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前置胎盤って、なに?

インタビュー 妊娠・出産

前置胎盤って、なに?

妊娠時の「前置胎盤」とはどんな症状で、母体や胎児、出産にどう影響するのでしょうか。朝元 健次先生にお話を伺いました。

2019.2.22

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妊娠中に「前置胎盤」と診断され大きな病院を紹介された、という話を耳にします。「前置胎盤」とはいったいどういう症状で、母体や胎児、出産にどんな影響やリスクがあるのかについて、あさもとクリニック産婦人科の朝元 健次院長にお話を伺いました。




前置胎盤とは、どういう症状を指すの?


妊娠すると、胎盤は通常であれば子宮の上のほうに着床しますが、時に下のほうの子宮口付近を覆った状態で付着してしまうことがあります。これを前置胎盤と呼びます。これにはいろいろな種類があって、子宮口全体を隙間なく覆ってしまうのが「前置胎盤」、子宮口の一部分にかかっているのは「部分前置胎盤」や「一部前置胎盤」と言い、端っこだけギリギリかかっているのは「辺縁前置胎盤」と言います。一般的に「前置胎盤」とされているのはこの3つです。さらに、子宮口にはかかっていないけれど非常に低い位置に胎盤があるのは「低置胎盤」と言います。
子宮というのは、上のほうは筋層が豊富で伸びるような組織になっていますが、下のほうはあまり伸びません。伸びないということは分娩の後にギュッと縮まらないので、胎盤が剥がれた後は血管がむき出しのような状態になって出血が多くなり、血が止まらないこともあります。ですから「低置胎盤」でも出血が多くなるというリスクはあります。


 


前置胎盤になりやすい人はいるの? 原因は?


子宮内膜に傷があるとか、中絶の既往があるとか、あるいは前回の出産で子宮内部が傷ついている、といった外傷のようなものがあるとなりやすいとは言われていますが、はっきりとした原因はわかっていません。また、体外受精や顕微授精の場合も多いとは言われています。受精卵を子宮に戻す時、正しい位置に戻すつもりでいても2cmぐらいは自然に動いてズレてしまうこともあり、下の方にくっついてしまう場合もあるからです。自覚症状はなにもないので、産婦人科検診の超音波検査で見つかることがほとんどです。


前置胎盤とはっきり診断がつくのは、妊娠26週以降ですね。妊娠初期に「前置胎盤かな? 」と思っていても、週数が進み、子宮が大きくなるにつれて胎盤が上がって前置胎盤ではなくなることがありますが、26週からはあまり変わらないので、その時点で診断されたら前置胎盤と確定されたということです。逆に言うと、20週ぐらいで「胎盤の位置が低い」と言われても、まだそれほどシビアな状態ではないとも考えられます。
また、数はそれほど多くはありませんが、26週以前に出血が起こって前置胎盤がわかることもあります。


 


もしも前置胎盤と診断されたら、どうすればいい?


前置胎盤と診断される妊婦さんは、500人に1人ぐらいの割合だと思います。当院でも、前置胎盤で大きな病院に送るという症例は1年に1人〜2人ぐらいですから、すごく頻度の高い病気ではありませんが、診断されるとちょっと大変で、出産は100%帝王切開になります。赤ちゃんが成長するに伴って子宮は伸びてきますが、前置胎盤の場合には、胎盤が付着しているところがズレることによって途中で必ず出血してきます。大量出血が起こったらその時点で帝王切開することになるので、出産予定日の満期である40週0日までは赤ちゃんをお腹に置いておけないことがほとんどです。基本的に薬や治療法があるわけではないので、対症療法としてはできるだけ出血しないよう安静にして寝ていることが大切です。もちろん運動や性交渉はいけません。といっても、赤ちゃんが成長するごとに出血のリスクは増えてきますから、30何週までに出血してそのまま出産に至る場合が多いです。


我々のような開業医で前置胎盤と診断した場合は大きな病院に送りますので、基本的にこういった出産は大病院で行われることがほとんどです。その理由は、帝王切開をしても胎盤が剥がれたところから出血が止まらないことがありますし、場合によっては輸血や子宮全摘出などの対策が必要になる、とてもハイリスクな手術だからです。5分間でバケツ1杯くらい出血するため、手術前には大量に輸血をストックしたり、場合によってはお母さんの血液をあらかじめ採って外で溜めておく自己血採血をしたりといった準備を行います。


 


母体や赤ちゃんへの影響、リスクは?


たとえば、出血が起こって帝王切開する時期が35週ぐらいだとそれほど早産のリスクはありませんが、それが28週で起こったら、赤ちゃんへの影響も大きくなります。28週だと赤ちゃんは1200gぐらいで、まだ生まれてくるに適した状態ではないはずですから、感染症や呼吸障害のリスクがあります。でも今は「インタクトサバイバル」といって小児科の管理の技術が上がったので、かなりの確率で後遺症が残らないことを望めます。もちろんそれが27週とか26週と早くなるほど確率は低くなりますし、30週を過ぎればリスクはだいぶなくなります。その辺りの2〜3週間というのはものすごく大きな差ですね。


また、お母さんのほうは、なかには癒着胎盤というシビアな状態におちいる人もいます。最近は帝王切開で出産する人が15%〜20%、大きな病院だと50%ぐらいいて、その時についた子宮の傷に胎盤が完全にくっついてしまうことがあるのです。癒着胎盤といって、子宮の筋肉のなかに胎盤の組織が入り込むと前置胎盤の手術をしても胎盤が取れず、剥がれかけたところから大量出血してしまうわけです。それが問題になったのが、2004年に福島で妊婦さんが亡くなった事件です。最近は、大きな病院で前置胎盤と診断するとMRIを撮って、筋層まで胎盤の組織が侵入しているかどうかを見ます。侵入していることがわかると、赤ちゃんを取り出したあと、胎盤がくっついたままの子宮を全摘出するという処置が考慮される場合もありますね。


 


朝元先生より まとめ


前置胎盤というのは、胎盤が子宮口全体または一部をふさぐように付着してしまうことを言います。原因不明で予防法もなく、前置胎盤になるか否かは運としか言いようがありませんが、それほど頻度の高い病気ではありません。もしも前置胎盤と診断されたら、できるだけ安静に過ごし、大きな病院で出産時のリスクに備えることが必要です。今は病院に行けば比較的容易に診断がつきますので、助産所などで出産予定の方もきちんと妊婦検診を受けておきましょう。


 


お話を伺った先生のご紹介

朝元 健次 先生(あさもとクリニック産婦人科 院長)


藤田保健衛生大学医学部卒業。名古屋市立大学、更生病院、名古屋第二赤十字病院にて麻酔・集中治療部勤務。名古屋市立大学産婦人科、公立陶生病院産婦人科勤務を経て、2002年に開業。開院当初より、硬膜外麻酔による無痛分娩を行っている。

≫ あさもとクリニック産婦人科

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