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治療を始めて10年、強い思いを持ち続けて……

まとめ 不妊治療

治療を始めて10年、強い思いを持ち続けて……

挑戦できるチャンスがあるかぎり、これからも治療を続けていきます。
ご主人がリードして不妊治療に臨んでいるという吉川さんご夫妻。
10年の間、つらいことも多くありましたが、今も「子どもが欲しい」という気持ちは強く、前向きに治療を続けています。

2019.12.28

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思い込みを反省し積極的に情報収集するように


「結婚して7年目頃かな。まだ子どもができないのはおかしいな、と思って、妻に婦人科の受診をすすめたのが僕たちの不妊治療の始まりました」 

記憶をゆっくりたどりながらも、はっきりとした口調で語り出した吉川裕司さん(仮名)。裕司さんは現在43歳、奥様の陸美さん(仮名)は4歳年上の47歳。二人は同じ旅行ツアーで意気投合し、おつき合いをスタート。18年前に結婚しました。

「僕も妻も旅行が趣味で、しばらく夫婦二人でゆっくり過ごしたかった。子どもはいずれ欲しいけれど、4、5年はいいね、って話をしていたんです」 

夫婦二人の時間を楽しみ、そろそろ……と思いましたが、5年、6年と過ぎても妊娠の兆候はまったくなかったといいます。

「婦人科で調べてもらったら、妻に卵巣チョコレート嚢胞という病気が見つかりました。自覚症状はまったくなかったのに、ソフトボール大まで腫瘍が大きくなっていて。妊娠を望むなら手術をして切除しなければいけない、ということでした」

その後、陸美さんは大学病院で嚢胞を切除。「これでもう大丈夫。いつでも妊娠できますよ」と医師に言われ、安心して日常の夫婦生活に戻りましたが、一向にその気配はありません。

「これはおかしいと思い、手術を受けた病院の不妊治療科を受診して、治療を始めることにしたんです」

二人とも検査では異常は見つからず、軽い気持ちで治療をスタートしましたが、タイミング療法を1年、人工受精に1年トライしても結果は出ず、医師から体外受精へのステップアップをすすめられます。

「妻は体外受精への抵抗感はなかったようですが、僕はすごく嫌だったんですね。その頃は不妊治療について正しい知識を持っていなくて、体外受精のことを顕微授精だと思っていたんです。受精を人工的に行って、自分の子を勝手に決められてしまう。他人に命を選択されるような気がして……。 
そんな僕を妻も説得できなかったようで、ようやく詳しい話を聞いて承諾したのが半年後。今思えば、馬鹿だったと思います。自分できちんと調べようともせずに、間違った先入観で大切な時間を無駄にしてしまったんですから」 

その時からの反省もあり、以後、裕司さんは不妊症についてインターネットや書籍で調べたり、病院での説明会に積極的に参加するように。妻を通して間接的に医師の考えを聞くのではなく、直接聞いて納得したいという気持ちが強まり、都合がつけば自分も診察に同行するようになったそうです。


男性にとっても不妊治療はつらいこと


「体外受精にステップアップする頃、妻の年齢はもう30代半ばを過ぎていました。さまざまな排卵誘発法を試しましたが、卵子が採れない。実年齢の割に卵巣機能は悪くなかったので、根本的な原因は不明とのこと。2ヵ月に1回、採卵をし続け、その病院では5~6年治療を受けましたが、2回の流産を除き、結局、妊娠に至ることはありませんでした」 

最初は顕微授精に嫌悪感を抱いていた裕司さんですが、その頃には「それしか方法がないのなら何でもしよう」という前向きな気持ちに変化。病院の選択についても裕司さんがリーダーシップをとり、インターネットの口コミや知人からの情報を収集し、その後、2回病院を変えて治療を続けました。

「それぞれの病院で1~2年治療しましたが、ダメでした。でも、まだ諦めていないんですよ。子どもは今でも絶対欲しいので、チャレンジできる間は治療を続けていきたい。 
実は僕、結婚前は子どもが嫌いだったんです。でも、結婚して数年後のある時、友人の子どもを見ていたら、純粋に、"ああ、子どもってこんなに可愛いんだな"と思ったんです。それから本格的な父性が芽生え始めたのか、今では子どもがいない人生は考えられません。 
子供が生まれて名前をつけて、おじいちゃんやおばあちゃんに喜んでもらって、家族で旅行に出かけたり……。それが理想なんです」 

理由なんてない。ただ、愛する人との子どもをつくって、家族になりたい―。その想いは治療を始めた当初からぶれることはなく、これまで治療をやめようと思ったことは一度もないそう。そんな強い気持ちでいる裕司さんと陸美さんですが、やはり、時にはつらいことも……。

「不妊治療は女性だけでなく、男性にもつらい時はあります。タイミングをとる時や、採精もそうですが、男性は"出せ”といわれて出るものじゃない。妻から”今日だから”といわれると、スーッと萎えてしまいます。気持ちが高ぶっていないのに、機械的にできませんよね。排卵日に失敗したことは何度もありました。女性にはなかなか理解できないことかもしれませんが、男性にとって、すごくきついことなんです」 

また、奥様が悩んだり、悲しむ姿を見て心を痛めたこともあったといいます。

「妻が一番つらそうだったのは、家族写真が載った年賀状を見た時。皆、もちろん悪意はないですが、”子どもが生まれました””新しい家族ができました”という年賀状を送りますよね。それを見て、妻は号泣していました。声を掛けたいけれど、掛けられない……。胸が締めつけられるようにつらかったです」


チャンスがある限りは諦めずにできることをしたい


裕司さんは、日頃から奥様への気遣いも欠かさないようにしています。

「妻は注射をたくさんしなくちゃいけないし、痛い思いをして採卵もしています。ただでさえつらい思いをたくさんしていますから、結果が出なかったとしても責められるわけがありません。小さなケンカはあったとしても、相手のせいにしたり、責めるような言葉は絶対言ってはいけないと思っています」 

転院4回を経て、現在も新たな病院で治療中。できるかぎりチャレンジして、それでも叶わない場合は卵子提供や養子という選択も視野に入れているといいます。

「もし、結婚してすぐに治療を始めていたら、もし不妊についての知識を若い頃から持っていたら、もっと早く子どもに会えていたかもしれません。教育現場での啓蒙、助成金や職場のサポート体制の充実など、僕たち夫婦のようなケースを知ってもらい、国レベルで不妊症についての認知を高め、子どもができる環境を整えていってほしいと思いますね」


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