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本当に痛くない? 安全にできるの? 無痛分娩の疑問にお答えします

コラム 妊娠・出産

本当に痛くない? 安全にできるの? 無痛分娩の疑問にお答えします

無痛分娩のリスクが気になる人も納得できるメリットや安全性について、田中ウィメンズクリニックの田中康弘先生に伺いました。

2018.8.26

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日本でも徐々に広がってきた無痛分娩ですが、なかにはリスクばかりをを気にする人もいるようです。これまで1万5000例以上も無痛分娩を実施してきた田中ウィメンズクリニックの田中康弘先生に、メリットや安全性について伺いました。




40年以上前から無痛分娩に着目し、始めようと思った理由は?


当院は、局所麻酔(硬膜外麻酔)による無痛分娩を国内で最初(1973年)に始め、分娩の始まりからの無痛を世界に先駆けてとり入れた産科施設です。


 


お産というのはものすごく痛いものです。僕たちが子どもの頃には、まだ生活の中に痛みがたくさんありました。道が凸凹しているので転んでひざをすりむいて痛い、水道の水が冷たいのであかぎれがしみて痛いなど。でも、現代は快適・便利で、歯が痛くても傷ができてもすぐに痛みを止めることができる。だんだん痛みに対する抵抗力がなくなって、昔と同じお産だったら今のほうがずっと痛く感じるようになったのですね。


 


「母性を確立するためには産みの痛みがないとダメ」という陣痛有意議論を主張する人もいますが、今や、痛みに弱い人があえて痛みに耐えなければいけない時代ではありません。痛みのない分娩のほうが快適だし、安全にできると考えて無痛分娩に取り組んだのです。


 


僕が若い頃、アメリカではすでに硬膜外麻酔による分娩が行われていましたが、日本ではほとんど知られておらず、無痛分娩といえば全身麻酔が主流でした。麻酔科医から産婦人科医と専門を変えて開業をした頃、アメリカで行われている硬膜外麻酔をいち早く開始しました。


 


全身麻酔は、胎児にも麻酔がかかるので赤ちゃんへの影響も危惧されます。局所麻酔ならその負担を減らせるのが特長のひとつです。また、無痛分娩をとり入れることで計画分娩ができます。陣痛はお母さんの活動がおさまる頃に生じてくるので、そうなると分娩は夜になることが多くなるのですね。深夜だとスタッフもご家族も負担が大きく、緊急時にも対応しにくくなります。そこで、前日に入院して、翌日の明るいうち(診療時間内)に出産していただくシステムを作り、より安全、快適にお産ができるようにしたのです。


無痛分娩のメリット、デメリットは?


無痛分娩のメリットはリラックスしてお産を迎えられることです。それにより、過呼吸や血圧が急激に上がることを予防できます。また、痛みを感じると産道が緊張して硬くなってしまいます。痛みがなければ血流が良くなり、産道もよく伸びて開きやすくなるのですね。


さらにもう1つ、緊急時に対応しやすいというメリットもあります。帝王切開が必要になった場合にはお腹を切るので麻酔の準備が必要ですが、無痛分娩の最中だったらすでに麻酔薬が体内に入っていて、あとはその量や濃度を少し調節すればいいだけなので、赤ちゃんが弱ってきた時にも速やかに取り出してあげることができます。 


 


デメリットについては、これは無痛分娩以外のどんな医療行為にもともなう合併症や副作用のリスクのほか、200例に1例程度、硬膜穿刺後頭痛という頭痛が起きることがあります。硬膜外腔のスペースは厚い部分で4mm程度です。そこに穿刺(せんし、針を刺すこと)するのは非常に繊細な作業で、ほんの少し深く刺しただけでも硬膜が破れて脳脊髄液が漏れてしまいます。とても怖いことのように思われるかもしれませんが、頭痛以外は体への影響はなく、頭痛も1週間以内には治まります。


 


また、無痛分娩は健康な状態ならほとんどの方が可能ですが、血小板減少症の人にはできません。硬膜外腔には細かい血管がたくさんあります。血小板が少なくて血が固まりにくいと、ちょっとしたことで出血し、脊髄の近くに血腫ができてしまった場合、それが神経を圧迫してしまうからです。通常、血小板は13万個以上ありますが、10万個以下、7万個や8万個程度の数値の場合は無痛分娩が難しいと思います。


無痛分娩中、痛みはまったく感じない?


今、硬膜外麻酔による無痛分娩をとり入れている施設はたくさんあると思います。麻酔のさじ加減で妊婦さんの感覚が異なり、なかには「少し痛みがあった」というケースもあるようですね。


当院の場合、痛みはまったくありません。これまでに40年以上実施し、1万5000人程度が受けられていますが、「痛かった」というお声は1人もいません。みなさん必ず、「2人目の時も無痛分娩でお願いします」とおっしゃいます。安全に、それもまったく無痛の状態でできるのは、お産と痛みのことをよく知っている知識も経験も豊富な医師やスタッフのいる施設でなければできません。


人間の痛みを大きく分けると、胆石や生理痛、胃潰瘍などの内臓痛と、切り傷などの体耐性痛の2種類になります。お産はこの2つの痛みが合併している特殊なものです。最初は子宮が収縮する内臓痛で、あるところから体耐性痛が加わってきます。場所も1カ所ではなく、腹部、腰部痛に始まりお産が進むと下腹部、会陰部痛へと移動してくるのですね。そういったお産のしくみと痛みや麻酔のことをよくわかっていないと、痛みを100%とるのは難しいでしょう。


無痛だとお産の感動や喜びはないのでは?


僕は通常の分娩より、無痛分娩のほうが感動は大きいと思っています。実際に妊婦さんを見ていてもそう感じますね。普通のお産だと、赤ちゃんがやっと産まれてうれしいけれど、出産直後、お母さんはもうヘトヘト。感動するエネルギーも余裕もなくなってしまっている状態がほとんどです。


一方、無痛分娩なら余分に体力を使うことがないので、ご自身もご家族も新しい生命が生まれてくる瞬間をゆっくり存分に味わうことができます。


それでも無痛分娩に不安や抵抗を持つ方もいると思います。「迷っている」という方はホームページなどで調べたり、問い合わせをして信頼できる産科施設を選び、説明会に参加して納得したうえで決めていただくといいでしょう。


お話を伺った先生のご紹介

田中 康弘 先生(田中ウィメンズクリニック)


1959年慶應義塾大学医学部卒業。同大学大学院にて麻酔学を専攻。産婦人科専門医(日本産婦人科学会)。麻酔科認定医(日本麻酔科学会)。1973年田中ウィメンズクリニックを開設。硬膜外麻酔による無痛分娩の国内パイオニアで、これまで手がけた数は1万5000例以上。ストレスや妊娠性高血圧症、妊娠糖尿病予防など、運動による妊婦さんへの健康効果にも着目しており、1986年には日本マタニティビクス協会も設立。初産の妊婦さんに対し、「妊娠を機に運動習慣を身に付けよう」というマタニティビクスの普及活動を展開している。

≫田中ウィメンズクリニック

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