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ショート法、ロング法……体外受精の排卵誘発法はどうやって決めたらいい?

コラム 不妊治療

ショート法、ロング法……体外受精の排卵誘発法はどうやって決めたらいい?

2010秋

2010.9.7

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妊娠の可能性を高める方法の一つに卵巣を刺激して排卵を促す、排卵誘発という方法があります。
おもな方法は、患者さんの状態や治療方針に合わせて排卵誘発剤を使用するショート法、ロング法、アンタゴニスト法などがあります。
また逆に、排卵誘発を行わずに、自然排卵での治療を選ぶという選択もあります。どの方法が適しているかは患者さんによって異なりますが、医師はどのような考えをもって選択しているのでしょうか。全国の先生方にお話を伺ってきました。


妊娠に向けて、いい卵をしっかり採るために行われる排卵誘発。シ ョート法やロング法などいくつかの方法がありますが、その選択について、広島HARTクリニックの高橋先生に伺いました。



オレンジさん(コンピューター関係・38歳)からの投稿
体外受精を希望しているのですが、今通っている病院ではロング法による排卵誘発が主流で、体外受精を希望すると、ほとんど一律でみんな高温期の7日目からスプレキュア®の吸入が開始されます。いろいろ調べると、まず数周期は卵胞の育ち方を観察したり、月経初期の卵巣内の胞状卵胞の数などをみてから発法を決める病院も多いようです。皆さんはショート法、ロング法、どちらにしましたか?また、どのようにして誘発法を決められましたか?



ジネコ:最初に基本的なことからお伺いしますが、妊娠を望む場合、排卵誘発は必要なことなのでしょうか。
高橋先生:体外受精をする前に、一番に医師が考えるのは、妊娠率、すなわち成功率です。これは患者さんも最も望まれていることだと思います。では、成功するために最適な卵子の数はいくつくらいなのか。データによると、1回あたりの妊娠率が一番高いのは8~10個。私の経験からみても、これは間違いがないと思います。このように確実に10個前後の卵子をつくり、妊娠に結びつけるために、排卵誘発という方法が必要になってくるんですね。
ジネコ :やはり自然な排卵を待つだけでは難しい……?
高橋先生:なかには、患者さんの負担を一番に考えて、採卵数を増やすために卵巣刺激はするべきではない、という方針の施設もあります。
自然法、あるいはクロミフェン法のみで、採卵は一度に1個でもいいから毎月行う。しかしその方法は、妊娠率という点からみたらどうでしょう。少ない数の卵子が予想外の時期に排卵してしまって採卵ができない、すなわちキャンセル率も高くなってしまいます。本当の意味で患者さんの負担が少ないのはどちらかということです。
ジネコ:高橋先生は、妊娠率の向上が患者さんにとってもベストなことだと考えられているのですね。では、オレンジさんの質問にもあるように、いい卵をつくるための排卵誘発法はどのように決められているのですか。
高橋先生:排卵誘発法の選択は、患者さんの卵巣予備能や卵巣過剰刺激症候群(OHSS)などの副作用も考慮して決めています。当院の場合、初回採卵の排卵誘発法は抗ミュラー管ホルモン(AMH)値と年齢を参考にして決めます。
37歳以下でAMHが10~25pM/mLであればロング法、10未満ではショート法が基本です。25以上では過剰反応が予想されるため、GnRHアンタゴニスト法で少量のHMG製剤投与を第一選択としています。40歳以上ではAMHが10以上でもショート法を選択します。
ジネコ:AMH値は排卵誘発法の決め手となる重要な値なのですね。
高橋先生:AMHは、前胞状卵胞や小さな胞状卵胞(AF)でつくられ、血清AMH値は発育卵胞数を反映するものと考えられています。このAMH値で卵の数を、年齢で卵の質を予測して排卵誘発の方法を分けています。AMH値が10以上の人の卵巣予備能は高いと考えています。
また、ロング法以外はAF数も参考にしています。
ショート法、GnRHアンタゴニスト法というのは生理開始後から行う方法なので、生理の2~3日目に卵巣の状態をみて、そこにあるAFの数を考慮して、どちらの方法を選択するか決めていきます。
ジネコ:年齢だけではなく、いろいろな数値をみながら決めるのですね。
高橋先生:初回の卵巣刺激はどのような方法をとるか、医師にとっても難しい選択ですが、きちんと基本となるものをつくっておかないと、2回目以降、医師も患者さんも混乱してしまいます。
オレンジさんも「なぜ、ロング法?」と疑問に感じ、もし成功しなかったり副作用があった場合、ますます疑問や不安が大きくなりますよね。しっかりした選択基準がないと、やはり患者さんも納得されないと思います。
ジネコ:2回目以降は初回と誘発法を変えていくのでしょうか。
高橋先生:初回採卵の結果を考慮して、誘発法を変えていきます。GnRHアゴニスト(排卵誘発の際に使用するスプレキュア.などの点鼻薬)が原因で反応が不良となる場合では、次回は使用しないでアンタゴニスト法に変えることで良質な卵が採取できるケースもあるからです。ロング法、ショート法、GnRHアンタゴニスト法を試しても卵胞が3つ以上発育せず、治療を継続したいという方の場合は、クロミフェン単独法をおすすめすることもあります。
ジネコ:「ロング法は妊娠率が高い」という話も聞きますが、これは本当でしょうか?
高橋先生:ロング法はAMH値が10~25pM/mLとほどよい状態、年齢も比較的若い方におすすめしている方法ゆえに、妊娠率も高いということになるのでしょう。38歳のベルチョコさんもこの方法を提案されたということは、AMH値がよかったのではないかと思われます。
ジネコ:ロング法は、一般的には年齢が高い方にはあまりおすすめできない方法なのでしょうか。
高橋先生:ロング法に使用するGnRHアゴニストは、本来は脳下垂体だけを抑制しますが、卵巣に対しても抑制力があるといわれています。
卵巣の予備能力が落ちている人が長期間使用すると、効力が強すぎて卵巣そのものの働きに対してもマイナスに反応するということが知られています。つまり、副作用を生じさせやすくしてしまうんですね。
ジネコ:それぞれの方法にメリットやデメリットがあるんですね。
高橋先生:最適な数の卵子を採るというメリットと、副作用や費用など患者さんが負うリスクやデメリットのバランスを考えながら、排卵誘発法を選択していくことが大切だと思います。




広島HARTクリニック 高橋 克彦先生

慶應義塾大学医学部卒業。インターン時代に立ち会ったお産に感激し、産婦人科医を目指す。1990年に日本初の体外受精専門外来クリニック、高橋産婦人科を開業。後に広島HARTクリニックと改名。

≫ 広島HARTクリニック




 





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