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男性不妊の原因の一つ「射精障害」って?

インタビュー 不妊治療

男性不妊の原因の一つ「射精障害」って?

近年、不妊の原因が女性だけでなく男性側にもあると知られるようになってきました。その一つとして挙げられるのが射精障害。聖隷浜松病院の今井伸先生によると、思春期以降の性との接し方が深く関係しているそう。症状や治療方法についてお話を伺います。

2021.4.15

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不妊治療に大きく関係する「腟内射精障害」




射精障害にはおもに4つに分類されるのですが、診断する際、まず精液が出るか・出ないかが基準となります。
出ない人は逆行性射精障害や精液排出障害が疑われ、糖尿病など器質的な原因が考えられます。

一方、精液が出る人の場合は、早漏と射精遅延(遅漏)に分けられます。このうち、不妊治療においてもっとも問題になるのが射精遅延です。
なかでも、セックスはできるけれど射精できないことを「腟内射精障害」といいます。妊娠を希望するなら腟内射精が大前提ですし、検査をして精液に異常がなければ性交、射精できれば妊娠の可能性はありますが、その段階でうまくいかない。
実は、当院を受診する男性不妊の方の約1割が腟内射精障害なのです。
腟内射精障害にもさまざまなパターンがあります。例えば、マスターベーションでは射精できるけれどセックスではできない人。不妊治療ですから、病院で精液検査をしていただくのですが、マスターベーションで時間がかかる人は腟内射精障害の疑いがあると考えていいでしょう。

それから、マスターベーションでも性交でも射精できない場合。夢精でしか射精しない、自分の意識下で射精したことがないという人もいます。そういう場合はそもそも精液検査ができないので、精子に原因があるかどうか確かめることができません。
最終的には精巣から直接精子を採るTESE(精巣内精子回収術)などの手段を視野に入れることになりますが、この方法で3人のお子さんがいるという方もいらっしゃいます。


 


トレーニングカップで段階的に射精の訓練


腟内射精障害の治療は、おもに行動療法、つまりマスターベーションの訓練によって射精できるようになる方法を取ります。
人それぞれやり方や癖があるのですが、腟内で射精できなくなる原因の一つが、間違ったマスターベーションにあることは、意外と知られていません。
人によって、床や布団にこすりつけるマスターベーション、いわゆる「床オナ」を習慣にしている人がいます。実際、腟内射精障害の人に話を聞いてみると、床オナをする人の割合が約半数を占めるのです。

また、普段のマスターベーション時の握る力が強すぎて、強い刺激でないと射精できない人、足をまっすぐ伸ばした姿勢でしか射精できないといった人もいます。そういう癖がないか一つずつ聞き出し、思い当たるものがあれば、正しい方法に直すよう指導します。
その際、最近よく使われるのが、マスターベーターのTENGAです。腟内射精障害治療用TENGAの「トレーニングカップ」は5段階あり、硬さや柔らかさを選んで、段階的に練習していきます。壁や床にこすりつける習慣がある人は、冷たくて硬い感触が好きなので、硬いものから始め、だんだん女性の体に近い柔らかいものに変えていきます。
当院では、腟内射精障害(うち3~4割は用手的マスターベーションでも射精できない人)の経過を追えた約20人のうち、9割近くがTENGAで射精できるようになり、さらにその半数近くが腟内射精までできるようになりました。ですから、自分が今どういう状態かを知ったうえで、病院に行かなくても自分で意識して練習し、できるようになる人もいます。


 


習慣化したマスターベーションを一から見直す難しさ


射精できないのはあくまでも技術不足、経験不足。夢精があったり、たまに射精できます、というレベルなら、早く射精できるテクニックを身に付けることで、多くは改善されると考えています。
不妊治療の場合、20代ならマスターベーションの経験も浅いので、万が一間違った方法をしていたとしても矯正しやすいですし、新鮮な精液をつくるために毎日射精してくださいと言っても対応できる人が多いです。
しかし、30~40代にもなると、長年自己流でやってきたことを今さら変えるのが容易ではないうえ、毎日、あるいは週3回射精を、という指導にも「ちょっとそこまでは…」と二の足を踏むケースが少なくありません。
そして、セックスができないなら、早々に人工授精や体外受精に切り替えることが多いのも30~40代の特徴です。
そういう意味では、晩婚化も射精障害の大きな要因の一つとなっています。生殖医療の技術の進歩にともなって、射精障害の多くが見逃されてきてしまったと言えます。


 


思春期からの習慣の積み重ねで腟内射精障害に?


さらに、住環境や家族関係の変化も腟内射精障害の要因の一つと考えています。
近年、家族の様子が見渡せるオープンな間取りが人気ですが、やはり思春期以降の男子は、一人になれる空間が不可欠だと思うのです。
というのも、射精は誰でも最初から自然にできるようなものではなく、うまくできなかったり中途半端な射精が起こったりを繰り返し、試行錯誤しながらコツをつかんでいき、だんだんコントロールできるようになるもの。自転車や箸を持つのと同じで、トレーニングでテクニックを身に付ける必要があるのです。子ども部屋がなかったり、姉妹や親と同室の場合、人目に付かないようにマスターベーションをしようとすると、どうしても場所が限定されます。一人でビデオを見たり、本を片手にできればいいのですが、なかなかそうはいかず、一人になれる布団の中や風呂場で半ば自然発生的に壁や床にこすりつけるマスターベーションを身に着け、それが習慣になってしまうのです。

そういった意味で、プライベート空間が持てない生活環境も大いに関係しています。
そして、過剰に性の話をタブー視する風潮にも、一因があるのではないでしょうか。特に今の男性は昔と比べて、友だちにも自分の性の悩みを打ち明けられない、口にすること自体ためらう人が多い傾向にあります。
ひと昔前、性教育バッシングが巻き起こり、性的な興味を持つことに対して罪悪感を抱かせるような冬の時代がありました。また、息子に必要以上に干渉する母親や、息子もそれに強く抗えないといった親子関係の変化もあり、今の時代は自らの性欲にきちんと向き合わないまま大人になる男性がとても多いと感じています。

腟内射精障害の多くは、急に起こることではなく、若いうちからのそういった要因が少しずつ積み重なり、間違ったマスターベーションやセックスへの自信のなさにつながった結果として現れているものだと思うのです。

今、私は思春期の男子向けに性教育をしに学校に出向いています。産婦人科の先生と一緒に赴き、私が男子に向けて射精の話をするのです。これは、30~40代になってからマスターベーションのやり方を変える大変さを間近に見て、思春期の頃からきちんと自分自身の性と正しく向き合うことの大切さを痛感したからです。そもそも射精障害にならない性教育こそが、不妊治療の予防医学になるわけです。


 


プレッシャーを感じない雰囲気づくりを


腟内射精障害は、男性が射精のトレーニングを重ねることで、改善する例が多く報告されています。一方で、男性はリラックス状態でないと勃起しませんし、勃起しなければセックスも射精もできません。

不妊治療をしていると「排卵日に性交してください」と言われることがあるかと思いますが、それをプレッシャーに感じてしまう男性は意外と多いもの。「子どもをつくるためには仕方ない」「当たり前」と割り切れる人はいいのですが、人に指示されるのを複雑に思う人、「絶対に今日してね!」という声かけを負担に感じる人も。中には、いつもはできるのに、排卵日にだけできない、という人もいます。
ですから「今日は排卵日だから、頑張らなければ!」と張り切るというよりは、なるべくリラックスした雰囲気、さりげないムード作りを心がけてみてください。


 


お話を伺った先生のご紹介

今井 伸 先生(聖隷浜松病院)


聖隷浜松病院リプロダクションセンター長、総合性治療科部長。 島根医科大学(現・島根大学)卒業。島根大学助手、聖隷浜松病院泌尿器科主任医長などを経て、2019年4月から現職。日本性科学会幹事、日本性機能学会評議員、日本泌尿器科学会指導医、島根大学臨床教授。日本思春期学会理事。中学・高校へ性教育の講座に出向いたり、中高生向け『中高生からのライフ&セックスサバイバルガイド』(日本評論社)にも寄稿するなど、若年層のための性教育にも力を注いでいる。


>>聖隷浜松病院

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