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PRP療法(多血小板血漿)のこと教えて!

コラム 不妊治療

PRP療法(多血小板血漿)のこと教えて!

受精卵の着床や妊娠が成立しにくい反復着床不成功例の方に対して、新たな治療法として注目されているPRP療法。くわしい治療内容について、英ウィメンズクリニックの苔口先生に教えていただきました。

2020.3.24

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※2020年2月25日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.45 2020 Spring」の記事です。


お話を伺った先生のご紹介

苔口 昭次 先生(英ウィメンズクリニック)


1984年、宮崎医科大学卒業とともに岡山大学医学部産婦人科学教室に入局。1992年医学博士(岡山大学)。高知県立中央病院産婦人科勤務を経て、神戸掖済会病院産婦人科部長に。2004年より英ウィメンズクリニック勤務、2013年同院長に就任。

≫ 英ウィメンズクリニック

自分の血液を使って子宮内膜を活性化する治療


体外受精で良好な受精卵(胚)を複数回移植しても妊娠にいたらない、反復着床不成功例のなかには、受精卵を受け入れる子宮内膜の厚さが3〜4mm未満とかなり薄く、厚くなりにくい方がおられます。このような方に対しては、エストロゲンを増量して子宮内膜を厚くしたり、ビタミンEやペントキシフィリンを単独や組み合わせて使うなどして、子宮内膜の血流を上げる治療を行っています。しかし、治療をしても着床しやすいとされる子宮内膜の厚さの基準(7mm)に達することが難しく、移植をキャンセルしたり、移植しても妊娠にいたらないこともあります。
PRP療法はご自身の血液からPRP(多血小板血漿)を抽出して、子宮内に注入する新しい治療法です。PRPに含まれるさまざまな成長因子には、細胞の組織を修復して成長をうながしたり、血管を新しく作り出したりする働きがあります。着床や妊娠の成立には、子宮内膜の上皮細胞、間質細胞、血管内皮細胞、炎症性細胞(白血球、リンパ球)の4つのネットワークが大きくかかわっています。子宮内膜がかなり薄い方でも、PRPで子宮内膜の細胞を活性化して再生能力を高めることで、着床や妊娠しやすくなることが期待できます。


国の認可を受けた施設で受けられる高度な再生医療


PRP療法は、歯科や整形外科、皮膚科、美容外科ではすでに行われている高度な再生医療です。「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」のもとで行われ、厚生労働省の認可が必要になります。国内で実施できる施設はまだ限られていますが、これから生殖医療の分野でも広く普及していくことが予想されます。
治療はホルモン補充周期の10日目と12日目の2回行います。当日に採取したご自身の血液(約20 ml)からPRP(約1 ml)を約30分かけて抽出します。その後、PRPを移植に用いるチューブで子宮内に注入し、PRPが子宮内膜に浸透するまで院内で約30分間安静にしてからご帰宅いただきます。治療後は副作用や痛みもありませんから、ふだん通りに生活できます。2回目のPRP治療を終了されたら、胚移植の流れへと進んでいきます。
この治療では特殊な試験管と、ご自身の血液のみを使いますので、アレルギー反応などが起こりにくく、安全性の高い治療ができます。また、少ない採血量の中から炎症反応を引き起こす赤血球を完全に取り除いて、高濃度のPRPのみを抽出しています。治療中の感染のリスクについても細心の注意を払っていますので、患者さまは身体的に少ないご負担で、安心して治療を受けていただけます。ご希望があれば次の胚移植周期からすぐに治療ができますから、限られた時間を有効に使って治療されたい方にもおすすめです。


英ウィメンズクリニックでPRP組成に使用している特殊な試験管。抗凝固剤を含んでおらず、100%自己血由来のPRP治療が可能となる。


子宮内の外科的処置などで内膜が薄くなった方に有効


PRP療法は反復着床不成功例の方を広く対象にしていますが、当院では子宮内膜の厚さが基準の7mmに達しない方で、なおかつ既往歴として子宮内膜ポリープやアッシャーマン症候群などによる子宮内癒着、流産を繰り返すなどの理由で、子宮内の外科的処置をされたことがある方を対象にしています。
2019年9月から10名の方にPRP療法をさせていただいて7名が妊娠(6名は妊娠継続)という結果が出ています。そのなかには子宮内膜が癒着・剥離された方や、移植時の子宮内膜の厚さが4mm程度でも妊娠を継続されている方もいます。これまで移植しても成功する見込みが薄かった方が、7名もご妊娠されていますので、手応えのある治療法だと感じています。
 一方で、PRPに含まれるそれぞれの成長因子の有効性はわかっているものの、まだ100%解明されたわけではありません。反復着床不成功例の原因には受精卵側の問題もかかわってきますから、治療の有効性には個人差があると考えています。しかし、子宮内の外科的処置によって子宮内膜が薄くなり、これまで手立てがなかった方にとって有効な治療であることは間違いありません。
今後は原因不明の反復着床不成功の方への応用も検討していく予定です。着床の成立には子宮内膜の上皮細胞から出るLIF(白血病阻害因子)がかかわっていることは解明されていますので、PRPがLIFをつくり出せる可能性は理論的にあると考えています。また、海外ではPRPが習慣性流産や卵巣機能の改善などに役立てられているという報告もあります。まずは一つひとつの治療法をしっかり確立して、応用の幅を広げていきたいと思っています。


出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.45 2020 Spring
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