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そこが知りたい無痛分娩。自然分娩との違いは?デメリットはどんなこと?

インタビュー 妊娠・出産

そこが知りたい無痛分娩。自然分娩との違いは?デメリットはどんなこと?

海外では主流である無痛分娩。日本では都市部以外では扱っていない医療施設も多く、なかなか情報が得られない状況があるようです。はぐくみ母子クリニックの輿石太郎先生にお話を伺いました。

2018.9.7

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麻酔で痛みを和らげることが可能な「無痛分娩」


無痛分娩とは、局所麻酔薬を使ってお産の痛みを軽減する分娩方法です。


当クリニックの無痛分娩では、初産婦さんでは自然の陣痛を待って行っています。計画分娩よりお産が順調に進みやすく、また、帝王切開に移行する確率が低くなるというデータもあるためです。24時間いつでも無痛分娩に対応できるよう、スタッフの体制を整えています。


一方、お産が2回目以降の経産婦さんに対しては、計画分娩をおすすめしています。経産婦さんでは、分娩誘発を行っても帝王切開が増えないというデータがあることに加えて、お産の経過が早く麻酔の処置が間に合わない場合も少なくないためです。妊娠38週以降に、希望に合わせて入院日を設定しています。


 


陣痛を待った場合の分娩の手順としては、痛みを強く感じた段階から麻酔薬の注入を行います。背中の脊髄に近い硬膜外腔というところに細いカテーテルを入れ、そこから局所麻酔薬を投与して出産の痛みを取り除いていきます。分娩中には、なるべくすべての痛みを取るよう、産婦さんに痛みの具合を聞きながら細やかな麻酔薬のコントロールを行います。しかし、痛みの感じ方はそれぞれ異なることと、腰や恥骨の骨、ならびに、肛門の痛みが取れにくいこと、加えてお尻を押されるような感覚は残るため、痛みや苦痛を訴えられる妊婦さんもいらっしゃいます。


 


無痛分娩には頻度は低いがデメリットも存在する


無痛分娩の大きなメリットは、なんと言っても自然分娩と比べてお産による疲労が少なく、産後の回復も早いことです。また、妊婦さんの血圧が高い場合など、無痛分娩を選択したほうが血圧上昇を抑えられて安全な場合もあります。


デメリットは、合併症が存在することです。硬膜外麻酔を行ったほとんどの妊婦さんは陣痛が弱くなり、出産にかかる時間が長くなる傾向があります。


麻酔で痛みを取り除くと、多くの場合は陣痛が弱くなります。これを放置すると、胎児の回旋異常(赤ちゃんは回りながら産道を降りてきますが)や遷延分娩となりやすく、帝王切開が必要となったり、分娩後の出血が多くなります。これらを防ぐためには、人工的に破水させたり、オキシトシンというホルモンを点滴することで陣痛を強めることが必要です。オキシトシンはヒトの体にもあるホルモンであり、副作用はほぼありません。しかし、陣痛が強くなりすぎると赤ちゃんが苦しくなったり、子宮が破裂する原因となるため、しっかりと監視しながら分娩をすすめます。オキシトシンなどの陣痛促進剤は日本産婦人科学会が定めた使用方法があり、それに従って使用しています。また、このように陣痛を強めても、赤ちゃんが産道の出口を通るために必要な、非常に強い力までにはおよばず、鉗子分娩・吸引分娩の頻度は高くなります。

また、頭痛・軽いしびれがしばらく残ることもあります。また、1万分の1程度と非常に稀ですが、足の麻痺が長期間残り日常生活に支障をきたすケースが報告されているのも無視できません。

さらには、少し前に報道があったような命に関わる重大な合併症も、頻度は低いながら存在します。局所麻酔薬に対する重症のアレルギーであるアナフィラキシーショックと、局所麻酔薬のくも膜下腔や血管内への迷入です。これらは、どんな達人が麻酔を行っても発生する確率をゼロにすることは困難ですが、早期発見と適切な対応で重大な結果を防ぐことが可能です。


 


当クリニックでは、医師、助産師による無痛分娩の委員会があり、綿密なチェックリストやマニュアルを作っています。また、マザークラスで妊婦さんが無痛分娩についての知識を増やすことで、万一の事態にいち早く気づけるように勉強していただいています。


 


無痛分娩に向いている人とは痛みに弱く不安が強い人


出産に伴う痛みの大きさは想像をはるかに超え、初産婦さんでは指の切断と同程度と言われています。陣痛の強さに耐えかねて絶叫したり、パニックになったりすることも珍しくありません。こうした場合、とても最後まで体力がもたないだろうということで、途中で無痛分娩に切り替えることもあります。



また、もともと痛みに弱く、出産への不安が強い人にとっても、完全ではないものの、大幅に出産の痛みを軽減できる無痛分娩は、たいへん心強い分娩方法と言えるでしょう。


 





輿石先生より まとめ



当クリニックでは無痛分娩が全体の6割を超えていますが、中には自然分娩にこだわる妊婦さんやご家族もいらっしゃいます。「お産はお腹を痛めてこそ」という日本人の美徳が影響しているものと思われます。さらに時おり「自然」という言葉に価値を置き過ぎている印象の人も見かけます。
なんでも「自然」が良いわけではないと私は考えています。「自然」には「自然淘汰」も含まれます。医療行為を何もしないでおくとお産で命を落としてしまうケースも少なくはありません。一番大切なのは、お母さんも赤ちゃんも元気にお産を終えることです。医療は安全性を高めるため、産科では母児の命を助けるために発展してきました。漠然とした「自然」への信仰は命の危険を伴います。お産に医療を入れていくということをより柔軟にとらえて、無痛分娩も選択肢の一つとして、母子にとってよいお産を選択していただきたいと思います。





お話を伺った先生のご紹介

輿石 太郎 先生(はぐくみ母子クリニック院長)


順天堂大学医学部卒業 医学博士。順天堂大学関係病院や埼玉医大総合医療センター、沖縄県立八重山病院の勤務を経て、日本医科大学武蔵小杉病院で助教を務めた後、産科・小児科の複合施設である「はぐくみ母子クリニック」を開業。長きにわたり周産期センターで重症患者の分娩を診てきた経験の下、安全で快適なお産の実現に取り組む。現在は、よりマルチな視点から医療とサービスの向上を目指そうと、オフの日に社会人向けのビジネススクールに通っている。医療一筋だった環境から,多彩な業界人との交流の場を得て、新鮮な刺激になっているという。

≫ はぐくみ母子クリニック

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