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ロング法とアンタゴニスト法の違いを教えてください

コラム 不妊治療

ロング法とアンタゴニスト法の違いを教えてください

2010秋

2010.9.7

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妊娠の可能性を高める方法の一つに卵巣を刺激して排卵を促す、排卵誘発という方法があります。
おもな方法は、患者さんの状態や治療方針に合わせて排卵誘発剤を使用するショート法、ロング法、アンタゴニスト法などがあります。
また逆に、排卵誘発を行わずに、自然排卵での治療を選ぶという選択もあります。どの方法が適しているかは患者さんによって異なりますが、医師はどのような考えをもって選択しているのでしょうか。全国の先生方にお話を伺ってきました。


排卵誘発法は、患者さんのケースによってさまざまです。自分に合った方法は、何を基準に選択すればよいのか、キネマアートクリニックの渋井先生に伺いました。



くくさん(会社員・29歳)からの投稿
体外受精を始めることにしました。新しい担当医には「アンタゴニスト法で」と言われたのですが、これまで診ていただいていた院長は、「ロング法で」と言っていたので、それを告げると、新しい担当医も「では、ロング法で」と……。この2つの"違い"って、何ですか?



ジネコ:まず、ロング法とはどのような方法なのかを教えてください。
渋井先生:体外受精を行う場合は、治療の成功率を高めるために、まず排卵誘発剤で卵巣を刺激して、多数の卵胞を育ててから採卵します。ベストな状態で採卵するためには、卵胞がある程度成熟するのを待つ必要があり、早期の排卵を防がなくてはなりません。そこで、排卵を起こすLHサージを抑えるのです。
そのLHサージの上昇を抑える薬として、スプレキュア®やナサニール®といった点鼻スプレーのGnRHアゴニスト製剤を使用するのがロング法です。現在でも、体外受精の際のスタンダードな方法の一つとして定着しています。
ジネコ:では、アンタゴニスト法は?
渋井先生:アンタゴニスト法も、排卵刺激による早期の排卵反応を抑えるという目的は同じで、点鼻薬に替えてGnRHアンタゴニストという注射でLHサージの上昇を抑えます。点鼻薬は前周期から約3週間もの長期にわたって、毎日スプレーしなければなりませんが、アンタゴニストはLH反応がみられてからの使用でも遅くはなく、点鼻するわずらわしさがありません。
ジネコ:ロング法とアンタゴニスト法では、どちらの方法が優れているのでしょうか?
渋井先生:過排卵刺激を行ったうえで、という同じ条件下では、今のところ、甲乙つけがたいです。
アンタゴニスト法は、日本に導入されてまだ4年ほどの新しい方法で、一般的には「ロング法の臨床試験に比べて遜色のない治療成績」という評価にとどまっています。ロング法とアンタゴニスト法に明らかな差がないからこそ、くくさんが通われている病院も、どちらかを強く推すということをしていないのではないかと思います。
しかし、ロング法が過排卵刺激による排卵誘発法のみに有効なのに対し、GnRHアンタゴニストは、自然排卵や低卵巣刺激法による治療にも適用できるため、多嚢胞性卵巣症候群や、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)を起こしやすい方にも使いやすいという、大きなメリットがあります。また、採卵前のHCG製剤による補助も、ロング法の場合は必須ですが、アンタゴニスト法では、スプレキュア®などの点鼻スプレーですむ場合もあります。
ジネコ:GnRHアンタゴニスト注射による、副作用などはありますか?
渋井先生:今のところ、目立った副作用例は報告されていませんが、注射した部分が一時的に腫れるといった程度の、軽いアレルギー症状が出る方はいるようです。
ジネコ:卵子の質には、差は出ますか?
渋井先生:ロング法とアンタゴニスト法では、早期排卵を防ぐための方法に違いがあるだけなので、卵子の質には大きな影響はないと思われます。
ジネコ:費用や通院日数は異なりますか?
渋井先生:費用は、患者さんによって必要な注射の本数などが異なるので個人差があり、一概には言えませんが、大きな差はないものの、アンタゴニスト法のほうが多少コストがかかるケースが多いようです。
通院日数は、GnRHアンタゴニストの注射のためだけに来院する必要はないので、差はありません。
ジネコ:先生のクリニックでは、どちらの方法を多く採用されていますか?
渋井先生:当院では、現在はほとんどがアンタゴニスト法です。基本的には、自然排卵をベースとした低刺激法をまずファーストチョイスとして考えているので、過排卵刺激の必要なロング法やショート法などを初期の段階で行うことはありません。
GnRHアンタゴニストを使用する場合も、ロング法における点鼻薬に替えた使用法だけではなく、LHをはじめとしたホルモンの状態、卵子の成長具合などを観察しながら、必要に応じて投与するといった使い方ができます。GnRHアンタゴニストを使用すれば「アンタゴニスト法」ですが、自然排卵、低卵巣刺激など幅広く用いることができます。
ジネコ:自分に合う排卵誘発法は、どのような基準で選べばよいでしょう?
渋井先生:「自分に合った」というよりも、「自分のそのときの状態に応じた治療法」を選択することが大切だと思います。
不妊治療では、どうしても結果にとらわれてしまいがちですが、一度やって妊娠しなかったからといって、それが合っていないとは言い切れません。妊娠には至らなくても、移植した受精卵の状態、途中経過での卵巣の反応、子宮内膜の状態、移植後の黄体ホルモン値など、経過をみることで問題点を見出し、次に生かせるということは大いにあります。
過排卵刺激によるロング法にも、一度に数多くの卵子を採取できるというメリットはありますし、比較的年齢の高い方や卵巣機能が落ちている場合にはショート法という選択肢もあるので、ホルモンの状態や今までの治療経過などを考慮し、担当医とよく相談して決めましょう。
ただ、くくさんの場合は、まだ29歳と若いので、過排卵刺激ではやはりOHSSが心配されます。自然周期や低卵巣刺激法でのアンタゴニスト法を選択するのも悪くはないと思います。




キネマアートクリニック 渋井 幸裕先生

東邦大学医学部卒業。医学博士。東邦大学大森病院で体外受精グループにて研究、診察に従事する。2003年、キネマアートクリニック開院。現在、東邦大学大森病院客員講師。日本生殖医療心理カウンセリング学会幹事長、日本女性心身医学会幹事。




 





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