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第3回テーマ:高度生殖医療 ~セントマザー★田中温先生の不妊治療講座~

コラム 不妊治療

第3回テーマ:高度生殖医療 ~セントマザー★田中温先生の不妊治療講座~

これから不妊治療を始める方や、治療を開始したばかりの方に、不妊治療の流れや基礎知識をわかりやすく紹介する「田中先生の不妊治療講座」。連載第3回は、高度生殖医療(ART)について、詳しく教えていただきます。

2016.7.29

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第3回テーマ:高度生殖医療




ART助成金の対象は夫婦で年収730万円未満



人工授精やタイミング法は一般不妊治療にあたり、高度生殖医療(Assisted Reproductive Technology)とは、体外受精、顕微授精と胚移植を指します。
高度生殖医療の助成金は、国と地方自治体とが半分ずつ負担しており、日本産科婦人科学会が認定した施設で治療した場合のみ受けることができます。条件は夫婦の年収を合算して730万円未満。これで治療を受けたい夫婦の8割5分をカバーできているという想定の金額です。国としても少
産少子に危機感を抱いている表れとして以前より80万円アップしていますが、特に都会では共働きの夫婦のほとんどが限度額を上回ります。生殖年齢の方が多い都市部が、条件により最も助成金を受けにくいという現実は早急に見直していただきたいですね。
今年1月より、男性不妊に対しても助成金を出すという自治体が増えてきました。対象は男性不妊治療TESEやMESA等)を実施した場合で、上限15万円の助成金を受け取ることができます。助成金が申請できる認定施設名は各都道府県のホームページから確認してください。



日本における体外受精と顕微授精の歴史を紐解く



一カ所の施設で初診から継続して治療する場合と、治療を試すだけ試して結果が出ずに別の専門施設に転院するという2つの流れがありますが、一般的には、まずタイミング法から人工授精、そして体外受精もしくは顕微授精の高度生殖医療へとステップアップします。体外受精も顕微授精も、排卵誘発で卵巣を刺激して卵子を採取し、体外で精子と混ぜ合わせて受精させ、3~5日かけて受精卵を培養したのちに子宮内に戻す、という点では同じですが、顕微授精ではピペットで吸い上げた精子1匹を顕微鏡下で卵子に注入します。
では、どのような場合に体外受精もしくは顕微授精が適応となるのかを詳しく説明しましょう。日本での体外受精は、そもそも女性の両側卵管閉塞、癒着などによる両側卵管機能不全のために登場した治療法です。タイミング法や人工授精では妊娠できない、100%自然妊娠が不可能な「絶対不妊」の場合です。一方の顕微授精は、重度の男性不妊で、精子の数が極端に少ない乏精子症、まったく動かないなどの精子無力症、精子不動症のための治療法。体外受精をするためには、精子の数と運動性にある一定以上のレベルがなければ卵子がこれを拒否しますから、卵子に直接注入して受け入れさせるという方法が登場したというわけです。



ステップアップとしての高度生殖医療の選択



体外受精の申請がかなり厳しかった昔に比べ、現在では人工授精からのステップアップという認識になっています。特に、女性が40歳以上で、自然妊娠、人工授精妊娠の確率が非常に低いと思われた場合は、卵管が通っていて精子に問題はなくても体外受精に進み、体外受精をして1回でもできなければ顕微授精に進むという流れもあります。というのも、精子も卵子も良好で、卵管のみ原因がある場合に体外受精を選択しますが、この時に受精率がゼロの場合があるのです。体外受精では、それぞれが良くても、一緒にすると受精しないというケースがあり、理由はまだ判明していません。そのため、精子も卵子も良いけれど、顕微授精を選択するということはあり得ますし、複数回、反復して体外受精に失敗した場合も顕微授精の適応となります。
受精するためには、精子が卵子と出会うための過程でいろいろな障害物を越え、選ばれた精子だけが卵子を囲む殻を破ってようやく内側に到達します。しかし、その過程をバイパスして精子1匹だけを選んで卵子に直接入れてあげるという、それまでの受精という概念を覆したのが、顕微授精です。
しかし、顕微授精でなぜ子どもができるのかという研究はほとんどなされていません。なぜなら、先に結果が出てしまったから。
本来、精子の頭部先端には先体という小器官があり、卵子と融合して受精する際に外れます。しかし、顕微授精は先体も含めた精子全部を卵子に注入しているのに受精し、妊娠出産という結果が出たため、一人でも多くの子どもを誕生させることが優先されたという背景があり、研究が進まなかったのです。
1992年にベルギーで世界初の顕微授精による妊娠・出産に成功してから四半世紀が経った今、顕微授精で生まれた子どもに特定の疾患が一定数見られるという報告も出されています。そのうえで、我々に求められることは、治療を受ける夫婦ではなく生まれてくる子どもに向き合うということ。その受精卵が遺伝子的に本当に正しいのか、また、何をもって正しいとするのか、その答えを要求される時代はすぐそこに来ていると言えるでしょう。



女性だけに備わった能力を尊重してほしい



憲法が定める基本的人権のもとでは男女平等で、投票権も仕事上でも同じ立場にあります。むしろ女性にしかない優れた能力を要求される職場もあるでしょう。
しかし、女性には子どもを産むという、男性にはない女性だけの能力があります。そのことを尊重し、認識しなければなりません。母性本能として子どもを産みたいという想いは当然ある。しかし、仕事の能力に優れた女性はキャリアを積みたい。そして、年齢が上がると卵子の質が落ち、妊娠率が下がってしまうという現実。人類は進化の過程のなかで、高齢女性の体を妊娠、出産における危険から守るために「閉経」という現象を得ました。誕生した時に数十万個あった卵子が、閉経でゼロになるよう一生懸命に数を減らし、妊娠しなくなる努力をする。高齢で不妊治療をしている人が卵子の数や質に悩まされているのは、ある意味では正常なのです。
今は年齢が若いうちに卵子を採取して凍結させる未受精卵凍結という技術があります。年齢が不妊に起因することがわかっているのですから、その選択は決して間違いではありません。しかし同時に、高齢で妊娠、出産するリスクの高さを忘れてはいけません。妊産婦死亡率が40歳を過ぎると高くなることから、日本生殖医学会では凍結は40歳未満、使用年齢は45歳以下というガイドラインを定めています。希望する方はそれを十分に納得したうえで選択してください。
卵巣の老化は、高度生殖医療に従事している我々を悩ませている最大の要因ではありますが、1個でも質の良い卵子を採ることができれば、妊娠出産の可能性を見込めます。戸籍上の年齢ではなく、卵巣年齢を早く知ることは不可欠であると同時に、高度生殖医療を希望する患者さんで、癒着などによる手術経験のある人や子宮内膜症、月経不順の人は特に、早め早めの対処が必要だという意識をもっていただきたいですね。





セントマザー産婦人科医院 田中 温先生

順天堂大学医学部卒業。越谷市立病院産科医長時代、診療後ならという条件付きで不妊治療の研究を許される。度重なる研究と実験は毎日深夜にまで及び、1985年、ついに日本初のギフト法による男児が誕生。1990年、セントマザー産婦人科医院開院。日本受精着床学会副理事長。

≫ セントマザー産婦人科医院




 




出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.31 2016 Autumn
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第1回テーマ:不妊治療の検査


第2回テーマ:一般不妊治療



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