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ウソ! ホント? 妊娠にまつわるウワサの真相

コラム 不妊治療

ウソ! ホント? 妊娠にまつわるウワサの真相

2017春 P34-35

2017.4.13

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ウソ! ホント? 妊娠にまつわるウワサの真相


俵 史子 先生(俵IVFクリニック)




「○○したら妊娠できた」「○○はNG!」といった妊娠にまつわる噂や俗説……。ウソなのか、ホントなのか、俵IVFクリニックの俵史子先生に医師の立場から解説していただきます。





Q:「着床出血」って必ずあるものなの?


生理予定日くらいに着床出血があるといわれますが、必ず起こるものでしょうか? また、生理前と妊娠の兆候が似ているというのもよく聞きます。私は予定日1週間くらい前(排卵から1週間くらい)に下腹部が重い感じになるのですが、それはただの生理前の兆候でしょうか?(まりもキティさん・29歳)


 


 






A:着床による出血とは判断できない。自己判断はNG


妊娠初期の出血が妊娠陽性を示すサインとして「着床出血」という言葉は、私もよく聞きますし、妊娠初期に出血症状があることも観察されています。しかし医学的に「着床出血」という用語は使いません。それが着床によるものかどうかわかっていないからです。何を着床出血というかの定義も、実はありません。
妊娠初期の場合、絨毛(トロホブラスト)がつくられる過程で出血が起きる可能性は十分考えられます。一方、生理予定日くらいの出血は、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)といった女性ホルモンの変動が原因かもしれないと推測できます。つまり、出血は妊娠したから必ずあるものではなく、着床の目安として自己判断するのは好ましいとはいえません。
次に、生理前の似た症状についてですが、排卵後1週間くらいの高温期に、PMS(月経前症候群)による下腹部の張り、不眠、イライラなどの症状が感じられる人は少なくありませんが、これも黄体ホルモンが作用しているなど様々な要因が考えられるので、妊娠している・していないと判断できるものではないでしょう。
妊娠初期に不正出血があった場合、ポリープやその他の器質的な異常、異常妊娠の可能性も考えられます。ただ、妊娠初期の出血が必ずしも流産につながるわけではないこともお伝えしておきます。アメリカで行われた研究(※1)で、妊娠初期(8週頃)の女性151人にインタビューしたところ、14人(9%)が出血を経験、うち12人は出産に至っていたという論文があります。不正出血があった場合は慌てずに 医療機関に相談し、必要に応じて検査を受けてください。



 


 






Q:着床時期は安静にしないとダメ?


病院では普通に過ごして構わないといわれますが、HPなどを読むと「着床時期は姫生活」と書かれていて、安静にしないと妊娠できないのかと思ってしまいます。今日あたり着床時期なのに、買い物して荷物を提げて帰宅しました。着床時期をどう過ごしたら妊娠できるのかと悩んでいます。(あきこさん)


 






A:休む時間によって妊娠率に差はなし。リラックスして過ごして


ART治療では胚移植した直後が着床時期になります。この時期にベッドで安静にすることが、その後の妊娠経過にどう影響するかについて、研究した論文がいくつかあります。たとえば、2007年に報告されたランダム化比較試験(研究の結果の信頼性が高い)では、胚移植後30分安静にしたかしなかったかで、妊娠率に差が出たかどうかを検討したところ、休息を30分取った人は妊娠率50%、取らなかった人は46.3%と、有意な差はありませんでした。また、20分休息した人と24時間安静の人とを比べても、違いは見られません(※2)。つまり、胚盤胞移植の場合、着床時期に安静にしているかしていないか、その時間が長いか短いかで、妊娠率にはあまり影響がないように思います。
ただ、長時間労働による過労やストレスが、切迫流産や早産のリスクを高めるという報告はあります。肉体的・精神的に強度の負担がかかることは、着床時期に限らず、妊娠中はできる限り控えたほうがいいでしょう。安静にしていなければ…と急に寝たきりの生活になったり、逆に運動したほうがいいのでは…と慣れない運動をするなど、あえてイレギュラーなことをすると、かえってストレスを増すことになりかねません。本当に普段通り、リラックスして過ごすことを心がけてください。


(※2)Purcell KJ,Schembri M, Telles TL.Fujimoto VY,Cedars MI.“Bed rest after embryo trasfer:a randomized controlled trial.” Fertil Steril.(2007)87:1322-6





 






Q:流産後は妊娠しやすいって本当?


「流産後は妊娠しやすい」という噂を何度か耳にしました。子宮の中がきれいになるから、という意味でしょうか? 私としては一度妊娠したのだから、またいつかできるだろうというくらいの意味にとらえていました。「妊娠しやすい」根拠は何なのか気になります。(コンガさん・38歳)


 






A:流産後、回復次第で妊娠しやすくなるという研究結果も


「流産後に妊娠しやすいかどうか」に関して最近、とても興味深い報告がありました。流産後から子づくりを開始する期間が、0~3カ月以内の人(756人)と、3カ月以降の人(233人)で、累積妊娠率を比較したところ、0~3カ月の累積妊娠率が68.9%、3カ月以上が51.1%と、明らかな差が認められたのです(※3)。これは「流産後は妊娠しやすい」、そして「流産後、早めに次の妊娠にトライしたほうがいい結果に結びつきやすい」「期間をあけることでメリットがあるわけではない」ということを、きちんとデータで示した最初の結果だと思われます。
以前は、流産後3カ月は次の妊娠を控えるようにいわれていました。当院では、妊娠によっていったん排卵する機能が停止した卵巣に、再び排卵周期が戻ってくるまで、だいたい2カ月ぐらいの期間を要します。早い方なら1カ月で排卵が回復してきます。すべての人に一律に「3カ月以上あけるように」という指導ではなく、その人の体の状態を見ながら、個別に判断することにしています。
 妊娠したことで子宮の胚受容能が改善するなど、体内の環境が変わり、着床しやすくなる、という可能性は考えられますが、なぜ流産後に妊娠しやすいかは、はっきりとは証明されていません。ただ、この研究結果からは1回目の妊娠が流産になったとしても、体の回復次第で早い時期に妊娠できるという期待がもてるのではないでしょうか。


(※3) Schlep KC,Mitchell EM,Mumford SL,Radin RG,Zarek SM,Sjaarda L,Schisterman EF.“Trying to Conceive After an Early Pregnancy Loss:An Assessment on How Long Couples Should Wait.” Obstet Gynecol.(2016)127:204-12





 






俵先生よりまとめ


着床時期に限らず、妊娠期全般にいえることですが、「こうしなければいけない」「こうしたほうがいい」というような、特別なことをするのではなく「普段通りリラックスして過ごす」こと、これに尽きるのではないでしょうか。急にこれをしたから着床率が上がる、というものはありません。普段気をつけていること――規則正しい生活や栄養バランスの取れた食事をいつも通り続けること。そして「こうしなければ」という思い込みがストレスになるなら、それを解消するだけでも、気持ちが楽になるかもしれません。



 



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お話を伺った先生のご紹介





俵 史子 先生(俵IVFクリニック)


浜松医科大学医学部卒業。総合病院勤務医時代より不妊治療に携わり、2004年愛知県の竹内病院トヨタ不妊センター所長に就任。2007年、静岡に俵IVFクリニックを開業。2015年静岡駅前に移転し、リニューアルオープン。不妊治療で妊娠した方々に、より安心・安全な妊娠・出産を目指してもらうため、妊娠初期の管理にも力を入れている。今春からは周産期専門医や専門スタッフも増え、さらに体制を強化。


≫ 俵IVFクリニック



出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.33 2017 Spring
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