょに考えてみませんか? 「身体の不調が心の問題からきていないか心配」、「考えごとが多すぎて眠れない日が続いている」など、ちょっとしたことでもお気軽にご相談ください。
専門医が対応いたします。
妊孕性温存外来
がん治療前や治療中に精子・卵子を凍結し、将来妊娠を希望する時期まで保存しておくための治療を当院でお受けいただけます。原疾患や患者さんの状態により、個別に治療法やスケジュールをたて、最適な方法を選択していきます。がん治療を遅滞なく遂行することを前提としながら、担当医と密に連携をとり、がん寛解後の妊娠の可能性を広げるお手伝いをしていきます。
* 社会的適応による卵子凍結は行っておりません。
遺伝カウンセリング外来
臨床遺伝専門医であり、生殖医療専門医である望月修医師が不妊症診察にかかわる遺伝医学的問題に対応します。遺伝学的検査や治療を選択するにあたり、医学的・遺伝学的根拠に基づく情報を分かりやすく説明することで、遺伝性疾患をお持ちの患者さん・ご家族・その血縁者のみなさんが自ら意思決定を行えるよう支援いたします。
体質改善外来
質改善外来では、ご懐妊を目指す上で大切な“健康な身体”=“妊娠しやすい身体”をつくるため、 生活習慣を改善する診療・生活指導を行っています。
一言に体質改善といっても様々です。食生活や睡眠・お仕事や家事に伴う疲労のコントロール、体重や血液組成の状態などなど・・・。妊娠にかかわる卵巣機能や精巣機能に影響を与える生活習慣を見直し、 一歩ずつ妊娠へ近付いていきましょう。
参考①:男性はストレスや食生活・睡眠と精液所見に関係があることが知られています。
参考②:体重少なすぎても、多すぎても妊娠はしづらくなる事が知られています。
禁煙外来
これから妊娠を希望される方で、現在喫煙習慣がある方は「禁煙が最初の治療」となります。一般的に喫煙者は、非喫煙者よりも妊娠するまでに要する時間が長い事が知られています。また妊娠が成立しても早産の危険性があったり、流産の要因となり得るなど、妊娠への影響が大きい事はあきらかとなっています。
当院では、喫煙されている女性の場合、検査まではできますが不妊治療には進むことができません。不妊治療でホルモン剤を使用するにあたり、血栓症のリスクが高くなるためです。今日から禁煙を始めましょう。禁煙外来ではそのお手伝いをします。
このクリニックに関連する監修記事、取材内容、ユーザー様からの質問と回答など、ジネコが企画した様々なコンテンツの一覧です。
記事一覧
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【世界中の研究で報告】妊活中のご夫婦をサポートする、アルギニンの力
妊娠力を上げる栄養素として注目されているアルギニン。その成分を効率よく摂取できる サプリメントの活用について、俵IVFクリニックの宗修平先生にお話を伺いました。
2020.9.9
コラム 妊活
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柴苓湯には体温を下げる作用があるのですか?
皆さんの治療に関する相談を全国のドクターにお聞きして、誌面でアドバイスをお届けする人気企画「ジネコ セカンドオピニオン」。ジネコの応援ドクターが丁寧にお答えいたします
2020.1.4
コラム 不妊治療
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【ラクトフェリン】子宮内の細菌バランスを整える
子宮内の細菌バランスも着床にとって大切な条件の一つ。 善玉菌を優位にするといわれている注目の成分「ラクトフェリン」の 効果や期待について伺いました。
2019.10.8
コラム 不妊治療
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当帰芍薬散は排卵を妨げてしまう?
皆さんの治療に関する相談を全国のドクターにお聞きして、誌面でアドバイスをお届けする人気企画「ジネコ セカンドオピニオン」。ジネコの応援ドクターが丁寧にお答えいたします
2019.8.30
コラム 不妊治療
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〈最終回〉俵史子先生の生殖周産期講座 〜妊活中から始める母体管理〜
妊娠がゴールではなく母子ともに元気で出産することが最終目標。俵IVFクリニックでは産科に移る妊娠12週まで診察する「生殖周産期外来」を新設。切迫早産や早産など分娩のリスクについて、俵史子先生と周産期専門医の村林奈緒先生に話を伺いました。
2018.12.19
コラム 妊活
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【第3回】〜妊活中から始める母体管理〜俵史子先生の生殖周産期講座
妊娠がゴールではなく、母子ともに元気で出産することが最終目標。妊娠高血圧症候群について伺いました。
2018.8.22
コラム 妊活
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不妊からのうつ病でしょうか?
相談者:ミルクさん(主婦/31歳) 子宮内膜症、卵巣嚢腫持ちで1年自然妊娠しなかったので、今年の初めに腹腔鏡手術をしましたが、タイミング法でも妊娠せず、さらに3ヵ月で卵巣嚢腫が再発してしまい、体外受精をすすめられました。今月体外受精をし、卵のグレードなどは良かったものの、着床せず、結果は陰性でした。 マイナスにならないように、楽しいことをするようにしていて、がんばろ~とその時は思いますが、1日のうちに暗くなる自分と明るくなる自分の2種類が交互に出てきてしまうのです。あまりにも感情が一定ではなく、それが毎日繰り返されるので病気かと思ってしまいます。いつでも涙を流せる状態です。 もともとマイナス思考ではあるのですが、関西出身で旦那の転勤で関東に来ており、結婚2年目くらいまでは環境に馴染めないことに悩み、やっと慣れてきたと思ったら、今は病気、不妊に悩んでいて、本当に毎日辛いです。 結婚、転勤、手術、不妊の環境の変化からのうつ病でしょうか。動悸や、息苦しさも感じます。こういう場合は心療内科に行ったほうが良いのでしょうか。 ミルクさんは今どのような状態なのでしょうか? 「うつ病ではないか」と心配されているようですね。睡眠や食欲の状態、もともとどれくらいの活動ができていたかなど、細かく聞いていくと軽度のうつ病と診断される可能性はありますが、お話をうかがった印象ではそこまで至っていないように感じます。 うつ病まではいかないけれど、大きな悩みを抱えており、それに加えてマイナス思考という性格要因もあってストレスをなかなか上手に裁けない。なんとか自力で気持ちをもちあげようとするのだけど、そこまでエネルギーが続かず、再び落ちていってしまう。落ち込んだり、明るくなったりを繰り返すのは、そういうことだと思います。 これまで、このような経験はなかったのですよね。基本的には健常な心をしっかり持っている方なのだと思います。ただ、病気や不妊治療、環境の変化などいろいろなことで手一杯になり、余裕がなくなっている感じがします。落ち込んではまた気持ちを奮い立たせて……と頑張ってはいるけれど、さすがにキャパシティを超えてしまい、心が悲鳴をあげている。心だけでなく、動悸や息切れなど、ストレスは体にも影響を及ぼしているようですね。これは決して特別なことではなく、誰でもこのような状況に置かれれば心身ともに苦しくなると思います。 解決策はありますか? ミルクさんにまず声をかけたいのは「あなたは本当に大変な状況にありますよね」ということ。でも、もしかしたら自分が今とても大変な状況にいるということを、理解しているようで理解していないのかもしれません。 「マイナスの状態にならないように楽しいことをしよう」というのは大事なことですが、そのためには、マイナスな自分もちゃんと認めてあげることが前提です。自分が抱えているマイナスの気持ちをごまかして、ただ「元気にならなくちゃ」と思うだけでは、かえってプレッシャーになってしまいます。無理して持ち上げているから力が尽きてしまうんですね。 辛い時は、その辛い気持ちに浸って、しっかり落ち込んでください。誰にも会いたくなければ会わなくてもいい。「誰かに迷惑をかけてしまう」と思ったら、いずれ元気になったときに恩返しできればいいと思ってください。だって、あなたは本当に大変な状況にいるのだから。自分の辛い気持ちに逆らわないでいれば、ちょっと余裕が出てきて、徐々に心が上向いていきます。その時に楽しめることを見つけていけば、さらに落ち着いてくるはずです。 心療内科を受診すべき? 現段階では病気とまでは言えないと思いますが、このまま我慢してやっていくと心がどんどん疲弊してきて、結果的にうつ病になってしまうというパターンもあります。気持ちの浮き沈みがなくなって毎日のように落ち込み、マイナス思考が2週間続いたら精神科や心療内科の受診を考えてください。 また、不眠や食欲不振など身体症状が強くなってくると、自分ひとりの力で乗り切ることもますます大変になってきます。動悸や息切れが実は鉄分不足からくる貧血の症状だったなどということもありますから、心療内科で身体状態をチェックしてもらいながら心身両面の経過をみていくということも大切です。 安田先生より まとめ 「心療内科や精神科を受診するのはハードルが高い」と思っている方もいるかもしれません。「辛いけれど、どうしようか」と迷っていたら、一度受診されてみることをおすすめします。医師と話をするだけですっきりするというケースも結構ありますし、質問に答えることで自分が今どのような心の状態にあるのか気づくこともあります。どうしても受診に抵抗があり、もし通院されている施設に不妊カウンセリングがあるようなら、まずそこで相談されてみるのもいいかと思います。 安田 貴昭 先生(俵IVFクリニック) 浜松医科大学医学部卒業。日本精神神経学会精神科専門医・指導医、精神保健指定医、臨床心理士。埼玉医科大学総合医療センター・メンタルクリニック講師。俵IVFクリニックでは毎月第4木曜日、メンタルヘルス外来を担当。心の専門医として、不妊治療中や妊娠初期の患者さんのメンタルケアを行っています。 ≫ 俵IVFクリニック
2018.7.18
専門医Q&A 不妊治療
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不妊治療のストレスで生きる希望を見失いました。
相談者: おこちゃんさん(会社員/33歳) 不妊治療中、うつ病持ちの妊娠希望者です。数ヵ月前から妊娠希望で心療内科の薬を中断しました。でも飲まないと、地の底を這いずって生きているような気分で、体も重く辛い日々の始まりでした。いつも人は何が楽しくて生きているのか、何が楽しくて働くのかわらず苦しむ毎日です。 それでも結婚し、子供を欲し、不妊治療が始まり、体外受精にステップアップし、辛い採卵後の痛みにも耐えてきました。仕事と治療の両立が困難で辞めたいと話し合い、夫が了承しても、いつ夫がクビになるかを考えると恐ろしくて、退職の決断が出来ずに今に至ります。 最近は一睡も出来ず、思考回路が混乱しています。それでも何か生きる希望のようなものを見つけたい願望があります。良いアドバイスがあれば、叱咤激励でも何でも構いません。よろしくお願いします。 うつ病が悪化している状態なのでしょうか? 「うつ病持ち」ということで薬物治療もされていたということですね。うつ病になると憂鬱な気持ちが続き、何に対しても無気力になったりします。気持ちのコントロールが思うようにいかず、つい周りの人に厳しく当たってしまうようなことも起こります。妊娠を希望してお薬を中止したということですが、病気の種類や症状によっては妊娠中や授乳中でも服薬による治療を続けることがあります。心療内科の先生がどのような考えで中止を判断したか、少し聞いてみたいところです。 もし、主治医の先生が「お薬なしでも乗り越えなければならない」「あなたなら大丈夫」という判断をされたのなら、もしかしたら純粋なうつ病とは少し異なるのかもしれません。例えば、まわりの人に対して、もっと優しくしてほしい、もっと甘えたいという気持ちが強すぎるというタイプの人がいます。もし、自分にも当てはまるようなら、不妊治療のストレスで心がいっぱいいっぱいの状態で、自分の気持ちを満たしてくれない夫に怒りの感情がわいてしまっていることが問題なのかもしれません。 他人に対するネガティブな感情は、うつ病を悪化させることがあります。逆に、うつ病の悪化によってネガティブな感情が起こりやすくもなります。余裕があるときのおこちゃんさんなら、「自分はとても辛いけれど、夫も同じように辛いのかもしれないな」などと考えたかもしれません。 現状を打開できますか? 十分に打開できると思います。強いストレスを抱えて行き詰まっている人は、「八方塞がりでどうにもならない」と思いがちです。しかし、おこちゃんさんは同時に「生きる希望を見つけたい」「叱咤激励でも何でも構いません」とも、力強くおっしゃっています。そのような気持ちは、苦境を乗り越えるための心の支えになります。うつ病治療の基本も「必ず回復する」ということを忘れないことです。「絶対良くなるから、それは忘れないで」というメッセージを伝えたいですね。 まずは、現状を再認識することだと思います。「うつ病といわれているのに、不妊治療にもチャレンジしている。とても辛い状況にあるのによく頑張ってやっている」と、誰かから声かけてもらえたら、それだけでも心はずいぶん軽くなるはずです。そんなことを言ってくれる人が誰もいないとしても、まずは他の誰でもない、自分自身が自分の頑張りを認めてあげてほしいです。世知辛い世の中ですから、自分を理解してくれる人に出会うことは少ないかもしれませんが、焦らないことだと思いますよ。 今後、具体的にどんなことをしていけばいい? 上にも書きましたが、心療内科の薬を中断された経緯はどうだったのでしょう。心療内科の先生と、今一度、話し合ってみてはいかがでしょうか。妊娠したら服薬が絶対にダメということはありません。不妊治療を続けていくためにも、また妊娠した後も、メンタルのコントロールはとても大事です。 それから、不妊治療と仕事の両立で心も体も疲弊しているように思えます。自分でも仕事を辞めたいと思い、夫もそれでいいと言っている一方で、辞める決断ができないままでいますね。いろいろ迷いがあるのだと思います。こういう時、きっぱり辞めてしまうとあとで後悔してしまうかもしれないので、後戻りできる形で一度お休みをとるのがよいと思います。 心療内科の治療を再開し、しばらく仕事を休んで体をいたわるようにしたら、気持ちもだんだん落ち着いてくるはずです。気持ちに余裕が出てきたところで、あらためて夫のことを考えてみてください。夫はなぜ「子どもももういらない、離婚だってすれば良い」と言ったのか。それは決して本音ではないはず。これまでずっと、おこちゃんさんの愚痴を受けとめ続けてきた人です。あなたを支えてあげたいと願いながら、それができないくらい疲れてしまっていたのかもしれません。 「うつ病がなかなか治らず、長引いている」というときは、それ相応の原因が見落とされているものです。自分の考え方や感じ方の癖、人との付き合い方のスタイルといったところに、解決の鍵が潜んでいることもあります。このような自分自身のことに目を向けることは、苦い思いを伴うこともありますが、いろいろなアドバイスを受け入れ、叱咤激励をエネルギーに変えようという気持ちを持てていれば大丈夫です。悪い状況が好転することだって必ずあります。まずは今の自分の状況を素直に受け入れ、少し休養も取り入れながら、またご夫婦のことや妊娠のことを考えていけたら良いと思います。 安田先生より まとめ うつ病の治療法は1つではありません。シンプルな病態であれば薬を飲んで、心身ともに休養をとれば回復していきますが、置かれている状況や周りの人への感情などが絡んでくると治療法も一様にはなりません。様々な方向から解決策を探っていくことになります。信頼できる精神科医のもとで、自分に合った適切な形の治療を行っていけば必ず回復しますので、希望を持っていただきたいですね。 安田 貴昭 先生 (俵IVFクリニック) 浜松医科大学医学部卒業。日本精神神経学会精神科専門医・指導医、精神保健指定医、臨床心理士。埼玉医科大学総合医療センター・メンタルクリニック講師。俵IVFクリニックでは毎月第4木曜日、メンタルヘルス外来を担当。心の専門医として、不妊治療中や妊娠初期の患者さんのメンタルケアを行っています 。≫ 俵IVFクリニック
2018.7.17
専門医Q&A 不妊治療
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〜妊活中から始める母体管理〜俵史子先生の生殖周産期講座
妊娠がゴールではなく、母子ともに元気で出産することが最終目標。妊娠糖尿病について、周産期専門医の先生にお話を伺いました。
2018.5.18
コラム 不妊治療
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俵史子先生の生殖周産期講座〜妊活中から始める母体管理〜
妊娠がゴールではなく、母子ともに元気で出産することが最終目標。 産科に移る妊娠12週まで診察する「生殖周産期外来」を新設した、 俵IVFクリニックの俵史子先生が今から知っておきたい妊娠初期のリスクや 母体管理の重要性についてレクチャーします。 Pick up ●生殖周産期外来って?俵IVFクリニックで新たに設けた外来。心拍や胎のうが確認できてからも、安定しない妊娠8~12週目の妊娠初期の管理を徹底するため、1週間に1回の診察で超音波検査や体重・血圧測定、生活習慣指導などを実施。 妊娠前や妊娠初期の管理で妊娠中や分娩時のリスクが低下2007年の開院以来、当院では妊娠率の向上はもとより、お母さんの健康や元気な赤ちゃんの誕生、その後の健やかな成長を見据えた安全な不妊治療を提供することに力を注いできました。 分娩を扱う医療機関に協力を依頼し、当院での生殖補助医療を経て妊娠された方の妊娠・分娩の予後調査を行い、不妊治療の経過や背景因子と妊娠中の異常や胎児の状態との関連に焦点を当てた観察も行っています。 およそ10年間の集積データから明らかになったことは、妊娠前または妊娠初期からの生活習慣の見直しや体質改善が、その後の妊娠経過や分娩における異常発生のリスク低下につながるということです。 不妊治療を受けて妊娠されるとそれが大きなゴールで、その後の出産は普通にできるはず、と思っている方が多いようです。 なかには「不妊治療をして胎児に異常は出ませんか?」など、漠然とリスクを感じている方もいますが、それは赤ちゃんについてのリスクが主で、妊娠経過や妊娠後の母体に生じる合併症に関して不安を抱いて質問をされる方はほとんどいません。不妊治療に関しての知識はたくさんおもちでも、妊娠後の母体や分娩時のリスクについてはまだまだ認識が低いのかもしれませんね。 これまでは妊娠7週や8週で当クリニックを卒業し、産科の施設への転院手続きをしていたのですが、その後に流産してしまう方もいました。施設を移ってしまうと、何が原因で流産してしまったのか、こちらではなかなか究明できないことがあります。不妊治療をしたことが影響しているのか、それとも不妊だったその人自体に何か問題があったのか、もしくは妊娠時の管理が良くなかったのか。現状では原因ははっきりわかっていないので、そこをもっと突き詰めて調べていきたいとずっと考えていました。 また、妊娠初期というのは胎盤が形成される大事な時期なのですが、そういった時期、もしくは妊娠前からしっかり生活習慣指導などをして母体を管理すれば、正常な胎盤の形成、ひいては赤ちゃんの予後の改善にもつながっていくのではないかと思っています。 妊娠という目的を遂げる、元気な赤ちゃんを産むというのは考えられていても、「安全な妊娠生活」と「安全な出産」というのは意外に抜けている部分なのではないでしょうか。産科のある施設にお送りするまでの間、しっかり診て抜けている部分をフォローし、データを蓄積していくことで今後の不妊治療にも役立てられるのではないかと考え、当院では「生殖周産期外来」という科を設け、周産期専門医が担当することになりました。 外来受診の対象となるのは当院での治療による妊娠が成立し、胎児心拍確認後から妊娠12週頃までの方。一般不妊治療で妊娠した方も受診できますが、やはり体外受精や顕微授精を受けた方が多く、現在は全体の半数くらいの方が受診されています。心拍確認後から妊娠12週まで体重や血圧などをしっかり管理診察の内容は超音波検査で初期の胎児の状態をチェックするほか、体重や血圧管理、生活習慣指導も重要な項目としています。体重過多の人は不妊になりやすいので妊娠前からも当院では厳しく指導していますが、それが妊娠したら終わりではなく、妊娠後も妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病を防ぐために引き続き管理をしていきます。 また、血圧が高い、甲状腺異常や糖尿病などの疾患がある人は妊娠初期段階も適切なコントロールが必要です。明らかな異常がなくても、異常に近い数値の方たちも不妊治療の段階から管理して、妊娠後も観察していきます。 さらに最近、胎児の染色体異常を調べるNIPT(出生前診断)を希望する方が増えてきていますが、7週、8週だとそのようなお話も相談できずに転院して、よくわからないまま自己判断で検査を受けるという人も。当院では生殖周産期外来に通うことでゆっくり考える時間を設け、遺伝カウンセリング外来でも話を聞くことで、納得して検査を受けられるような形をとっています。 高齢で妊娠する方が増加している傾向がありますが、その分、どうしても妊娠中や出産時のリスクは上がってしまいます。 長期間不妊治療を受けてやっと妊娠となっても、それが最終ゴールではありません。1つステップを上がったら、今度は妊娠後、自分にどのようなリスクがあるのか、正確な情報を知ることが大切です。リスクがあったら、それを低減できるように自分の体をきちんと管理し、対応できるものに関しては適切な治療を続けていくことが必要です。 現在、当院の生殖周産期外来ではデータを蓄積しているところです。ある程度集まったら、まずそれを医療機関で情報共有し、将来的には患者さんにも勉強会という形で、妊娠前から知識をつけていただくことを目標にしています。 Point! 過体重、高血圧、甲状腺の異常や糖尿病などの疾患がある方のほか、年齢が高い方も妊娠中の母体や赤ちゃんへのリスクが高まります。自分にはどんなリスクが考えられるか、妊娠前から正しい知識を得ておきましょう。 先生から ・妊娠初期は胎盤が形成される大事な時期です ・過体重や血圧が高い人は妊娠前から、さらに妊娠後も気を緩めずにきちんと管理していくことが大切! 俵 史子 先生(俵IVFクリニック) 浜松医科大学医学部卒業。2004年愛知県の竹内病院トヨタ不妊センター所長に就任。2007年、俵IVFクリニックを開業。2015年静岡駅前に移転、リニューアルオープン。同院の「生殖周産期外来」は妊娠初期の方が通うので、不妊治療とは別のフロアに設ける配慮がされています。4週に1回の通常の妊婦健診と異なり、週1回赤ちゃんも超音波で確認できるので安心!≫ 俵IVFクリニック出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.37 2018 Spring≫ 掲載記事一覧はこちら
2018.2.19
コラム 不妊治療
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2017.10.22 ジネコ妊活セミナー in 静岡 第2部
2017年10月22日に行われたジネコ 妊活セミナーより 妊娠に近づくために 2017年10月22日(日)、静岡市内で「ジネコ妊活セミナー」を開催しました。第1部では、小島薬局漢方堂の小島晃先生「体にやさしい妊活漢方」、第2部では「妊娠へ近づくために」として、俵IVFクリニック院長俵史子先生にお話いただきました。その一部をお知らせします。 今の自分を知り、できることを考える 妊娠に近づくために、今の自分の状態を知り、できることは何かを考えていただければと思います。運動や食事がきちんとできていますか?例えば、食事回数が1日平均1.3回の人と3回の人を比較的すると、35才以上では食事回数が少ない人の妊娠率が下がります。 そして、適切な体重管理も大切です。BMIと妊娠率について、BMI35以上の肥満の人と、正常の人を比較的したところ、26%も妊娠率が違うという研究があります。同様に、痩せ過ぎも不妊症のリスクが高いことが分かっています。男性についても、肥満によってホルモンの異常が見られ、精子を作る機能が低下するという研究結果も出ています。 また、当院では喫煙者している人は禁煙してからでないと治療をしません。喫煙者は妊娠しているだけで血栓症の割合が増え、流産の確率も上がります。また遺伝子異常を起こしやすく、赤ちゃんにも影響します。男性が喫煙することでホルモンの状態が悪くなり、精子の数が減ったり運動率が低下したり、奇形精子が増えることも確認されています。妊娠に近づくためにはまず、夫婦ともに健康な暮らしを心掛け、妊娠しやすい体質を作る。まずはこれが何よりも大切です。 自分に合った方法とペースで計画的に 不妊治療には、選択肢がたくさんありますが、自分に合った治療を受けることが重要になります。大きく分けて、一般不妊治療と生殖補助医療(ART)があります。一般不妊治療は、従来から行われてきた方法で、タイミング療法や人工授精のことを指します。生殖補助医療は、体外受精や胚移植、顕微授精などを指します。もちろん、どちらにもメリットとデメリットがあります。一般不妊治療は、ARTに比べて費用が抑えられること、自然に近い形で妊娠可能であることなどが挙げられます。ただ、不妊の原因が特定できない場合は、ホルモン剤の投与を繰り返すことでかえって妊娠しにくくなることもあります。 一方、ARTは多くの不妊原因に対応が可能で、受精・胚の成長が確認できるというメリットがあります。1回の採卵で複数回の胚移植が可能な分、妊娠率も高いですが、保険適用がないので、治療費の負担が高くなります。また、専門知識と技術が必要とされるため、対応できるクリニックが限られます。 個人差がある問題ですから、これが必ずベストであるという方法はありません。また、体外受精の場合は、年齢も大きな条件になってきます。どの治療を何回受けるか、どのタイミングでステップアップするか、という目標値を決め、医療機関と相談しながら、自分に合った治療の計画を立てていただければと思います。 俵 史子 先生 (俵IVFクリニック 院長)浜松医科大学卒。愛知県竹内病院トヨタ不妊センター所長を経て、静岡市で初の不妊治療専門病院「俵史子IVFクリニック」を開業。2012年に専門性を高めるべく、医療法人社団化し俵IVFクリニックに名称変更。開院10年を迎えた現在では、妊娠成立に向けてベストな治療を提供するのはもちろんのこと、妊娠後のリスクを軽減させるために妊娠初期の母体管理、メンタルサポート、胎児スクリーニングにも力を入れている。≫ 俵IVFクリニック ジネコ妊活セミナー 2017年10月22日に行われたジネコ 妊活セミナーより 妊娠に近づくために 2017年10月22日(日)、静岡市内で「ジネコ妊活セミナー」を開催しました。第1部では、小島薬局漢方堂の小島晃先生「体にやさしい妊活漢方」、第2部では「妊娠へ近づくために」として、俵IVFクリニック院長俵史子先生にお話いただきました。その一部をお知らせします。 今の自分を知り、できることを考える 妊娠に近づくために、今の自分の状態を知り、できることは何かを考えていただければと思います。運動や食事がきちんとできていますか?例えば、食事回数が1日平均1.3回の人と3回の人を比較的すると、35才以上では食事回数が少ない人の妊娠率が下がります。 そして、適切な体重管理も大切です。BMIと妊娠率について、BMI35以上の肥満の人と、正常の人を比較的したところ、26%も妊娠率が違うという研究があります。同様に、痩せ過ぎも不妊症のリスクが高いことが分かっています。男性についても、肥満によってホルモンの異常が見られ、精子を作る機能が低下するという研究結果も出ています。 また、当院では喫煙者している人は禁煙してからでないと治療をしません。喫煙者は妊娠しているだけで血栓症の割合が増え、流産の確率も上がります。また遺伝子異常を起こしやすく、赤ちゃんにも影響します。男性が喫煙することでホルモンの状態が悪くなり、精子の数が減ったり運動率が低下したり、奇形精子が増えることも確認されています。妊娠に近づくためにはまず、夫婦ともに健康な暮らしを心掛け、妊娠しやすい体質を作る。まずはこれが何よりも大切です。 自分に合った方法とペースで計画的に 不妊治療には、選択肢がたくさんありますが、自分に合った治療を受けることが重要になります。大きく分けて、一般不妊治療と生殖補助医療(ART)があります。一般不妊治療は、従来から行われてきた方法で、タイミング療法や人工授精のことを指します。生殖補助医療は、体外受精や胚移植、顕微授精などを指します。もちろん、どちらにもメリットとデメリットがあります。一般不妊治療は、ARTに比べて費用が抑えられること、自然に近い形で妊娠可能であることなどが挙げられます。ただ、不妊の原因が特定できない場合は、ホルモン剤の投与を繰り返すことでかえって妊娠しにくくなることもあります。 一方、ARTは多くの不妊原因に対応が可能で、受精・胚の成長が確認できるというメリットがあります。1回の採卵で複数回の胚移植が可能な分、妊娠率も高いですが、保険適用がないので、治療費の負担が高くなります。また、専門知識と技術が必要とされるため、対応できるクリニックが限られます。 個人差がある問題ですから、これが必ずベストであるという方法はありません。また、体外受精の場合は、年齢も大きな条件になってきます。どの治療を何回受けるか、どのタイミングでステップアップするか、という目標値を決め、医療機関と相談しながら、自分に合った治療の計画を立てていただければと思います。 俵 史子 先生 (俵IVFクリニック 院長)浜松医科大学卒。愛知県竹内病院トヨタ不妊センター所長を経て、静岡市で初の不妊治療専門病院「俵史子IVFクリニック」を開業。2012年に専門性を高めるべく、医療法人社団化し俵IVFクリニックに名称変更。開院10年を迎えた現在では、妊娠成立に向けてベストな治療を提供するのはもちろんのこと、妊娠後のリスクを軽減させるために妊娠初期の母体管理、メンタルサポート、胎児スクリーニングにも力を入れている。≫ 俵IVFクリニック ジネコ妊活セミナー
2018.1.18
コラム 不妊治療
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俵先生に聞きました! ウソ! ホント? 妊娠にまつわるウワサの真相
ウソ! ホント? 妊娠にまつわるウワサの真相 俵 史子 先生(俵IVFクリニック) 「○○したら妊娠できた」「○○はNG!」といった妊娠にまつわる噂や俗説……。ウソなのか、ホントなのか、俵IVFクリニックの俵史子先生に医師の立場から解説していただきます。 Q:妊娠はうつるってホントですか? 結婚4年目で妊娠した親友は、旦那さんの職場に妊婦さんが3人いて、よくお腹を触らせてもらったそう。妊娠ってすごいパワーがあるのかも…と、私も親友のお腹を触らせてもらい、いつも身につけられるように、親友の携帯ストラップをもらってきちゃいました。ことり(主婦 / 28歳) A:あくまでもジンクスで科学的根拠はありません。高額な商品に騙されないよう、楽しんで取り入れて インターネットで、妊娠菌が付いた米を食べると子宝に恵まれる「子宝米」が販売され、詐欺だとして話題になりましたね。当然ながら、科学的根拠は一切ありませんが、妊娠を祈願したジンクスは、古くから存在します。たとえば、マトリョーシカやさるぼぼは子宝を願って作られたものですし、子宝にご利益のある神社は各地にあり、参拝する人も少なくありません。陣痛中の妊婦さんに富士山の絵を描いてもらうといい、というようなものも知られています。 ジンクスだと知りながら信じてしまう、そうした心の動きの多くは、社会心理学的に説明できます。自分に都合の良い意見のみを信じてしまうことは「確証のバイアス」という用語で説明されますし、妊娠したい自分と、なかなか妊娠しない現実に、お守りやジンクスをこじつけて解消しようとするのを「認知不協和の解消」と言います。つまり「子宝米」や「お腹を触ると妊娠する」も、妊娠を、ジンクスやお守りの効果として誤認していると考えられます。 とはいえ、これらは決して悪いことばかりではないのです。本来、お守りやジンクスは、精神的な支えを得るためのもの。お守りがあることで心の支えになったり、前向きな気持ちになって不安が和らいだりして、結果的に体調に良い影響を与える可能性は大いにあります。医学の世界にも「プラシーボ(偽薬)効果」といって、薬ではないビタミン剤等を与えたら、それを薬と信じて飲んだ人の痛みが治まった、という現象があります。ですから、お守りやジンクスを楽しめているのであれば、心の支えとして取り入れてもいいのではないでしょうか。ただし、くれぐれも不安や悩みに付け込んだ高額な商品や勧誘に騙されないよう気を付けてください。 Q:デブだと妊娠しにくいの? 結婚3年目ですがなかなか妊娠しません。これまで主人の両親からは何も言われたことがなかったのですが、先日主人が義父に、私が太ってるからでは? ダイエットさせなさいと言われたと聞き、昨夜はショックで涙が止まりませんでした。太っていると妊娠しにくいですか? ぶぅ子さん(主婦 / 35歳) A:肥満は妊娠に悪影響があるという報告があります。その後のライフサイクルのためにも体重コントロールを 体重と妊娠の関連性についてはこれまでさまざまな形で報告されています。およそ50万人のART患者を対象にした研究(2016年、アメリカ)。これによると、痩せすぎおよび肥満の女性は、標準体重の女性より妊娠率、出生率とも低く、どちらも低体重児と早産のリスクが高いことが明らかになっています。(※1) また、これもアメリカの研究ですが、約24万人の新鮮胚移植実施者を、痩せ、普通、肥満に分類し(BMIの数値では痩せBMI:18.4kg/m2以下、普通18.5~24.9kg/m2、肥満25.0kg/m2以上)、BMIが普通の人と肥満の人との妊娠結果を比較したところ、痩せや普通の女性に比べて、肥満の女性はBMIが高くなるほど妊娠率が低下し、逆に流産の確率が上がるという結果が公表されています。つまり、肥満女性のほうが、通常体重や痩せすぎの女性よりも妊娠しにくく、流産しやすいと言えます。(※2) そして何より、肥満による悪影響は、不妊治療や妊娠・出産だけに限ったことではありません。肥満は、脂質異常症や糖尿病、子宮内膜がんや乳がんのリスクに密接に結びついていることがわかっています。喫煙よりも肥満のほうが死亡率を高める重要な因子となるとさえ言われ、肥満であることは、その後の人生にも大きな影響を与える一因になっているのです。妊娠、出産はもちろんですが、それらを含めた女性のライフサイクルを長い目で見た時、やはり適正な体重コントロールが必要です。そうしたリスクを取り除き健康を保つには、BMIを20~24ぐらいに保つのがもっとも良いとされています。不妊治療の際には、そういった要素も視野に入れて、取り組んでいただければと思います。 ※1=出典/Fertility and Sterility vol.106,2016Dec,1742-1750 ※2=出典/Fertility and Sterility vol.105,2016Mar,663-669 Q:お酒は不妊の原因になる? 不妊治療3年目の主婦です。私はお酒が大好きで晩酌は毎晩、週末は必ず外に飲みに出かけます。不妊の原因になり得るだろうなと思いつつ、治療のストレスもありやめることができません。やはり子づくりをしようと思ったら飲んではいけませんか? サンさん(主婦 / 31歳) A:アルコール摂取量が多いと妊娠しづらいという研究結果も。男女とも、適量を意識して アルコール摂取量と妊娠の関連性について調べてみました。アメリカでタイミング指導を行った女性124人を調査したところ、自然妊娠では、お酒を飲まない人の妊娠率は24.5%、1週間に91g以上のアルコールを摂取した人の妊娠率は8.3%でした。1週間に90g以内の摂取量であれば、飲まない人との大きな差は見られませんでした。(※3) また、2545組4729周期のIVF実施女性のアルコール摂取状況を調べたところ、1週間に4ドリンク(56g)以上飲んでいた女性は、それ以下の女性に比べて出生率が16%低下。さらに、男女両方が1週間に4ドリンク飲んでいた場合は、出生率が21%低下していたと報告されています。(※4)アメリカの調査なので「1ドリンク=14g」となっていますが、日本では厚労省が日本人の適量な飲酒量として「1日平均純アルコール20g」を目安と定めています。これはビール中ビンなら1本(500ml)、缶チューハイ1缶(500ml)、ワインはグラス1杯(約180ml)に相当するため、いずれもこれと照らし合わせて考えることができます。 同様に、男性不妊への関与についての調査もあり、過去1年間に1週間のうち最低でも5日間あたり、アルコール度数40~50%のブランデーなどを最低でも180ml飲んでいた66人を調べると、精巣の構造や精子形成に影響を与えることがわかっています。(※5) お酒を飲むこと自体は、リラックス効果が得られるなどのメリットもありますが、やはり適量を心掛けていただきたいですね。覚えておきたいのは、男性より女性のほうがアルコール代謝能力が低いということ。顔が赤くなるかどうかは、お酒の強さの基準にはなりません。また、過剰な飲酒は乳がんや骨粗しょう症の影響も心配されます。 言うまでもありませんが、妊婦の飲酒は胎児性アルコール症候群や成長障害といった悪影響を及ぼしますので、絶対にやめてください。 ※3=出典/Hakim et al., Fertility&Sterility,1998 ※4=出典/Brook et al., Obstet Gynecol,2011 ※5=出典/Muthusami et al., Fertility&Sterility,2005 俵先生よりまとめ 「1人目出産後は妊娠しやすい」「こうしたら男女の産み分けができる」といった噂は多くあり、実際に学会で報告されたものも存在していますが、そのほとんどは確率、つまり単なる数字的なデータであり、医学的にはっきり証明された根拠はありません。お一人お一人不妊の背景や薬の反応は異なりますから、1つの方法がみんなに効果的とはいえないでしょう。やはり、検査や治療の結果をその都度見ながら、ご自身に合ったやり方で進めていくことが大切だと思います。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 俵 史子 先生(俵IVFクリニック) 浜松医科大学医学部卒業。2004年愛知県の竹内病院トヨタ不妊センター所長に就任。2007年、俵IVFクリニックを開業。2015年静岡駅前に移転、リニューアルオープン。開業10周年に向け、内部スタッフがさらに充実。専門性の高い医師も増え、メンタルヘルスケアや妊娠初期管理にもますます力を注いでいる。 ≫ 俵IVFクリニック 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.36 2017 Winter≫ 掲載記事一覧はこちら ウソ! ホント? 妊娠にまつわるウワサの真相 俵 史子 先生(俵IVFクリニック) 「○○したら妊娠できた」「○○はNG!」といった妊娠にまつわる噂や俗説……。ウソなのか、ホントなのか、俵IVFクリニックの俵史子先生に医師の立場から解説していただきます。 Q:妊娠はうつるってホントですか? 結婚4年目で妊娠した親友は、旦那さんの職場に妊婦さんが3人いて、よくお腹を触らせてもらったそう。妊娠ってすごいパワーがあるのかも…と、私も親友のお腹を触らせてもらい、いつも身につけられるように、親友の携帯ストラップをもらってきちゃいました。ことり(主婦 / 28歳) A:あくまでもジンクスで科学的根拠はありません。高額な商品に騙されないよう、楽しんで取り入れて インターネットで、妊娠菌が付いた米を食べると子宝に恵まれる「子宝米」が販売され、詐欺だとして話題になりましたね。当然ながら、科学的根拠は一切ありませんが、妊娠を祈願したジンクスは、古くから存在します。たとえば、マトリョーシカやさるぼぼは子宝を願って作られたものですし、子宝にご利益のある神社は各地にあり、参拝する人も少なくありません。陣痛中の妊婦さんに富士山の絵を描いてもらうといい、というようなものも知られています。 ジンクスだと知りながら信じてしまう、そうした心の動きの多くは、社会心理学的に説明できます。自分に都合の良い意見のみを信じてしまうことは「確証のバイアス」という用語で説明されますし、妊娠したい自分と、なかなか妊娠しない現実に、お守りやジンクスをこじつけて解消しようとするのを「認知不協和の解消」と言います。つまり「子宝米」や「お腹を触ると妊娠する」も、妊娠を、ジンクスやお守りの効果として誤認していると考えられます。 とはいえ、これらは決して悪いことばかりではないのです。本来、お守りやジンクスは、精神的な支えを得るためのもの。お守りがあることで心の支えになったり、前向きな気持ちになって不安が和らいだりして、結果的に体調に良い影響を与える可能性は大いにあります。医学の世界にも「プラシーボ(偽薬)効果」といって、薬ではないビタミン剤等を与えたら、それを薬と信じて飲んだ人の痛みが治まった、という現象があります。ですから、お守りやジンクスを楽しめているのであれば、心の支えとして取り入れてもいいのではないでしょうか。ただし、くれぐれも不安や悩みに付け込んだ高額な商品や勧誘に騙されないよう気を付けてください。 Q:デブだと妊娠しにくいの? 結婚3年目ですがなかなか妊娠しません。これまで主人の両親からは何も言われたことがなかったのですが、先日主人が義父に、私が太ってるからでは? ダイエットさせなさいと言われたと聞き、昨夜はショックで涙が止まりませんでした。太っていると妊娠しにくいですか? ぶぅ子さん(主婦 / 35歳) A:肥満は妊娠に悪影響があるという報告があります。その後のライフサイクルのためにも体重コントロールを 体重と妊娠の関連性についてはこれまでさまざまな形で報告されています。およそ50万人のART患者を対象にした研究(2016年、アメリカ)。これによると、痩せすぎおよび肥満の女性は、標準体重の女性より妊娠率、出生率とも低く、どちらも低体重児と早産のリスクが高いことが明らかになっています。(※1) また、これもアメリカの研究ですが、約24万人の新鮮胚移植実施者を、痩せ、普通、肥満に分類し(BMIの数値では痩せBMI:18.4kg/m2以下、普通18.5~24.9kg/m2、肥満25.0kg/m2以上)、BMIが普通の人と肥満の人との妊娠結果を比較したところ、痩せや普通の女性に比べて、肥満の女性はBMIが高くなるほど妊娠率が低下し、逆に流産の確率が上がるという結果が公表されています。つまり、肥満女性のほうが、通常体重や痩せすぎの女性よりも妊娠しにくく、流産しやすいと言えます。(※2) そして何より、肥満による悪影響は、不妊治療や妊娠・出産だけに限ったことではありません。肥満は、脂質異常症や糖尿病、子宮内膜がんや乳がんのリスクに密接に結びついていることがわかっています。喫煙よりも肥満のほうが死亡率を高める重要な因子となるとさえ言われ、肥満であることは、その後の人生にも大きな影響を与える一因になっているのです。妊娠、出産はもちろんですが、それらを含めた女性のライフサイクルを長い目で見た時、やはり適正な体重コントロールが必要です。そうしたリスクを取り除き健康を保つには、BMIを20~24ぐらいに保つのがもっとも良いとされています。不妊治療の際には、そういった要素も視野に入れて、取り組んでいただければと思います。 ※1=出典/Fertility and Sterility vol.106,2016Dec,1742-1750 ※2=出典/Fertility and Sterility vol.105,2016Mar,663-669 Q:お酒は不妊の原因になる? 不妊治療3年目の主婦です。私はお酒が大好きで晩酌は毎晩、週末は必ず外に飲みに出かけます。不妊の原因になり得るだろうなと思いつつ、治療のストレスもありやめることができません。やはり子づくりをしようと思ったら飲んではいけませんか? サンさん(主婦 / 31歳) A:アルコール摂取量が多いと妊娠しづらいという研究結果も。男女とも、適量を意識して アルコール摂取量と妊娠の関連性について調べてみました。アメリカでタイミング指導を行った女性124人を調査したところ、自然妊娠では、お酒を飲まない人の妊娠率は24.5%、1週間に91g以上のアルコールを摂取した人の妊娠率は8.3%でした。1週間に90g以内の摂取量であれば、飲まない人との大きな差は見られませんでした。(※3) また、2545組4729周期のIVF実施女性のアルコール摂取状況を調べたところ、1週間に4ドリンク(56g)以上飲んでいた女性は、それ以下の女性に比べて出生率が16%低下。さらに、男女両方が1週間に4ドリンク飲んでいた場合は、出生率が21%低下していたと報告されています。(※4)アメリカの調査なので「1ドリンク=14g」となっていますが、日本では厚労省が日本人の適量な飲酒量として「1日平均純アルコール20g」を目安と定めています。これはビール中ビンなら1本(500ml)、缶チューハイ1缶(500ml)、ワインはグラス1杯(約180ml)に相当するため、いずれもこれと照らし合わせて考えることができます。 同様に、男性不妊への関与についての調査もあり、過去1年間に1週間のうち最低でも5日間あたり、アルコール度数40~50%のブランデーなどを最低でも180ml飲んでいた66人を調べると、精巣の構造や精子形成に影響を与えることがわかっています。(※5) お酒を飲むこと自体は、リラックス効果が得られるなどのメリットもありますが、やはり適量を心掛けていただきたいですね。覚えておきたいのは、男性より女性のほうがアルコール代謝能力が低いということ。顔が赤くなるかどうかは、お酒の強さの基準にはなりません。また、過剰な飲酒は乳がんや骨粗しょう症の影響も心配されます。 言うまでもありませんが、妊婦の飲酒は胎児性アルコール症候群や成長障害といった悪影響を及ぼしますので、絶対にやめてください。 ※3=出典/Hakim et al., Fertility&Sterility,1998 ※4=出典/Brook et al., Obstet Gynecol,2011 ※5=出典/Muthusami et al., Fertility&Sterility,2005 俵先生よりまとめ 「1人目出産後は妊娠しやすい」「こうしたら男女の産み分けができる」といった噂は多くあり、実際に学会で報告されたものも存在していますが、そのほとんどは確率、つまり単なる数字的なデータであり、医学的にはっきり証明された根拠はありません。お一人お一人不妊の背景や薬の反応は異なりますから、1つの方法がみんなに効果的とはいえないでしょう。やはり、検査や治療の結果をその都度見ながら、ご自身に合ったやり方で進めていくことが大切だと思います。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 俵 史子 先生(俵IVFクリニック) 浜松医科大学医学部卒業。2004年愛知県の竹内病院トヨタ不妊センター所長に就任。2007年、俵IVFクリニックを開業。2015年静岡駅前に移転、リニューアルオープン。開業10周年に向け、内部スタッフがさらに充実。専門性の高い医師も増え、メンタルヘルスケアや妊娠初期管理にもますます力を注いでいる。 ≫ 俵IVFクリニック 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.36 2017 Winter≫ 掲載記事一覧はこちら
2017.11.13
コラム 不妊治療
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ウソ! ホント? 妊娠にまつわるウワサの真相
ウソ! ホント? 妊娠にまつわるウワサの真相 俵 史子 先生(俵IVFクリニック) 「○○したら妊娠できた」「○○はNG!」といった妊娠にまつわる噂や俗説……。ウソなのか、ホントなのか、俵IVFクリニックの俵史子先生に医師の立場から解説していただきます。 Q:出産後は妊娠しやすいってホントですか? 1年半も不妊治療をして体力的にも精神的にも大変だったので、出産後すぐに2人目を希望しています。産後は妊娠しやすくなると聞きますが、実際はどうなのでしょうか。妊娠しやすくなっているなら自然妊娠を願っていますが、厳しいですかね……。私も旦那も33歳です。(ココちゃんさん・33歳) A:1人目ART後に2人目を自然妊娠する確率は20%程度ですが、科学的根拠はありません 調べてみると、「1人目をARTで妊娠・出産した人が、2人目を自然妊娠する確率はどのくらいあるか」という論文が海外で結構多く存在しています。だいたいどの論文でも、全体の20%程度は2人目のお子さんを自然妊娠しているという結果に。 自然妊娠した方たちの不妊背景を見ると、男性因子や卵管因子はなく、原因不明というケースが多いようです。それはどういうことかというと、原因がわからなくて高度な不妊治療に進み、1人目ができたけれど、もしかしたら治療をしなくても妊娠していたかもしれない。つまり、もともと自然妊娠できる力が備わっていた可能性もあります。 基本的には、1人目より2人目のほうが年齢が高くなることで、妊娠の条件は厳しくなると思います。前回の時よりホルモンの状態が良くなるとは思えませんし、妊娠・出産により子宮環境が変わることはあると思いますが、それが次の妊娠に良い影響を与えるというのは医学的に証明されていません。 結論としては、「1人目を出産した後に2人目を妊娠しやすくなる」という説に根拠はないということですね。全体の20%というのはあくまでもデータ上のことで、どなたでも自然妊娠できるとはいえません。楽観するのは良くないでしょう。 ただ、医学的ではなく、環境的なことで妊娠につながるケースもあるかもしれません。不妊治療中はそれがストレスになってなかなか結果を出せず、治療をお休みしている間に自然な形で妊娠したという方もいらっしゃいます。ココちゃんさんは33歳で時間に少し余裕があるので、まずはひと通りの検査を受けて異常がなければ、しばらく普通に夫婦生活をもたれて、自然にタイミングをみてみるのもいいのではないかと思います。 Q:不妊治療は双子になりやすい? 今、排卵誘発剤を使って治療中です。まだ治療を始めたばかりなんですが、やっぱり、もし幸い妊娠できたとしても双子になる確率って高いのでしょうか? 「双子になるのかな」と思うと正直な気持ち、やはり不安です。(チョコチさん) A:多胎のリスクは1~20%程度。極力避けるように調整していきます 排卵誘発剤を使用すると当然、複数の卵胞が発育するので、過排卵が起きることは十分考えられます。多胎になる確率は刺激の強さによって異なりますが、飲み薬のセキソビット®なら自然周期とほぼ変わらず、1%程度。クロミフェンになると約5%、FSHやHMGなどの注射を使うと20%くらいといわれています。 これは一般不妊治療における教科書的な数値で、やや高めに感じますが、実際は不妊治療を専門に行う施設ではそこまでの頻度ではないと思います。多胎になる人は1年に1人いるかいないか程度の割合です。 多胎のリスクは念頭に置きつつも排卵障害があると誘発剤を使わざるを得ないケースもあります。そこで、なるべくリスクを回避するために、薬の反応がいいのか悪いのか個々に見極めて、量を少なくしたり、使う期間を短くするなどして、極力過排卵にならないようにコントロールしています。 それでも結果として過排卵になってしまったら、多胎を防ぐために排卵をキャンセルさせて、今周期は生理を待つという決断をする時も。 繰り返し過排卵になる人は、体外受精という選択肢もあります。一般不妊治療の段階だと、注意しても100%コントロールすることはできません。体外受精は現在、胚の1個移植が原則となっているので、多胎のリスクを抑えることができると思います。 Q:排卵日に仲良くすると男の子ができやすい? いつも楽しく勉強させていただいています。こんな質問はどうかと思ったのですが、やはり気になるので伺います。それは「排卵日に仲良くすると男の子ができやすい」と聞きましたが、本当でしょうか。2日前だと女の子なんですよね? 性別は受精の瞬間に決まるので、そんなに単純ではない気がするのですが……。(とびこさん) A:昔からそのような説はありますが、その逆や「変わらない」という報告も インターネットを検索すると、性別の産み分けについてさまざまな方法が記載されています。とびこさんがおっしゃるように、「排卵日の性交渉で男の子、排卵日2日前の性交渉で女の子の産み分けができる」という内容をよく目にしますね。 文献的にみると、確かに1970年代や1980年代の海外の論文でこの産み分けを支持するものは存在しますが、反対に「排卵日の性交渉で女の子が生まれる確率が高くなる」という報告もありますし、「変わらない」という報告も。それは現在のデータでも同様のようです。 どうやらこの産み分けの理屈は、X染色体を運ぶ精子とY染色体を運ぶ性質の違いからきているようです(Y染色体精子はX染色体精子に比べて小さく、酸性に弱いなど)。 たとえば、排卵前の腟内環境は基本的に酸性に傾いており、排卵日になるとアルカリ性に傾く。Y染色体は酸に弱く、X染色体を運ぶ精子はアルカリに弱いとされています。すなわち、腟内環境が酸性であればY染色体よりもX染色体の精子が多く生き残り、アルカリに傾いていればX染色体よりY染色体が多く生き残るといった具合で選択され、結果として一方の染色体をもつ精子が卵子に到達する確率が高くなり、一方の性が生まれやすくなる……ということで、理屈的には説明できるかもしれません。 しかし、受精するのは何百万、何千万といる中の1個の精子。多少そこで振り分けがあったとしても、確実にその条件をもった精子が残って受精するとは限りません。 不妊治療の専門医は、妊娠するためにはどの時期が最も適しているかを考えて治療しています。ですから、根拠がはっきりしていないことに振り回されるよりも、まずは「妊娠する」という目的を一番に考えていただきたいと思います。 俵先生よりまとめ 「1人目出産後は妊娠しやすい」「こうしたら男女の産み分けができる」といった噂は多くあり、実際に学会で報告されたものも存在していますが、そのほとんどは確率、つまり単なる数字的なデータであり、医学的にはっきり証明された根拠はありません。お一人お一人不妊の背景や薬の反応は異なりますから、1つの方法がみんなに効果的とはいえないでしょう。やはり、検査や治療の結果をその都度見ながら、ご自身に合ったやり方で進めていくことが大切だと思います。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 俵 史子 先生(俵IVFクリニック) 浜松医科大学臨床准教授。2004年愛知県の竹内病院トヨタ不妊センター所長に就任。2007年、静岡に俵IVFクリニックを開業。2015年静岡駅前に移転しリニューアルオープン。各専門医が担当する専門外来が充実。不妊治療後の妊娠初期管理を行う生殖周産期外来、精神科専門医によるメンタルヘルス外来を新たに開設。 ≫ 俵IVFクリニック 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.35 2017 Autumn≫ 掲載記事一覧はこちら ウソ! ホント? 妊娠にまつわるウワサの真相 俵 史子 先生(俵IVFクリニック) 「○○したら妊娠できた」「○○はNG!」といった妊娠にまつわる噂や俗説……。ウソなのか、ホントなのか、俵IVFクリニックの俵史子先生に医師の立場から解説していただきます。 Q:出産後は妊娠しやすいってホントですか? 1年半も不妊治療をして体力的にも精神的にも大変だったので、出産後すぐに2人目を希望しています。産後は妊娠しやすくなると聞きますが、実際はどうなのでしょうか。妊娠しやすくなっているなら自然妊娠を願っていますが、厳しいですかね……。私も旦那も33歳です。(ココちゃんさん・33歳) A:1人目ART後に2人目を自然妊娠する確率は20%程度ですが、科学的根拠はありません 調べてみると、「1人目をARTで妊娠・出産した人が、2人目を自然妊娠する確率はどのくらいあるか」という論文が海外で結構多く存在しています。だいたいどの論文でも、全体の20%程度は2人目のお子さんを自然妊娠しているという結果に。 自然妊娠した方たちの不妊背景を見ると、男性因子や卵管因子はなく、原因不明というケースが多いようです。それはどういうことかというと、原因がわからなくて高度な不妊治療に進み、1人目ができたけれど、もしかしたら治療をしなくても妊娠していたかもしれない。つまり、もともと自然妊娠できる力が備わっていた可能性もあります。 基本的には、1人目より2人目のほうが年齢が高くなることで、妊娠の条件は厳しくなると思います。前回の時よりホルモンの状態が良くなるとは思えませんし、妊娠・出産により子宮環境が変わることはあると思いますが、それが次の妊娠に良い影響を与えるというのは医学的に証明されていません。 結論としては、「1人目を出産した後に2人目を妊娠しやすくなる」という説に根拠はないということですね。全体の20%というのはあくまでもデータ上のことで、どなたでも自然妊娠できるとはいえません。楽観するのは良くないでしょう。 ただ、医学的ではなく、環境的なことで妊娠につながるケースもあるかもしれません。不妊治療中はそれがストレスになってなかなか結果を出せず、治療をお休みしている間に自然な形で妊娠したという方もいらっしゃいます。ココちゃんさんは33歳で時間に少し余裕があるので、まずはひと通りの検査を受けて異常がなければ、しばらく普通に夫婦生活をもたれて、自然にタイミングをみてみるのもいいのではないかと思います。 Q:不妊治療は双子になりやすい? 今、排卵誘発剤を使って治療中です。まだ治療を始めたばかりなんですが、やっぱり、もし幸い妊娠できたとしても双子になる確率って高いのでしょうか? 「双子になるのかな」と思うと正直な気持ち、やはり不安です。(チョコチさん) A:多胎のリスクは1~20%程度。極力避けるように調整していきます 排卵誘発剤を使用すると当然、複数の卵胞が発育するので、過排卵が起きることは十分考えられます。多胎になる確率は刺激の強さによって異なりますが、飲み薬のセキソビット®なら自然周期とほぼ変わらず、1%程度。クロミフェンになると約5%、FSHやHMGなどの注射を使うと20%くらいといわれています。 これは一般不妊治療における教科書的な数値で、やや高めに感じますが、実際は不妊治療を専門に行う施設ではそこまでの頻度ではないと思います。多胎になる人は1年に1人いるかいないか程度の割合です。 多胎のリスクは念頭に置きつつも排卵障害があると誘発剤を使わざるを得ないケースもあります。そこで、なるべくリスクを回避するために、薬の反応がいいのか悪いのか個々に見極めて、量を少なくしたり、使う期間を短くするなどして、極力過排卵にならないようにコントロールしています。 それでも結果として過排卵になってしまったら、多胎を防ぐために排卵をキャンセルさせて、今周期は生理を待つという決断をする時も。 繰り返し過排卵になる人は、体外受精という選択肢もあります。一般不妊治療の段階だと、注意しても100%コントロールすることはできません。体外受精は現在、胚の1個移植が原則となっているので、多胎のリスクを抑えることができると思います。 Q:排卵日に仲良くすると男の子ができやすい? いつも楽しく勉強させていただいています。こんな質問はどうかと思ったのですが、やはり気になるので伺います。それは「排卵日に仲良くすると男の子ができやすい」と聞きましたが、本当でしょうか。2日前だと女の子なんですよね? 性別は受精の瞬間に決まるので、そんなに単純ではない気がするのですが……。(とびこさん) A:昔からそのような説はありますが、その逆や「変わらない」という報告も インターネットを検索すると、性別の産み分けについてさまざまな方法が記載されています。とびこさんがおっしゃるように、「排卵日の性交渉で男の子、排卵日2日前の性交渉で女の子の産み分けができる」という内容をよく目にしますね。 文献的にみると、確かに1970年代や1980年代の海外の論文でこの産み分けを支持するものは存在しますが、反対に「排卵日の性交渉で女の子が生まれる確率が高くなる」という報告もありますし、「変わらない」という報告も。それは現在のデータでも同様のようです。 どうやらこの産み分けの理屈は、X染色体を運ぶ精子とY染色体を運ぶ性質の違いからきているようです(Y染色体精子はX染色体精子に比べて小さく、酸性に弱いなど)。 たとえば、排卵前の腟内環境は基本的に酸性に傾いており、排卵日になるとアルカリ性に傾く。Y染色体は酸に弱く、X染色体を運ぶ精子はアルカリに弱いとされています。すなわち、腟内環境が酸性であればY染色体よりもX染色体の精子が多く生き残り、アルカリに傾いていればX染色体よりY染色体が多く生き残るといった具合で選択され、結果として一方の染色体をもつ精子が卵子に到達する確率が高くなり、一方の性が生まれやすくなる……ということで、理屈的には説明できるかもしれません。 しかし、受精するのは何百万、何千万といる中の1個の精子。多少そこで振り分けがあったとしても、確実にその条件をもった精子が残って受精するとは限りません。 不妊治療の専門医は、妊娠するためにはどの時期が最も適しているかを考えて治療しています。ですから、根拠がはっきりしていないことに振り回されるよりも、まずは「妊娠する」という目的を一番に考えていただきたいと思います。 俵先生よりまとめ 「1人目出産後は妊娠しやすい」「こうしたら男女の産み分けができる」といった噂は多くあり、実際に学会で報告されたものも存在していますが、そのほとんどは確率、つまり単なる数字的なデータであり、医学的にはっきり証明された根拠はありません。お一人お一人不妊の背景や薬の反応は異なりますから、1つの方法がみんなに効果的とはいえないでしょう。やはり、検査や治療の結果をその都度見ながら、ご自身に合ったやり方で進めていくことが大切だと思います。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 俵 史子 先生(俵IVFクリニック) 浜松医科大学臨床准教授。2004年愛知県の竹内病院トヨタ不妊センター所長に就任。2007年、静岡に俵IVFクリニックを開業。2015年静岡駅前に移転しリニューアルオープン。各専門医が担当する専門外来が充実。不妊治療後の妊娠初期管理を行う生殖周産期外来、精神科専門医によるメンタルヘルス外来を新たに開設。 ≫ 俵IVFクリニック 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.35 2017 Autumn≫ 掲載記事一覧はこちら
2017.8.21
コラム 不妊治療
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ウソ! ホント? 妊娠にまつわるウワサの真相
ウソ! ホント? 妊娠にまつわるウワサの真相 俵 史子 先生(俵IVFクリニック) 「○○したら妊娠できた」「○○はNG!」といった妊娠にまつわる噂や俗説……。ウソなのか、ホントなのか、俵IVFクリニックの俵史子先生に医師の立場から解説していただきます。 Q:血液型不適合だと子どもができにくい? 昔の話ですが、祖父がA型、祖母がO型でなかなか子どもができず、婦人科の先生に「血液型不適合でできにくい」といわれたそうです。結果的には1人生まれ、それ以降2回妊娠しても流産だったとか。うちも夫がA型、私がO型でなかなか子どもができないので「もしかしたら?」と思っています。(みるくさん・29歳) A:昔は血液型不適合の議論もあったようですが、現在では因果関係はないとされています 夫婦間における血液型の組み合わせと妊娠のしやすさについての研究は、とても古い歴史があります。 現在、一般的に使われている血液型の分類法「ABO式血液型」は1900年頃に発見され、1920年頃から夫婦の血液型の組み合わせと子どもの血液型の特徴付けが行われてきました。 これらの研究過程において、「特定の血液型の組み合わせで、妊娠しやすさが変わるのでは?」という議論もされてきたのですね。その頃の論文では、みるくさんが指摘されている「AとOの組み合わせは不妊になりやすい」という報告も確かにあったようです。当時は婦人科の医師から患者さんに、血液型による不適合の話をすることも少なくなかったのかもしれません。 ほかにもさまざまな報告や噂がありますが、統一の見解は得られていないようです。結果としては、そのようなことはなく、現在では血液型の組み合わせと不妊や妊娠率との因果関係はないと考えられているんですね。 当院でも、過去に不妊治療を受けた1200人の患者さんについて、不適合があるかどうか調べてみました。 日本人のABO式血液型の分布は、A型が40%、B型が20%、O型が30%、AB型が10%といわれています。当院の不妊患者の割合はこの分布ときれいに重なっており、特に「○型だから不妊になりやすい」というバラつきは見られませんでした。 また、ご夫婦の血液型についても同様の結果で、どれも一般頻度の組み合わせ。「○型×○型は赤ちゃんができにくい」という突出した例はありません。 結論として、血液型不適合というのは不妊や流産とは関連がなく、「それで妊娠できないんだ」と気にされることはないと思います。 Q:不規則な勤務って妊娠しにくい? 赤ちゃん待ち歴2年になる看護師です。年齢が高くて卵巣機能も悪く、なかなか妊娠しません。今ICUで働いているので極度の緊張状態が続き、精神的ストレスも日々感じています。そのうえ、月9回の夜勤もあって、規則正しい生活などとても無理。やはり、不規則な仕事は妊娠しにくいのでしょうか?(ナミさん・34歳) A:夜勤勤務の人は月経周期異常の頻度が高く、メラトニンやプロラクチンの分泌も低下 夜勤勤務や夜間のシフトで働いている女性は、月経周期異常の頻度が高いことはよく知られています。1992年にとられたデータでは、ホステス40.3%、夜勤工場労働者36.8%、看護師24.9%と、夜勤勤務を要する女性が不規則な月経を訴える頻度は高く、メラトニンとプロラクチンの分泌が有意に低いことがわかりました。一方、昼間勤務している教師や事務員で月経の不調を訴えた人は15%以下の低値、という結果でした。 人間は夜寝ている間にメラトニンというホルモンが脳から放出され、朝夜のリズムを作っています。夜勤労働などでこのメラトニンの分泌パターンが崩れることで、月経周期のリズムもおかしくなってしまうんですね。さらに、メラトニンには抗酸化作用があり、卵子が酸化ストレスによりダメージを受けないように守ってくれる働きもあるといわれています。 これらのことを考えると、不規則な勤務=不妊とはいいきれませんが、間接的な原因になる可能性は大いにあるといえるでしょう。 とはいっても、すぐに仕事を変えることは難しいと思います。妊活中で月経不順があるという人は、婦人科や不妊外来で診察を受け、プロラクチンの管理やメラトニンをサプリメントで補充するなど、妊娠においてより良い状況を作っていくことが大切だと思います。 ※参考資料/産業医学 Jpn Ind,1992;34:545-550「夜勤勤務時のホルモン動態と月経異常」 Q:受精&着床時期の温めについて 受精や着床の時期はやはり、温泉やカイロなどで体を温めたほうがいいのでしょうか? ちょうどその時期に温泉へ行く予定なのですが、温めすぎはよくないとか受精卵が死ぬとか聞いて、本当はどうなのかな……と。温めたほうが血行がよくなるし、妊娠のために少しでもやれることはしたいのです。(匿名・30歳) A:カイロや熱いお風呂など極端な温めは逆効果。普段通り、快適な環境で過ごしましょう 体温や気温が高いと妊娠や赤ちゃんにとってよくないという報告は、世界的に多く見られるようです。海外の論文では、アラブなどの高気温地域や砂漠地帯では流産率が高かったり、赤ちゃんの心疾患が増加するという報告が。また、普段あまり湯船に浸かる習慣がない米国などでは、妊娠初期に熱いお風呂に入ると、流産の頻度が高まるというデータもありました。 このような話を聞くと体を温めることは、ネガティブで怖い印象がありますが、神経質になる必要はないでしょう。私の見解では冷やすよりも温めたほうがいいと思っており、患者さんにもそうお話ししていますが、極端な形でそれをするのはおすすめしません。 たとえば、子宮や卵巣の血流を良くしようと考えてお腹に長時間カイロを貼ったり、我慢して熱いお風呂に浸かったり……。夏は、「冷えすぎは良くない」とエアコンを使わずに暑い部屋で過ごすなど。これらは逆に体調を崩す原因になってしまいます。冷え性の方は、手先や足元など末端部分を温めて、徐々に体全体の血流を良くするほうが効果的だと思いますね。 温泉に行く予定があるそうですが、温泉の成分自体は「妊娠に悪い」というエビデンスはありません。適温のお湯で、のぼせない程度の入浴なら問題ないと思います。無理なことをせず、この時期も普段同様、自分が快適に思える環境で過ごすことが一番です。 俵先生よりまとめ 妊娠において何がいけない、これがいいというテーマは、昔から学会でもいろいろ議論されてきました。一般の方でもインターネットで調べればさまざまな説や噂が出てくると思いますが、エビデンスが確立しているものはごくわずかで、今では否定されているものも。不確かなことにいつまでも振り回されていると、本当の不妊原因が特定できなかったり、治療が遅れてしまう場合もあります。月経不順や不妊期間が長い方は、何よりもまず病院で診察や検査を受けて、些細な疑問や不安があれば医師に相談していただきたいですね。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 俵 史子 先生(俵IVFクリニック) 浜松医科大学医学部卒業。総合病院勤務医時代より不妊治療に携わり、2004年愛知県の竹内病院トヨタ不妊センター所長に就任。2007年、静岡に俵IVFクリニックを開業。2015年静岡駅前に移転し、リニューアルオープン。開院以来、不妊治療で妊娠した方がより安全な出産を迎えられるよう、産科施設との地域連携を大切にしてきた。4月からは周産期を専門にする医師も増え、より充実した医療を提供する体制を整えているそうです。 ≫ 俵IVFクリニック 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.34 2017 Summer≫ 掲載記事一覧はこちら ウソ! ホント? 妊娠にまつわるウワサの真相 俵 史子 先生(俵IVFクリニック) 「○○したら妊娠できた」「○○はNG!」といった妊娠にまつわる噂や俗説……。ウソなのか、ホントなのか、俵IVFクリニックの俵史子先生に医師の立場から解説していただきます。 Q:血液型不適合だと子どもができにくい? 昔の話ですが、祖父がA型、祖母がO型でなかなか子どもができず、婦人科の先生に「血液型不適合でできにくい」といわれたそうです。結果的には1人生まれ、それ以降2回妊娠しても流産だったとか。うちも夫がA型、私がO型でなかなか子どもができないので「もしかしたら?」と思っています。(みるくさん・29歳) A:昔は血液型不適合の議論もあったようですが、現在では因果関係はないとされています 夫婦間における血液型の組み合わせと妊娠のしやすさについての研究は、とても古い歴史があります。 現在、一般的に使われている血液型の分類法「ABO式血液型」は1900年頃に発見され、1920年頃から夫婦の血液型の組み合わせと子どもの血液型の特徴付けが行われてきました。 これらの研究過程において、「特定の血液型の組み合わせで、妊娠しやすさが変わるのでは?」という議論もされてきたのですね。その頃の論文では、みるくさんが指摘されている「AとOの組み合わせは不妊になりやすい」という報告も確かにあったようです。当時は婦人科の医師から患者さんに、血液型による不適合の話をすることも少なくなかったのかもしれません。 ほかにもさまざまな報告や噂がありますが、統一の見解は得られていないようです。結果としては、そのようなことはなく、現在では血液型の組み合わせと不妊や妊娠率との因果関係はないと考えられているんですね。 当院でも、過去に不妊治療を受けた1200人の患者さんについて、不適合があるかどうか調べてみました。 日本人のABO式血液型の分布は、A型が40%、B型が20%、O型が30%、AB型が10%といわれています。当院の不妊患者の割合はこの分布ときれいに重なっており、特に「○型だから不妊になりやすい」というバラつきは見られませんでした。 また、ご夫婦の血液型についても同様の結果で、どれも一般頻度の組み合わせ。「○型×○型は赤ちゃんができにくい」という突出した例はありません。 結論として、血液型不適合というのは不妊や流産とは関連がなく、「それで妊娠できないんだ」と気にされることはないと思います。 Q:不規則な勤務って妊娠しにくい? 赤ちゃん待ち歴2年になる看護師です。年齢が高くて卵巣機能も悪く、なかなか妊娠しません。今ICUで働いているので極度の緊張状態が続き、精神的ストレスも日々感じています。そのうえ、月9回の夜勤もあって、規則正しい生活などとても無理。やはり、不規則な仕事は妊娠しにくいのでしょうか?(ナミさん・34歳) A:夜勤勤務の人は月経周期異常の頻度が高く、メラトニンやプロラクチンの分泌も低下 夜勤勤務や夜間のシフトで働いている女性は、月経周期異常の頻度が高いことはよく知られています。1992年にとられたデータでは、ホステス40.3%、夜勤工場労働者36.8%、看護師24.9%と、夜勤勤務を要する女性が不規則な月経を訴える頻度は高く、メラトニンとプロラクチンの分泌が有意に低いことがわかりました。一方、昼間勤務している教師や事務員で月経の不調を訴えた人は15%以下の低値、という結果でした。 人間は夜寝ている間にメラトニンというホルモンが脳から放出され、朝夜のリズムを作っています。夜勤労働などでこのメラトニンの分泌パターンが崩れることで、月経周期のリズムもおかしくなってしまうんですね。さらに、メラトニンには抗酸化作用があり、卵子が酸化ストレスによりダメージを受けないように守ってくれる働きもあるといわれています。 これらのことを考えると、不規則な勤務=不妊とはいいきれませんが、間接的な原因になる可能性は大いにあるといえるでしょう。 とはいっても、すぐに仕事を変えることは難しいと思います。妊活中で月経不順があるという人は、婦人科や不妊外来で診察を受け、プロラクチンの管理やメラトニンをサプリメントで補充するなど、妊娠においてより良い状況を作っていくことが大切だと思います。 ※参考資料/産業医学 Jpn Ind,1992;34:545-550「夜勤勤務時のホルモン動態と月経異常」 Q:受精&着床時期の温めについて 受精や着床の時期はやはり、温泉やカイロなどで体を温めたほうがいいのでしょうか? ちょうどその時期に温泉へ行く予定なのですが、温めすぎはよくないとか受精卵が死ぬとか聞いて、本当はどうなのかな……と。温めたほうが血行がよくなるし、妊娠のために少しでもやれることはしたいのです。(匿名・30歳) A:カイロや熱いお風呂など極端な温めは逆効果。普段通り、快適な環境で過ごしましょう 体温や気温が高いと妊娠や赤ちゃんにとってよくないという報告は、世界的に多く見られるようです。海外の論文では、アラブなどの高気温地域や砂漠地帯では流産率が高かったり、赤ちゃんの心疾患が増加するという報告が。また、普段あまり湯船に浸かる習慣がない米国などでは、妊娠初期に熱いお風呂に入ると、流産の頻度が高まるというデータもありました。 このような話を聞くと体を温めることは、ネガティブで怖い印象がありますが、神経質になる必要はないでしょう。私の見解では冷やすよりも温めたほうがいいと思っており、患者さんにもそうお話ししていますが、極端な形でそれをするのはおすすめしません。 たとえば、子宮や卵巣の血流を良くしようと考えてお腹に長時間カイロを貼ったり、我慢して熱いお風呂に浸かったり……。夏は、「冷えすぎは良くない」とエアコンを使わずに暑い部屋で過ごすなど。これらは逆に体調を崩す原因になってしまいます。冷え性の方は、手先や足元など末端部分を温めて、徐々に体全体の血流を良くするほうが効果的だと思いますね。 温泉に行く予定があるそうですが、温泉の成分自体は「妊娠に悪い」というエビデンスはありません。適温のお湯で、のぼせない程度の入浴なら問題ないと思います。無理なことをせず、この時期も普段同様、自分が快適に思える環境で過ごすことが一番です。 俵先生よりまとめ 妊娠において何がいけない、これがいいというテーマは、昔から学会でもいろいろ議論されてきました。一般の方でもインターネットで調べればさまざまな説や噂が出てくると思いますが、エビデンスが確立しているものはごくわずかで、今では否定されているものも。不確かなことにいつまでも振り回されていると、本当の不妊原因が特定できなかったり、治療が遅れてしまう場合もあります。月経不順や不妊期間が長い方は、何よりもまず病院で診察や検査を受けて、些細な疑問や不安があれば医師に相談していただきたいですね。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 俵 史子 先生(俵IVFクリニック) 浜松医科大学医学部卒業。総合病院勤務医時代より不妊治療に携わり、2004年愛知県の竹内病院トヨタ不妊センター所長に就任。2007年、静岡に俵IVFクリニックを開業。2015年静岡駅前に移転し、リニューアルオープン。開院以来、不妊治療で妊娠した方がより安全な出産を迎えられるよう、産科施設との地域連携を大切にしてきた。4月からは周産期を専門にする医師も増え、より充実した医療を提供する体制を整えているそうです。 ≫ 俵IVFクリニック 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.34 2017 Summer≫ 掲載記事一覧はこちら
2017.5.23
コラム 不妊治療
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ウソ! ホント? 妊娠にまつわるウワサの真相
ウソ! ホント? 妊娠にまつわるウワサの真相 俵 史子 先生(俵IVFクリニック) 「○○したら妊娠できた」「○○はNG!」といった妊娠にまつわる噂や俗説……。ウソなのか、ホントなのか、俵IVFクリニックの俵史子先生に医師の立場から解説していただきます。 Q:「着床出血」って必ずあるものなの? 生理予定日くらいに着床出血があるといわれますが、必ず起こるものでしょうか? また、生理前と妊娠の兆候が似ているというのもよく聞きます。私は予定日1週間くらい前(排卵から1週間くらい)に下腹部が重い感じになるのですが、それはただの生理前の兆候でしょうか?(まりもキティさん・29歳) A:着床による出血とは判断できない。自己判断はNG 妊娠初期の出血が妊娠陽性を示すサインとして「着床出血」という言葉は、私もよく聞きますし、妊娠初期に出血症状があることも観察されています。しかし医学的に「着床出血」という用語は使いません。それが着床によるものかどうかわかっていないからです。何を着床出血というかの定義も、実はありません。 妊娠初期の場合、絨毛(トロホブラスト)がつくられる過程で出血が起きる可能性は十分考えられます。一方、生理予定日くらいの出血は、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)といった女性ホルモンの変動が原因かもしれないと推測できます。つまり、出血は妊娠したから必ずあるものではなく、着床の目安として自己判断するのは好ましいとはいえません。 次に、生理前の似た症状についてですが、排卵後1週間くらいの高温期に、PMS(月経前症候群)による下腹部の張り、不眠、イライラなどの症状が感じられる人は少なくありませんが、これも黄体ホルモンが作用しているなど様々な要因が考えられるので、妊娠している・していないと判断できるものではないでしょう。 妊娠初期に不正出血があった場合、ポリープやその他の器質的な異常、異常妊娠の可能性も考えられます。ただ、妊娠初期の出血が必ずしも流産につながるわけではないこともお伝えしておきます。アメリカで行われた研究(※1)で、妊娠初期(8週頃)の女性151人にインタビューしたところ、14人(9%)が出血を経験、うち12人は出産に至っていたという論文があります。不正出血があった場合は慌てずに 医療機関に相談し、必要に応じて検査を受けてください。 Q:着床時期は安静にしないとダメ? 病院では普通に過ごして構わないといわれますが、HPなどを読むと「着床時期は姫生活」と書かれていて、安静にしないと妊娠できないのかと思ってしまいます。今日あたり着床時期なのに、買い物して荷物を提げて帰宅しました。着床時期をどう過ごしたら妊娠できるのかと悩んでいます。(あきこさん) A:休む時間によって妊娠率に差はなし。リラックスして過ごして ART治療では胚移植した直後が着床時期になります。この時期にベッドで安静にすることが、その後の妊娠経過にどう影響するかについて、研究した論文がいくつかあります。たとえば、2007年に報告されたランダム化比較試験(研究の結果の信頼性が高い)では、胚移植後30分安静にしたかしなかったかで、妊娠率に差が出たかどうかを検討したところ、休息を30分取った人は妊娠率50%、取らなかった人は46.3%と、有意な差はありませんでした。また、20分休息した人と24時間安静の人とを比べても、違いは見られません(※2)。つまり、胚盤胞移植の場合、着床時期に安静にしているかしていないか、その時間が長いか短いかで、妊娠率にはあまり影響がないように思います。 ただ、長時間労働による過労やストレスが、切迫流産や早産のリスクを高めるという報告はあります。肉体的・精神的に強度の負担がかかることは、着床時期に限らず、妊娠中はできる限り控えたほうがいいでしょう。安静にしていなければ…と急に寝たきりの生活になったり、逆に運動したほうがいいのでは…と慣れない運動をするなど、あえてイレギュラーなことをすると、かえってストレスを増すことになりかねません。本当に普段通り、リラックスして過ごすことを心がけてください。 (※2)Purcell KJ,Schembri M, Telles TL.Fujimoto VY,Cedars MI.“Bed rest after embryo trasfer:a randomized controlled trial.” Fertil Steril.(2007)87:1322-6 Q:流産後は妊娠しやすいって本当? 「流産後は妊娠しやすい」という噂を何度か耳にしました。子宮の中がきれいになるから、という意味でしょうか? 私としては一度妊娠したのだから、またいつかできるだろうというくらいの意味にとらえていました。「妊娠しやすい」根拠は何なのか気になります。(コンガさん・38歳) A:流産後、回復次第で妊娠しやすくなるという研究結果も 「流産後に妊娠しやすいかどうか」に関して最近、とても興味深い報告がありました。流産後から子づくりを開始する期間が、0~3カ月以内の人(756人)と、3カ月以降の人(233人)で、累積妊娠率を比較したところ、0~3カ月の累積妊娠率が68.9%、3カ月以上が51.1%と、明らかな差が認められたのです(※3)。これは「流産後は妊娠しやすい」、そして「流産後、早めに次の妊娠にトライしたほうがいい結果に結びつきやすい」「期間をあけることでメリットがあるわけではない」ということを、きちんとデータで示した最初の結果だと思われます。 以前は、流産後3カ月は次の妊娠を控えるようにいわれていました。当院では、妊娠によっていったん排卵する機能が停止した卵巣に、再び排卵周期が戻ってくるまで、だいたい2カ月ぐらいの期間を要します。早い方なら1カ月で排卵が回復してきます。すべての人に一律に「3カ月以上あけるように」という指導ではなく、その人の体の状態を見ながら、個別に判断することにしています。 妊娠したことで子宮の胚受容能が改善するなど、体内の環境が変わり、着床しやすくなる、という可能性は考えられますが、なぜ流産後に妊娠しやすいかは、はっきりとは証明されていません。ただ、この研究結果からは1回目の妊娠が流産になったとしても、体の回復次第で早い時期に妊娠できるという期待がもてるのではないでしょうか。 (※3) Schlep KC,Mitchell EM,Mumford SL,Radin RG,Zarek SM,Sjaarda L,Schisterman EF.“Trying to Conceive After an Early Pregnancy Loss:An Assessment on How Long Couples Should Wait.” Obstet Gynecol.(2016)127:204-12 俵先生よりまとめ 着床時期に限らず、妊娠期全般にいえることですが、「こうしなければいけない」「こうしたほうがいい」というような、特別なことをするのではなく「普段通りリラックスして過ごす」こと、これに尽きるのではないでしょうか。急にこれをしたから着床率が上がる、というものはありません。普段気をつけていること――規則正しい生活や栄養バランスの取れた食事をいつも通り続けること。そして「こうしなければ」という思い込みがストレスになるなら、それを解消するだけでも、気持ちが楽になるかもしれません。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 俵 史子 先生(俵IVFクリニック) 浜松医科大学医学部卒業。総合病院勤務医時代より不妊治療に携わり、2004年愛知県の竹内病院トヨタ不妊センター所長に就任。2007年、静岡に俵IVFクリニックを開業。2015年静岡駅前に移転し、リニューアルオープン。不妊治療で妊娠した方々に、より安心・安全な妊娠・出産を目指してもらうため、妊娠初期の管理にも力を入れている。今春からは周産期専門医や専門スタッフも増え、さらに体制を強化。 ≫ 俵IVFクリニック 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.33 2017 Spring≫ 掲載記事一覧はこちら ウソ! ホント? 妊娠にまつわるウワサの真相 俵 史子 先生(俵IVFクリニック) 「○○したら妊娠できた」「○○はNG!」といった妊娠にまつわる噂や俗説……。ウソなのか、ホントなのか、俵IVFクリニックの俵史子先生に医師の立場から解説していただきます。 Q:「着床出血」って必ずあるものなの? 生理予定日くらいに着床出血があるといわれますが、必ず起こるものでしょうか? また、生理前と妊娠の兆候が似ているというのもよく聞きます。私は予定日1週間くらい前(排卵から1週間くらい)に下腹部が重い感じになるのですが、それはただの生理前の兆候でしょうか?(まりもキティさん・29歳) A:着床による出血とは判断できない。自己判断はNG 妊娠初期の出血が妊娠陽性を示すサインとして「着床出血」という言葉は、私もよく聞きますし、妊娠初期に出血症状があることも観察されています。しかし医学的に「着床出血」という用語は使いません。それが着床によるものかどうかわかっていないからです。何を着床出血というかの定義も、実はありません。 妊娠初期の場合、絨毛(トロホブラスト)がつくられる過程で出血が起きる可能性は十分考えられます。一方、生理予定日くらいの出血は、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)といった女性ホルモンの変動が原因かもしれないと推測できます。つまり、出血は妊娠したから必ずあるものではなく、着床の目安として自己判断するのは好ましいとはいえません。 次に、生理前の似た症状についてですが、排卵後1週間くらいの高温期に、PMS(月経前症候群)による下腹部の張り、不眠、イライラなどの症状が感じられる人は少なくありませんが、これも黄体ホルモンが作用しているなど様々な要因が考えられるので、妊娠している・していないと判断できるものではないでしょう。 妊娠初期に不正出血があった場合、ポリープやその他の器質的な異常、異常妊娠の可能性も考えられます。ただ、妊娠初期の出血が必ずしも流産につながるわけではないこともお伝えしておきます。アメリカで行われた研究(※1)で、妊娠初期(8週頃)の女性151人にインタビューしたところ、14人(9%)が出血を経験、うち12人は出産に至っていたという論文があります。不正出血があった場合は慌てずに 医療機関に相談し、必要に応じて検査を受けてください。 Q:着床時期は安静にしないとダメ? 病院では普通に過ごして構わないといわれますが、HPなどを読むと「着床時期は姫生活」と書かれていて、安静にしないと妊娠できないのかと思ってしまいます。今日あたり着床時期なのに、買い物して荷物を提げて帰宅しました。着床時期をどう過ごしたら妊娠できるのかと悩んでいます。(あきこさん) A:休む時間によって妊娠率に差はなし。リラックスして過ごして ART治療では胚移植した直後が着床時期になります。この時期にベッドで安静にすることが、その後の妊娠経過にどう影響するかについて、研究した論文がいくつかあります。たとえば、2007年に報告されたランダム化比較試験(研究の結果の信頼性が高い)では、胚移植後30分安静にしたかしなかったかで、妊娠率に差が出たかどうかを検討したところ、休息を30分取った人は妊娠率50%、取らなかった人は46.3%と、有意な差はありませんでした。また、20分休息した人と24時間安静の人とを比べても、違いは見られません(※2)。つまり、胚盤胞移植の場合、着床時期に安静にしているかしていないか、その時間が長いか短いかで、妊娠率にはあまり影響がないように思います。 ただ、長時間労働による過労やストレスが、切迫流産や早産のリスクを高めるという報告はあります。肉体的・精神的に強度の負担がかかることは、着床時期に限らず、妊娠中はできる限り控えたほうがいいでしょう。安静にしていなければ…と急に寝たきりの生活になったり、逆に運動したほうがいいのでは…と慣れない運動をするなど、あえてイレギュラーなことをすると、かえってストレスを増すことになりかねません。本当に普段通り、リラックスして過ごすことを心がけてください。 (※2)Purcell KJ,Schembri M, Telles TL.Fujimoto VY,Cedars MI.“Bed rest after embryo trasfer:a randomized controlled trial.” Fertil Steril.(2007)87:1322-6 Q:流産後は妊娠しやすいって本当? 「流産後は妊娠しやすい」という噂を何度か耳にしました。子宮の中がきれいになるから、という意味でしょうか? 私としては一度妊娠したのだから、またいつかできるだろうというくらいの意味にとらえていました。「妊娠しやすい」根拠は何なのか気になります。(コンガさん・38歳) A:流産後、回復次第で妊娠しやすくなるという研究結果も 「流産後に妊娠しやすいかどうか」に関して最近、とても興味深い報告がありました。流産後から子づくりを開始する期間が、0~3カ月以内の人(756人)と、3カ月以降の人(233人)で、累積妊娠率を比較したところ、0~3カ月の累積妊娠率が68.9%、3カ月以上が51.1%と、明らかな差が認められたのです(※3)。これは「流産後は妊娠しやすい」、そして「流産後、早めに次の妊娠にトライしたほうがいい結果に結びつきやすい」「期間をあけることでメリットがあるわけではない」ということを、きちんとデータで示した最初の結果だと思われます。 以前は、流産後3カ月は次の妊娠を控えるようにいわれていました。当院では、妊娠によっていったん排卵する機能が停止した卵巣に、再び排卵周期が戻ってくるまで、だいたい2カ月ぐらいの期間を要します。早い方なら1カ月で排卵が回復してきます。すべての人に一律に「3カ月以上あけるように」という指導ではなく、その人の体の状態を見ながら、個別に判断することにしています。 妊娠したことで子宮の胚受容能が改善するなど、体内の環境が変わり、着床しやすくなる、という可能性は考えられますが、なぜ流産後に妊娠しやすいかは、はっきりとは証明されていません。ただ、この研究結果からは1回目の妊娠が流産になったとしても、体の回復次第で早い時期に妊娠できるという期待がもてるのではないでしょうか。 (※3) Schlep KC,Mitchell EM,Mumford SL,Radin RG,Zarek SM,Sjaarda L,Schisterman EF.“Trying to Conceive After an Early Pregnancy Loss:An Assessment on How Long Couples Should Wait.” Obstet Gynecol.(2016)127:204-12 俵先生よりまとめ 着床時期に限らず、妊娠期全般にいえることですが、「こうしなければいけない」「こうしたほうがいい」というような、特別なことをするのではなく「普段通りリラックスして過ごす」こと、これに尽きるのではないでしょうか。急にこれをしたから着床率が上がる、というものはありません。普段気をつけていること――規則正しい生活や栄養バランスの取れた食事をいつも通り続けること。そして「こうしなければ」という思い込みがストレスになるなら、それを解消するだけでも、気持ちが楽になるかもしれません。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 俵 史子 先生(俵IVFクリニック) 浜松医科大学医学部卒業。総合病院勤務医時代より不妊治療に携わり、2004年愛知県の竹内病院トヨタ不妊センター所長に就任。2007年、静岡に俵IVFクリニックを開業。2015年静岡駅前に移転し、リニューアルオープン。不妊治療で妊娠した方々に、より安心・安全な妊娠・出産を目指してもらうため、妊娠初期の管理にも力を入れている。今春からは周産期専門医や専門スタッフも増え、さらに体制を強化。 ≫ 俵IVFクリニック 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.33 2017 Spring≫ 掲載記事一覧はこちら
2017.4.13
コラム 不妊治療
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妊娠へ近づくために
2016年10月23日に行われたジネコ 妊活セミナーより 妊娠へ近づくために 2016年10月23日(日)、静岡市内で「ジネコ妊活セミナー」を開催しました。第1部では、小島薬局漢方堂の小島晃先生「体にやさしい妊活漢方」について、第2部では「妊娠へ近づくために」として、俵IVFクリニック院長俵史子先生にお話いただきました。今回は第2部の内容の一部をお届けします。 ホルモン剤を使った治療と目的 不妊治療においては、さまざまな形でホルモン剤を使うことがあります。 まず、タイミング法や体外受精で排卵誘発剤を使う場合。排卵が遅い、排卵しない、黄体機能不全等の場合で改善の可能性があります。自然妊娠を期待するなら、基本的には育てる卵は1個でありたいので、1個排卵させるのを目標にします。 対して、体外受精や顕微授精のような生殖補助医療の場合には、複数の卵を育てる目的で薬を使います。自然の排卵を目指すときは、卵巣にある一次卵胞、二次卵胞の中の1個だけを育て、他は閉鎖卵胞となりますが、数をたくさん育てたいときは、閉鎖する卵胞を有効に使います。 ホルモン剤の種類は、飲み薬や注射などがあり、体外受精の場合は、卵を育てる目的以外に、排卵をコントロールする薬も併用します。ある程度いい時期まで卵を育てたいので、早く排卵してしまうのを調整するんですね。 薬を駆使して卵を育てる方法は、体外受精、顕微授精に限られます。例えばHMG法は、注射の排卵誘発剤を毎日1種類打ちます。調節卵巣刺激法は、排卵を予防したり、逆にさらに刺激するような薬なども併用します。他にアンタゴニスト法、ショート法、ロング法といったものがありますが、これらはいずれも数を育てる方法です。 一方、自然周期、低刺激周期という方法がありますが、完全自然周期はまったく薬を使わず、自然に排卵した卵を、時期を狙って取ります。低刺激周期は、飲み薬の排卵誘発剤に注射を加えたり加えなかったりします。 個人に合わせて適切な選択を 最近日本では自然周期が流行っています。日本産婦人科学会が、体外受精を行う全国の施設のデータを公表していて、これによると、卵を取る治療をスタートし、最終的に出産まで行けた人は2000年の前半ぐらいまでは約15%でしたが、ここ数年下がってきています。新しい技術や精密な治療も進んでいるはずなのに、実際の生産率が落ちているのは、自然周期による治療が増えたのが要因と言われています。1個2個の少ない数で勝負する場合、その卵がよければ少ない負担で結果が出ますが、実際は、ある程度数を取って、その中からいい卵を選んで移植する方が成績が出やすくなります。移植までできたら、妊娠率に差はありません。もちろん、自然周期が合っている人はそれを選ぶべきですが、みなさんがすべてその方法がいいかは分かりません。 目指すのは、必要最低限の刺激で最大の効果を得ること。回数を多くチャレンジするということは、それだけ年を取ることですから、それだけで妊娠の確率は下がりますし、薬を使い続けるデメリットもあります。 では、実際どれがいいか、私の考えとしては、正直答えはないと思うのです。自然な方法にも刺激が強い方法にも、メリットもデメリットもある。また、選択肢をどれだけたくさん持っているかが、医療側としても重要になってきます。ただ言えるのは、その方にあった方法を選択するのが大切だということです。もともとの月経周期や治療歴、今まで使った薬の反応性、年齢や卵の数、そういったことを総合的に評価し、どの方法が合うかをその都度選択し、不妊治療に当たっていただければと思います。 俵IVFクリニック 俵 史子先生浜松医科大学医学部卒業。総合病院勤務医時代より不妊治療に携わり、2004年愛知県の竹内病院トヨタ不妊センター所長に就任。2007年、出身地の静岡に俵IVFクリニックを開業。≫ 俵IVFクリニック ジネコ妊活セミナー 2016年10月23日に行われたジネコ 妊活セミナーより 妊娠へ近づくために 2016年10月23日(日)、静岡市内で「ジネコ妊活セミナー」を開催しました。第1部では、小島薬局漢方堂の小島晃先生「体にやさしい妊活漢方」について、第2部では「妊娠へ近づくために」として、俵IVFクリニック院長俵史子先生にお話いただきました。今回は第2部の内容の一部をお届けします。 ホルモン剤を使った治療と目的 不妊治療においては、さまざまな形でホルモン剤を使うことがあります。 まず、タイミング法や体外受精で排卵誘発剤を使う場合。排卵が遅い、排卵しない、黄体機能不全等の場合で改善の可能性があります。自然妊娠を期待するなら、基本的には育てる卵は1個でありたいので、1個排卵させるのを目標にします。 対して、体外受精や顕微授精のような生殖補助医療の場合には、複数の卵を育てる目的で薬を使います。自然の排卵を目指すときは、卵巣にある一次卵胞、二次卵胞の中の1個だけを育て、他は閉鎖卵胞となりますが、数をたくさん育てたいときは、閉鎖する卵胞を有効に使います。 ホルモン剤の種類は、飲み薬や注射などがあり、体外受精の場合は、卵を育てる目的以外に、排卵をコントロールする薬も併用します。ある程度いい時期まで卵を育てたいので、早く排卵してしまうのを調整するんですね。 薬を駆使して卵を育てる方法は、体外受精、顕微授精に限られます。例えばHMG法は、注射の排卵誘発剤を毎日1種類打ちます。調節卵巣刺激法は、排卵を予防したり、逆にさらに刺激するような薬なども併用します。他にアンタゴニスト法、ショート法、ロング法といったものがありますが、これらはいずれも数を育てる方法です。 一方、自然周期、低刺激周期という方法がありますが、完全自然周期はまったく薬を使わず、自然に排卵した卵を、時期を狙って取ります。低刺激周期は、飲み薬の排卵誘発剤に注射を加えたり加えなかったりします。 個人に合わせて適切な選択を 最近日本では自然周期が流行っています。日本産婦人科学会が、体外受精を行う全国の施設のデータを公表していて、これによると、卵を取る治療をスタートし、最終的に出産まで行けた人は2000年の前半ぐらいまでは約15%でしたが、ここ数年下がってきています。新しい技術や精密な治療も進んでいるはずなのに、実際の生産率が落ちているのは、自然周期による治療が増えたのが要因と言われています。1個2個の少ない数で勝負する場合、その卵がよければ少ない負担で結果が出ますが、実際は、ある程度数を取って、その中からいい卵を選んで移植する方が成績が出やすくなります。移植までできたら、妊娠率に差はありません。もちろん、自然周期が合っている人はそれを選ぶべきですが、みなさんがすべてその方法がいいかは分かりません。 目指すのは、必要最低限の刺激で最大の効果を得ること。回数を多くチャレンジするということは、それだけ年を取ることですから、それだけで妊娠の確率は下がりますし、薬を使い続けるデメリットもあります。 では、実際どれがいいか、私の考えとしては、正直答えはないと思うのです。自然な方法にも刺激が強い方法にも、メリットもデメリットもある。また、選択肢をどれだけたくさん持っているかが、医療側としても重要になってきます。ただ言えるのは、その方にあった方法を選択するのが大切だということです。もともとの月経周期や治療歴、今まで使った薬の反応性、年齢や卵の数、そういったことを総合的に評価し、どの方法が合うかをその都度選択し、不妊治療に当たっていただければと思います。 俵IVFクリニック 俵 史子先生浜松医科大学医学部卒業。総合病院勤務医時代より不妊治療に携わり、2004年愛知県の竹内病院トヨタ不妊センター所長に就任。2007年、出身地の静岡に俵IVFクリニックを開業。≫ 俵IVFクリニック ジネコ妊活セミナー 【人気コラム】ユーザーストーリー~あなたに伝えたいメッセージ~ 【人気コラム】田村秀子先生の心の玉手箱 【役立つ】不妊についてもっと知ろう!不妊とは? 【おすすめ】フリーマガジン「ジネコ」各号記事一覧
2016.12.12
コラム 不妊治療
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顕微授精|不妊治療
不妊治療といってもその治療方法はいろいろ。ここでは不妊治療のひとつ、顕微授精について俵IVFクリニックの俵先生に解説をいただきました。 俵IVFクリニック 俵 史子先生浜松医科大学医学部卒業。総合病院勤務医時代より不妊治療に携わり、2004年愛知県の竹内病院トヨタ不妊センター所長に就任。2007年、静岡に俵IVFクリニックを開業。≫ 俵IVFクリニック 顕微授精 採卵した卵子に1個の精子を注入する受精方法です。乏精子症や無精子症、あるいは受精障害のため、体外受精では受 精できない場合に行う治療です。精子は体外受精と同じように洗浄し、培養液の中で泳いでいるものからなるべく良好な精子を選び、卵子に注入します。顕微授精後は翌朝まで培養し、受精の確認をします。その後の治療過程は体外受 精と同様になります。〈顕微授精の適応となる方〉◎乏精子症(精子数が少ない)◎無精子症(射出精液中に精子が見られない方で、TESE等で精子回収ができた方)◎精子無力症(運動精子数が少ない)◎受精障害(卵子の中に精子が入らない) 出典:Tawara IVF Clinic with Jineko.net/ 顕微授精の流れ > 採卵数が少ない場合や、体外受精がうまくいかなかった場合、顕微授精を行うと受精する可能性がアップ... 顕微授精の確率 > 精子を確実に卵子の細胞質の中に入れることで、より受精がしやすくなることはあるのではないか... 顕微授精で妊娠 > 顕微授精で本当に妊娠するの?実際に、顕微授精で妊娠した方にその経緯を伺いました。 【PR】顕微授精をお考えなら。田村秀子産婦人科医院 【PR】不妊治療・顕微授精専門のなかむらレディースクリニックへ 不妊治療といってもその治療方法はいろいろ。ここでは不妊治療のひとつ、顕微授精について俵IVFクリニックの俵先生に解説をいただきました。 俵IVFクリニック 俵 史子先生浜松医科大学医学部卒業。総合病院勤務医時代より不妊治療に携わり、2004年愛知県の竹内病院トヨタ不妊センター所長に就任。2007年、静岡に俵IVFクリニックを開業。≫ 俵IVFクリニック 顕微授精 採卵した卵子に1個の精子を注入する受精方法です。乏精子症や無精子症、あるいは受精障害のため、体外受精では受 精できない場合に行う治療です。精子は体外受精と同じように洗浄し、培養液の中で泳いでいるものからなるべく良好な精子を選び、卵子に注入します。顕微授精後は翌朝まで培養し、受精の確認をします。その後の治療過程は体外受 精と同様になります。〈顕微授精の適応となる方〉◎乏精子症(精子数が少ない)◎無精子症(射出精液中に精子が見られない方で、TESE等で精子回収ができた方)◎精子無力症(運動精子数が少ない)◎受精障害(卵子の中に精子が入らない) 出典:Tawara IVF Clinic with Jineko.net/ 顕微授精の流れ > 採卵数が少ない場合や、体外受精がうまくいかなかった場合、顕微授精を行うと受精する可能性がアップ... 顕微授精の確率 > 精子を確実に卵子の細胞質の中に入れることで、より受精がしやすくなることはあるのではないか... 顕微授精で妊娠 > 顕微授精で本当に妊娠するの?実際に、顕微授精で妊娠した方にその経緯を伺いました。 【PR】顕微授精をお考えなら。田村秀子産婦人科医院 【PR】不妊治療・顕微授精専門のなかむらレディースクリニックへ
2015.10.1
コラム 不妊治療
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体外受精|不妊治療
不妊治療といってもその治療方法はいろいろ。ここでは不妊治療のひとつ、体外受精について俵IVFクリニックの俵先生に解説をいただきました。 俵IVFクリニック 俵 史子先生浜松医科大学医学部卒業。総合病院勤務医時代より不妊治療に携わり、2004年愛知県の竹内病院トヨタ不妊センター所長に就任。2007年、静岡に俵IVFクリニックを開業。≫ 俵IVFクリニック 体外受精 採取した卵子とご主人の精子を一緒に培養(媒精)し、自然に受精させる方法です。採精したご主人の精子は培養液で 洗浄し、精子以外の余分なものを除きます。採卵した卵子1個に対して約10万個の精子を媒精します。当クリニックでは媒精6時間後に一度観察をし、受精の予測をすることがあります。受精していないと判断した卵子には、その時点で顕微授精(レスキューICSI)を行います。媒精6時間後の観察のあとは、卵子を新しい培養液に移しかえ、翌朝受精の確認をします。〈体外受精の適応となる方〉◎精子数、精液量がある程度あり、精子の運動性が認められる方 出典:Tawara IVF Clinic with Jineko.net/ 体外受精の流れ > 体外受精(IVF)は、1.排卵誘発、2.採卵、3.受精、4.胚培養、5.胚移植、6.黄体補充療法という6つのステップから構成されています... 体外受精の確率 > 体外受精の妊娠率は35~39歳でだいたい34%程度。妊娠できるのが10人に3人くらいで、さらに高齢になると流産の確率も高まります... 体外受精で妊娠 > 体外受精で妊娠・出産された方は年々増えており、2014年には、3.7万人の子どもが体外受精によって生まれました... 【PR】体外受精をお考えなら。田村秀子産婦人科医院 【PR】不妊治療・体外受精専門のなかむらレディースクリニックへ ■ あわせて読みたい ■ とくおかレディースクリニック|「IVF勉強会」レポート そろそろ体外受精へ進みたいのですが夫が賛成してくれません 男性の立場から伝える妊活で幸せ夫婦になる方法 俵IVFクリニック 女性のための健康生活マガジン JINEKO 不妊治療といってもその治療方法はいろいろ。ここでは不妊治療のひとつ、体外受精について俵IVFクリニックの俵先生に解説をいただきました。 俵IVFクリニック 俵 史子先生浜松医科大学医学部卒業。総合病院勤務医時代より不妊治療に携わり、2004年愛知県の竹内病院トヨタ不妊センター所長に就任。2007年、静岡に俵IVFクリニックを開業。≫ 俵IVFクリニック 体外受精 採取した卵子とご主人の精子を一緒に培養(媒精)し、自然に受精させる方法です。採精したご主人の精子は培養液で 洗浄し、精子以外の余分なものを除きます。採卵した卵子1個に対して約10万個の精子を媒精します。当クリニックでは媒精6時間後に一度観察をし、受精の予測をすることがあります。受精していないと判断した卵子には、その時点で顕微授精(レスキューICSI)を行います。媒精6時間後の観察のあとは、卵子を新しい培養液に移しかえ、翌朝受精の確認をします。〈体外受精の適応となる方〉◎精子数、精液量がある程度あり、精子の運動性が認められる方 出典:Tawara IVF Clinic with Jineko.net/ 体外受精の流れ > 体外受精(IVF)は、1.排卵誘発、2.採卵、3.受精、4.胚培養、5.胚移植、6.黄体補充療法という6つのステップから構成されています... 体外受精の確率 > 体外受精の妊娠率は35~39歳でだいたい34%程度。妊娠できるのが10人に3人くらいで、さらに高齢になると流産の確率も高まります... 体外受精で妊娠 > 体外受精で妊娠・出産された方は年々増えており、2014年には、3.7万人の子どもが体外受精によって生まれました... 【PR】体外受精をお考えなら。田村秀子産婦人科医院 【PR】不妊治療・体外受精専門のなかむらレディースクリニックへ ■ あわせて読みたい ■ とくおかレディースクリニック|「IVF勉強会」レポート そろそろ体外受精へ進みたいのですが夫が賛成してくれません 男性の立場から伝える妊活で幸せ夫婦になる方法 俵IVFクリニック 女性のための健康生活マガジン JINEKO
2015.9.22
コラム 不妊治療
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人工授精|不妊治療
不妊治療といってもその治療方法はいろいろ。ここでは不妊治療のひとつ、人工授精について俵IVFクリニックの俵先生に解説をいただきました。 俵IVFクリニック 俵 史子先生浜松医科大学医学部卒業。総合病院勤務医時代より不妊治療に携わり、2004年愛知県の竹内病院トヨタ不妊センター所長に就任。2007年、静岡に俵IVFクリニックを開業。≫ 俵IVFクリニック 人工授精 精液を採取後、洗浄・濃縮して元気な精子を選び、細いチューブを用いてその精子を子宮に注入する方法です。通常は性交渉をすると腟内に入った精子が自力で進み子宮の奥に到達するのですが、人工授精をすることで、その部分(頸管から子宮底部)の距離を稼ぐことができます。フーナーテストの結果が悪い方は、頸管で精子が止まっていることが考えられます。この方法で精子を子宮の奥まで入れてあげることで、その点に関しては改善できる可能性が高くなります。当クリニックでは「フーナーテストの結果が不良」「精子の状態が悪い」「性交渉がうまくできない」といった場合は、タイミング療法を飛ばして人工授精からスタートすることもあります。 出典:Tawara IVF Clinic with Jineko.net/ 人工授精の流れ > 人工授精は、超音波での卵胞径の計測やホルモン計測の結果、排卵日と思われる付近に、管で精子を子宮内に注入するという方法です... 人工授精の確率 > 排卵誘発剤を使用して人工授精をすると妊娠率が上がるといわれていますが、多胎妊娠のリスクもあります... 人工授精で妊娠 > 人工授精で本当に妊娠するの?実際に、人工授精で妊娠した方にその経緯を伺いました。 不妊治療といってもその治療方法はいろいろ。ここでは不妊治療のひとつ、人工授精について俵IVFクリニックの俵先生に解説をいただきました。 俵IVFクリニック 俵 史子先生浜松医科大学医学部卒業。総合病院勤務医時代より不妊治療に携わり、2004年愛知県の竹内病院トヨタ不妊センター所長に就任。2007年、静岡に俵IVFクリニックを開業。≫ 俵IVFクリニック 人工授精 精液を採取後、洗浄・濃縮して元気な精子を選び、細いチューブを用いてその精子を子宮に注入する方法です。通常は性交渉をすると腟内に入った精子が自力で進み子宮の奥に到達するのですが、人工授精をすることで、その部分(頸管から子宮底部)の距離を稼ぐことができます。フーナーテストの結果が悪い方は、頸管で精子が止まっていることが考えられます。この方法で精子を子宮の奥まで入れてあげることで、その点に関しては改善できる可能性が高くなります。当クリニックでは「フーナーテストの結果が不良」「精子の状態が悪い」「性交渉がうまくできない」といった場合は、タイミング療法を飛ばして人工授精からスタートすることもあります。 出典:Tawara IVF Clinic with Jineko.net/ 人工授精の流れ > 人工授精は、超音波での卵胞径の計測やホルモン計測の結果、排卵日と思われる付近に、管で精子を子宮内に注入するという方法です... 人工授精の確率 > 排卵誘発剤を使用して人工授精をすると妊娠率が上がるといわれていますが、多胎妊娠のリスクもあります... 人工授精で妊娠 > 人工授精で本当に妊娠するの?実際に、人工授精で妊娠した方にその経緯を伺いました。
2015.9.11
コラム 不妊治療
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排卵誘発剤について
さくらさん(35歳)自然周期では排卵するのに誘発剤を使用すると卵胞は育つのに排卵しません。医師には誘発剤が排卵を抑制する因子はないと言われました。次回、注射の単位を減らしてみるかと提案されましたが、セキソビットでも排卵しなくなるのに注射で排卵するようになるのか、誘発剤自体、自分の体に良い影響があるのか疑問です。これからどのように治療を進めていけばいいのでしょうか? 俵史子 先生 (俵IVFクリニック) 当クリニックは不妊治療を専門としております。 開院以来、約3年間で1000組以上のお子様に恵まれないご夫婦に妊娠が成立し、当院を卒業されました。妊娠までの道のりは様々ですが、最後は皆様最高の笑顔で卒業されておられます。その喜びを共感させていただけることが、私達にとってもさらなる糧となり、生きがいとなっております。 当院での不妊治療の特徴は、「納得・理解して進む治療」そして「オーダーメードの治療」です。10年以上不妊症の患者様に携わり、多くの実績を重ねてきた経験から、妊娠に近づく第1歩は患者様と医療側の信頼関係だと確信しております。 妊娠したいという強い気持ちを持ち、私共を信じて治療を受けていただくことが、いい結果に繋がる近道と考えます。そのためには、日々の通院で疑問や不安を残さずに、十分納得しながら進まれる必要があります。当院では医師による診察の他、皆様の理解を深めていただくために十分な知識と経験を持ったスタッフがサポートをしております看護師や培養士等も医師と同じレベルで患者様に治療内容の説明や情報提供が行えるような体制を整えておりますので、ご安心してお気軽に声をかけて下さい。 オーダーメードの治療とは、画一的な治療にとどまらず個々に応じた治療を選択していくということです。原因、年齢、治療歴など、皆様それぞれに不妊治療を受けられる際の条件、背景は異なります。当然のことながら、その方に適した治療も異なるため、多くの治療法を熟知し適切に選択できることが不妊治療に携わる者として必要不可欠と考えます。 心や体への負担を最低限に抑えつつ、最大の効果が得られるようお一人おひとりにあった治療を選択していきたいと思っております。 初めて受診しようとされる方にとっては、不安や緊張の中でお越しいただくことも多いと思います。 前向きな気持ちで妊娠に向けた大きな一歩を踏み出していただくために、そして一人でも多くの方にお子様を授かっていただくために、私たちは全力で皆様をサポートすることをお約束いたします。 浜松医科大学臨床講師 日本産婦人科学会専門医 東海不妊内分泌研究会 世話人 東海ARTカンファレンス 世話人 静岡生殖医療研究会 世話人 ■所属学会 ・日本産科婦人科学会 ・日本生殖医学会 ・日本受精着床学会 ・日本哺乳動物卵子学会 ■経 歴 浜松医科大学医学部卒 平成8年~ 産婦人科・麻酔科研修後、産婦人科医として総合病院に勤務。 平成12年~ 静岡厚生病院 不妊治療担当。 平成15年~ 愛知県豊田市 竹内病院トヨタ不妊センター勤務。 平成16年~ 竹内病院トヨタ不妊センター所長に就任。 年間500~600件の体外受精・顕微授精に携わる。 平成19年9月 俵史子IVFクリニック開院 平成22年4月~ 国立大学法人 浜松医科大学 臨床講師に就任。 ≫ 俵IVFクリニックもともと月経周期がきちんとしている方に、あえて排卵誘発剤を積極的に使う必要はあるのでしょうか。たとえばクロミッドだと、黄体期のホルモン量が少ない場合は黄体機能不全の治療にもなりますので、そのような目的で使うのはいいのかなと思うのですが……。 通常は排卵誘発剤が排卵を抑制するということはほとんどありませんが、さくらさんの場合においては、卵胞発育に必要なホルモンが逆に抑え込まれてしまい、自力でうまく育たなくなってしまった可能性があります。誘発剤の使い過ぎ等は、卵胞が育たないだけでなくそれがうまく破裂しない(排卵しない)ということにつながる事も。 多くの方には問題がない薬でも、たまたまさくらさんにとって良くなかったということだとすると、ここでは無理しないで、自然の状態に戻してみるのはいかがでしょうか?ただし、主治医の先生は他に考えがあってのことかもしれません。しっかり確認されたほうがいいでしょう。 一方、薬の影響ではないということも考えられます。さくらさんはAMHの値が6.44と、年齢の割には少し高いようですから、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)である可能性はどうでしょう。PCOSの人は、年齢とともに排卵障害の程度が進行してしまい、それまで排卵していた人がだんだんしなくなることもありますから、もしかしたら、さくらさんもそのような状態に入ってきてしまった可能性は考えられると思います。一度お薬をやめ、自力排卵するかしないか、現在の卵巣の状態を見極めてみてはいかがでしょうか。
2014.10.23
専門医Q&A 女性の健康