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妊娠中の「安定期」なら海外旅行も平気? 妊婦にとってOKな行動の範囲とは

コラム 妊娠・出産

妊娠中の「安定期」なら海外旅行も平気? 妊婦にとってOKな行動の範囲とは

一般的に、妊娠5カ月(妊娠16週)に入ると「安定期」という言い方をします。「赤ちゃんが生まれる前に旅行しておきたい」と思っている妊婦さんもいるのではないでしょうか。そこでスポーツや旅行などのアクティブな生活は「安定期」にはどこまでが適切なのか、また、妊娠期間の上手な過ごし方について堀産婦人科の堀量博(かずひろ)先生にお聞きしました。

2018.2.26

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妊娠中に「安定期」という時期はない




妊娠中には「もうすぐ安定期だね」「安定期に入ったから……」というような言葉をかけられたり、耳にする機会があります。


実際に妊婦さんから「安定期に入ったのでマタニティスポーツをしてもいいですか」というような質問を受けたりすることもあります。


でも残念ながら、妊娠中に「安定期」はありません。


妊娠中は、胎児を守り育てるためにさまざまなストレスが母体にかかり、体は綱渡り的なバランスをとっています。


どんなに健康のようでも、表面上だけ「安定」しているように見えているだけなのです。


「安定期=妊娠する前と同じように動いても問題ない」と思っている人もいるかもしれませんが、常にリスクと隣り合わせということを覚えておきましょう。


スポーツや旅行もご自身がリフレッシュできるならOK


育児書や情報サイトでは「マタニティスポーツを始めるなら妊娠5カ月頃から」と書かれていることがありますが、決して安定期に入ったからアクティブに動いても赤ちゃんには影響なく、安心ということではありません。かといって「絶対にNG」というわけでもないのです。


こうお伝えすると、「安定期にやっていいことの判断ができない……」と、思う妊婦さんもいるでしょう。


 


そこで「やる」「やらない」の目安にしてほしいのは、「妊娠前からしていた行動か」「自分(妊婦さん)のストレスが発散できるか」ということです。


 


例えばスポーツであれば、今はヨガやピラティス、水泳、エアロビクスなど、さまざまなマタニティスポーツがあります。


これらのスポーツをすることでおなかの赤ちゃんにいい影響があるかは、確かめられていません。


でも、妊娠前から体を動かすことが日課だったり、スポーツをすることが妊婦さんにとってストレス発散につながるのであれば、行う意味はあると思います。


 


実際にこんなケースがありました。


妊娠前からマラソンが好きで、妊娠中もジョギングを続け、家にいる時はエアロバイクをこいでいるようなアクティブな妊婦さんがお盆で実家に帰省したら、親族から「妊娠中に走るなんてもってのほか!」と言われて走るのをやめたところ、途端にむくみが出て具合が悪くなってしまいました。


 


彼女にとって「走る」ことは「日課」で、ストレス発散にもなっていたのでしょう。


このことからもわかるとおり、妊娠中だからといって「日課」を変える必要はないのです。


あまり運動強度の強い(激しい運動)を続けると、子宮の血流が減少して赤ちゃんに酸素がまわらなくなるので、頻回に長く続けるのは妊婦スポーツの目的から外れてしまいます。


しかし激しい運動といっても個人差があります。先ほどの妊婦さんのように妊娠前から続けていた方もいれば、妊娠がわかってからマタニティビクスを始めて筋肉痛になってしまう方もいます。


 


「やや楽」から「ややきつい」程度が目安でしょうか。


 


余談ですがマタニティスイミングは、海女さんがお産の直前まで泳いでいても流早産の率は普通の妊婦さんと同じだったという研究から始まったそうです。


旅行も同じです。妊娠前からよく旅行する人で、行くことで気分がリフレッシュでき、次の日以降の活力になるならでかけるのもいいでしょう。


ただし、妊娠中は「綱渡りの状態」ですから、油断は禁物です。


スポーツや旅行中に出血やおなかの張りなど、なんらかのトラブルが起こりうることも想定しておいてください。また一緒にスポーツや旅行をしているグループの方などに迷惑をかけてしまうことも考えましょう。


 


旅先でトラブルが起きた場合、かかりつけでない病院や医師に処置してもらうことや、場合によっては入院、最悪の場合流産、早産になることも覚えておきましょう。


そして必ず旅先の産科施設を確認しておくことを忘れないでください。
こうしたリスクがあるかもしれないということを常に考慮しつつ、楽しむことが肝心です。


「これ、しても大丈夫かな」と少しでも不安に感じたらやめておいたほうがよいでしょう。


健やかに安定期を過ごすために大切な「食事の管理」


妊娠中にスポーツや旅行を楽しむには、もちろん妊婦さんと赤ちゃんが元気であることが大前提です。


妊娠期間を元気に過ごすためには、食事の管理をしっかり行うことが大切です。


食事の管理というと、「体重を増やさない」「ご飯を食べすぎない」ことと考えている妊婦さんもいるのではないでしょうか。けっしてそうではありません。


今、DOHaD(Developmental Origins of Health and Disease)という概念が注目されています。


これは、「将来の健康や特定の病気へのかかりやすさは、胎児期や生後早期の環境の影響を強く受けて決定される」という考えです。


どのくらいまで体重を増やしていいかについては、厚生労働省が2006年に発表した「妊産婦のための食生活指針」の中に示されている「妊娠中の体重増加量の目安」(下記)を参考にしてください。


 


<妊娠中の体重増加量の目安>


・BMI18.5未満…9~12㎏


・BMI18.5~25未満…7~12㎏


・BMI25以上…個別対応(おおよそ5㎏を目安とする)


※BMI=体重(kg)÷(身長(m)×身長(m))で算出


 


では、「食事の管理」で大切なのは、どんなことなのでしょうか。


それは何よりも栄養素をバランスよく摂取することなのです。


偏った食材ばかりのものを食べたり控えたりするのではなく、3回の食事で、いろいろな食材のものをまんべんなく食べることがポイントです。


それが妊婦さんの健康、おなかの赤ちゃんの発達にもつながり、スムーズな出産にもつながります。


また、赤ちゃんの将来の健康状態への配慮、さらにはこれからの大人だけの食事ではなく、子どもも含めた家族の健康管理にもなるので、その出発点として食事にも気を使っていきましょう。


ただ、今の時代、外食やコンビニ食も当然避けるわけにはいきません。今まではただ自分の好みで手に取っていたものを、ひとつ間をおいてみてください。


妊婦さん用のレシピは手もかかってみかけもあんまり美味しそうではありませんね。


美味しく食べなければ楽しくありません。あまり神経質にならずにトライしてみてください。


堀先生よりまとめ


妊娠中に「安定期」はありませんが、体が「綱渡りのバランス」を取っていることを理解したうえでご自身の気分転換やリフレッシュのためにスポーツやレジャーを楽しむのはいいことだと思っています。


少しでも不安があったり、迷ったりした場合は、自己判断せずにかかりつけの産婦人科の先生に相談することをおすすめします。


ただ、先生の指導も確かな根拠(エビデンス)がないものが多いので、先生ご自身のお考えか「やめておいたほうが無難でしょう」くらいにしか答えられないのが実情です。


あくまでも自己責任のもとで楽しんでください。


お話を伺った先生のご紹介

堀量博(かずひろ)先生(堀産婦人科 院長)


東京都出身。東京医科大学卒。1991年、東京医科大学病院産婦人科勤務。婦人科腫瘍(子宮がん、卵巣がん)治療の中心スタッフとして臨床、研究に長く携わる。2004年、東京高輪で祖父の代から70余年続く産婦人科医院の3代目院長に就く。また堀産婦人科診療のかたわら2003年から山王病院リプリダクションセンターで最先端の不妊治療スタッフとしても活躍。父子3代「オーダーメードの診察で女性の一生を医療面から支える」を心がけており、地域住民からの信頼度は高い。大局的な視点に立ったアドバイスで、妊活中や妊娠中の女性を元気づける。

≫ 堀産婦人科

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