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食生活で妊娠しやすい健康的なカラダづくり
Point 1 妊娠前からバランスよく食事を!「食事バランスガイド」でチェックをしましょう 「食事バランスガイド」を利用して食べる料理、食材の黄金比率を覚える 日常生活において「バランス」よく食事を摂るのが大事なのはわかるけれど、いったいどうやって?と思う人も多いはず。そこで目安になるのが、厚生労働省が推奨している「食事バランスガイド」です。「何を」「どれだけ」食べたらよいか、また主食、副菜、主菜、牛乳・乳製品、果物の5つのカテゴリーを料理イラストでわかりやすく表示しています。では、お菓子やお酒など嗜好飲料はだめなの?と考えてしまいがちですが、「食事バランスガイド」では食生活の中での楽しみと考えており、食事全体のバランスをみながら、適度に摂ることは問題ありません。まずは、週1~2回から始め、慣れてきたら、徐々に回数を増やし、「食事バランスガイド」のスタイルが当たり前になるよう、頑張りましょう。 ※(SV)はサービングの略。各料理1回あたりの標準的な量を示す。※「食事バランスガイド」における各料理区分の1日分の目安量。 Point 2 食事のバランスチェックのあとはバランスのよい食事の摂りかたポイント 元気の素・必須アミノ酸は食べて摂る大事な栄養素です 「食事バランスガイド」で料理や食材をチェックしましたが、何の食材にどのような栄養素が入っているか、少し確認をしていきましょう。まず体力や免疫力を保持し、アップさせるにはタンパク質は欠かせません。タンパク質は、筋肉や臓器を構成する成分で、ホルモンや免疫抗体の原料にもなります。タンパク質は消化されると、アミノ酸に分解されます。アミノ酸は 20種類ありますが、そのうちの9種類は体内でつくれないため「必須アミノ酸」と呼ばれ、食事から摂る必要があります。タンパク質が多く含まれる食品は、肉、魚、大豆製品、卵、乳製品などです。それぞれ構成しているアミノ酸の量やバランスが異なるので、いろいろな食材をまんべんなく摂るよう心がけてください。 良質な睡眠をとることが必須アミノ酸をとりやすくします また細胞を修復する成長ホルモンなどは、睡眠中に分泌されます。疲労回復にはぐっすり眠ることも大切で、アミノ酸はその手助けもしてくれます。睡眠の際、気持ちを穏やかにし、安眠をもたらすトリプトファンは脳神経伝達物質、セロトニンの原料となる必須アミノ酸です。寝つきの悪い方は、トリプトファンを多く含む牛乳や大豆製品を食事に摂り入れてみてはいかがでしょうか?女性に不足しがちなカルシウムを補う役目もします。 油脂も大切な栄養素のひとつ 体によいものを選びましょう カロリーの高い脂質ですが、「油脂=悪者」というわけではありません。ビタミンA、Eといった脂溶性ビタミンの吸収を助ける働きもあるので、ダイエットの敵! と毛嫌いしないでください。そのためにも、体によい油脂を選ぶことが大事です。脂質には、大きく分けて飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の2つがあります。牛や豚などの肉類の脂、バターなどの乳製品の脂は飽和脂肪酸で、血液中の中性脂肪やコレステロールを増やすため、適度な量の摂取に抑えましょう。一方、不飽和脂肪酸は逆に中性脂肪やコレステロールを低下させる働きをします。不飽和脂肪酸の中でも、近年注目されているのが「n-3系脂肪酸」というものです。魚に多く含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やIPA(イコサペンタエン酸)などがそれにあたります。1日1食は主菜を魚料理にするなどして、体によい油脂を取り込み、血の巡りをよくしましょう。 バランスよく食べるよい食習慣を身につけましょう 葉酸をはじめとしたビタミン豊富な野菜、食物繊維たっぷりのきのこ類などは意識して摂りたい食品です。いずれにしても大切なのはバランスのよい食事。体のリズムを整え、夕食は就寝の3時間前に終えるようにしましょう。 Point 3 食事でも摂れない不足しがちな栄養素はサプリメントを上手に活用 現代人に不足しているビタミン、ミネラルをサプリメントで補いましょう 現代は飽食の時代です。生活に必要な栄養素は食事で十分摂取できていますが、妊娠をしやすい体をつくるために必要なビタミン、ミネラルはどうしても不足しがちになります。なかなかきっかけがないと飲み始められないサプリメントですが、不妊治療の現場に携わる多くのドクターたちからも、体質改善や妊娠をしやすい体づくりのためにサプリメントを摂る重要性が指摘されています。サプリメントには現代人に不足しがちなビタミンやミネラル、また老化の原因である活性酸素の発生を抑制する抗酸化成分が含まれたものなど、いろいろとあります。「いろいろとありすぎて、どれを飲んでいいかわからない」という方のために、妊娠しやすい体をつくるために不足しがちな栄養を下記にまとめました。自分の食生活の中で「足りていない」「摂る機会が減っている」と感じるようなものがあれば、サプリメントで補っていきましょう。日々の食生活同様、サプリメントも日々の積み重ねが大切です。健康な体をつくり、体を整えるための一歩として始めてみてください。 不足しがちな主な栄養素とは?ビタミンB群B1、B2 ナイアシンなど、脳、神経、皮膚などの健康を保ち、エネルギー補給を助けます。葉 酸ビタミンB 群の一つで、タンパク質の代謝やDNAの合成に欠かすことのできない成分です。ミネラルビタミン同様、体の維持、調整に欠かせないカルシウム、リン、鉄分、亜鉛、セレンなど。抗酸化成分アスタキサンチン、プロアントシアニジン、シリマリン、ビタミンE、レスベラトロールなど。コエンザイムQ10抗酸化作用があり、肥満や心臓機能の改善などにも効果があるとされています。L-カルニチン(動物実験では)、卵母細胞の成熟を促進したり、生存率を高めることが報告されています。 ※『Jineko』2010Autumn「賢く食べてきちんと栄養補給、元気な体を取り戻そう!」/『夫婦でできるマタニティステップ』より加筆・修正。 ■ あわせて読みたい ■ たばこは、やっぱり 妊娠によくない? 卵巣機能が衰えています。プラセンタで機能改善することはできますか? サプリメントについてどうお考えですか?【英ウィメンズクリニック 塩谷 雅英先生】 40代の不妊治療~時間がない……治療以外にできることはある?~ 女性のための健康生活マガジン JINEKO Point 1 妊娠前からバランスよく食事を!「食事バランスガイド」でチェックをしましょう 「食事バランスガイド」を利用して食べる料理、食材の黄金比率を覚える 日常生活において「バランス」よく食事を摂るのが大事なのはわかるけれど、いったいどうやって?と思う人も多いはず。そこで目安になるのが、厚生労働省が推奨している「食事バランスガイド」です。「何を」「どれだけ」食べたらよいか、また主食、副菜、主菜、牛乳・乳製品、果物の5つのカテゴリーを料理イラストでわかりやすく表示しています。では、お菓子やお酒など嗜好飲料はだめなの?と考えてしまいがちですが、「食事バランスガイド」では食生活の中での楽しみと考えており、食事全体のバランスをみながら、適度に摂ることは問題ありません。まずは、週1~2回から始め、慣れてきたら、徐々に回数を増やし、「食事バランスガイド」のスタイルが当たり前になるよう、頑張りましょう。 ※(SV)はサービングの略。各料理1回あたりの標準的な量を示す。※「食事バランスガイド」における各料理区分の1日分の目安量。 Point 2 食事のバランスチェックのあとはバランスのよい食事の摂りかたポイント 元気の素・必須アミノ酸は食べて摂る大事な栄養素です 「食事バランスガイド」で料理や食材をチェックしましたが、何の食材にどのような栄養素が入っているか、少し確認をしていきましょう。まず体力や免疫力を保持し、アップさせるにはタンパク質は欠かせません。タンパク質は、筋肉や臓器を構成する成分で、ホルモンや免疫抗体の原料にもなります。タンパク質は消化されると、アミノ酸に分解されます。アミノ酸は 20種類ありますが、そのうちの9種類は体内でつくれないため「必須アミノ酸」と呼ばれ、食事から摂る必要があります。タンパク質が多く含まれる食品は、肉、魚、大豆製品、卵、乳製品などです。それぞれ構成しているアミノ酸の量やバランスが異なるので、いろいろな食材をまんべんなく摂るよう心がけてください。 良質な睡眠をとることが必須アミノ酸をとりやすくします また細胞を修復する成長ホルモンなどは、睡眠中に分泌されます。疲労回復にはぐっすり眠ることも大切で、アミノ酸はその手助けもしてくれます。睡眠の際、気持ちを穏やかにし、安眠をもたらすトリプトファンは脳神経伝達物質、セロトニンの原料となる必須アミノ酸です。寝つきの悪い方は、トリプトファンを多く含む牛乳や大豆製品を食事に摂り入れてみてはいかがでしょうか?女性に不足しがちなカルシウムを補う役目もします。 油脂も大切な栄養素のひとつ 体によいものを選びましょう カロリーの高い脂質ですが、「油脂=悪者」というわけではありません。ビタミンA、Eといった脂溶性ビタミンの吸収を助ける働きもあるので、ダイエットの敵! と毛嫌いしないでください。そのためにも、体によい油脂を選ぶことが大事です。脂質には、大きく分けて飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の2つがあります。牛や豚などの肉類の脂、バターなどの乳製品の脂は飽和脂肪酸で、血液中の中性脂肪やコレステロールを増やすため、適度な量の摂取に抑えましょう。一方、不飽和脂肪酸は逆に中性脂肪やコレステロールを低下させる働きをします。不飽和脂肪酸の中でも、近年注目されているのが「n-3系脂肪酸」というものです。魚に多く含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やIPA(イコサペンタエン酸)などがそれにあたります。1日1食は主菜を魚料理にするなどして、体によい油脂を取り込み、血の巡りをよくしましょう。 バランスよく食べるよい食習慣を身につけましょう 葉酸をはじめとしたビタミン豊富な野菜、食物繊維たっぷりのきのこ類などは意識して摂りたい食品です。いずれにしても大切なのはバランスのよい食事。体のリズムを整え、夕食は就寝の3時間前に終えるようにしましょう。 Point 3 食事でも摂れない不足しがちな栄養素はサプリメントを上手に活用 現代人に不足しているビタミン、ミネラルをサプリメントで補いましょう 現代は飽食の時代です。生活に必要な栄養素は食事で十分摂取できていますが、妊娠をしやすい体をつくるために必要なビタミン、ミネラルはどうしても不足しがちになります。なかなかきっかけがないと飲み始められないサプリメントですが、不妊治療の現場に携わる多くのドクターたちからも、体質改善や妊娠をしやすい体づくりのためにサプリメントを摂る重要性が指摘されています。サプリメントには現代人に不足しがちなビタミンやミネラル、また老化の原因である活性酸素の発生を抑制する抗酸化成分が含まれたものなど、いろいろとあります。「いろいろとありすぎて、どれを飲んでいいかわからない」という方のために、妊娠しやすい体をつくるために不足しがちな栄養を下記にまとめました。自分の食生活の中で「足りていない」「摂る機会が減っている」と感じるようなものがあれば、サプリメントで補っていきましょう。日々の食生活同様、サプリメントも日々の積み重ねが大切です。健康な体をつくり、体を整えるための一歩として始めてみてください。 不足しがちな主な栄養素とは?ビタミンB群B1、B2 ナイアシンなど、脳、神経、皮膚などの健康を保ち、エネルギー補給を助けます。葉 酸ビタミンB 群の一つで、タンパク質の代謝やDNAの合成に欠かすことのできない成分です。ミネラルビタミン同様、体の維持、調整に欠かせないカルシウム、リン、鉄分、亜鉛、セレンなど。抗酸化成分アスタキサンチン、プロアントシアニジン、シリマリン、ビタミンE、レスベラトロールなど。コエンザイムQ10抗酸化作用があり、肥満や心臓機能の改善などにも効果があるとされています。L-カルニチン(動物実験では)、卵母細胞の成熟を促進したり、生存率を高めることが報告されています。 ※『Jineko』2010Autumn「賢く食べてきちんと栄養補給、元気な体を取り戻そう!」/『夫婦でできるマタニティステップ』より加筆・修正。 ■ あわせて読みたい ■ たばこは、やっぱり 妊娠によくない? 卵巣機能が衰えています。プラセンタで機能改善することはできますか? サプリメントについてどうお考えですか?【英ウィメンズクリニック 塩谷 雅英先生】 40代の不妊治療~時間がない……治療以外にできることはある?~ 女性のための健康生活マガジン JINEKO
2015.7.15
コラム 不妊治療
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妊活セミナーレポート|卵子の質に影響する要素と改善法
3/14行われたジネコ 妊活セミナーより 卵子の質はその形態や受精、発育、着床状況などで評価されることになってくるかと思います。では、卵子の質に影響する要素にはどのようなものがあるのか、また、それを改善するためにどうしたらよいのかを簡単にご説明していきたいと思います。 卵子の質(影響する可能性のある要素)① ストレス② 血流:運動、温熱療法、冷え(漢方治療)③ 抗酸化作用:新鮮野菜・果物の摂取④ 食事:高タンパク食➜IVFの妊娠率UPとの報告あり。(リン脂質、コレステロール、ビタミン類、ミネラル類も)⑤ FSH:卵子の栄養不足⑥ 成長ホルモン:良質なタンパク質、筋力トレーニング、睡眠⑦ 終末糖化産物 (AGE):ゆっくりと食べる ① ストレス 長い期間治療されているとお年も上がってきて、卵もなかなかできずに治療を止めてしまう方もいらっしゃいます。しかし、止めてから1~2ヵ月経って「妊娠しました」ということも時々あるんですね。 昨年は、早発閉経でもう閉経しかかっているのではないかという方が治療をいったん中止して、その後に人工授精を2回ほど行ったら妊娠されたというケースもありました。 このように治療というのも、かなりストレスになっているのかもしれません。そのストレスから解放されて血流が改善。良い卵ができてうまく着床したのではないかと考えられる方も年に何人かいらっしゃいます。そういったストレスというものも卵の質に影響するのではないかという風に考えています。 ② 血流 よくいわれていることだと思いますが、血液の流れが滞ると卵巣に栄養やホルモンがきちんと届かず、結果的に良い質の卵ができにくいと考えられています。 運動や温熱療法、また、体が冷えやすい体質の方には漢方療法や鍼灸などもある程度効果があると考えられています。西洋医学だけではなく、プラスに働くような部分があれば東洋医学とも連携していくことも大切かと思います。 ③ 抗酸化作用 細胞が酸化するというのは卵子だけではなく、体全体の老化にも関わってきます。 酸化させないようにするためには、一般的には「新鮮な野菜やくだものを多く摂りましょう」と推奨されている部分もあるかと思います。また、サプリメントのDHEAやカルニチンは、細胞で呼吸しているミトコンドリアに働きかけるといわれています。 ④ 食事 「高タンパクの食事を摂ると妊娠率が上がる」というアメリカの学会での報告があります。それに合わせて、リン脂質やコレステロール、ビタミン類、ミネラル類などもバランスよく摂っていくことが大切です。 ⑤ FSH FSHというのは卵がつくりにくくなった時に上がってくるということもありますが、必要な状況に応じて卵が育つために分泌されなければいけないホルモンです。 足りていないようであれば、こういったホルモンを飲み薬や注射で補ってあげる。いわゆる排卵誘発ですね。卵子の栄養不足も質に影響してくると思います。 ⑥ 成長ホルモン 成長ホルモンも卵など細胞の成長に大きく関与しています。正常な分泌を促すためには、良質なタンパク質の摂取や適度な筋力トレーニング、しっかり睡眠をとるなどの対策が良いと言われています。 ⑦ 終末糖化産物(AGE) AGEは「タンパク質と糖が加熱されてできた物質」のこと。いろいろな食べ物や飲み物の中にも含まれ、普段、食事や間食として取り込まれています。この物質も老化を進める原因の1つとなり、血管や骨など全身、引いては卵子にも悪影響を与えます。体内にAGEを溜めないためには、食物繊維を含んだ食品を先に食べるなど食べる順番を工夫したり、早食いを避け、腹八分目を心がけるようにしましょう。 ■ 妊活セミナーレポート ■ 病態によっては「手術」も妊娠率を上げる重要な選択肢に 男性の立場から伝える 妊活で幸せ夫婦になる方法 卵子の真実 その1 2015年12月20日開催 妊活セミナーご報告レポート 荻窪病院 虹クリニック 女性のための健康生活マガジン JINEKO ジネコ妊活セミナー 3/14行われたジネコ 妊活セミナーより 卵子の質はその形態や受精、発育、着床状況などで評価されることになってくるかと思います。では、卵子の質に影響する要素にはどのようなものがあるのか、また、それを改善するためにどうしたらよいのかを簡単にご説明していきたいと思います。 卵子の質(影響する可能性のある要素)① ストレス② 血流:運動、温熱療法、冷え(漢方治療)③ 抗酸化作用:新鮮野菜・果物の摂取④ 食事:高タンパク食➜IVFの妊娠率UPとの報告あり。(リン脂質、コレステロール、ビタミン類、ミネラル類も)⑤ FSH:卵子の栄養不足⑥ 成長ホルモン:良質なタンパク質、筋力トレーニング、睡眠⑦ 終末糖化産物 (AGE):ゆっくりと食べる ① ストレス 長い期間治療されているとお年も上がってきて、卵もなかなかできずに治療を止めてしまう方もいらっしゃいます。しかし、止めてから1~2ヵ月経って「妊娠しました」ということも時々あるんですね。 昨年は、早発閉経でもう閉経しかかっているのではないかという方が治療をいったん中止して、その後に人工授精を2回ほど行ったら妊娠されたというケースもありました。 このように治療というのも、かなりストレスになっているのかもしれません。そのストレスから解放されて血流が改善。良い卵ができてうまく着床したのではないかと考えられる方も年に何人かいらっしゃいます。そういったストレスというものも卵の質に影響するのではないかという風に考えています。 ② 血流 よくいわれていることだと思いますが、血液の流れが滞ると卵巣に栄養やホルモンがきちんと届かず、結果的に良い質の卵ができにくいと考えられています。 運動や温熱療法、また、体が冷えやすい体質の方には漢方療法や鍼灸などもある程度効果があると考えられています。西洋医学だけではなく、プラスに働くような部分があれば東洋医学とも連携していくことも大切かと思います。 ③ 抗酸化作用 細胞が酸化するというのは卵子だけではなく、体全体の老化にも関わってきます。 酸化させないようにするためには、一般的には「新鮮な野菜やくだものを多く摂りましょう」と推奨されている部分もあるかと思います。また、サプリメントのDHEAやカルニチンは、細胞で呼吸しているミトコンドリアに働きかけるといわれています。 ④ 食事 「高タンパクの食事を摂ると妊娠率が上がる」というアメリカの学会での報告があります。それに合わせて、リン脂質やコレステロール、ビタミン類、ミネラル類などもバランスよく摂っていくことが大切です。 ⑤ FSH FSHというのは卵がつくりにくくなった時に上がってくるということもありますが、必要な状況に応じて卵が育つために分泌されなければいけないホルモンです。 足りていないようであれば、こういったホルモンを飲み薬や注射で補ってあげる。いわゆる排卵誘発ですね。卵子の栄養不足も質に影響してくると思います。 ⑥ 成長ホルモン 成長ホルモンも卵など細胞の成長に大きく関与しています。正常な分泌を促すためには、良質なタンパク質の摂取や適度な筋力トレーニング、しっかり睡眠をとるなどの対策が良いと言われています。 ⑦ 終末糖化産物(AGE) AGEは「タンパク質と糖が加熱されてできた物質」のこと。いろいろな食べ物や飲み物の中にも含まれ、普段、食事や間食として取り込まれています。この物質も老化を進める原因の1つとなり、血管や骨など全身、引いては卵子にも悪影響を与えます。体内にAGEを溜めないためには、食物繊維を含んだ食品を先に食べるなど食べる順番を工夫したり、早食いを避け、腹八分目を心がけるようにしましょう。 ■ 妊活セミナーレポート ■ 病態によっては「手術」も妊娠率を上げる重要な選択肢に 男性の立場から伝える 妊活で幸せ夫婦になる方法 卵子の真実 その1 2015年12月20日開催 妊活セミナーご報告レポート 荻窪病院 虹クリニック 女性のための健康生活マガジン JINEKO ジネコ妊活セミナー
2015.6.30
コラム 不妊治療
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妊活セミナーレポート|病態によっては「手術」も妊娠率を上げる重要な選択肢に
3/14行われたジネコ 妊活セミナーより 不妊治療は施設によって、そのやり方が異なる場合があると思いますが、クリニック選びのご参考に、当院の治療方針についてお話ししたいと思います。 自然に近い方法での妊娠を目指す 当院では、以下のようになるべく自然に近い方法で患者様に妊娠を目指していただければ、というのが基本的な考えとしてあります。 北村誠司:Assistrd Reproductive Technology(私の治療法とポイントアドバイス)より 自然に近い方法での妊娠1 35歳未満、不妊期間1年未満なら、数ヵ月様子見る場合も。2 一般不妊検査 異常なし➜4周期 タイミング指導 結果出なければ➜catch-up障害を疑いstep-up(腹腔鏡orIVF)3 体外受精では、出来るだけ媒精を目指す。(当院の受精率:媒精vs.ICSI=74%vs.78%)4 初回の移植は、初期胚を勧めている。(胚盤胞:1卵性多胎の確率UP(自然妊娠の4倍)、血液キメラ) 検査を行って異常がなければ、4周期程度タイミング指導を。フーナー検査や精子に異常がある場合は人工授精を4~5周期。それで結果が出なかったらステップアップをご提案する。そうはいってもすぐに体外受精ではなく、腹腔鏡をおすすめする場合もあります。 35歳未満で比較的お若い方、不妊歴が数ヵ月くらいということであれば、さらに数ヵ月ほど様子を見ることもあります。 仮に体外受精をするにしても、できるだけ通常に近い媒精を目指す。当院の受精率は体外受精でも顕微授精でも7~8割程度と、2つの方法にそれほど違いはありません。 新鮮胚移植の重視 移植に関してはまず初期胚移植をおすすめして、うまくいかなかったら胚盤胞で、という自然に近い形で行っています。日本でも海外でも今は、凍結してある受精卵を解凍して戻す、いわゆる融解胚移植というのが主流になっていますが、なかには新鮮な受精卵でしか妊娠できないという方もいらっしゃるので、すぐに凍結してしまうのではなく、新鮮胚移植も重視しています。 卵管重視 卵管がきちんと通っていないと自然妊娠が難しいこともあるので、そういった場合には腹腔鏡の手術をしていただいて卵管の口を開き、自然妊娠を目指します。とても腫れてしまっている場合には卵管を切除する。炎症性のお水が溜まってしまうとそれが子宮内、果ては膣の所まで来る方も。そういったことで妊娠しづらくなるケースもあるので、卵管の手術という選択肢も考えています。 また、卵管が詰まっている場合はFTカテーテルを使い、風船を膨らませる要領で通すという治療も。これは本院の荻窪病院で実施しています。 さらに、子宮鏡を用いた初期胚の卵管内胚移植(h-TEST)も行っています。腹腔鏡ではないので体への負担が少なく、日帰りでの治療が可能です。 内視鏡下手術別の妊娠率 手術効果の重視 手術効果については、本院の荻窪病院で内視鏡の手術を受けていただいた116名の方々(平成21年1月~平成23年12月)を対象にして検討してみました。そうしましたところ、腹腔鏡で子宮筋腫を取られた方の術後の妊娠率が6割もあったんですね。チョコレートのう腫の方も6割近く。子宮内膜ポリープの方では4割以上と悪くない成績をあげています。こういった決して小さくない効果がありますので、病態によっては手術も妊娠への前進として前向きに考えていただきたいと思います。 「寄り添う看護体制」という理念 当院の理念の1つとして、カウンセリングの充実があります。不妊カウンセラー(臨床心理士)がご相談にのり、治療の節目で心のコンディションのチェックができるような体制を整えています。外来の看護スタッフにも不妊カウンセラーの資格を持つ者がおりますので、治療に際しての不安などを診察時に気軽にご相談していただくこともできます。 また、当院では年に2~3回程度「虹サロン」いう催しをやっています。普段、白衣を着ている医師やスタッフを前にすると、どうしても身構えてしまう。そういった敷居を低くするために交流の場を設けているんですね。あとは、治療の説明や冷え解消の体操をみんなで行ったり、体に良い食べ物や飲み物を試していただける場にもなっています。 AMHの重視 当院ではAMH(抗ミュラー管ホルモン)も重視しています。AMHは、女性の卵巣における胞状卵胞から分泌されるホルモンだと考えられています。卵巣の卵のつくりやすさを指し示す従来のFSH値と比べて、生理周期に左右されることがほとんどないので、今、卵巣予備能力の目安として注目されています。 体外受精を受ける患者様だけではなく、卵巣の機能が非常に活発な方、著しく弱くなっているのではないかという方に測定をして、治療方針を立てる目安にしています。 学会の中では、卵巣にある卵の在庫と認識されていますが、AMHが0だと妊娠ができないのかというと、そんなことはありません。AMH値が低くても毎月排卵している方はたくさんいらっしゃいます。在庫といっていますが、それはだいたい4ヵ月から6ヵ月くらいに卵をつくれるような在庫と考えていただくといいかと思います。 画像を拡大する これは当院のデータですが、縦軸がAMHで、横軸は女性の年齢。やはり年齢が高くなるに従ってAMH値は下がってくるので、妊娠を考えた場合、できる範囲で選択肢が多い時期に治療できるといいのではないかと患者様にもお話ししています。AMHが非常に高い場合には卵巣が腫れたりすることが考えられますので、クロミフェンを使いつつ、HMG注射をプラスしていく中間の刺激法をおすすめすることが多いですね。AMHがほどよく高い場合にはアンタゴニスト周期やロング法、ショート法など。AMHが低い場合にはやはり、低刺激のやり方を進めていくことが中心となっております。 子宮内膜の重視 最後に、当院では子宮内膜も重視した診療を行っています。子宮の内膜が厚くなりにくい、薄い状態だと、着床率や妊娠率が下がるというのはかなりはっきりしているんですね。 子宮内膜が薄くなる理由は3つあります。 1つは、内膜の掻爬手術を受けたことがあると薄くなるリスクは少し上がってしまうんですね。掻爬は、妊娠の初期段階で流産してしまった時に子宮内の妊娠組織を手術で取り除いてあげるものです。その時に、中を掻き出す器械が内膜をつくる基底層という所を傷つけてしまうことがあるんですね。そうすると術後、内膜が厚くなりにくくなってしまうというケースがあります。あとは年齢が上がってくるとか、生まれつきの方もいる。 では、内膜が厚くならない場合、どうしたらいいのでしょうか。 一般的にもよく使われていると思うのですが、融解胚移植をする際にホルモン補充療法といって、ホルモン剤を使って人工的に内膜を厚くしていくようにします。こうすると、内膜が厚くなることが期待できます。 それでも厚くならない、効果がないという場合は、ビタミン剤を使います。ビタミン剤には抗酸化作用があり、その作用によって血流が改善されることが期待出来ます。3mm、4mmと非常に薄い内膜の方でも、数ヵ月間ビタミン剤を服用して妊娠に至るケースもあります。 あとは2年くらい前からペントキシフィリン療法を行っていますが、これは日本で売られている薬ではないので、少しハードルが高いかもしれません。脳外科などで血流を改善するという目的で使われているもので、効果が見られるケースもあります。 子宮内膜が薄くても、こうしたいくつかの方法が対策としてあるということをお伝えできればと思います。 ■ 妊活セミナーレポート ■ 卵子の質に影響する要素と改善法 男性の立場から伝える 妊活で幸せ夫婦になる方法 卵子の真実 その1 荻窪病院 虹クリニック 女性のための健康生活マガジン JINEKO ジネコ妊活セミナー 3/14行われたジネコ 妊活セミナーより 不妊治療は施設によって、そのやり方が異なる場合があると思いますが、クリニック選びのご参考に、当院の治療方針についてお話ししたいと思います。 自然に近い方法での妊娠を目指す 当院では、以下のようになるべく自然に近い方法で患者様に妊娠を目指していただければ、というのが基本的な考えとしてあります。 北村誠司:Assistrd Reproductive Technology(私の治療法とポイントアドバイス)より 自然に近い方法での妊娠1 35歳未満、不妊期間1年未満なら、数ヵ月様子見る場合も。2 一般不妊検査 異常なし➜4周期 タイミング指導 結果出なければ➜catch-up障害を疑いstep-up(腹腔鏡orIVF)3 体外受精では、出来るだけ媒精を目指す。(当院の受精率:媒精vs.ICSI=74%vs.78%)4 初回の移植は、初期胚を勧めている。(胚盤胞:1卵性多胎の確率UP(自然妊娠の4倍)、血液キメラ) 検査を行って異常がなければ、4周期程度タイミング指導を。フーナー検査や精子に異常がある場合は人工授精を4~5周期。それで結果が出なかったらステップアップをご提案する。そうはいってもすぐに体外受精ではなく、腹腔鏡をおすすめする場合もあります。 35歳未満で比較的お若い方、不妊歴が数ヵ月くらいということであれば、さらに数ヵ月ほど様子を見ることもあります。 仮に体外受精をするにしても、できるだけ通常に近い媒精を目指す。当院の受精率は体外受精でも顕微授精でも7~8割程度と、2つの方法にそれほど違いはありません。 新鮮胚移植の重視 移植に関してはまず初期胚移植をおすすめして、うまくいかなかったら胚盤胞で、という自然に近い形で行っています。日本でも海外でも今は、凍結してある受精卵を解凍して戻す、いわゆる融解胚移植というのが主流になっていますが、なかには新鮮な受精卵でしか妊娠できないという方もいらっしゃるので、すぐに凍結してしまうのではなく、新鮮胚移植も重視しています。 卵管重視 卵管がきちんと通っていないと自然妊娠が難しいこともあるので、そういった場合には腹腔鏡の手術をしていただいて卵管の口を開き、自然妊娠を目指します。とても腫れてしまっている場合には卵管を切除する。炎症性のお水が溜まってしまうとそれが子宮内、果ては膣の所まで来る方も。そういったことで妊娠しづらくなるケースもあるので、卵管の手術という選択肢も考えています。 また、卵管が詰まっている場合はFTカテーテルを使い、風船を膨らませる要領で通すという治療も。これは本院の荻窪病院で実施しています。 さらに、子宮鏡を用いた初期胚の卵管内胚移植(h-TEST)も行っています。腹腔鏡ではないので体への負担が少なく、日帰りでの治療が可能です。 内視鏡下手術別の妊娠率 手術効果の重視 手術効果については、本院の荻窪病院で内視鏡の手術を受けていただいた116名の方々(平成21年1月~平成23年12月)を対象にして検討してみました。そうしましたところ、腹腔鏡で子宮筋腫を取られた方の術後の妊娠率が6割もあったんですね。チョコレートのう腫の方も6割近く。子宮内膜ポリープの方では4割以上と悪くない成績をあげています。こういった決して小さくない効果がありますので、病態によっては手術も妊娠への前進として前向きに考えていただきたいと思います。 「寄り添う看護体制」という理念 当院の理念の1つとして、カウンセリングの充実があります。不妊カウンセラー(臨床心理士)がご相談にのり、治療の節目で心のコンディションのチェックができるような体制を整えています。外来の看護スタッフにも不妊カウンセラーの資格を持つ者がおりますので、治療に際しての不安などを診察時に気軽にご相談していただくこともできます。 また、当院では年に2~3回程度「虹サロン」いう催しをやっています。普段、白衣を着ている医師やスタッフを前にすると、どうしても身構えてしまう。そういった敷居を低くするために交流の場を設けているんですね。あとは、治療の説明や冷え解消の体操をみんなで行ったり、体に良い食べ物や飲み物を試していただける場にもなっています。 AMHの重視 当院ではAMH(抗ミュラー管ホルモン)も重視しています。AMHは、女性の卵巣における胞状卵胞から分泌されるホルモンだと考えられています。卵巣の卵のつくりやすさを指し示す従来のFSH値と比べて、生理周期に左右されることがほとんどないので、今、卵巣予備能力の目安として注目されています。 体外受精を受ける患者様だけではなく、卵巣の機能が非常に活発な方、著しく弱くなっているのではないかという方に測定をして、治療方針を立てる目安にしています。 学会の中では、卵巣にある卵の在庫と認識されていますが、AMHが0だと妊娠ができないのかというと、そんなことはありません。AMH値が低くても毎月排卵している方はたくさんいらっしゃいます。在庫といっていますが、それはだいたい4ヵ月から6ヵ月くらいに卵をつくれるような在庫と考えていただくといいかと思います。 画像を拡大する これは当院のデータですが、縦軸がAMHで、横軸は女性の年齢。やはり年齢が高くなるに従ってAMH値は下がってくるので、妊娠を考えた場合、できる範囲で選択肢が多い時期に治療できるといいのではないかと患者様にもお話ししています。AMHが非常に高い場合には卵巣が腫れたりすることが考えられますので、クロミフェンを使いつつ、HMG注射をプラスしていく中間の刺激法をおすすめすることが多いですね。AMHがほどよく高い場合にはアンタゴニスト周期やロング法、ショート法など。AMHが低い場合にはやはり、低刺激のやり方を進めていくことが中心となっております。 子宮内膜の重視 最後に、当院では子宮内膜も重視した診療を行っています。子宮の内膜が厚くなりにくい、薄い状態だと、着床率や妊娠率が下がるというのはかなりはっきりしているんですね。 子宮内膜が薄くなる理由は3つあります。 1つは、内膜の掻爬手術を受けたことがあると薄くなるリスクは少し上がってしまうんですね。掻爬は、妊娠の初期段階で流産してしまった時に子宮内の妊娠組織を手術で取り除いてあげるものです。その時に、中を掻き出す器械が内膜をつくる基底層という所を傷つけてしまうことがあるんですね。そうすると術後、内膜が厚くなりにくくなってしまうというケースがあります。あとは年齢が上がってくるとか、生まれつきの方もいる。 では、内膜が厚くならない場合、どうしたらいいのでしょうか。 一般的にもよく使われていると思うのですが、融解胚移植をする際にホルモン補充療法といって、ホルモン剤を使って人工的に内膜を厚くしていくようにします。こうすると、内膜が厚くなることが期待できます。 それでも厚くならない、効果がないという場合は、ビタミン剤を使います。ビタミン剤には抗酸化作用があり、その作用によって血流が改善されることが期待出来ます。3mm、4mmと非常に薄い内膜の方でも、数ヵ月間ビタミン剤を服用して妊娠に至るケースもあります。 あとは2年くらい前からペントキシフィリン療法を行っていますが、これは日本で売られている薬ではないので、少しハードルが高いかもしれません。脳外科などで血流を改善するという目的で使われているもので、効果が見られるケースもあります。 子宮内膜が薄くても、こうしたいくつかの方法が対策としてあるということをお伝えできればと思います。 ■ 妊活セミナーレポート ■ 卵子の質に影響する要素と改善法 男性の立場から伝える 妊活で幸せ夫婦になる方法 卵子の真実 その1 荻窪病院 虹クリニック 女性のための健康生活マガジン JINEKO ジネコ妊活セミナー
2015.6.29
コラム 不妊治療
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初めてでもよくわかる!秋山先生の不妊治療ABC|体外受精と顕微授精
これから不妊治療を始める方に、秋山レディースクリニックの秋山先生が不妊治療の基本をお伝えしていきます。第4回目は、体外受精と顕微授精について詳しくご説明します。
2015.6.19
コラム 不妊治療
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二人で、いまと未来を見つめて
つらい流産と死産を二人で乗り越えながら、不妊治療と不育治療を続けていることりmama*さんとご主人のオット君。20 回目の結婚記念日を迎えた今年、二人の気持ちに変化が生まれつつあります。未来のトビラの前に立つお二人に、あらためてお話を聞きました。 今できるのは、地道な 不妊治療と体質改善 ことりmama*さんとオット君のお二人に、初めてお話をうかがったのは2012年の夏。当時、お二人は、長い不妊治療と不育治療を経てやっと授かった赤ちゃんの死産から、まだ一年も経っていない頃でした。今回は、この連載の最終回のために、再びお会いして、今のお気持ちを聞かせていただきました。この8カ月、お二人はどう過ごされてきたのでしょうか。「これまでと変わらずに、助成金を使っての顕微授精とタイミング療法での不妊治療を続けています。私の住んでいる北海道では、特定不妊治療の助成金の申請は、2年目以降は年に2回まで。経済的な負担が大きく、全額を自費で行うのは難しいので、顕微授精のチャンスは年に2回ということになるんです」と、ことりmama*さん。今は、卵子の質を上げるため、そして妊娠しやすい体をつくるために、さまざまな形で体質改善に取り組んでいるそう。8カ月前にお会いした時にも、たしか毎朝のウォーキングを習慣にされていましたね?「はい。でも、北海道では冬の間は外での運動は体を冷やしてしまうので、今は筋トレや骨盤トレーニングなど家の中でできることをしています。今年は4月に入ってもなかなか暖かくならないので、ウォーキングはもう少し先かな」筋トレで筋肉を増やすこと、スクワットや股関節トレーニングで股関節の柔軟性や太ももの内転筋を鍛えること、ウォーキングなどの有酸素運動で血流をよくすることなど、どれも不妊治療を支える体づくりには大切なことです。「毎日欠かさず運動することで、血流改善になっている気がします」ことりmama*さんが特に気を付けているのは、体を冷やさないこと。毎日の運動のほか、睡眠時には遠赤外線で体を温めるマットを、日中は腹巻きをはずしません。「ダイエットの効果は出ていないのですが(笑)、この頃はお腹が冷えなくなってきたのを感じます。以前は、お腹の辺りに手のひらをあてると夏でもひんやりとしていたのですが、最近はそれがなくなりました。家の中で足もとが冷えていたり、背中がざわざ わっとする時でも、お腹は冷えていないんです」食事も、カフェインは摂らず、お砂糖も最低限にするなど、気を遣ってい ます。そんな毎日の積み重ねが、冷えの解消につながっているようです。 不妊治療卒業を前に二人で悔いのない毎日を 体質改善は、毎日地道に続けるしかないと話すことりmama*さんですが、続けるためのモチベーションを保つのはやはり大変だそう。そこで、ウォーキング用の靴やウエアを“ご褒美”として購入したり、ダイエットが成功したら着られるようにワンサイズ小さめの洋服を買ってみたりと、ちょっとした工夫を取り入れているそう。「後悔しないように、できるだけのことはしておきたいんです」ふと、いつもの元気な話し方とは違う、少しトーンを落とした声でぽつりとつぶやいた、ことりmama*さん。実は、そろそろ不妊治療を卒業しようかなという気持ちもあるのだと、打ち明けてくださいました。「年齢的なこともあるのか、質のいい卵子が育たないんです。排卵誘発剤を使っても採卵できるのは2個くらいだったり、空胞が多かったり。この状態で妊娠したとしても、また流産や死産になってしまうのではという恐怖感もすごく大きくて...」赤ちゃんを授かりたい気持ちはある。でも、気分が落ち込むとやめようと考えてしまう。そんな葛藤のなかで不妊治療と不育治療を続け、約20年がたった今、良好な卵子が育たないという現実と向き合わなければならなくなったのです。私たち取材スタッフが、かける言葉に迷っていると、ことりmama*さんは、「ところがね、体を温めた効果が出たのか、卵子の状態がすごくよかった時があったんです。それで、利用できる助成金が残っているうちは治療を続けようかという気持ちになって。あとあと後悔するよりは、できることはすべてしたと思える状態で卒業したいんです」と、決意を感じさせるすっきりとした声で話してくれました。新たなゴールを決め、そこに到着するまでは悔いの残らないよう、体質改善と不妊治療を続けると決めたことりmama*さん。その決心をオット君はどう受け止めたのでしょうか。「助成金が使えるうちは続けたいと、普段の会話のなかで自然に話してくれました。彼女が続けたいなら、やめることはないと僕は思っています。以前は不妊治療の大変さがわからずに、あまり協力的ではなかった時期が僕にもありました。でも、彼女が治療のことや、自分の想いを隠さずに話してくれたことで、赤ちゃんが欲しいという彼女の強い気持ちが今はよくわかります。今回、彼女が今後の方向性を決めたことで、僕も無理なく自然な気持ちで、一緒に不妊治療にあたっていくつもりです」(オット君)今は、精子の運動率などを改善する効果が期待できるトマトジュースとクルミを毎日摂っているそうです。今年、結婚20周年を迎えた二人は、結婚してからずっと治療を続けてきました。「頑張り続けてきたので、これ以上頑張ると息切れしちゃいます。だから、今していることを、これからも続けていこうと思っているんです」(ことりmama*さん)いつもマイペースで、無理なく治療に取り組むオット君との、二人三脚の日々が、まだしばらく続きます。 これまでの経験を生かしたほっとできる場所をつくりたい ことりmama*さんが不妊治療と不育治療の日々をつづっているブログ。同じ悩みを持つ女性たちの交流の場所にもなっています。ことりmama*さん自身、寄せられるコメントに励まされることも多かったとか。「不妊治療を卒業したら、今度はブログという形ではない、別の場所をつくれたらいいな、なんてこの頃思い始めているんですよ」(ことりmama*さん)不妊や不育の悩みを抱える方たちが、ことりmama*さんの家に遊びに来るような感覚で、気軽に悩みを話したり、心を休めたり。そんな小さなウェブサイトのイメージです。「 20年間、つらい思いもしたし、悩みもしました。不妊治療を卒業したら、今度はその体験を、誰かのために役立てられたらいいな、なんて思っています」 (完) 未来のトビラ ≫ 第1話 不妊症、そして、つらい流産と死産...さまざまな想いを抱えながらも前を向いて歩き続ける二人の物語。 ≫ 第2話 パニック障害の症状とも向き合いながらいよいよ積極的な不妊治療である体外受精をスタート。 ≫ 第3話 初めての胚盤胞移植に期待は膨らみますが、治療に終止符を打つ時が近づいていました。 ≫ 最終回 二人で多くの試練を乗り越えた今、偽りのない気持ちと、二人のこれからの未来が見えてきました。 他のユーザーストーリーも読む つらい流産と死産を二人で乗り越えながら、不妊治療と不育治療を続けていることりmama*さんとご主人のオット君。20 回目の結婚記念日を迎えた今年、二人の気持ちに変化が生まれつつあります。未来のトビラの前に立つお二人に、あらためてお話を聞きました。 今できるのは、地道な 不妊治療と体質改善 ことりmama*さんとオット君のお二人に、初めてお話をうかがったのは2012年の夏。当時、お二人は、長い不妊治療と不育治療を経てやっと授かった赤ちゃんの死産から、まだ一年も経っていない頃でした。今回は、この連載の最終回のために、再びお会いして、今のお気持ちを聞かせていただきました。この8カ月、お二人はどう過ごされてきたのでしょうか。「これまでと変わらずに、助成金を使っての顕微授精とタイミング療法での不妊治療を続けています。私の住んでいる北海道では、特定不妊治療の助成金の申請は、2年目以降は年に2回まで。経済的な負担が大きく、全額を自費で行うのは難しいので、顕微授精のチャンスは年に2回ということになるんです」と、ことりmama*さん。今は、卵子の質を上げるため、そして妊娠しやすい体をつくるために、さまざまな形で体質改善に取り組んでいるそう。8カ月前にお会いした時にも、たしか毎朝のウォーキングを習慣にされていましたね?「はい。でも、北海道では冬の間は外での運動は体を冷やしてしまうので、今は筋トレや骨盤トレーニングなど家の中でできることをしています。今年は4月に入ってもなかなか暖かくならないので、ウォーキングはもう少し先かな」筋トレで筋肉を増やすこと、スクワットや股関節トレーニングで股関節の柔軟性や太ももの内転筋を鍛えること、ウォーキングなどの有酸素運動で血流をよくすることなど、どれも不妊治療を支える体づくりには大切なことです。「毎日欠かさず運動することで、血流改善になっている気がします」ことりmama*さんが特に気を付けているのは、体を冷やさないこと。毎日の運動のほか、睡眠時には遠赤外線で体を温めるマットを、日中は腹巻きをはずしません。「ダイエットの効果は出ていないのですが(笑)、この頃はお腹が冷えなくなってきたのを感じます。以前は、お腹の辺りに手のひらをあてると夏でもひんやりとしていたのですが、最近はそれがなくなりました。家の中で足もとが冷えていたり、背中がざわざ わっとする時でも、お腹は冷えていないんです」食事も、カフェインは摂らず、お砂糖も最低限にするなど、気を遣ってい ます。そんな毎日の積み重ねが、冷えの解消につながっているようです。 不妊治療卒業を前に二人で悔いのない毎日を 体質改善は、毎日地道に続けるしかないと話すことりmama*さんですが、続けるためのモチベーションを保つのはやはり大変だそう。そこで、ウォーキング用の靴やウエアを“ご褒美”として購入したり、ダイエットが成功したら着られるようにワンサイズ小さめの洋服を買ってみたりと、ちょっとした工夫を取り入れているそう。「後悔しないように、できるだけのことはしておきたいんです」ふと、いつもの元気な話し方とは違う、少しトーンを落とした声でぽつりとつぶやいた、ことりmama*さん。実は、そろそろ不妊治療を卒業しようかなという気持ちもあるのだと、打ち明けてくださいました。「年齢的なこともあるのか、質のいい卵子が育たないんです。排卵誘発剤を使っても採卵できるのは2個くらいだったり、空胞が多かったり。この状態で妊娠したとしても、また流産や死産になってしまうのではという恐怖感もすごく大きくて...」赤ちゃんを授かりたい気持ちはある。でも、気分が落ち込むとやめようと考えてしまう。そんな葛藤のなかで不妊治療と不育治療を続け、約20年がたった今、良好な卵子が育たないという現実と向き合わなければならなくなったのです。私たち取材スタッフが、かける言葉に迷っていると、ことりmama*さんは、「ところがね、体を温めた効果が出たのか、卵子の状態がすごくよかった時があったんです。それで、利用できる助成金が残っているうちは治療を続けようかという気持ちになって。あとあと後悔するよりは、できることはすべてしたと思える状態で卒業したいんです」と、決意を感じさせるすっきりとした声で話してくれました。新たなゴールを決め、そこに到着するまでは悔いの残らないよう、体質改善と不妊治療を続けると決めたことりmama*さん。その決心をオット君はどう受け止めたのでしょうか。「助成金が使えるうちは続けたいと、普段の会話のなかで自然に話してくれました。彼女が続けたいなら、やめることはないと僕は思っています。以前は不妊治療の大変さがわからずに、あまり協力的ではなかった時期が僕にもありました。でも、彼女が治療のことや、自分の想いを隠さずに話してくれたことで、赤ちゃんが欲しいという彼女の強い気持ちが今はよくわかります。今回、彼女が今後の方向性を決めたことで、僕も無理なく自然な気持ちで、一緒に不妊治療にあたっていくつもりです」(オット君)今は、精子の運動率などを改善する効果が期待できるトマトジュースとクルミを毎日摂っているそうです。今年、結婚20周年を迎えた二人は、結婚してからずっと治療を続けてきました。「頑張り続けてきたので、これ以上頑張ると息切れしちゃいます。だから、今していることを、これからも続けていこうと思っているんです」(ことりmama*さん)いつもマイペースで、無理なく治療に取り組むオット君との、二人三脚の日々が、まだしばらく続きます。 これまでの経験を生かしたほっとできる場所をつくりたい ことりmama*さんが不妊治療と不育治療の日々をつづっているブログ。同じ悩みを持つ女性たちの交流の場所にもなっています。ことりmama*さん自身、寄せられるコメントに励まされることも多かったとか。「不妊治療を卒業したら、今度はブログという形ではない、別の場所をつくれたらいいな、なんてこの頃思い始めているんですよ」(ことりmama*さん)不妊や不育の悩みを抱える方たちが、ことりmama*さんの家に遊びに来るような感覚で、気軽に悩みを話したり、心を休めたり。そんな小さなウェブサイトのイメージです。「 20年間、つらい思いもしたし、悩みもしました。不妊治療を卒業したら、今度はその体験を、誰かのために役立てられたらいいな、なんて思っています」 (完) 未来のトビラ ≫ 第1話 不妊症、そして、つらい流産と死産...さまざまな想いを抱えながらも前を向いて歩き続ける二人の物語。 ≫ 第2話 パニック障害の症状とも向き合いながらいよいよ積極的な不妊治療である体外受精をスタート。 ≫ 第3話 初めての胚盤胞移植に期待は膨らみますが、治療に終止符を打つ時が近づいていました。 ≫ 最終回 二人で多くの試練を乗り越えた今、偽りのない気持ちと、二人のこれからの未来が見えてきました。 他のユーザーストーリーも読む
2015.6.17
コラム 不妊治療
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悲しい別れと新たな決意
不妊治療と不育治療を19年間続けていることりmama*さんとご主人のオット君。9回の流産を乗り越え、妊娠。しかし、4カ月検診の結果、つらい決断をすることに——。そして、経済的事情から体外受精を諦めようとした矢先、主治医が二人を思いやった打開策を提案してくれます。 悲しい別れの瞬間――毅然としていた夫の涙 結婚以来、不妊治療と不育治療を続けてきた、ことりmama*さんとオット君。2011年の夏、顕微授精を見送った後に、思いがけず自然妊娠をしていることがわかりました。無事に出産するため、徹底した絶対安静の日々を送ってきたことりmama*さんでしたが、4カ月検診で告げられたのは、赤ちゃんの染色体異常。「お腹の中で頑張って成長したとしても、生まれてきた瞬間に死んでしまう— 」。そう主治医の先生に告げられた二人は、赤ちゃんと悲しい別れをすることになりました。「2泊3日の入院の間、夫は会社を休んで、一緒に病室に泊まってくれ ました。陣痛を起こす薬を投与され、私がお腹の赤ちゃんに何度も『ごめんね』と言いながら泣いていると、夫もお腹をなでてくれました。泣くのは、私のために必死に我慢してくれているようでした」(ことりmama*さん)そして、死産。産声を上げることなく生まれてきた赤ちゃんを、看護師長さんが二人のもとに連れてきてくれました。 小さな体だけど、とてもかわいい、立派な赤ちゃん。手と足の指の1本1本、目鼻口もあるのを目にした瞬間、それまで毅然としていたオット君が、涙を流して泣きました。「長く一緒にいて、こんなに泣いて いるのを見るのは初めてでした。それまでの流産の時も、夫はつらい思いをしたと思うのですが、死産だった子を抱いた時に、『今までの子も、こんなふうに育っていたんだ』という実感が生まれたのだと思います」(ことりmama*さん)普段は優しく見守ってくれているオット君が、赤ちゃんを失ったことで見せた心の内。ことりmama*さんはそれを知って、もう一度、オット君に赤ちゃんを抱かせてあげようと決心したのです。 長年見守ってくれた先生が経済的な悩みに打開策を提案! 長い期間にわたる治療ですが、ことりmama*さんは休まずに続けてきたというわけではありませんでした。「不妊治療や不育治療は体もつらいですが、ゴールが見えないという点で精神的な負担がすごく大きくて。これまでも、何度か治療をお休みしています。でも、2~3周期休んでいる時、周りに妊娠した人が出てくると焦ってしまうんですよね。休んでばかりいられないって思うんです」(ことりmama*さん)しかし、体と心は前に進もうとしても、経済的な事情から、思うように治療ができない悩みもありました。「2年間のタイミング療法の後、人工授精に進み、主治医が体外受精のできるクリニックを開業したのをきっかけにステップアップしました。実はもっと早く体外受精をしたい気持ちがあったのですが、当時はまだ年齢が若かったし、費用の問題もあり断念していました。助成金制度ができて少しラクになりましたが、それでもまだ経済的な負担は大きいです」ことりmama*さんが住む北海道の場合、※特定不妊治療に対する助成金は、1回につき15万円まで。1年目は年3回、2年目以降は年2回まで申請が可能です。「15万円の助成金はとても助かりますが、それでもまだ大きな自己負担があります。それに、不育症でもあるので、妊娠してからはヘパリンの自己注射をします。私の場合は1日2本。病院や必要な本数によって費用は違うようですが、当時は保険適用外だったため、私は月4~6万円かかりました。今は保険が適用になり、ヘパリンの費用の負担はなくなりましたが、当時は大変でした」(ことりmama*さん)経済的負担を少しでも軽くするために、途中でお休み期間を入れたり、タイミング療法を取り入れたりと工夫もしました。「でも、これからはいろいろな事情で、体外受精をする経済的な余裕がなくて...。タイミング療法しかで きませんと、先生に伝えました」すると先生は、励ますようにこう言ってくれたのです。「負担にならない範囲で顕微授精をしましょう。1年に2回顕微授精をして、それ以外の期間はタイミング療法でいこう。ことりmama*さんは、ずっと頑張ってきたんだから」これまでも、できるだけ費用がかからないように、できる範囲で配慮してくれていた先生からの、二人を思いやったご提案でした。「私たちの十数年間の治療を見守ってくださった先生が『体外受精は諦める』という告白をした私にしてくださった、配慮だったのだと思います。費用を抑えるために、排卵誘発剤の質を下げました。そうすると、採卵できる卵子の数は少なくなるんです。でも先生は、『そんなにたくさん卵子をつくらなくても、2個採卵できればいいんだから』と言ってくださって」こうして、ことりmama*さんは、諦めかけた体外受精での不妊治療を継続することになったのです。 コミュニケーションで築く主治医との信頼関係 ことりmama*さんの経済的な事情に配慮して、最善の治療方法を提案してくれた主治医の先生。普段の診察の際にも、ことりmama*さんが不安になるようなことは、あえて言わないようにしてくれているのが感じられるそう。「長く不妊治療をしているので、ホルモン数値を聞くと、私はその数字に縛られてしまうんです。気持ちが前に進まなくなってしまい、私にとってマイナスになります。先生はそれをわかっていらっしゃって、ホルモン数値を言わないでくださったりするんです。でも、いい時は『いい数値が出てるよ』と教えてくれるので、言わない時は、ああ、あまりよくないんだなってわかってしまうんですけどね(笑)」(ことりmama*さん)安心して治療を続けるためには、主治医とのコミュニケーションや信頼関係も大切。確認したいことや疑問に思うことがあっても、担当医になかなか聞けないという人も多いと 思います。ことりmama*さんは、「言いたいことを言える、聞きたいことを聞けるという関係は、大変だけど自分からつくっていかないとできないものなのかもしれませんね」と、先生との十数年間を振り返ります。「彼女は、病院から帰ってくると『今日はこんな検査だったよ。先生にこんなことを言われたよ』と細かく教えてくれるのですが、その話を聞いていると、彼女の場合、先生に言われたことを『はい。はい』と聞いて帰ってくるだけの患者ではないようなんです」とオット君。先生との小さなやりとりの積み重ねが現在の信頼関係につながっているのではないか、と言います。「私、心配性なので、検査結果や自分の状態でわからないことがあると、すべて質問するんです。そうすると次の検診で、前回私が何を質問したか、何を心配していたかを先生が覚えていて、それについて一言かけてくださいます」(ことりmama*さん)そんな積み重ねが先生への信頼感につながっているそう。「先生は妊娠がわかっても、私には『おめでとう』と言わないんです」それが、妊娠してからは不育症を乗り越えなくてはいけない、自分への気遣いだということも、ことりmama*さんは感じているそう。先生からの「おめでとう」を聞ける日を目標に、ことりmama*さんは、体質改善も含めた治療を今も続けています。 (つづく) 未来のトビラ ≫ 第1話 不妊症、そして、つらい流産と死産...さまざまな想いを抱えながらも前を向いて歩き続ける二人の物語。 ≫ 第2話 パニック障害の症状とも向き合いながらいよいよ積極的な不妊治療である体外受精をスタート。 ≫ 第3話 初めての胚盤胞移植に期待は膨らみますが、治療に終止符を打つ時が近づいていました。 ≫ 最終回 二人で多くの試練を乗り越えた今、偽りのない気持ちと、二人のこれからの未来が見えてきました。 他のユーザーストーリーも読む 不妊治療と不育治療を19年間続けていることりmama*さんとご主人のオット君。9回の流産を乗り越え、妊娠。しかし、4カ月検診の結果、つらい決断をすることに——。そして、経済的事情から体外受精を諦めようとした矢先、主治医が二人を思いやった打開策を提案してくれます。 悲しい別れの瞬間――毅然としていた夫の涙 結婚以来、不妊治療と不育治療を続けてきた、ことりmama*さんとオット君。2011年の夏、顕微授精を見送った後に、思いがけず自然妊娠をしていることがわかりました。無事に出産するため、徹底した絶対安静の日々を送ってきたことりmama*さんでしたが、4カ月検診で告げられたのは、赤ちゃんの染色体異常。「お腹の中で頑張って成長したとしても、生まれてきた瞬間に死んでしまう— 」。そう主治医の先生に告げられた二人は、赤ちゃんと悲しい別れをすることになりました。「2泊3日の入院の間、夫は会社を休んで、一緒に病室に泊まってくれ ました。陣痛を起こす薬を投与され、私がお腹の赤ちゃんに何度も『ごめんね』と言いながら泣いていると、夫もお腹をなでてくれました。泣くのは、私のために必死に我慢してくれているようでした」(ことりmama*さん)そして、死産。産声を上げることなく生まれてきた赤ちゃんを、看護師長さんが二人のもとに連れてきてくれました。 小さな体だけど、とてもかわいい、立派な赤ちゃん。手と足の指の1本1本、目鼻口もあるのを目にした瞬間、それまで毅然としていたオット君が、涙を流して泣きました。「長く一緒にいて、こんなに泣いて いるのを見るのは初めてでした。それまでの流産の時も、夫はつらい思いをしたと思うのですが、死産だった子を抱いた時に、『今までの子も、こんなふうに育っていたんだ』という実感が生まれたのだと思います」(ことりmama*さん)普段は優しく見守ってくれているオット君が、赤ちゃんを失ったことで見せた心の内。ことりmama*さんはそれを知って、もう一度、オット君に赤ちゃんを抱かせてあげようと決心したのです。 長年見守ってくれた先生が経済的な悩みに打開策を提案! 長い期間にわたる治療ですが、ことりmama*さんは休まずに続けてきたというわけではありませんでした。「不妊治療や不育治療は体もつらいですが、ゴールが見えないという点で精神的な負担がすごく大きくて。これまでも、何度か治療をお休みしています。でも、2~3周期休んでいる時、周りに妊娠した人が出てくると焦ってしまうんですよね。休んでばかりいられないって思うんです」(ことりmama*さん)しかし、体と心は前に進もうとしても、経済的な事情から、思うように治療ができない悩みもありました。「2年間のタイミング療法の後、人工授精に進み、主治医が体外受精のできるクリニックを開業したのをきっかけにステップアップしました。実はもっと早く体外受精をしたい気持ちがあったのですが、当時はまだ年齢が若かったし、費用の問題もあり断念していました。助成金制度ができて少しラクになりましたが、それでもまだ経済的な負担は大きいです」ことりmama*さんが住む北海道の場合、※特定不妊治療に対する助成金は、1回につき15万円まで。1年目は年3回、2年目以降は年2回まで申請が可能です。「15万円の助成金はとても助かりますが、それでもまだ大きな自己負担があります。それに、不育症でもあるので、妊娠してからはヘパリンの自己注射をします。私の場合は1日2本。病院や必要な本数によって費用は違うようですが、当時は保険適用外だったため、私は月4~6万円かかりました。今は保険が適用になり、ヘパリンの費用の負担はなくなりましたが、当時は大変でした」(ことりmama*さん)経済的負担を少しでも軽くするために、途中でお休み期間を入れたり、タイミング療法を取り入れたりと工夫もしました。「でも、これからはいろいろな事情で、体外受精をする経済的な余裕がなくて...。タイミング療法しかで きませんと、先生に伝えました」すると先生は、励ますようにこう言ってくれたのです。「負担にならない範囲で顕微授精をしましょう。1年に2回顕微授精をして、それ以外の期間はタイミング療法でいこう。ことりmama*さんは、ずっと頑張ってきたんだから」これまでも、できるだけ費用がかからないように、できる範囲で配慮してくれていた先生からの、二人を思いやったご提案でした。「私たちの十数年間の治療を見守ってくださった先生が『体外受精は諦める』という告白をした私にしてくださった、配慮だったのだと思います。費用を抑えるために、排卵誘発剤の質を下げました。そうすると、採卵できる卵子の数は少なくなるんです。でも先生は、『そんなにたくさん卵子をつくらなくても、2個採卵できればいいんだから』と言ってくださって」こうして、ことりmama*さんは、諦めかけた体外受精での不妊治療を継続することになったのです。 コミュニケーションで築く主治医との信頼関係 ことりmama*さんの経済的な事情に配慮して、最善の治療方法を提案してくれた主治医の先生。普段の診察の際にも、ことりmama*さんが不安になるようなことは、あえて言わないようにしてくれているのが感じられるそう。「長く不妊治療をしているので、ホルモン数値を聞くと、私はその数字に縛られてしまうんです。気持ちが前に進まなくなってしまい、私にとってマイナスになります。先生はそれをわかっていらっしゃって、ホルモン数値を言わないでくださったりするんです。でも、いい時は『いい数値が出てるよ』と教えてくれるので、言わない時は、ああ、あまりよくないんだなってわかってしまうんですけどね(笑)」(ことりmama*さん)安心して治療を続けるためには、主治医とのコミュニケーションや信頼関係も大切。確認したいことや疑問に思うことがあっても、担当医になかなか聞けないという人も多いと 思います。ことりmama*さんは、「言いたいことを言える、聞きたいことを聞けるという関係は、大変だけど自分からつくっていかないとできないものなのかもしれませんね」と、先生との十数年間を振り返ります。「彼女は、病院から帰ってくると『今日はこんな検査だったよ。先生にこんなことを言われたよ』と細かく教えてくれるのですが、その話を聞いていると、彼女の場合、先生に言われたことを『はい。はい』と聞いて帰ってくるだけの患者ではないようなんです」とオット君。先生との小さなやりとりの積み重ねが現在の信頼関係につながっているのではないか、と言います。「私、心配性なので、検査結果や自分の状態でわからないことがあると、すべて質問するんです。そうすると次の検診で、前回私が何を質問したか、何を心配していたかを先生が覚えていて、それについて一言かけてくださいます」(ことりmama*さん)そんな積み重ねが先生への信頼感につながっているそう。「先生は妊娠がわかっても、私には『おめでとう』と言わないんです」それが、妊娠してからは不育症を乗り越えなくてはいけない、自分への気遣いだということも、ことりmama*さんは感じているそう。先生からの「おめでとう」を聞ける日を目標に、ことりmama*さんは、体質改善も含めた治療を今も続けています。 (つづく) 未来のトビラ ≫ 第1話 不妊症、そして、つらい流産と死産...さまざまな想いを抱えながらも前を向いて歩き続ける二人の物語。 ≫ 第2話 パニック障害の症状とも向き合いながらいよいよ積極的な不妊治療である体外受精をスタート。 ≫ 第3話 初めての胚盤胞移植に期待は膨らみますが、治療に終止符を打つ時が近づいていました。 ≫ 最終回 二人で多くの試練を乗り越えた今、偽りのない気持ちと、二人のこれからの未来が見えてきました。 他のユーザーストーリーも読む
2015.6.15
コラム 不妊治療
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支え合いながら、未来を信じて前へ
結婚以来19年間、不妊治療と不育治療を続けることりmama*さんとご主人のオット君。体力的にも精神的にもつらいことが多い治療に諦めかけたこともありましたが、お互いを思いやる気持ちと担当医のサポートで、二人は前に進み続けていきます。 夫の理解と協力が 長期間の治療の支えに 排卵誘発剤の副作用や採卵の痛みに耐え、妊娠後は流産を防ぐためにヘパリンの自己注射とアスピリンを服用して絶対安静。19年間という長い間、不妊治療、不育治療をしていることりmama*さんには、体力的にも精神的にも、つらいことや我慢の必要なことを乗り越えていく日々が現在も続いています。これほど長い期間、治療を諦めることなく続けてこられたのはなぜなのでしょう。その問いに、ことりmama*さんは「一緒に頑張ろうという気持ちを、二人とも持っているから。そして、私がつらい時、夫が家事などの具体的なサポートをしてくれることも大きいです」と明るく答えます。「たとえば、排卵誘発剤の副作用が、私の場合はとても強く出るんです。動悸やめまい、吐き気が一週間毎日続きます。そんな時期は、洗濯をするのもつらいんです。干す動作でめまいがしたり...。以前は泣きながらやっていましたが、最近は彼が洗濯担当になってくれています」その他の家事も積極的にしてくれるというオット君ですが、治療を始めた頃は、ここまで協力的ではなかったとか。「彼女が治療を頑張っているのはわかっていましたが、僕も最初のうちは、その大変さを全部は理解していなかったんです。『奥さんなんだから家事くらいやって当たり前でしょ?』なんて思っていた部分もあったし、『どうしてオレがやらなくちゃいけないの?』と思っていた時期もありました」(オット君)それが変わったのは、ことりmama*さんが、心の内をすべて話してくれるようになったことがきっかけでした。「自分一人で我慢して、『こんなに頑張っているのに、わかってくれない!』と気持ちを爆発させるよりも、治療内容や副作用について細かなことまですべて話すことで、自分の状態をわかってもらうほうがいいと思って」(ことりmama*さん)ことりmama*さんが、今どんな治療でどんな薬を使っているのか、医師とはどんな話をしたのか、自分はどんな精神状態なのかを、細かに伝えたのだそう。「つらい時にはつらいと言ってくれたし、どうしてもらえたらラクなのかを素直に話してくれたので、僕も変われたんです。彼女のつらさと頑張っている気持ちが伝わったので、それなら家事は僕がやろうと思えました。彼女が話してくれていなかったら、ここまで協力的ではなかったかもしれません」(オット君) 顕微授精を見送った後予想外の妊娠陽性 ことりmama*さんにとって、不妊治療と不育治療は時間との闘いでもあります。「一般的にはまだ治療を頑張れる年齢だと思うんです。でも、私の場合は持病があるため、実年齢よりも3~4歳上の気持ちで治療に臨んでいます。ですから、そろそろ妊娠・出産できるかどうかの最終段階に来ていると思っています」そんなことりmama*さんにとって、妊娠に向けての周期は、毎回とても貴重なものです。2011年の夏。排卵誘発剤を4回自己注射し、診察を受けた時のことでした。卵巣の反応が悪く卵膜も硬いこと、顕微授精をしようにも卵子の状態がよくないことから、今回は見送ろうということに。「長い間、不妊治療を続けてきたので、体が悲鳴をあげているんだろうな。少し休憩かな、と思いました」ところがその後、夏の暑さで体調を崩してしまいダウン。生理も遅れていたため、「生理不順が進んでいるのかも」と落ち込みながら診察を受けに行くと、なんと妊娠陽性が出たのです。「最初は先生が何をおっしゃっているのかわかりませんでした。それくらい予想外でした」思ってもみなかった妊娠でした。しかし、ことりmama*さんの場合、妊娠がわかったからといって安心はできません。「それまで連続9回の流産をしていましたから、不安と恐怖で押しつぶされそうでした。でも、やるしかない。今ここにある命を信じて、頑張るしかないと思いました。10回目の奇跡が起こるかもしれないから」ことりmama*さんは、すぐにヘパリンの自己注射とアスピリンの服用を開始。ヘパリンは、赤ちゃんとことりmama*さんの命綱。1日2回の注射をし、自宅でできるかぎり絶対安静に過ごす日々が始まりました。 絶対安静の日々...そして、4カ月検診 妊娠陽性反応が出てから1週間後には、クリニックで10.7mmの胎嚢を確認。「この段階でも、自分が妊婦になったんだという実感はまだありませんでした。自信がないのと、流産への恐怖で、先のことを考えられないでいたんです」ことりmama*さんには「安定期」はありません。妊娠が継続したとしても、ヘパリンの注射を打ち続け、アスピリン、ホルモン剤、漢方薬を服用。そして家事も一切できない、徹底した絶対安静が出産まで続きます。妊娠した喜びを感じる余裕はなく、流産の不安と毎週の検診結果への恐怖に耐えながらの日々です。「今の医療でできるすべてのことをさせてもらいながら、お腹にいる『この命』を信じて、成長を祈ることしかないんです」そして10月。受診した4カ月検診で、ことりmama*さんは、赤ちゃんが元気に動いていることにほっとします。ところが、「よかった」と安心したのも束の間、ことりmama*さんは、先生の様子がいつもと違うことに気が付きます。「先生が何もおっしゃらずに、いつもよりずっと長い時間をかけて、真剣な顔で赤ちゃんを見ているんです...。ものすごく大きな不安が押し寄せてきました」先生からことりmama*さんに告げられたのは、赤ちゃんの頭と体にリ ンパ浮腫が見えること。染色体異常で、どんなに頑張ってもお腹の中でいずれ死んでしまうことでした。「もしも、生まれてこられたとしても、母親の胎内から出た瞬間に死んでしまうんだよ。残念だけど...」と先生から告げられました。赤ちゃんは元気に動いているのに、生きようと頑張っているのに。どんなことでもするから助けてほしい。必死にそうくり返すことりmama*さんに、先生が提案したのは、赤ちゃんが大きくなってもっと苦しくなる前に産んであげることでした。 「赤ちゃん、楽にしてあげよう」先生の言葉に、思わず腕にしがみつき崩れ落ちたことりmama*さん。先生は、ことりmama*さんが腕を離すまで、ずっとそのままでいてくれました。19年間の不妊治療・不育治療のなかで一番つらい出来事だったと、ことりmama*さんは振り返ります。心の準備もできないままに、お腹の中で生きている赤ちゃんを諦めなければならなくなったのです――。 (つづく) 未来のトビラ ≫ 第1話 不妊症、そして、つらい流産と死産...さまざまな想いを抱えながらも前を向いて歩き続ける二人の物語。 ≫ 第2話 パニック障害の症状とも向き合いながらいよいよ積極的な不妊治療である体外受精をスタート。 ≫ 第3話 初めての胚盤胞移植に期待は膨らみますが、治療に終止符を打つ時が近づいていました。 ≫ 最終回 二人で多くの試練を乗り越えた今、偽りのない気持ちと、二人のこれからの未来が見えてきました。 他のユーザーストーリーも読む 結婚以来19年間、不妊治療と不育治療を続けることりmama*さんとご主人のオット君。体力的にも精神的にもつらいことが多い治療に諦めかけたこともありましたが、お互いを思いやる気持ちと担当医のサポートで、二人は前に進み続けていきます。 夫の理解と協力が 長期間の治療の支えに 排卵誘発剤の副作用や採卵の痛みに耐え、妊娠後は流産を防ぐためにヘパリンの自己注射とアスピリンを服用して絶対安静。19年間という長い間、不妊治療、不育治療をしていることりmama*さんには、体力的にも精神的にも、つらいことや我慢の必要なことを乗り越えていく日々が現在も続いています。これほど長い期間、治療を諦めることなく続けてこられたのはなぜなのでしょう。その問いに、ことりmama*さんは「一緒に頑張ろうという気持ちを、二人とも持っているから。そして、私がつらい時、夫が家事などの具体的なサポートをしてくれることも大きいです」と明るく答えます。「たとえば、排卵誘発剤の副作用が、私の場合はとても強く出るんです。動悸やめまい、吐き気が一週間毎日続きます。そんな時期は、洗濯をするのもつらいんです。干す動作でめまいがしたり...。以前は泣きながらやっていましたが、最近は彼が洗濯担当になってくれています」その他の家事も積極的にしてくれるというオット君ですが、治療を始めた頃は、ここまで協力的ではなかったとか。「彼女が治療を頑張っているのはわかっていましたが、僕も最初のうちは、その大変さを全部は理解していなかったんです。『奥さんなんだから家事くらいやって当たり前でしょ?』なんて思っていた部分もあったし、『どうしてオレがやらなくちゃいけないの?』と思っていた時期もありました」(オット君)それが変わったのは、ことりmama*さんが、心の内をすべて話してくれるようになったことがきっかけでした。「自分一人で我慢して、『こんなに頑張っているのに、わかってくれない!』と気持ちを爆発させるよりも、治療内容や副作用について細かなことまですべて話すことで、自分の状態をわかってもらうほうがいいと思って」(ことりmama*さん)ことりmama*さんが、今どんな治療でどんな薬を使っているのか、医師とはどんな話をしたのか、自分はどんな精神状態なのかを、細かに伝えたのだそう。「つらい時にはつらいと言ってくれたし、どうしてもらえたらラクなのかを素直に話してくれたので、僕も変われたんです。彼女のつらさと頑張っている気持ちが伝わったので、それなら家事は僕がやろうと思えました。彼女が話してくれていなかったら、ここまで協力的ではなかったかもしれません」(オット君) 顕微授精を見送った後予想外の妊娠陽性 ことりmama*さんにとって、不妊治療と不育治療は時間との闘いでもあります。「一般的にはまだ治療を頑張れる年齢だと思うんです。でも、私の場合は持病があるため、実年齢よりも3~4歳上の気持ちで治療に臨んでいます。ですから、そろそろ妊娠・出産できるかどうかの最終段階に来ていると思っています」そんなことりmama*さんにとって、妊娠に向けての周期は、毎回とても貴重なものです。2011年の夏。排卵誘発剤を4回自己注射し、診察を受けた時のことでした。卵巣の反応が悪く卵膜も硬いこと、顕微授精をしようにも卵子の状態がよくないことから、今回は見送ろうということに。「長い間、不妊治療を続けてきたので、体が悲鳴をあげているんだろうな。少し休憩かな、と思いました」ところがその後、夏の暑さで体調を崩してしまいダウン。生理も遅れていたため、「生理不順が進んでいるのかも」と落ち込みながら診察を受けに行くと、なんと妊娠陽性が出たのです。「最初は先生が何をおっしゃっているのかわかりませんでした。それくらい予想外でした」思ってもみなかった妊娠でした。しかし、ことりmama*さんの場合、妊娠がわかったからといって安心はできません。「それまで連続9回の流産をしていましたから、不安と恐怖で押しつぶされそうでした。でも、やるしかない。今ここにある命を信じて、頑張るしかないと思いました。10回目の奇跡が起こるかもしれないから」ことりmama*さんは、すぐにヘパリンの自己注射とアスピリンの服用を開始。ヘパリンは、赤ちゃんとことりmama*さんの命綱。1日2回の注射をし、自宅でできるかぎり絶対安静に過ごす日々が始まりました。 絶対安静の日々...そして、4カ月検診 妊娠陽性反応が出てから1週間後には、クリニックで10.7mmの胎嚢を確認。「この段階でも、自分が妊婦になったんだという実感はまだありませんでした。自信がないのと、流産への恐怖で、先のことを考えられないでいたんです」ことりmama*さんには「安定期」はありません。妊娠が継続したとしても、ヘパリンの注射を打ち続け、アスピリン、ホルモン剤、漢方薬を服用。そして家事も一切できない、徹底した絶対安静が出産まで続きます。妊娠した喜びを感じる余裕はなく、流産の不安と毎週の検診結果への恐怖に耐えながらの日々です。「今の医療でできるすべてのことをさせてもらいながら、お腹にいる『この命』を信じて、成長を祈ることしかないんです」そして10月。受診した4カ月検診で、ことりmama*さんは、赤ちゃんが元気に動いていることにほっとします。ところが、「よかった」と安心したのも束の間、ことりmama*さんは、先生の様子がいつもと違うことに気が付きます。「先生が何もおっしゃらずに、いつもよりずっと長い時間をかけて、真剣な顔で赤ちゃんを見ているんです...。ものすごく大きな不安が押し寄せてきました」先生からことりmama*さんに告げられたのは、赤ちゃんの頭と体にリ ンパ浮腫が見えること。染色体異常で、どんなに頑張ってもお腹の中でいずれ死んでしまうことでした。「もしも、生まれてこられたとしても、母親の胎内から出た瞬間に死んでしまうんだよ。残念だけど...」と先生から告げられました。赤ちゃんは元気に動いているのに、生きようと頑張っているのに。どんなことでもするから助けてほしい。必死にそうくり返すことりmama*さんに、先生が提案したのは、赤ちゃんが大きくなってもっと苦しくなる前に産んであげることでした。 「赤ちゃん、楽にしてあげよう」先生の言葉に、思わず腕にしがみつき崩れ落ちたことりmama*さん。先生は、ことりmama*さんが腕を離すまで、ずっとそのままでいてくれました。19年間の不妊治療・不育治療のなかで一番つらい出来事だったと、ことりmama*さんは振り返ります。心の準備もできないままに、お腹の中で生きている赤ちゃんを諦めなければならなくなったのです――。 (つづく) 未来のトビラ ≫ 第1話 不妊症、そして、つらい流産と死産...さまざまな想いを抱えながらも前を向いて歩き続ける二人の物語。 ≫ 第2話 パニック障害の症状とも向き合いながらいよいよ積極的な不妊治療である体外受精をスタート。 ≫ 第3話 初めての胚盤胞移植に期待は膨らみますが、治療に終止符を打つ時が近づいていました。 ≫ 最終回 二人で多くの試練を乗り越えた今、偽りのない気持ちと、二人のこれからの未来が見えてきました。 他のユーザーストーリーも読む
2015.6.12
コラム 不妊治療
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娘にきょうだいをつくってあげたい...
娘にきょうだいをつくってあげたい...「閉経に近いです」。医師のつらい言葉にも負けずに治療を継続。次の誕生日までトライを続けるつもりです。 4年前、1回の体外受精で長女を授かったトモさん。2年半前から第2子妊娠に向け治療を始めるも思うようにはいきません。次の誕生日を前に揺らぐ心境を語ってくれました。 第1子妊娠は想像よりもスムーズに進行 取材当日、幼稚園に入園したばかりのあーちゃんを連れてやってきたトモさん。この夏42歳の誕生日を迎えます。結婚したのは28歳の時。当時お父様が透析治療を受けることとなり、妊娠についてはまったく考えられる状況になかったといいます。懸命の介護を続けたもののお父様はその後ご逝去。当時35歳になっていたトモさんはようやく妊娠について考えるようになりました。なるべく早く妊娠したかったため、まずは近くの病院を受診。卵管造影検査をしたところ、片方の卵管がつまっていることが発覚しました。「すぐにでも不妊治療したい。」そう切り出したトモさんに、ご主人は積極的に協力してくれたのだそうです。病院から紹介を受け、すぐに不妊治療専門のクリニックへ通うことになりました。不妊治療専門クリニックで数回のタイミング療法にトライしたものの妊娠には至らず、トモさんは先生に早めのステップアップをリクエストしました。そして、初めて受けた体外受精が見事成功。2011年4月にあーちゃんを出産しました。あーちゃんがおっぱいを飲む姿が愛おしく、またあーちゃんもおっぱいが大好き。断乳できず、なかなか次の妊娠を考えられなかったトモさん。出産後、10カ月で生理が来たので、自然にまた妊娠できるかも...とぼんやり考えていました。しかし、同じ病院で不妊治療を受け妊娠した友人から「40代は時間が限られているし、第2子を考えているから私は不妊治療を再開するよ。」そんな言葉を受け、次の妊娠に向けての準備を決意しました。 第2子のトライで知った高FSH、低AMH 2013年の年明けとともに治療を始めたトモさん。その1回目は、採卵するも受精ができないという結果。そこではじめてショックを受けることになります。「実はそれまで何の知識もなく治療をしていたんです。ここからが本当の治療の始まりでした。」。2回目のトライは遺残卵胞があったために見送り。そして3回目のトライ。生理から10日目で受診したところ、FSHの値が51に跳ね上がっていました。そこで先生に言われたのは「この数値は閉経に近いです。妊娠よりもご自分のホルモン治療を考えたほうがよいのでは?」との厳しい一言。ふだんとっても明るいトモさんも「この先生の診断には帰りながら号泣してしまいました。」と語ります。そんなトモさんがそれでもなお治療を続けようと思ったのはご主人の存在。「主人は私にとってのセカンドオピニオンを言ってくれる存在。この結果にも、本当にそうなの?何かできることはないの?ととても前向き。そんな彼の言葉に後押しされて、前々から気になっていた別の病院への受診を決めました。」2013年4月、トモさんは転院。そこではじめてAMH検査を受けます。その結果はなんと0.1以下...。そんな状況でしたが、担当の先生の「大丈夫ですよ。」の一言。「ここの先生は、オーダーメイド的に私がやりたいことにトライさせてくれました。それで随分気持ちが楽になりました。」。このクリニックではカウフマン療法で薬を飲みながらの治療が続きました。ただ、薬によってまたFSHが跳ね上がったり、インフルエンザで高熱に見舞われてしまったり、トモさん自身の体調、そして病院の治療スケジュールとのタイミングがなかなか合いません。「薬の副作用で体調がすぐれず、娘と思うように遊んであげられませんでした。そもそも薬が私の体に合わないのかも...と感じ始めました。」悶々とした日々が続いたある日のこと、前の生理から17日目で突然生理が来てしまいます。しかしながらその後卵胞は育っていたため、トモさんは採卵を希望しますが、病院からは「今回は周期が少しずれてしまったので採卵は見送りましょう」とのすすめ。せっかく育った卵胞をそのままにしてしまうのは悔しい...そんな思いが拭えずトモさんはその足で元々通っていたクリニックへ。採卵してほしいことを訴え採卵をしてもらいます。そして新鮮胚移植まで進みましたが、残念ながら妊娠には至りませんでした。そして元の病院で数回のトライの後、昨年夏、ようやく着床!トモさんのお腹の中で赤ちゃんの心拍が確認できました。あーちゃんにも赤ちゃんが来ることを伝え家族で喜びあいました。しかし、その喜びもつかの間...。翌月の検診で心拍が確認できず稽留流産をしてしまっていたことが発覚。「赤ちゃんどこに行っちゃったの?」無邪気にたずねるあーちゃんに「赤ちゃんはお空に行っちゃったの...。」と答えるトモさん。「そのあと娘が空に向かって、バイバーイ!また来てね!と何度も手を振っていて...まだ不安定な時期にどうして赤ちゃんが来ることを言ってしまったのだろう、こんな悲しい思いをさせてしまってかわいそうだった...と心から後悔しました。」 次の誕生日を迎える前に揺らぐ思い... はじめての流産を経験し、心身ともに疲れてしまったトモさん。病院で3カ月のお休みを通達され、思い切って家族旅行を決意。ご主人に休みをとってもらいハワイへ旅立ちました。「弾丸旅行ではありましたが、娘とようやくゆっくり過ごせました。広い海、海外の様子を見せてあげられて本当に満足できる旅行でした。」心身ともにリフレッシュして今年1月に治療を再開。この時も着床したものの先生には「継続率30%です。」と厳しい数値を伝えられます。それでもわずかな期待を込めていたある日、突然の出血に見舞われます。「おそらくこの時に自然に体外に出てしまったようです」。先生に低い確率を言われながらも、心の中で期待していた自分...複雑な思いが重なりあいました。その後、3カ月のお休みを経た今、トモさんの心境に少しずつ変化が起こり始めています。「夏に42歳を迎えます。もう妊娠は難しいのかも...と半分は諦めている自分がいます。でも、自分の経験から姉妹がいて本当によかったという思いがあり、この子になんとしてでもきょうだいをつくってあげたいんですよね。でも、その一方でできなかった時の自分への理由も考え始めているんです。娘を良い環境で育ててあげよう、一人っ子でもたくさんのお友達を見つけてあげればいいんじゃないか、とか。次の誕生日が決断時かなと...。」。さまざまな思いが行き交うなか、トモさんは次のトライへの準備を始めています。 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.26 2015 Summer≫ マガジンの記事がすべてご覧いただけます! 他のユーザーストーリーも読む 【無料】100ページオールカラー 女性のための健康生活マガジン JINEKO 娘にきょうだいをつくってあげたい...「閉経に近いです」。医師のつらい言葉にも負けずに治療を継続。次の誕生日までトライを続けるつもりです。 4年前、1回の体外受精で長女を授かったトモさん。2年半前から第2子妊娠に向け治療を始めるも思うようにはいきません。次の誕生日を前に揺らぐ心境を語ってくれました。 第1子妊娠は想像よりもスムーズに進行 取材当日、幼稚園に入園したばかりのあーちゃんを連れてやってきたトモさん。この夏42歳の誕生日を迎えます。結婚したのは28歳の時。当時お父様が透析治療を受けることとなり、妊娠についてはまったく考えられる状況になかったといいます。懸命の介護を続けたもののお父様はその後ご逝去。当時35歳になっていたトモさんはようやく妊娠について考えるようになりました。なるべく早く妊娠したかったため、まずは近くの病院を受診。卵管造影検査をしたところ、片方の卵管がつまっていることが発覚しました。「すぐにでも不妊治療したい」そう切り出したトモさんに、ご主人は積極的に協力してくれたのだそうです。病院から紹介を受け、すぐに不妊治療専門のクリニックへ通うことになりました。不妊治療専門クリニックで数回のタイミング療法にトライしたものの妊娠には至らず、トモさんは先生に早めのステップアップをリクエストしました。そして、初めて受けた体外受精が見事成功。2011年4月にあーちゃんを出産しました。あーちゃんがおっぱいを飲む姿が愛おしく、またあーちゃんもおっぱいが大好き。断乳できず、なかなか次の妊娠を考えられなかったトモさん。出産後、10カ月で生理が来たので、自然にまた妊娠できるかも...とぼんやり考えていました。しかし、同じ病院で不妊治療を受け妊娠した友人から「40代は時間が限られているし、第2子を考えているから私は不妊治療を再開するよ」。そんな言葉を受け、次の妊娠に向けての準備を決意しました。 第2子のトライで知った高FSH、低AMH 2013年の年明けとともに治療を始めたトモさん。その1回目は、採卵するも受精ができないという結果。そこではじめてショックを受けることになります。「実はそれまで何の知識もなく治療をしていたんです。ここからが本当の治療の始まりでした」。2回目のトライは遺残卵胞があったために見送り。そして3回目のトライ。生理から10日目で受診したところ、FSHの値が51に跳ね上がっていました。そこで先生に言われたのは「この数値は閉経に近いです。妊娠よりもご自分のホルモン治療を考えたほうがよいのでは?」との厳しい一言。ふだんとっても明るいトモさんも「この先生の診断には帰りながら号泣してしまいました」と語ります。そんなトモさんがそれでもなお治療を続けようと思ったのはご主人の存在。「主人は私にとってのセカンドオピニオンを言ってくれる存在。この結果にも、本当にそうなの?何かできることはないの?ととても前向き。そんな彼の言葉に後押しされて、前々から気になっていた別の病院への受診を決めました」2013年4月、トモさんは転院。そこではじめてAMH検査を受けます。その結果はなんと0.1以下...。そんな状況でしたが、担当の先生の「大丈夫ですよ」の一言。「ここの先生は、オーダーメイド的に私がやりたいことにトライさせてくれました。それで随分気持ちが楽になりました」。このクリニックではカウフマン療法で薬を飲みながらの治療が続きました。ただ、薬によってまたFSHが跳ね上がったり、インフルエンザで高熱に見舞われてしまったり、トモさん自身の体調、そして病院の治療スケジュールとのタイミングがなかなか合いません。「薬の副作用で体調がすぐれず、娘と思うように遊んであげられませんでした。そもそも薬が私の体に合わないのかも...と感じ始めました」悶々とした日々が続いたある日のこと、前の生理から17日目で突然生理が来てしまいます。しかしながらその後卵胞は育っていたため、トモさんは採卵を希望しますが、病院からは「今回は周期が少しずれてしまったので採卵は見送りましょう」とのすすめ。せっかく育った卵胞をそのままにしてしまうのは悔しい...そんな思いが拭えずトモさんはその足で元々通っていたクリニックへ。採卵してほしいことを訴え採卵をしてもらいます。そして新鮮胚移植まで進みましたが、残念ながら妊娠には至りませんでした。そして元の病院で数回のトラ イの後、昨年夏、ようやく着床!トモさんのお腹の中で赤ちゃんの心拍が確認できました。あーちゃんにも赤ちゃん が来ることを伝え家族で喜びあいました。しかし、その喜びもつかの間...。翌月の検診で心拍が確認できず稽留流産をしてしまっていたことが発覚。「赤ちゃんどこに行っちゃったの?」無邪気にたずねるあーちゃんに「赤ちゃんはお空に行っちゃったの...」と答えるトモさん。「そのあと娘が空に向かって、バイバーイ!また来てね!と何度も手を振っていて...まだ不安定な時期にどうして赤ちゃんが来ることを言ってしまったのだろう、こんな悲しい思いをさせ てしまってかわいそうだった...と心から後悔しました」 次の誕生日を迎える前に揺らぐ思い... はじめての流産を経験し、心身ともに疲れてしまったトモさん。病院で3カ月のお休みを通達され、思い切って家族旅行を決意。ご主人に休みをとってもらいハワイへ旅立ちました。「弾丸旅行ではありましたが、娘とようやくゆっくり過ごせました。広い海、海外の様子を見せてあげられて本当に満足できる旅行でした」心身ともにリフレッシュして今年1月に治療を再開。この時も着床したものの先生には「継続率30%です」と厳しい数値を伝えられます。それでもわずかな期待を込めていたある日、突然の出血に見舞われます。「おそらくこの時に自然に体外に出てしまったようです」。先生に低い確率を言われながらも、心の中で期待していた自分...複雑な思いが重なりあいました。その後、3カ月のお休みを経た今、トモさんの心境に少しずつ変化が起こり始めています。「夏に42歳を迎えます。もう妊娠は難しいのかも...と半分は諦めている自分がいます。でも、自分の経験から姉妹がいて本当によかったという思いがあり、この子になんとしてでもきょうだいをつくってあげたいんですよね。でも、その一方でできなかった時の自分への理由も考え始めているんです。娘を良い環境で育ててあげよう、一人っ子でもたくさんのお友達を見つけてあげればいいんじゃないか、とか。次の誕生日が決断時かなと...」。さまざまな思いが行き交うなか、トモさんは次のトライへの準備を始めています。 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.26 2015 Summer≫ マガジンの記事がすべてご覧いただけます! 他のユーザーストーリーも読む 【無料】100ページオールカラー 女性のための健康生活マガジン JINEKO
2015.6.8
コラム 不妊治療
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3/14 新宿 ジネコ主催 第8回 妊活セミナー ご報告レポート
去る3月14日、ジネコ主催/あすか製薬共催「第8回 妊活セミナー」が開催されました。血流改善や不妊治療をテーマに100名以上の方が参加したもようをお伝えします。 体質改善から最新治療まで夫婦で知識を深めよう! 3月14日(土)、ジネコでは妊娠を望むご夫婦を対象としたイベント「妊活セミナー」を東京・新宿区の会場で開催しました。参加者は無料、パートナーと一緒でもOK、2人目以降のお子様を望む方も参加できるということで、当日は100人を超える方々が来場。 東洋的な治療で妊活をサポートするsekimura鍼灸院の関村順一先生による血流改善講座。卵子の質を変えるセルフメンテナンスの方法についてお話いただきました。セミナーの内容はこちら―講師プロフィール―東京医療専門学校鍼灸教員養成科講師。渋谷区鍼灸師会役員。治療院のスタッフとともに女性を健康にし、明るい将来像が持てるために奮闘中。頭痛、腹痛、月経痛など、おきているものにはすべて何らかの原因がある。その原因を東洋医学で分析し、患者さんに合うマクロビオティックに 基づく指導と鍼灸治療で生活の向上を数多く手伝い、現在も活躍中。 一般不妊治療から高度生殖医療まで手がける荻窪病院 虹クリニック院長の北 村誠司先生による最新不妊治療の講演。卵子の老化に対する不妊治療の考え方についてご講演いただきました。セミナーの内容はこちら―講師プロフィール―慶應義塾大学医学部卒業。1989年からIVFおよび内視鏡下手術に従事。子宮鏡下手術による胚移植の改善や、腹腔鏡下手術による子宮筋腫、内膜症の解消・改善を積極的に図ると同時に、妊娠困難症例に対しても新しい治療を取り入れて対応。本院(荻窪病院)泌尿器科の男性不妊専門医の協力により、TESE- ICSIや逆行性射精など、男性不妊の治療体制も整えている。 ◆ 参加者の声 ◆ 選択肢が増え、少し前向きになれました。食事を見直そうと思いました。 今後の治療をもう一度考え直そうと思いました。 今日はよく話を聞くことができて、疑問や不安がなくなったというか肩の荷が少しおりた感じがしました。 質問をされる皆さんが 私自身が聞きたい内容と非常にマッチしていたのでとても有意義な時間でした。 病院の力にたよってばかりいたが、食事・運動で自分の体を整えていくことが大切だと教わったので、ためになりました。 グリーンルイボス茶を 初めて飲みましたが、とても飲みやすく、いいなと思いました。 各病院によって、やり方、判断が違うのだなと感じました。どこの方針に任せるのかは、自分で情報を得て決めなければいけないなと思いました。 食事のバランスは一人ひとり違って、その人に合っている食べ物を食べるというのがよく分かりました。食事に気をつけていこうと思います。 皆さん、メモを取りながら先生のお話に熱心に聞き入り、とても活気のあるセミナーとなりました。今後も全国で順次開催予定ですので、ぜひチェックしてくださいね! 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.26 2015 Summer≫ マガジンの記事がすべてご覧いただけます! セミナー情報はこちら 【無料】100ページオールカラー 女性のための健康生活マガジン JINEKO 去る3月14日、ジネコ主催/あすか製薬共催「第8回 妊活セミナー」が開催されました。血流改善や不妊治療をテーマに100名以上の方が参加したもようをお伝えします。 体質改善から最新治療まで夫婦で知識を深めよう! 3月14日(土)、ジネコでは妊娠を望むご夫婦を対象としたイベント「妊活セミナー」を東京・新宿区の会場で開催しました。参加者は無料、パートナーと一緒でもOK、2人目以降のお子様を望む方も参加できるということで、当日は100人を超える方々が来場。 東洋的な治療で妊活をサポートするsekimura鍼灸院の関村順一先生による血流改善講座。卵子の質を変えるセルフメンテナンスの方法についてお話いただきました。セミナーの内容はこちら―講師プロフィール―東京医療専門学校鍼灸教員養成科講師。渋谷区鍼灸師会役員。治療院のスタッフとともに女性を健康にし、明るい将来像が持てるために奮闘中。頭痛、腹痛、月経痛など、おきているものにはすべて何らかの原因がある。その原因を東洋医学で分析し、患者さんに合うマクロビオティックに 基づく指導と鍼灸治療で生活の向上を数多く手伝い、現在も活躍中。 一般不妊治療から高度生殖医療まで手がける荻窪病院 虹クリニック院長の北 村誠司先生による最新不妊治療の講演。卵子の老化に対する不妊治療の考え方についてご講演いただきました。セミナーの内容はこちら―講師プロフィール―慶應義塾大学医学部卒業。1989年からIVFおよび内視鏡下手術に従事。子宮鏡下手術による胚移植の改善や、腹腔鏡下手術による子宮筋腫、内膜症の解消・改善を積極的に図ると同時に、妊娠困難症例に対しても新しい治療を取り入れて対応。本院(荻窪病院)泌尿器科の男性不妊専門医の協力により、TESE- ICSIや逆行性射精など、男性不妊の治療体制も整えている。 ◆ 参加者の声 ◆ 選択肢が増え、少し前向きになれました。食事を見直そうと思いました。 今後の治療をもう一度考え直そうと思いました。 今日はよく話を聞くことができて、疑問や不安がなくなったというか肩の荷が少しおりた感じがしました。 質問をされる皆さんが 私自身が聞きたい内容と非常にマッチしていたのでとても有意義な時間でした。 病院の力にたよってばかりいたが、食事・運動で自分の体を整えていくことが大切だと教わったので、ためになりました。 グリーンルイボス茶を 初めて飲みましたが、とても飲みやすく、いいなと思いました。 各病院によって、やり方、判断が違うのだなと感じました。どこの方針に任せるのかは、自分で情報を得て決めなければいけないなと思いました。 食事のバランスは一人ひとり違って、その人に合っている食べ物を食べるというのがよく分かりました。食事に気をつけていこうと思います。 皆さん、メモを取りながら先生のお話に熱心に聞き入り、とても活気のあるセミナーとなりました。今後も全国で順次開催予定ですので、ぜひチェックしてくださいね! 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.26 2015 Summer≫ マガジンの記事がすべてご覧いただけます! セミナー情報はこちら 【無料】100ページオールカラー 女性のための健康生活マガジン JINEKO
2015.5.25
コラム 不妊治療
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ドクターが解説 !!生殖医療用語「黄体機能不全」
難しい用語がいろいろと出てくる不妊治療の現場。治療でよく聞く用語だけど、あまり正確に知らないものも多いのでは?勘違いや思い込みを防ぐためにもしっかり確認しておきましょう。クリニックの先生に用語の解説をしていただきました。 黄体機能不全 脳下垂体から分泌される卵胞刺激ホルモンの分泌低下、黄体化ホルモンの分泌異常、卵胞の発育不良、高プロラクチン血症の存在などにより、排卵後に黄体が十分なプロゲステロン(黄体ホルモン)を分泌できない状態。プロゲステロンが低下しているため、基礎体温をつけたときに高温相の期間が短く(黄体の寿命が短い)、高温相と低温相の体温の差が0.3℃以内と少なくなります。また、子宮内膜は受精卵が着床し妊娠を維持するために必要な条件を満たせなくなります。治療は原因により異なります。卵胞の発育がよくない場合はクロミフェンで発育を促します。黄体期(高温相)にhCGを投与して、黄体を刺激したり、プロゲステロンを補充したりする方法がとられます。 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.26 2015 Summer≫ マガジンの記事がすべてご覧いただけます! ドクターが解説 !!生殖医療用語 一覧 ■ あわせて読みたい ■ 顕微授精で2回とも胚盤胞まで育つのは各1個。今後どう治療を進めればいい? 黄体機能不全と診断されHCG注射をしていますが効果が出ず、心配です 妊娠するためには主人の糖尿病、バセドウ病を改善したほうがいい? 楠原ウィメンズクリニック 女性のための健康生活マガジン JINEKO 難しい用語がいろいろと出てくる不妊治療の現場。治療でよく聞く用語だけど、あまり正確に知らないものも多いのでは?勘違いや思い込みを防ぐためにもしっかり確認しておきましょう。クリニックの先生に用語の解説をしていただきました。 黄体機能不全 脳下垂体から分泌される卵胞刺激ホルモンの分泌低下、黄体化ホルモンの分泌異常、卵胞の発育不良、高プロラクチン血症の存在などにより、排卵後に黄体が十分なプロゲステロン(黄体ホルモン)を分泌できない状態。プロゲステロンが低下しているため、基礎体温をつけたときに高温相の期間が短く(黄体の寿命が短い)、高温相と低温相の体温の差が0.3℃以内と少なくなります。また、子宮内膜は受精卵が着床し妊娠を維持するために必要な条件を満たせなくなります。治療は原因により異なります。卵胞の発育がよくない場合はクロミフェンで発育を促します。黄体期(高温相)にhCGを投与して、黄体を刺激したり、プロゲステロンを補充したりする方法がとられます。 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.26 2015 Summer≫ マガジンの記事がすべてご覧いただけます! ドクターが解説 !!生殖医療用語 一覧 ■ あわせて読みたい ■ 顕微授精で2回とも胚盤胞まで育つのは各1個。今後どう治療を進めればいい? 黄体機能不全と診断されHCG注射をしていますが効果が出ず、心配です 妊娠するためには主人の糖尿病、バセドウ病を改善したほうがいい? 楠原ウィメンズクリニック 女性のための健康生活マガジン JINEKO
2015.5.22
コラム 不妊治療
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より精度の高い体外受精へ導く、最先端の 「タイムラプス・モニタリングシステム」とは?
プリモビジョンとエンブリオスコープのタイムラプス最先端技術を開発・販売しているヴィトロライフ社は、スウェーデンに本拠地を置く不妊治療関連商品のワールドリーダー。同社のタイムラプス・モニタリングシステムが今、脚光を浴びています。現在、導入台数を大幅に増やし、原則すべての体外受精に採用することとした福井ウィメンズクリニックの福井先生を訪問。その有用性をお聞きしました。 デリケートな胚にストレスをかけない安定した管理体制 「プリモビジョン」によるタイムラプス・モニタリングの技術は、どのような役割を果たすのでしょうか。 福井先生:タイムラプス・モニタリングシステムは、胚をインキュベーターに入れたまま観察ができるシステムです。これまでは、胚を観察する際は定期的に培養士がインキュベーターから取り出し、顕微鏡で観察していました。この作業のために胚が何度も外気や光に触れることになり、培養液中のph値が変わったり温度が低下したりと、胚に不要なストレスをかけてしまいます。しかし、この タイムラプス・モニタリングシステムは、胚をインキュベーターに入れたまま観察ができるので、胚にとってより良い環境で培養することができます。 タイムラプス技術で撮った画像を、どのように活用されていますか。 福井先生:タイムラプスで撮った画像は、一定の間隔で撮り続けるため膨大な枚数となり、それをアニメーション化することで動画として見ることができま す。胚の成長過程を確認することができるので、最終的な胚の選択に非常に役立っています。これまでは、移植前にどの胚がふさわしいかを見極める際の主な判断材料は移植前の胚の形状だけでした。ところがこのタイムラプス技術を採用してからは、胚の成長過程も参考にしながら選ぶことができるようになりました。これはとても画期的で、たとえば最終的にきれいな胚盤胞に育っていても、分裂の過程で問題が見つかればその胚は移植しても妊娠の可能性が低いと判断できるようになりました。 成長過程を見ることで異常を発見良好胚が選択しやすい 良好胚と不良胚の成長をタイムラプスでモニタリングした場合、どのような違いがありますか。 福井先生:良好胚の場合は、時間を追うごとにきれいに分裂しています。一方、不良胚は一度分割したものが時間を追うとくっついていたり、速度にばらつきがあったり、極端にスピードが遅かったりと、スムーズな動きが見えません。分割のしかたを見ると不良とわかる胚でも最終的に形が良ければ良好胚に見えてしまうのですから、タイムラプス技術で得られる情報の有用性を実感できます。 「百聞は一見にしかず」コミュニケーションが円滑になる 患者さんや現場スタッフの方々からの反響はいかがでしょうか。 福井先生:写真ではなく動画を見ることで生命を感じることができます。映像を見ると、皆さん自分の卵に愛情が湧いてきて、不妊治療により前向きになるのを感じます。もし、うまく成長しなかったとしても、映像として動きが鈍る過程を見ることで、受け止め方が全然違ってくるんです。当院では胚の映像を有料(USB代)で提供しています。自宅に持ち帰り、夫婦で映像を見ることで、ご主人からの協力も得やすくなるのではないでしょうか。子どもが生まれて大きくなったら、見せてあげるのもいいでしょう。また、ラボの培養士たちからは、新人もベテランも安定した管理ができ、ストレスなく、仕事に取り組めているようです。映像には画像の何倍も説得力があるので、私自身も患者さんとのコミュニケーションにとても役立っています。 治療へのメリットは? 吉田先生:1個しか採卵できなかった患者さんに対しては、その胚を移植するしかありませんが、複数個の胚が採れて育った場合には「どの胚を移植すべきか」という選択がしいられます。特に反復ART不成功例の患者さんにとっては、できるだけ妊孕性が高い胚を選択するための指標が必要です。現在の胚の評価方法の多くは、形態から判断され、形の良い胚は妊孕性が高いと考えられていますが、実はそれだけでは測れないのです。5日目に見た目にもきれいな胚盤胞になっていても、胚盤胞になるまでの途中経過で、分割の仕方、スピードに異常があることも考えられます。胚の評価方法は、受精後から約1日後に2分割、3日後には8分割に、とステージごとに評価方法があります。見た目だけでなく、そのタイムステージに則って順調に育ってきたかどうかも大変重要なポイントとなります。医師としては、1つの胚からできるだけ多くの情報を得たい。プリモビジョンでは、その成長過程で起きた変化をさかのぼることができ、これまで以上に詳しくたどることができるのです。プリモビジョンは良好な胚を選ぶためだけではなく、異常胚を移植しないようにするためにも使うことが可能です。たとえば1個の割球が直接3個に分割してしまうことがあります。このような胚は妊娠する可能性が極めて低いため移植するべきではありません。 現在、タイムラプス・モニタリングの対象となる患者様はどのような方でしょうか。 福井先生:最初のうちは、40代以上の方を対象としていました。ところが思った以上に培養士や患者さんから反響があり、私自身も有用性があると感じたので、 半年後には、基本的にすべての患者さんを対象とすることに決め、一気に導入台数を増やしました。現在は、すべての機器が稼働している状況です。 ▼ タイムラプスとは? 培養庫内の胚の成長過程を、定期的に自動撮影するシステム タイムラプス(Time-lapse)とは、任意で設定した時間間隔でカメラのシャッターが押され、画像が記録される“コマ撮り”のこと。防犯カメラや気象などの定点観測などによく用いられる技術で、時間(time)経過(lapse)による画面の変化が動画よりも見てとりやすい。不妊治療分野では、シャーレを乗せることのできる超小型顕微鏡カメラで、胚の分割過程を撮影。それにより、胚が日を追って正常なプロセスを経て育ったかが確認しやすくなる。 胚の発生:1.前核期 2.2細胞期 3.3細胞期 4.4細胞期 5.8細胞期 6.桑実胚期 7.胚盤胞期 Primo Vision タイムラプス・モニタリングシステムを用いることで、胚の発生をビデオで見ることが可能です。このビデオを解析することで最も良好な胚を選択することができます。 福井ウィメンズクリニック 福井敬介先生日本大学医学部卒業後、愛媛大学産科婦人科に入局、同大学院医学専攻科修了。愛媛大学産科婦人科学助教授を経て、2001年、福井ウィメンズクリニックを開設。≫ 福井ウィメンズクリニック 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.26 2015 Summer≫ マガジンの記事がすべてご覧いただけます! 【無料】100ページオールカラー 女性のための健康生活マガジン JINEKO プリモビジョンとエンブリオスコープのタイムラプス最先端技術を開発・販売しているヴィトロライフ社は、スウェーデンに本拠地を置く不妊治療関連商品のワールドリーダー。同社のタイムラプス・モニタリングシステムが今、脚光を浴びています。現在、導入台数を大幅に増やし、原則すべての体外受精に採用することとした福井ウィメンズクリニックの福井先生を訪問。その有用性をお聞きしました。 デリケートな胚にストレスをかけない安定した管理体制 「プリモビジョン」によるタイムラプス・モニタリングの技術は、どのような役割を果たすのでしょうか。 福井先生:タイムラプス・モニタリングシステムは、胚をインキュベーターに入れたまま観察ができるシステムです。これまでは、胚を観察する際は定期的に培養士がインキュベーターから取り出し、顕微鏡で観察していました。この作業のために胚が何度も外気や光に触れることになり、培養液中のph値が変わったり温度が低下したりと、胚に不要なストレスをかけてしまいます。しかし、この タイムラプス・モニタリングシステムは、胚をインキュベーターに入れたまま観察ができるので、胚にとってより良い環境で培養することができます。 タイムラプス技術で撮った画像を、どのように活用されていますか。 福井先生:タイムラプスで撮った画像は、一定の間隔で撮り続けるため膨大な枚数となり、それをアニメーション化することで動画として見ることができま す。胚の成長過程を確認することができるので、最終的な胚の選択に非常に役立っています。これまでは、移植前にどの胚がふさわしいかを見極める際の主な判断材料は移植前の胚の形状だけでした。ところがこのタイムラプス技術を採用してからは、胚の成長過程も参考にしながら選ぶことができるようになりました。これはとても画期的で、たとえば最終的にきれいな胚盤胞に育っていても、分裂の過程で問題が見つかればその胚は移植しても妊娠の可能性が低いと判断できるようになりました。 成長過程を見ることで異常を発見良好胚が選択しやすい 良好胚と不良胚の成長をタイムラプスでモニタリングした場合、どのような違いがありますか。 福井先生:良好胚の場合は、時間を追うごとにきれいに分裂しています。一方、不良胚は一度分割したものが時間を追うとくっついていたり、速度にばらつきがあったり、極端にスピードが遅かったりと、スムーズな動きが見えません。分割のしかたを見ると不良とわかる胚でも最終的に形が良ければ良好胚に見えてしまうのですから、タイムラプス技術で得られる情報の有用性を実感できます。 「百聞は一見にしかず」コミュニケーションが円滑になる 患者さんや現場スタッフの方々からの反響はいかがでしょうか。 福井先生:写真ではなく動画を見ることで生命を感じることができます。映像を見ると、皆さん自分の卵に愛情が湧いてきて、不妊治療により前向きになるのを感じます。もし、うまく成長しなかったとしても、映像として動きが鈍る過程を見ることで、受け止め方が全然違ってくるんです。当院では胚の映像を有料(USB代)で提供しています。自宅に持ち帰り、夫婦で映像を見ることで、ご主人からの協力も得やすくなるのではないでしょうか。子どもが生まれて大きくなったら、見せてあげるのもいいでしょう。また、ラボの培養士たちからは、新人もベテランも安定した管理ができ、ストレスなく、仕事に取り組めているようです。映像には画像の何倍も説得力があるので、私自身も患者さんとのコミュニケーションにとても役立っています。 治療へのメリットは? 吉田先生:1個しか採卵できなかった患者さんに対しては、その胚を移植するしかありませんが、複数個の胚が採れて育った場合には「どの胚を移植すべきか」という選択がしいられます。特に反復ART不成功例の患者さんにとっては、できるだけ妊孕性が高い胚を選択するための指標が必要です。現在の胚の評価方法の多くは、形態から判断され、形の良い胚は妊孕性が高いと考えられていますが、実はそれだけでは測れないのです。5日目に見た目にもきれいな胚盤胞になっていても、胚盤胞になるまでの途中経過で、分割の仕方、スピードに異常があることも考えられます。胚の評価方法は、受精後から約1日後に2分割、3日後には8分割に、とステージごとに評価方法があります。見た目だけでなく、そのタイムステージに則って順調に育ってきたかどうかも大変重要なポイントとなります。医師としては、1つの胚からできるだけ多くの情報を得たい。プリモビジョンでは、その成長過程で起きた変化をさかのぼることができ、これまで以上に詳しくたどることができるのです。プリモビジョンは良好な胚を選ぶためだけではなく、異常胚を移植しないようにするためにも使うことが可能です。たとえば1個の割球が直接3個に分割してしまうことがあります。このような胚は妊娠する可能性が極めて低いため移植するべきではありません。 現在、タイムラプス・モニタリングの対象となる患者様はどのような方でしょうか。 福井先生:最初のうちは、40代以上の方を対象としていました。ところが思った以上に培養士や患者さんから反響があり、私自身も有用性があると感じたので、 半年後には、基本的にすべての患者さんを対象とすることに決め、一気に導入台数を増やしました。現在は、すべての機器が稼働している状況です。 ▼ タイムラプスとは? 培養庫内の胚の成長過程を、定期的に自動撮影するシステム タイムラプス(Time-lapse)とは、任意で設定した時間間隔でカメラのシャッターが押され、画像が記録される“コマ撮り”のこと。防犯カメラや気象などの定点観測などによく用いられる技術で、時間(time)経過(lapse)による画面の変化が動画よりも見てとりやすい。不妊治療分野では、シャーレを乗せることのできる超小型顕微鏡カメラで、胚の分割過程を撮影。それにより、胚が日を追って正常なプロセスを経て育ったかが確認しやすくなる。 胚の発生:1.前核期 2.2細胞期 3.3細胞期 4.4細胞期 5.8細胞期 6.桑実胚期 7.胚盤胞期 Primo Vision タイムラプス・モニタリングシステムを用いることで、胚の発生をビデオで見ることが可能です。このビデオを解析することで最も良好な胚を選択することができます。 福井ウィメンズクリニック 福井敬介先生日本大学医学部卒業後、愛媛大学産科婦人科に入局、同大学院医学専攻科修了。愛媛大学産科婦人科学助教授を経て、2001年、福井ウィメンズクリニックを開設。≫ 福井ウィメンズクリニック 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.26 2015 Summer≫ マガジンの記事がすべてご覧いただけます! 【無料】100ページオールカラー 女性のための健康生活マガジン JINEKO
2015.5.20
コラム 不妊治療
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体外受精の有用性を高める最先端の 「タイムラプス・モニタリングシステム」とは?
培養庫内で胚を定期的に観察できるタイムラプス・モニタリングシステム(プリモビジョン:ヴィトロライフ社)により胚の発達過程がより詳細に観察することが出来るようになりました。その画期的なシステムの特徴について、広島HARTクリニックの向田先生にお聞きしました。従来法よりも詳細な情報を元に良好胚の選択をすることができ、臨床成績の向上に可能性があります。 インキュベータから外に出すことなく胚の持続観察が可能 プリモビジョンという、タイムラプス・モニタリングシステムとはどんな装置ですか? 向田先生:自然妊娠では体内で受精・発育し着床する胚にとって、体外受精を施行する上で、体外に卵や胚を取り出して観察し、操作することは必要ですが、必ずしも生理学的とはいえず負担がないわけではありません。そのため少しでも胚へのストレスを減らすため、培養庫外での操作はできるだけ少ない方が良いと思われます。患者様からお預かりしている大切な胚へのストレス軽減と、より正確な胚の観察をめざし、より多くの妊娠出産へ導くために、タイムラプス・モニタリングシステムを導入しました。 採取された卵子と精子は、シャーレ上の培養液ドロップの中で受精し、移植までの期間、培養庫(インキュベータ)と呼ばれる保温された機器の中で育てられます。培養庫は、いわば子宮の代わりをする、胚にとっての生命維持装置で、庫内は温度や湿度はもちろん、酸素や二酸化炭素なども厳密に管理されています。プリモビジョンはあらかじめ培養庫内にセットされているので、受精卵を培養庫から外に取り出すことなく胚撮影専用のカメラで10分ごとに受精からの成長過程を連続的に撮影することができます。胚の形態的変化や成長過程など、重要なポイントをモニターの画像により詳細に捉えることができるようになります。 プリモビジョンの導入の理由、利点は? 向田先生:従来、胚の発達過程は、毎日培養士が胚を培養庫から取出し、素早く顕微鏡下で観察し、形態的な評価を行っていました。もしより詳細に観察するために頻回に胚を培養庫外に出していたら、胚は外気にさらされ、培養庫内に外気が流入するため培養環境も変化し、元に戻るまでに時間がかかります。プリモビジョンなら、インキュベータに入れたままカメラで撮影記録するので、扉 を開閉することなく適切な環境のまま観察が可能です。胚を外気に触れさせずにすみ、培養庫内の環境が最適に保てるのが一番の利点です。また、プリモビジョンは一定の間隔(10分毎)で撮影した写真を連続して記録するため、これらをつなぎ合わせると胚の細胞分裂の様子を動画として観察をすることができます。この画像を解析し、細胞分裂のタイミングやパターンを評価することで、より妊娠する可能性の高い胚を選択することが出来るため、体外受精法の有効性を高めることが出来ます。 成長プロセスを確実にチェックし、より適切な胚選択へ 導入されてからの治療へのメリットや患者さんの印象は? 向田先生:初期胚や胚盤胞が複数ある場合、画像から得られる情報を利用して、どの胚が移植に適しているのか?どれを凍結保存すべきか、を判断する助けになり、従来に比べて妊娠する可能性の高い胚を選ぶことができる可能性が高くなります。これにより今まで以上に、胚の観察から個々の状況に応じた治療方法の選択も可能となります。受精する直前から、どのように受精し、胚発達が進むのかを詳細に記録しているので、その画像を診察時に患者さんと供覧しながらモニターで共有し、「今回のあなたの胚は、このような発達経過をたどり、胚盤胞に達しています。」などと、より詳細な説明をすることができています。 従来の胚評価は、1~2日毎の定時観察による形態的評価であり、その際形態良好と判定しても、実際には当てはまらない場合は少なくありません。5日目に形態良好と判断した胚盤胞でも、胚盤胞になるまでの分割のタイミングや分割の仕方、そのパターンに異常があることは珍しくありません。日常の出来事と同じように、1枚の静止画像(写真)より、動画により得られる情報(YouTubeなどのドキュメンタリー動画)の方が正確であるのは、胚の評価にも当てはまり、より正確に良好な胚を選択する助けになる可能性があります。 ▼ タイムラプスとは? 培養庫内の胚の成長過程を、定期的に自動撮影するシステム タイムラプス(Time-lapse)とは、任意で設定した時間間隔でカメラのシャッターが押され、画像が記録される“コマ撮り”のこと。防犯カメラや気象などの定点観測などによく用いられる技術で、時間(time)経過(lapse)による画面の変化が動画よりも見てとりやすい。不妊治療分野では、シャーレを乗せることのできる超小型顕微鏡カメラで、胚の分割過程を撮影。それにより、胚が日を追って正常なプロセスを経て育ったかが確認しやすくなる。 胚の発生:1.前核期 2.2細胞期 3.3細胞期 4.4細胞期 5.8細胞期 6.桑実胚期 7.胚盤胞期 Primo Vision タイムラプス・モニタリングシステムを用いることで、胚の発生をビデオで見ることが可能です。このビデオを解析することで最も良好な胚を選択することができます。 培養庫内で胚を定期的に観察できるタイムラプス・モニタリングシステム(プリモビジョン:ヴィトロライフ社)により胚の発達過程がより詳細に観察することが出来るようになりました。その画期的なシステムの特徴について、広島HARTクリニックの向田先生にお聞きしました。従来法よりも詳細な情報を元に良好胚の選択をすることができ、臨床成績の向上に可能性があります。 インキュベータから外に出すことなく胚の持続観察が可能 プリモビジョンという、タイムラプス・モニタリングシステムとはどんな装置ですか? 向田先生:自然妊娠では体内で受精・発育し着床する胚にとって、体外受精を施行する上で、体外に卵や胚を取り出して観察し、操作することは必要ですが、必ずしも生理学的とはいえず負担がないわけではありません。そのため少しでも胚へのストレスを減らすため、培養庫外での操作はできるだけ少ない方が良いと思われます。患者様からお預かりしている大切な胚へのストレス軽減と、より正確な胚の観察をめざし、より多くの妊娠出産へ導くために、タイムラプス・モニタリングシステムを導入しました。 採取された卵子と精子は、シャーレ上の培養液ドロップの中で受精し、移植までの期間、培養庫(インキュベータ)と呼ばれる保温された機器の中で育てられます。培養庫は、いわば子宮の代わりをする、胚にとっての生命維持装置で、庫内は温度や湿度はもちろん、酸素や二酸化炭素なども厳密に管理されています。プリモビジョンはあらかじめ培養庫内にセットされているので、受精卵を培養庫から外に取り出すことなく胚撮影専用のカメラで10分ごとに受精からの成長過程を連続的に撮影することができます。胚の形態的変化や成長過程など、重要なポイントをモニターの画像により詳細に捉えることができるようになります。 プリモビジョンの導入の理由、利点は? 向田先生:従来、胚の発達過程は、毎日培養士が胚を培養庫から取出し、素早く顕微鏡下で観察し、形態的な評価を行っていました。もしより詳細に観察するために頻回に胚を培養庫外に出していたら、胚は外気にさらされ、培養庫内に外気が流入するため培養環境も変化し、元に戻るまでに時間がかかります。プリモビジョンなら、インキュベータに入れたままカメラで撮影記録するので、扉 を開閉することなく適切な環境のまま観察が可能です。胚を外気に触れさせずにすみ、培養庫内の環境が最適に保てるのが一番の利点です。また、プリモビジョンは一定の間隔(10分毎)で撮影した写真を連続して記録するため、これらをつなぎ合わせると胚の細胞分裂の様子を動画として観察をすることができます。この画像を解析し、細胞分裂のタイミングやパターンを評価することで、より妊娠する可能性の高い胚を選択することが出来るため、体外受精法の有効性を高めることが出来ます。 成長プロセスを確実にチェックし、より適切な胚選択へ 導入されてからの治療へのメリットや患者さんの印象は? 向田先生:初期胚や胚盤胞が複数ある場合、画像から得られる情報を利用して、どの胚が移植に適しているのか?どれを凍結保存すべきか、を判断する助けになり、従来に比べて妊娠する可能性の高い胚を選ぶことができる可能性が高くなります。これにより今まで以上に、胚の観察から個々の状況に応じた治療方法の選択も可能となります。受精する直前から、どのように受精し、胚発達が進むのかを詳細に記録しているので、その画像を診察時に患者さんと供覧しながらモニターで共有し、「今回のあなたの胚は、このような発達経過をたどり、胚盤胞に達しています。」などと、より詳細な説明をすることができています。 従来の胚評価は、1~2日毎の定時観察による形態的評価であり、その際形態良好と判定しても、実際には当てはまらない場合は少なくありません。5日目に形態良好と判断した胚盤胞でも、胚盤胞になるまでの分割のタイミングや分割の仕方、そのパターンに異常があることは珍しくありません。日常の出来事と同じように、1枚の静止画像(写真)より、動画により得られる情報(YouTubeなどのドキュメンタリー動画)の方が正確であるのは、胚の評価にも当てはまり、より正確に良好な胚を選択する助けになる可能性があります。 ▼ タイムラプスとは? 培養庫内の胚の成長過程を、定期的に自動撮影するシステム タイムラプス(Time-lapse)とは、任意で設定した時間間隔でカメラのシャッターが押され、画像が記録される“コマ撮り”のこと。防犯カメラや気象などの定点観測などによく用いられる技術で、時間(time)経過(lapse)による画面の変化が動画よりも見てとりやすい。不妊治療分野では、シャーレを乗せることのできる超小型顕微鏡カメラで、胚の分割過程を撮影。それにより、胚が日を追って正常なプロセスを経て育ったかが確認しやすくなる。 胚の発生:1.前核期 2.2細胞期 3.3細胞期 4.4細胞期 5.8細胞期 6.桑実胚期 7.胚盤胞期 Primo Vision タイムラプス・モニタリングシステムを用いることで、胚の発生をビデオで見ることが可能です。このビデオを解析することで最も良好な胚を選択することができます。
2015.5.20
コラム 不妊治療
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ドクターが解説 !!生殖医療用語 一覧
難しい用語がいろいろと出てくる不妊治療の現場。治療でよく聞く用語だけど、あまり正確に知らないものも多いのでは?勘違いや思い込みを防ぐためにもしっかり確認しておきましょう。クリニックの先生に用語の解説をしていただきました。 「卵管閉塞」 はるねクリニック銀座 中村 はるね 先生 「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」 三軒茶屋ウィメンズクリニック 保坂 猛 先生 「子宮内膜症」 長谷川レディースクリニック 長谷川 剛志 先生 「子宮筋腫」 陣内ウィメンズクリニック 陣内 彦良 先生 「卵巣チョコレート嚢胞」 ルナレディースクリニック 根来 良材 先生 「黄体機能不全」 楠原ウィメンズクリニック 楠原 浩二 先生 「高プロラクチン血症」 新百合ヶ丘総合病院産婦人科 田島 博人 先生 「子宮腺筋症」 はなおかIVFクリニック 花岡 正智 先生 「卵巣嚢腫」 海老名レディースクリニック 近藤 芳仁 先生 「黄体化未破裂卵胞(LUF)」 山口レディスクリニック 山口 一雄 先生 「無月経、無排卵」 キネマアートクリニック 渋井 幸裕 先生 「子宮形態異常(子宮奇形)」 西垣ARTクリニック 西垣 新 先生 「ピックアップ障害」 ときわ台レディースクリニック 藤野 剛 先生 「卵管癒着」 あいARTクリニック 副田 善勝 先生 「クラミジア」 吉澤産婦人科医院 吉澤 廣幸 先生 「着床障害」 高橋ウイメンズクリニック 高橋 敬一 先生 「早発卵巣不全(POF)」 さくらウィメンズクリニック 仲田 正之 先生 「早発閉経(POI)」 さくらウィメンズクリニック 仲田 正之 先生 「エストロゲン」 横浜HART クリニック 後藤 哲也 先生 「FSH(卵胞刺激ホルモン)」 八重洲中央クリニック 田口 敦 先生 「プロゲステロン」 神谷レディースクリニック 神谷 博文 先生 「TRH(甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン)」 ノア・ウィメンズクリニック 波多野 久昭 先生 「LH(黄体化ホルモン)」 あいウイメンズクリニック 伊藤 哲 先生 「アルコール固定術」 レディースクリニック 北浜 奥 裕嗣 先生 「胚盤胞移植」 ウイメンズクリニック神野 神野 正雄 先生 「二段階胚移植」 徐クリニックARTセンター/徐 東舜 先生 「アシストハッチング」 福田ウイメンズクリニック/福田 勝 先生 「卵子活性化処理法(カルシウムイオノフォア)」 東京HARTクリニック/岡 親弘 先生 「IVM-IVF」 中央クリニック/岡 親弘 先生 「タイムラプスモニタリングシステム」 高橋ウイメンズクリニック/高橋 敬一 先生 「子宮形態異常(子宮奇形)」 西垣ARTクリニック/西垣 新 先生 「新鮮胚移植」 はらメディカルクリニック/原 利夫 先生 「卵管鏡下卵管形成術(FTカテーテル法)」 操レディスホスピタル/操 良 先生 「原始卵胞体外活性化法(in vitro activation:IVA)」 ローズレディースクリニック/石塚 文平 先生 「腹腔鏡検査、腹腔鏡下手術」 荻窪病院 虹クリニック/北村 誠司 先生 「ART」 福田ウイメンズクリニック/福田 勝 先生 「IVF」 永井マザーズホスピタル/永井 泰 先生 「IVM」 はらメディカルクリニック/原 利夫 先生 「ICSI」 ソフィアレディースクリニック水道町/岩政 仁 先生 「AIH/IUI」 片岡レディスクリニック/片岡 明生 先生 「PGD(着床前診断)」 竹内レディースクリニック/竹内 一浩 先生 「レスキューイクシー(rescue ICSI)」 みのうらレディースクリニック/箕浦 博之 先生 「ヒアルロン酸胚移植用培養液(エンブリオグルー)」 オーク住吉産婦人科/田口 早桐 先生 先生 「異所性妊娠(子宮外妊娠)」 福田ウイメンズクリニック/福田 勝 先生 「ピエゾイクシー(Piezo ICSI)」 東京HARTクリニック/岡 親弘 先生 「スプリット法」 神谷レディースクリニック/神谷 博文 先生 「生化学的妊娠(化学流産)」 ときわ台レディースクリニック/藤野 剛 先生 難しい用語がいろいろと出てくる不妊治療の現場。治療でよく聞く用語だけど、あまり正確に知らないものも多いのでは?勘違いや思い込みを防ぐためにもしっかり確認しておきましょう。クリニックの先生に用語の解説をしていただきました。 「卵管閉塞」 はるねクリニック銀座 中村 はるね 先生 「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」 三軒茶屋ウィメンズクリニック 保坂 猛 先生 「子宮内膜症」 長谷川レディースクリニック 長谷川 剛志 先生 「子宮筋腫」 陣内ウィメンズクリニック 陣内 彦良 先生 「卵巣チョコレート嚢胞」 ルナレディースクリニック 根来 良材 先生 「黄体機能不全」 楠原ウィメンズクリニック 楠原 浩二 先生 「高プロラクチン血症」 新百合ヶ丘総合病院産婦人科 田島 博人 先生 「子宮腺筋症」 はなおかIVFクリニック 花岡 正智 先生 「卵巣嚢腫」 海老名レディースクリニック 近藤 芳仁 先生 「黄体化未破裂卵胞(LUF)」 山口レディスクリニック 山口 一雄 先生 「無月経、無排卵」 キネマアートクリニック 渋井 幸裕 先生 「子宮形態異常(子宮奇形)」 西垣ARTクリニック 西垣 新 先生 「ピックアップ障害」 ときわ台レディースクリニック 藤野 剛 先生 「卵管癒着」 あいARTクリニック 副田 善勝 先生 「クラミジア」 吉澤産婦人科医院 吉澤 廣幸 先生 「着床障害」 高橋ウイメンズクリニック 高橋 敬一 先生 「早発卵巣不全(POF)」 さくらウィメンズクリニック 仲田 正之 先生 「早発閉経(POI)」 さくらウィメンズクリニック 仲田 正之 先生 「エストロゲン」 横浜HART クリニック 後藤 哲也 先生 「FSH(卵胞刺激ホルモン)」 八重洲中央クリニック 田口 敦 先生 「プロゲステロン」 神谷レディースクリニック 神谷 博文 先生 「TRH(甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン)」 ノア・ウィメンズクリニック 波多野 久昭 先生 「LH(黄体化ホルモン)」 あいウイメンズクリニック 伊藤 哲 先生 「アルコール固定術」 レディースクリニック 北浜 奥 裕嗣 先生 「胚盤胞移植」 ウイメンズクリニック神野 神野 正雄 先生 「二段階胚移植」 徐クリニックARTセンター/徐 東舜 先生 「アシストハッチング」 福田ウイメンズクリニック/福田 勝 先生 「卵子活性化処理法(カルシウムイオノフォア)」 東京HARTクリニック/岡 親弘 先生 「IVM-IVF」 中央クリニック/岡 親弘 先生 「タイムラプスモニタリングシステム」 高橋ウイメンズクリニック/高橋 敬一 先生 「子宮形態異常(子宮奇形)」 西垣ARTクリニック/西垣 新 先生 「新鮮胚移植」 はらメディカルクリニック/原 利夫 先生 「卵管鏡下卵管形成術(FTカテーテル法)」 操レディスホスピタル/操 良 先生 「原始卵胞体外活性化法(in vitro activation:IVA)」 ローズレディースクリニック/石塚 文平 先生 「腹腔鏡検査、腹腔鏡下手術」 荻窪病院 虹クリニック/北村 誠司 先生 「ART」 福田ウイメンズクリニック/福田 勝 先生 「IVF」 永井マザーズホスピタル/永井 泰 先生 「IVM」 はらメディカルクリニック/原 利夫 先生 「ICSI」 ソフィアレディースクリニック水道町/岩政 仁 先生 「AIH/IUI」 片岡レディスクリニック/片岡 明生 先生 「PGD(着床前診断)」 竹内レディースクリニック/竹内 一浩 先生
2015.5.19
コラム 不妊治療
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卵移植後の岩盤浴ヨガは避けた方がいいのでしょうか?
相談者 サツキとメイ さん(36歳) 不妊治療3年目にさしかかり、この度最初で最後の体外受精にチャレンジしました。これが最後の治療にするつもりなの で、もっと体にできることをしたいと思っています。本日無事卵を移植してもらいました。そこで近所にある岩盤浴ヨガに週 2回ほど通おうか悩んでいます。移植後の温泉や長風呂は良くないと聞きます。お尻や太ももがいつも冷たい冷え性なので、普通のヨガでは運動後にすごく冷えてしまうんです。移植後に岩盤浴ヨガで体を温めるのは良くないのでしょうか? 初めての岩盤浴なら体が慣れていないから胚移植後は刺激過多になる危険がある 不妊治療を始められて3年、ステップアップして最初で最後と決められた体外受精を、ぜひ妊娠・出産につなげたいですね。 「腎陽の気」を補うには体を温めることが肝要だだし時期に合わせて温め方を選ぶ 妊娠・出産するためには「腎気」が必要です。「腎は精を蔵し、生長・発育・生殖をつかさどる」と言われ、人の一生は「腎気」の盛衰で表されます。そして「腎気」が衰えた状態を「腎虚」と言います。サツキとメイさんはお尻と太ももが冷たい冷え性なので、その中の「腎陽虚」の状態が考えられます。「腎陽虚」は、「腎虚」の状態が進んで「温煎作用」の減退による寒症が現れたものです。内分泌機能の低下に基づく同化作用の減弱・循環不良・脳の興奮性低下などによる症候と考えられます。具体的には、先天的な虚弱・老化・慢性病・過労・ストレス・体を冷やす飲食物の摂り過ぎなどで発生する体全体の元気が足りなくなった状態をいいます。「腎陽の気」を補うには体を温めることが肝要です。ただし、温める方法は時期に合わせて選びます。 赤ちゃんにとって優しい自然の温かさを自力で行える力を鍼灸治療で引き出す 胚移植の前は岩盤浴などでしっかり体を温めます。胚移植後は、初めての岩盤浴なら体が慣れていないので、刺激過多になるのでおすすめしません。移植後は自身の力を高めて、自然に体が温まるようにするべきです。ヨガは骨盤内の血流量が増え子宮の働きが良くなります。腹圧をかけずゆったりとしたヨガを行いましょう。鍼灸治療では、「腎気」を補い、自律神経を整え、ホルモンのバランスを調整することで、本人が持っている温める力を引きだします。自然の温かさは赤ちゃんにとっても優しいのでおすすめです。日常生活では以下のようなことを心がけましょう。 ① 栄養バランスのとれた食事を摂る。 ② 冷たい飲食物を摂らない。寒い場所に長時間居ない。 ③ 気持ち良い気温の時に軽い散歩をする。 ④ 睡眠をしっかりとり、規則正しい生活を送る。 ⑤ ストレスや不安をやわらげるリラックスタイム。 ⑥ 風邪やインフルエンザなどに感染しない対策を。 以上のことを、穏やかな落ち着いた心持ちで行なっててみてください。 中村 陽先生 二松學舍大学卒。東海医療学園専門学校卒。日本不妊カウンセリング学会会員。日本受精着床学会会員。2000年CARE ROOMS開業。東洋医学に加え、酸素カプセル・ゲルマニウム温浴・光線療法・自律神経測定など、多角的に妊娠しやすい体作りを行なっています。 相談者 サツキとメイ さん(36歳) 不妊治療3年目にさしかかり、この度最初で最後の体外受精にチャレンジしました。これが最後の治療にするつもりなの で、もっと体にできることをしたいと思っています。本日無事卵を移植してもらいました。そこで近所にある岩盤浴ヨガに週 2回ほど通おうか悩んでいます。移植後の温泉や長風呂は良くないと聞きます。お尻や太ももがいつも冷たい冷え性なので、普通のヨガでは運動後にすごく冷えてしまうんです。移植後に岩盤浴ヨガで体を温めるのは良くないのでしょうか? 初めての岩盤浴なら体が慣れていないから胚移植後は刺激過多になる危険がある 不妊治療を始められて3年、ステップアップして最初で最後と決められた体外受精を、ぜひ妊娠・出産につなげたいですね。 「腎陽の気」を補うには体を温めることが肝要だだし時期に合わせて温め方を選ぶ 妊娠・出産するためには「腎気」が必要です。「腎は精を蔵し、生長・発育・生殖をつかさどる」と言われ、人の一生は「腎気」の盛衰で表されます。そして「腎気」が衰えた状態を「腎虚」と言います。サツキとメイさんはお尻と太ももが冷たい冷え性なので、その中の「腎陽虚」の状態が考えられます。「腎陽虚」は、「腎虚」の状態が進んで「温煎作用」の減退による寒症が現れたものです。内分泌機能の低下に基づく同化作用の減弱・循環不良・脳の興奮性低下などによる症候と考えられます。具体的には、先天的な虚弱・老化・慢性病・過労・ストレス・体を冷やす飲食物の摂り過ぎなどで発生する体全体の元気が足りなくなった状態をいいます。「腎陽の気」を補うには体を温めることが肝要です。ただし、温める方法は時期に合わせて選びます。 赤ちゃんにとって優しい自然の温かさを自力で行える力を鍼灸治療で引き出す 胚移植の前は岩盤浴などでしっかり体を温めます。胚移植後は、初めての岩盤浴なら体が慣れていないので、刺激過多になるのでおすすめしません。移植後は自身の力を高めて、自然に体が温まるようにするべきです。ヨガは骨盤内の血流量が増え子宮の働きが良くなります。腹圧をかけずゆったりとしたヨガを行いましょう。鍼灸治療では、「腎気」を補い、自律神経を整え、ホルモンのバランスを調整することで、本人が持っている温める力を引きだします。自然の温かさは赤ちゃんにとっても優しいのでおすすめです。日常生活では以下のようなことを心がけましょう。 ① 栄養バランスのとれた食事を摂る。 ② 冷たい飲食物を摂らない。寒い場所に長時間居ない。 ③ 気持ち良い気温の時に軽い散歩をする。 ④ 睡眠をしっかりとり、規則正しい生活を送る。 ⑤ ストレスや不安をやわらげるリラックスタイム。 ⑥ 風邪やインフルエンザなどに感染しない対策を。 以上のことを、穏やかな落ち着いた心持ちで行なっててみてください。 中村 陽先生 二松學舍大学卒。東海医療学園専門学校卒。日本不妊カウンセリング学会会員。日本受精着床学会会員。2000年CARE ROOMS開業。東洋医学に加え、酸素カプセル・ゲルマニウム温浴・光線療法・自律神経測定など、多角的に妊娠しやすい体作りを行なっています。
2015.5.1
コラム 不妊治療
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パイオネックスについて詳しく教えてください
相談者 アリエス さん(41歳) 不妊治療を初めて3年になります。鍼灸で妊娠率があがることを知りましたが、2点お聞きしたいことがあります。1点目は、パイオネックスをしてますが、効き目はどれくらいですか? 2点目は、凍結胚盤胞と凍結桑実期胚を戻した3日後と8日後 に三陰交とおへそ周り4か所、腰に4か所パイオネックスをしましたが、結果は陰性でした。戻した後はお腹周りを鍼灸などで触らないほうがいいと聞き、今後も治療を続ける予定なので不安になっています。○ 子宮内膜症、子宮線筋症 ○ 月経前に下腹部や側腹部をさわると硬い○ 不眠で夢をよく見る○ 卵や子宮内膜の条件が良くても着床しにくい 東洋医学は病状だけではなく体の中のさまざまな反応を見極めて治療する 近年ART(生殖補助医療)を受ける方が多くなっています。当院では不妊治療の方へは刺激のある鍼は行わずパイオネックスを使用しています。臍下丹田(おへその下辺り)、八髎(仙骨の辺り)、三陰交(内くるぶし上辺り)にパイオネックスを使用し、温灸・サンビーマー(温熱治療)を組み合わせた治療法です。刺激の少ないパイオネックスはART(生殖補助医療)を受けている方でも問題なく行えると思います。妊娠力を高めるには気を補い、めぐりをよくする漢方薬や生活養生(生活習慣の改善)が必要となります。アリエスさんは「気」のめぐりが悪い「気滞」の症状ではないでしょうか。「気滞」とは、ストレスや緊張した状態が続いたことで、「気」のめぐりが悪くなり体にさまざまなトラブルをおこす状態です。 鍼灸に加えて食事などの生活養生も行って治療効果が全身で実感できる体質に変える 「気」は、体と心を元気にする、子宮や卵巣の働きを高める、血液や栄養を体のすみずみに運ぶ、体を温める、体を外敵から守る働きがあります。日常生活も見直してみてください。好きな音楽を聞く、鍼灸で体を温める、軽いマッサージを受けるなど、リラックスする時間を作りましょう。大根、シソ、玉ネギ、セロリ、春菊などの食材は気滞を改善する効果があると言われていますので、積極的に取り入れた食事を。反対に甘い物、脂っこい物は気の流れをとどこおらせる原因になるので気をつけましょう。東洋医学は体質を改善し高める医学です。神経や内臓、筋肉はお互いに連携しあってひとつのシステムとして働いています。病状だけではなく体の中のさまざまな反応を見極めて体全体を診ていきます。ですから鍼灸に加えて食事などの生活養生のアドバイスも行って、効果が全身で実感できる体質に変える治療なのです。 永井 郁子先生 歯科衛生士から東洋医学に興味を持ち鍼灸師へ。鍼灸は全身治療なので肌の露出も多くなることから、女性が安心して治療を受けられる女性専用の鍼灸を開院。サンビーマー(温熱療法)を取り入れ、冷え性、不妊症など女性に優しい治療を行っている。 相談者 アリエス さん(41歳) 不妊治療を初めて3年になります。鍼灸で妊娠率があがることを知りましたが、2点お聞きしたいことがあります。1点目は、パイオネックスをしてますが、効き目はどれくらいですか? 2点目は、凍結胚盤胞と凍結桑実期胚を戻した3日後と8日後 に三陰交とおへそ周り4か所、腰に4か所パイオネックスをしましたが、結果は陰性でした。戻した後はお腹周りを鍼灸などで触らないほうがいいと聞き、今後も治療を続ける予定なので不安になっています。○ 子宮内膜症、子宮線筋症 ○ 月経前に下腹部や側腹部をさわると硬い○ 不眠で夢をよく見る○ 卵や子宮内膜の条件が良くても着床しにくい 東洋医学は病状だけではなく体の中のさまざまな反応を見極めて治療する 近年ART(生殖補助医療)を受ける方が多くなっています。当院では不妊治療の方へは刺激のある鍼は行わずパイオネックスを使用しています。臍下丹田(おへその下辺り)、八髎(仙骨の辺り)、三陰交(内くるぶし上辺り)にパイオネックスを使用し、温灸・サンビーマー(温熱治療)を組み合わせた治療法です。刺激の少ないパイオネックスはART(生殖補助医療)を受けている方でも問題なく行えると思います。妊娠力を高めるには気を補い、めぐりをよくする漢方薬や生活養生(生活習慣の改善)が必要となります。アリエスさんは「気」のめぐりが悪い「気滞」の症状ではないでしょうか。「気滞」とは、ストレスや緊張した状態が続いたことで、「気」のめぐりが悪くなり体にさまざまなトラブルをおこす状態です。 鍼灸に加えて食事などの生活養生も行って治療効果が全身で実感できる体質に変える 「気」は、体と心を元気にする、子宮や卵巣の働きを高める、血液や栄養を体のすみずみに運ぶ、体を温める、体を外敵から守る働きがあります。日常生活も見直してみてください。好きな音楽を聞く、鍼灸で体を温める、軽いマッサージを受けるなど、リラックスする時間を作りましょう。大根、シソ、玉ネギ、セロリ、春菊などの食材は気滞を改善する効果があると言われていますので、積極的に取り入れた食事を。反対に甘い物、脂っこい物は気の流れをとどこおらせる原因になるので気をつけましょう。東洋医学は体質を改善し高める医学です。神経や内臓、筋肉はお互いに連携しあってひとつのシステムとして働いています。病状だけではなく体の中のさまざまな反応を見極めて体全体を診ていきます。ですから鍼灸に加えて食事などの生活養生のアドバイスも行って、効果が全身で実感できる体質に変える治療なのです。 永井 郁子先生 歯科衛生士から東洋医学に興味を持ち鍼灸師へ。鍼灸は全身治療なので肌の露出も多くなることから、女性が安心して治療を受けられる女性専用の鍼灸を開院。サンビーマー(温熱療法)を取り入れ、冷え性、不妊症など女性に優しい治療を行っている。
2015.4.28
コラム 不妊治療
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どこの鍼灸院も不妊のツボは同じで同じ治療をするのでしょうか?
相談者 やすきち さん(41歳) 現在、鍼灸に通っています。とりあえず職場から近くて不妊治療に力を入れている鍼灸院を探しました。しかし基本的なこ とが疑問になっています。それは、全国の不妊治療に力を入れている鍼灸院は、みな同じように鍼やお灸をするのでしょう か?「不妊治療にはここ」と、ツボは鍼灸師さんがみな一致しているのでしょうか?○ 体温が上下に変動が激しい○ 低温期から高温期への移行に時間がかかる○ レバー状の塊や、粘膜のような塊が混じっている○ 子宮筋腫、内膜症、卵巣膿腫、子宮ポリープ、卵管癒着などがある 体全体を改善して妊娠しやすくするのが不妊治療に力を入れている鍼灸院の治療法 現在不妊治療に力を入れている鍼灸院に通われているようですが、不妊症に対する鍼灸治療の基本についてお知りになりたいようですね。 流派で違う治療に鍼灸院ごとの経験が加わるので治療法はさまざま 鍼灸治療について押さえておくべきポイントは2つあります。ひとつは鍼灸治療をはじめとする東洋医学は西洋医学と違って病名から治療するのではなく、患者さんの体の状態を「証」という体質の分類法を用い、その証に基づいて治療法を組み立てる随証治療であること。もうひとつは鍼灸治療には、さまざまな流派があり、流派ごとに鍼灸治療に対する考え方が異なるので、治療する経穴は必ずしも共通していないということです。最近は不妊症治療に力を入れている鍼灸院が増えてきていますが、先ほど言ったように、基本的に随証治療を行うので不妊症というカテゴリーの治療ではなく、体全体を妊娠しやすい体質に改善していくのです。たとえば、やすきちさんでしたら気になる症状から腎が弱い「腎虚証」と血の循環が悪い「瘀血」ととらえて、腎気を補い瘀血を改善する治療をしていきます。腎虚や瘀血を改善する治療は流派によって違います。さらに鍼灸院ごとの経験的な治療法が加わりますので、治療法はさまざまだと考えてもいいでしょう。 同じ経穴を同じ手技で治療をして妊娠率を高めている不妊鍼灸ネットワーク しかしこれでは鍼灸治療になじみのない人にとって、鍼灸院選びがわかりづらく迷ってしまうので、昨年の秋に日本鍼灸師会の会員の有志が集まって、不妊鍼灸ネットワークという団体を結成しました。この団体では質の高い鍼灸治療を提供できる鍼灸師を育て、不妊症で悩んでいる方に紹介しようという試みを始めています。このネットワークでは、「ある特定の経穴を使うと卵巣動脈の流れを改善したり、子宮内膜を厚くして質を高めることができる」というような研究をされている先生が在籍しています。その先生の指導のもとでネットワークの会員は、その特定の経穴を使って不妊治療を実践しているので、同じ経穴を同じ手技で治療をし、妊娠率を高めていると言えます。このような研究が今後ますます進み、不妊治療に特化した治療方法が確立され、ネットワークの枠を越えて同じ治療が受けられる鍼灸院が全国に増えていくでしょう。 神薗 克也先生 芝浦工業大学工学部卒、日本鍼灸理療専門学校卒、鍼灸師、医薬品登録販売者。不妊鍼灸ネットワーク会員。2004年翠明館治療室を開設。2009年より漢方専門薬店を併設。不妊症や月経不順、PMSなど婦人科疾患を中心に、鍼灸と漢方を用いて、体の内外より総合的に治療を行っている。 ■ あわせて読みたい ■ 周期療法を始めて5か月経って排卵がなくなったけど続けていていいの? 漢方の病院と温灸に通って治療中だけど温灸と鍼灸ではどちらがいいの? 漢方を取り入れながら体外受精、人工授精で出産 翠明館治療室 女性のための健康生活マガジン JINEKO 相談者 やすきち さん(41歳) 現在、鍼灸に通っています。とりあえず職場から近くて不妊治療に力を入れている鍼灸院を探しました。しかし基本的なこ とが疑問になっています。それは、全国の不妊治療に力を入れている鍼灸院は、みな同じように鍼やお灸をするのでしょう か?「不妊治療にはここ」と、ツボは鍼灸師さんがみな一致しているのでしょうか?○ 体温が上下に変動が激しい○ 低温期から高温期への移行に時間がかかる○ レバー状の塊や、粘膜のような塊が混じっている○ 子宮筋腫、内膜症、卵巣膿腫、子宮ポリープ、卵管癒着などがある 体全体を改善して妊娠しやすくするのが不妊治療に力を入れている鍼灸院の治療法 現在不妊治療に力を入れている鍼灸院に通われているようですが、不妊症に対する鍼灸治療の基本についてお知りになりたいようですね。 流派で違う治療に鍼灸院ごとの経験が加わるので治療法はさまざま 鍼灸治療について押さえておくべきポイントは2つあります。ひとつは鍼灸治療をはじめとする東洋医学は西洋医学と違って病名から治療するのではなく、患者さんの体の状態を「証」という体質の分類法を用い、その証に基づいて治療法を組み立てる随証治療であること。もうひとつは鍼灸治療には、さまざまな流派があり、流派ごとに鍼灸治療に対する考え方が異なるので、治療する経穴は必ずしも共通していないということです。最近は不妊症治療に力を入れている鍼灸院が増えてきていますが、先ほど言ったように、基本的に随証治療を行うので不妊症というカテゴリーの治療ではなく、体全体を妊娠しやすい体質に改善していくのです。たとえば、やすきちさんでしたら気になる症状から腎が弱い「腎虚証」と血の循環が悪い「瘀血」ととらえて、腎気を補い瘀血を改善する治療をしていきます。腎虚や瘀血を改善する治療は流派によって違います。さらに鍼灸院ごとの経験的な治療法が加わりますので、治療法はさまざまだと考えてもいいでしょう。 同じ経穴を同じ手技で治療をして妊娠率を高めている不妊鍼灸ネットワーク しかしこれでは鍼灸治療になじみのない人にとって、鍼灸院選びがわかりづらく迷ってしまうので、昨年の秋に日本鍼灸師会の会員の有志が集まって、不妊鍼灸ネットワークという団体を結成しました。この団体では質の高い鍼灸治療を提供できる鍼灸師を育て、不妊症で悩んでいる方に紹介しようという試みを始めています。このネットワークでは、「ある特定の経穴を使うと卵巣動脈の流れを改善したり、子宮内膜を厚くして質を高めることができる」というような研究をされている先生が在籍しています。その先生の指導のもとでネットワークの会員は、その特定の経穴を使って不妊治療を実践しているので、同じ経穴を同じ手技で治療をし、妊娠率を高めていると言えます。このような研究が今後ますます進み、不妊治療に特化した治療方法が確立され、ネットワークの枠を越えて同じ治療が受けられる鍼灸院が全国に増えていくでしょう。 神薗 克也先生 芝浦工業大学工学部卒、日本鍼灸理療専門学校卒、鍼灸師、医薬品登録販売者。不妊鍼灸ネットワーク会員。2004年翠明館治療室を開設。2009年より漢方専門薬店を併設。不妊症や月経不順、PMSなど婦人科疾患を中心に、鍼灸と漢方を用いて、体の内外より総合的に治療を行っている。 ■ あわせて読みたい ■ 周期療法を始めて5か月経って排卵がなくなったけど続けていていいの? 漢方の病院と温灸に通って治療中だけど温灸と鍼灸ではどちらがいいの? 漢方を取り入れながら体外受精、人工授精で出産 翠明館治療室 女性のための健康生活マガジン JINEKO
2015.4.28
コラム 不妊治療
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月経周期が不安定でクロミッドを使用しています。漢方薬で改善できますか?
相談者 ハルカ さん(39歳) いつ排卵したかがわかりにくく、月経周期が不安定で早まったり遅れたりして、月経がくるたびに落ち込みます。排卵誘発 剤のクロミッドを使用しなければ、低温期が長くて高温期が低めになります。このような体質を漢方で改善することは可能で しょうか?○低温期が長い○周期が比較的長め(40日以上)○周期が不安定で早まったり遅れたりする○低温期から高温期への移行に時間がかかる(階段式の上昇)○高温期に体温が低くなる日が多く不安定 ○月経前は普段の便秘がさらに強くなる 血の質が改善されると不安定な月経周期や基礎体温が安定し妊娠可能な体に変化する 漢方治療の基本は体のバランスを整えることです。それを漢方的な言葉を使って表現すれば、体の「気・血・水」の流れを整えるとか、「肝・腎・脾・肺・心」のバランスを整えるとなります。つまり「血の流れを整え、血の質を良くする」治療と言い換えられるでしょう。 漢方治療はある程度の継続が必要だが3か月くらいで変化を体感する人が多い 治療を行うには現在の体の状態を詳しく把握する必要があるため、最初に問診で患者さんの話を詳しくうかがって、体のおおよその状態を把握します。次に脈診、舌診、腹診など、漢方特有の診察方法を行い、患者さんに合った漢方薬を処方します。漢方の不妊治療はある程度継続しなければ結果は望めません。当院には自然妊娠を目指す方はもちろん、体外受精を何度試みても妊娠しないので、体外受精の治療に併せて漢方も試したいという方まで幅広く来院されます。漢方治療を開始すると、月経痛が軽くなった、痛み止めを服用しないで済んだ、経血の色が鮮やかになった、月経前症候群の症状が軽くなった、腹部、腰部の冷えが改善されてきたなどの変化を、多くの方が3か月程度で体感されます。ハルカさんも漢方治療で血の質と流れを改善すれば、悩んでいる不安定な月経周期や基礎体温も安定してくるようになります。 漢方薬との相互作用を高めるために鍼灸治療の併用も行なう 漢方の治療はある程度時間がかかるとはいえ、何らかの体感がないと効果があるのか不安になり、治療を継続するのが難しくなるのではないでしょうか。ほとんどの方が半年以上経過してくると、基礎体温の形がまとまってくる傾向にあります。そうなれば、妊娠可能な体に変化してきたと考えていいでしょう。どの程度で妊娠するかはその方の体の状況で違いますが、自然妊娠の場合は意外に早く、漢方治療を始めて3か月~6か月程度で妊娠される方が多くみられます。体外受精の場合は、6か月~1年程度の期間が必要なケースが経験上多いと言えます。さらに体外受精は移植時と移植以降など、時期によって処方を細かく変更して成功率の向上を目指します。また、当院では相互作用を高めるために、希望者には漢方薬と鍼灸治療の併用を行っています。 細野 孝郎先生 1988年北里大学医学部卒業。日本東洋医学会認定医。日本臨床抗老化医学会名誉認定医。北里大学にて膠原病やリウマチ治療にたずさわり、漢方外来設立に尽力。1992年より細野診療所でも診療を開始。現在は婦人家系疾患、不妊症の治療に力を入れている。 ■ あわせて読みたい ■ 両側卵管を切除し、FSHも高め。クロミッド®による排卵誘発しか無理でしょうか? 治療中に飲んでいたクロミッド®などの影響で無排卵になったのか、不安 プロラクチン値が高めですが普通に排卵しています。クロミッド®処方の理由は? 女性のための健康生活マガジン JINEKO 相談者 ハルカ さん(39歳) いつ排卵したかがわかりにくく、月経周期が不安定で早まったり遅れたりして、月経がくるたびに落ち込みます。排卵誘発 剤のクロミッドを使用しなければ、低温期が長くて高温期が低めになります。このような体質を漢方で改善することは可能で しょうか?○低温期が長い○周期が比較的長め(40日以上)○周期が不安定で早まったり遅れたりする○低温期から高温期への移行に時間がかかる(階段式の上昇)○高温期に体温が低くなる日が多く不安定 ○月経前は普段の便秘がさらに強くなる 血の質が改善されると不安定な月経周期や基礎体温が安定し妊娠可能な体に変化する 漢方治療の基本は体のバランスを整えることです。それを漢方的な言葉を使って表現すれば、体の「気・血・水」の流れを整えるとか、「肝・腎・脾・肺・心」のバランスを整えるとなります。つまり「血の流れを整え、血の質を良くする」治療と言い換えられるでしょう。 漢方治療はある程度の継続が必要だが3か月くらいで変化を体感する人が多い 治療を行うには現在の体の状態を詳しく把握する必要があるため、最初に問診で患者さんの話を詳しくうかがって、体のおおよその状態を把握します。次に脈診、舌診、腹診など、漢方特有の診察方法を行い、患者さんに合った漢方薬を処方します。漢方の不妊治療はある程度継続しなければ結果は望めません。当院には自然妊娠を目指す方はもちろん、体外受精を何度試みても妊娠しないので、体外受精の治療に併せて漢方も試したいという方まで幅広く来院されます。漢方治療を開始すると、月経痛が軽くなった、痛み止めを服用しないで済んだ、経血の色が鮮やかになった、月経前症候群の症状が軽くなった、腹部、腰部の冷えが改善されてきたなどの変化を、多くの方が3か月程度で体感されます。ハルカさんも漢方治療で血の質と流れを改善すれば、悩んでいる不安定な月経周期や基礎体温も安定してくるようになります。 漢方薬との相互作用を高めるために鍼灸治療の併用も行なう 漢方の治療はある程度時間がかかるとはいえ、何らかの体感がないと効果があるのか不安になり、治療を継続するのが難しくなるのではないでしょうか。ほとんどの方が半年以上経過してくると、基礎体温の形がまとまってくる傾向にあります。そうなれば、妊娠可能な体に変化してきたと考えていいでしょう。どの程度で妊娠するかはその方の体の状況で違いますが、自然妊娠の場合は意外に早く、漢方治療を始めて3か月~6か月程度で妊娠される方が多くみられます。体外受精の場合は、6か月~1年程度の期間が必要なケースが経験上多いと言えます。さらに体外受精は移植時と移植以降など、時期によって処方を細かく変更して成功率の向上を目指します。また、当院では相互作用を高めるために、希望者には漢方薬と鍼灸治療の併用を行っています。 細野 孝郎先生 1988年北里大学医学部卒業。日本東洋医学会認定医。日本臨床抗老化医学会名誉認定医。北里大学にて膠原病やリウマチ治療にたずさわり、漢方外来設立に尽力。1992年より細野診療所でも診療を開始。現在は婦人家系疾患、不妊症の治療に力を入れている。 ■ あわせて読みたい ■ 両側卵管を切除し、FSHも高め。クロミッド®による排卵誘発しか無理でしょうか? 治療中に飲んでいたクロミッド®などの影響で無排卵になったのか、不安 プロラクチン値が高めですが普通に排卵しています。クロミッド®処方の理由は? 女性のための健康生活マガジン JINEKO
2015.4.24
コラム 不妊治療
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男性不妊と言われショックですが改善法はあるのでしょうか?
相談者 えり さん(34歳) 婦人科検診の時にアドバイスされ、軽い気持ちでしたフーナーの結果が良くなかったため、主人が精液検査を受けました。運動率17%、奇形率97%という結果でした。医師からは、3か月様子を見てだめなら顕微をすすめますと言われています。いきなりの結果に、正直ショックで何も考えられません。夫婦仲は良いと思うのですが、1年近くセックスレスでした。今は子どもがほしいので昨年の12月くらいから排卵日前後で月に1、2回行為があるくらいです。禁欲期間やストレスが精子には影響すると聞いたのですが、今回の結果も関係しているのでしょうか。日常生活の見直しやサプリなどで改善できますか? 漢方薬で「腎精」を充実させると男性ホルモンの分泌が増え妊娠力があがる 「妊娠するため」の男性側の条件は①正常な性機能を持つこと、②に元気な精子があることです。えりさんのご主人はどちらも弱い点が見えます。たしかに今回の受けられた精子検査のデータでは、自然妊娠が難しい数値なので担当医師が言われる「3か月様子を見て……」も正論です。 長すぎる禁欲期間は精子の運動率が低下しDNAの損傷率も上げてしまう しかし、男性不妊検査の中で一番重要視される精液検査は1回の検査では判断できません。体調や生活習慣、疲労度、ストレス度などに大きく左右されます。正確な情報を得るためには少し間を置いて数回行うべきです。禁欲期間が長すぎると精子の運動率を低下させます。さらに長すぎる禁欲期間はDNA損傷率も上がるとのこと。つまり受精能力が低下するわけです。「妊娠力」をあげるには、週1~2回の夫婦生活が必要ですね。えりさんのご主人のデータがないのでよくわかりませんが、セックスレスになった原因が、仕事の疲れ、ストレス、生活習慣や食生活の乱れなどで、男性ホルモンが低下したのであれば、漢方薬や、機能性サプリメント、生活習慣の改善で充分に回復することができます。 男性不妊専門の漢方薬局でよく相談してステップアップ治療などを判断する 漢方ではホルモン分泌、生殖機能を「腎」ととらえ、腎の働きを支えるものを「腎精」と言います。「腎精」が充実していることは、男性ホルモンが充実していて、妊娠力があるということです。漢方では「補腎精」という薬を使って男子力をあげていきます。これは一般的な精力剤、強壮剤ではなく、精子発生のメカニズムである視床下部→脳下垂体→精巣という「性腺軸」を整えるという考えの漢方薬です。「補腎精薬」には、「食用蟻」製剤、「魚鰾」製剤、「鹿茸」製剤など、動物性の生薬が入ったものが効果的。「腎精」が不足する状態を「腎虚」と考えます。精子の運動率、数の減少、奇形率など漢方では「腎虚」と言いますが、「腎虚」を引きおこす原因は「肝(ストレス)」、「脾(胃腸)」、「心(悩み)」との関係も深いのです。精子を元気にするためには腎の力を強める「補腎」と同時に自分の弱点をチェックし「肝」「脾」「心」も整えながら、体質を改善することがとても重要です。男性不妊専門の漢方薬局でよく相談してください。その結果でステップアップ治療などを判断しましょう。 峯崎 リヨ子先生 薬剤師。日本不妊カウンセリング学会会員、認定不妊カウンセラー。認定日本食品保健指導士。日本中医薬研究会の不妊講座で周期調節法を学び「南京中医薬大学病院」「広州中医薬大学病院」などで研修。不妊症をはじめ、さまざまな相談を受けている。「最新東洋医学の名医134人(有楽出版社)」で紹介される。 相談者 えり さん(34歳) 婦人科検診の時にアドバイスされ、軽い気持ちでしたフーナーの結果が良くなかったため、主人が精液検査を受けました。運動率17%、奇形率97%という結果でした。医師からは、3か月様子を見てだめなら顕微をすすめますと言われています。いきなりの結果に、正直ショックで何も考えられません。夫婦仲は良いと思うのですが、1年近くセックスレスでした。今は子どもがほしいので昨年の12月くらいから排卵日前後で月に1、2回行為があるくらいです。禁欲期間やストレスが精子には影響すると聞いたのですが、今回の結果も関係しているのでしょうか。日常生活の見直しやサプリなどで改善できますか? 漢方薬で「腎精」を充実させると男性ホルモンの分泌が増え妊娠力があがる 「妊娠するため」の男性側の条件は①正常な性機能を持つこと、②に元気な精子があることです。えりさんのご主人はどちらも弱い点が見えます。たしかに今回の受けられた精子検査のデータでは、自然妊娠が難しい数値なので担当医師が言われる「3か月様子を見て……」も正論です。 長すぎる禁欲期間は精子の運動率が低下しDNAの損傷率も上げてしまう しかし、男性不妊検査の中で一番重要視される精液検査は1回の検査では判断できません。体調や生活習慣、疲労度、ストレス度などに大きく左右されます。正確な情報を得るためには少し間を置いて数回行うべきです。禁欲期間が長すぎると精子の運動率を低下させます。さらに長すぎる禁欲期間はDNA損傷率も上がるとのこと。つまり受精能力が低下するわけです。「妊娠力」をあげるには、週1~2回の夫婦生活が必要ですね。えりさんのご主人のデータがないのでよくわかりませんが、セックスレスになった原因が、仕事の疲れ、ストレス、生活習慣や食生活の乱れなどで、男性ホルモンが低下したのであれば、漢方薬や、機能性サプリメント、生活習慣の改善で充分に回復することができます。 男性不妊専門の漢方薬局でよく相談してステップアップ治療などを判断する 漢方ではホルモン分泌、生殖機能を「腎」ととらえ、腎の働きを支えるものを「腎精」と言います。「腎精」が充実していることは、男性ホルモンが充実していて、妊娠力があるということです。漢方では「補腎精」という薬を使って男子力をあげていきます。これは一般的な精力剤、強壮剤ではなく、精子発生のメカニズムである視床下部→脳下垂体→精巣という「性腺軸」を整えるという考えの漢方薬です。「補腎精薬」には、「食用蟻」製剤、「魚鰾」製剤、「鹿茸」製剤など、動物性の生薬が入ったものが効果的。「腎精」が不足する状態を「腎虚」と考えます。精子の運動率、数の減少、奇形率など漢方では「腎虚」と言いますが、「腎虚」を引きおこす原因は「肝(ストレス)」、「脾(胃腸)」、「心(悩み)」との関係も深いのです。精子を元気にするためには腎の力を強める「補腎」と同時に自分の弱点をチェックし「肝」「脾」「心」も整えながら、体質を改善することがとても重要です。男性不妊専門の漢方薬局でよく相談してください。その結果でステップアップ治療などを判断しましょう。 峯崎 リヨ子先生 薬剤師。日本不妊カウンセリング学会会員、認定不妊カウンセラー。認定日本食品保健指導士。日本中医薬研究会の不妊講座で周期調節法を学び「南京中医薬大学病院」「広州中医薬大学病院」などで研修。不妊症をはじめ、さまざまな相談を受けている。「最新東洋医学の名医134人(有楽出版社)」で紹介される。
2015.4.24
コラム 不妊治療
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糖尿病薬の 「メトホルミン塩酸」 を処方されました 不妊治療なのに どうして?
相談者 大豆のイソフラボン さん(22歳) 月経不順を学生時代から悩んでいました。婦人科医から多嚢胞性卵巣で排卵確認がとれず、不妊症と言われました。不妊の原因としてインスリン抵抗性があるとのこと。糖尿病用薬の「メトホルミン塩酸 」と漢方の「テイコク芍薬甘草」を処方されました。身長150cm 体重43kg なので平均的だと思っていたのですが、糖尿病になっているのでしょうか?この薬を飲み続けなければいけないのでしょうか?テイコク芍薬甘草とは多嚢胞性卵巣に効く漢方ですか?運動や食事制限など、日常生活で気を付けることはありますか?初めての診断で戸惑っていますが、旦那さんとの子どもが欲しいので不妊治療に励みたいと思います。 弁証に沿った漢方薬をじっくり服用することが元気な赤ちゃんを出産することにつながります 「メトホルミン塩酸」が処方されたからといって、糖尿病ということではありません。PCO(多嚢胞性卵巣)においてメトホルミン塩酸が治療に有効であることがわかっており、そのため処方されたのだと思います。 メトホルミン塩酸を服用しながら卵の状態を確認して服用を続けるか判断を メトホルミン塩酸は、どちらかといえば肥満タイプのPCOの方に効果が高く、あなたのようにBMIが低めの方には効果が低いかもしれません。薬を服用されながら超音波で卵の状態をチェックし、先生と相談しなが ら検討されることをおすすめします。基礎体温、血液検査の詳しい数値はわかりませんが、学生時代から月経不順があるということから、性腺軸という生殖をつかさどる機能がもともと低い体質だと思われます。その上、過去にダイエットや大きなストレスを抱えた経験などがあれば、さらに生殖能力を傷つけてホルモンバランスを崩し、PCOになったと考えられます。そして、PCOの方はテストステロン(男性ホルモンの一種)の値が高いので、それを抑制する目的で「テイコク芍薬甘草」が処方されたようですが、これだけでは不充分だと思われます。 PCOは生活習慣と密接に関係生活養生は欠かせない大切なこと 治療方針としては、卵巣内にたまった小さな卵胞をアポトーシスさせる事、あなたの生殖能力を高めてしっかりとした成熟卵胞を作りだすことです。しっかりとした成熟卵胞ができると、小さな卵胞はできなくなります。また、ストレスを強く感じる場合にはストレスを和らげ、血流が悪く生殖能力を生かしきれていない場合は血液の流れをよくする漢方薬が必要です。いずれにしても、じっくりとお話をうかがう必要があります。そして、弁証に沿った漢方薬をきちんと服用していただくことが、しっかりとした成熟卵胞を作り、自力の排卵をうながすことにつながり、それは、自然妊娠や元気な赤ちゃんを出産することにもつながります。また、PCOは生活習慣病とも言われていますので、生活養生も大切なことです。「早寝早起き」は基本です。適度な運動でよい汗をかくのは、体力作りとともにストレス解消にもなります。食事は和食でシンプルに。あなたはまだ若いのですから、あせることなくまずはきちんとした体作りをしましょう。元気な赤ちゃんに恵まれますように。 岡村 芳子先生 福岡大学薬学部卒。卒業後同大学研究室にて助手として勤務。結婚を機に地域密着の薬局で勤務し始め、中医学に深い感銘を受ける。10年ほど前より不妊症の相談を専門的に受け始め、沢山のベビー誕生の喜びを共有。中国・南京の夏桂成先生の元で、不妊症・周期療法についての研鑽を深める一方で、長期にわたり地方紙への執筆も続けている。 相談者 大豆のイソフラボン さん(22歳) 月経不順を学生時代から悩んでいました。婦人科医から多嚢胞性卵巣で排卵確認がとれず、不妊症と言われました。不妊の原因としてインスリン抵抗性があるとのこと。糖尿病用薬の「メトホルミン塩酸 」と漢方の「テイコク芍薬甘草」を処方されました。身長150cm 体重43kg なので平均的だと思っていたのですが、糖尿病になっているのでしょうか?この薬を飲み続けなければいけないのでしょうか?テイコク芍薬甘草とは多嚢胞性卵巣に効く漢方ですか?運動や食事制限など、日常生活で気を付けることはありますか?初めての診断で戸惑っていますが、旦那さんとの子どもが欲しいので不妊治療に励みたいと思います。 弁証に沿った漢方薬をじっくり服用することが元気な赤ちゃんを出産することにつながります 「メトホルミン塩酸」が処方されたからといって、糖尿病ということではありません。PCO(多嚢胞性卵巣)においてメトホルミン塩酸が治療に有効であることがわかっており、そのため処方されたのだと思います。 メトホルミン塩酸を服用しながら卵の状態を確認して服用を続けるか判断を メトホルミン塩酸は、どちらかといえば肥満タイプのPCOの方に効果が高く、あなたのようにBMIが低めの方には効果が低いかもしれません。薬を服用されながら超音波で卵の状態をチェックし、先生と相談しなが ら検討されることをおすすめします。基礎体温、血液検査の詳しい数値はわかりませんが、学生時代から月経不順があるということから、性腺軸という生殖をつかさどる機能がもともと低い体質だと思われます。その上、過去にダイエットや大きなストレスを抱えた経験などがあれば、さらに生殖能力を傷つけてホルモンバランスを崩し、PCOになったと考えられます。そして、PCOの方はテストステロン(男性ホルモンの一種)の値が高いので、それを抑制する目的で「テイコク芍薬甘草」が処方されたようですが、これだけでは不充分だと思われます。 PCOは生活習慣と密接に関係生活養生は欠かせない大切なこと 治療方針としては、卵巣内にたまった小さな卵胞をアポトーシスさせる事、あなたの生殖能力を高めてしっかりとした成熟卵胞を作りだすことです。しっかりとした成熟卵胞ができると、小さな卵胞はできなくなります。また、ストレスを強く感じる場合にはストレスを和らげ、血流が悪く生殖能力を生かしきれていない場合は血液の流れをよくする漢方薬が必要です。いずれにしても、じっくりとお話をうかがう必要があります。そして、弁証に沿った漢方薬をきちんと服用していただくことが、しっかりとした成熟卵胞を作り、自力の排卵をうながすことにつながり、それは、自然妊娠や元気な赤ちゃんを出産することにもつながります。また、PCOは生活習慣病とも言われていますので、生活養生も大切なことです。「早寝早起き」は基本です。適度な運動でよい汗をかくのは、体力作りとともにストレス解消にもなります。食事は和食でシンプルに。あなたはまだ若いのですから、あせることなくまずはきちんとした体作りをしましょう。元気な赤ちゃんに恵まれますように。 岡村 芳子先生 福岡大学薬学部卒。卒業後同大学研究室にて助手として勤務。結婚を機に地域密着の薬局で勤務し始め、中医学に深い感銘を受ける。10年ほど前より不妊症の相談を専門的に受け始め、沢山のベビー誕生の喜びを共有。中国・南京の夏桂成先生の元で、不妊症・周期療法についての研鑽を深める一方で、長期にわたり地方紙への執筆も続けている。
2015.4.23
コラム 不妊治療
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周期療法を始めて5か月経って排卵がなくなったけど続けていていいの?
相談者 rikopin さん(39歳) 34歳で結婚し1年経っても妊娠しないため、不妊治療をし2か月で妊娠しました。その後二人目と思っても妊娠しないので 再び不妊治療を行いました。4周期目のチェックで卵が育っていなかったため、排卵誘発剤などの治療に卵巣が疲れているのではと思い、治療をやめて漢方の周期療法を試しています。現在服用5か月目ですが、血流が良くなり、排卵やおりものもあったのに、4、5か月目は排卵がないのです。その間風邪をひき体調を崩しましたが、2か月も排卵がなくて不安です。使用している漢方は、イスクラの婦宝当帰膠、冠元顆粒、逍遙丸、杞菊地黄丸、参茸補血丸です。何故こうなったのか心配です。 刺激に反応しないほど疲れている卵巣を整えるには、少なくとも半年以上かかる 周期調節法で頑張っているのに排卵しないので不安になっているのですね。ご存じかと思いますが、周期調節法は月経周期に合わせて漢方を飲み分ける方法です。周期は月経期、卵胞期、排卵期、高温期の4期に分かれます。周期調節法は本人体質や状況にあった漢方を月経周期に合わせて飲むことで妊娠しやすい体作りをするのですが、rikopin さんは出産後、年齢によって妊娠率が下がることをご存知できちんと早めに対応してみえます。 4周期目で卵が育たなくなったのは不妊治療で卵巣が疲れているしるし 不妊治療の4周期目で卵が育たなくなったとのこと。これは排卵誘発剤で卵が育つ刺激をしても反応しなくなってきた、つまり卵巣が疲れているしるしです。卵巣の疲れは体調不良も影響します。漢方的に言うと、外からの影響として六淫(風、寒、暑、湿、燥、火)、体の中の原因として六鬱(気鬱、血鬱、火鬱、食鬱、痰鬱、湿鬱)があります。それぞれの原因によって漢方の治療法も違います。また、それ以外に体にとって必要な物が不足している場合が考えられます、気(エネルギー)、 血、陰(潤い)、陽(温める力)の不足も考えられます。これらの症状を総合して漢方薬を選んでいきます。 漢方で体質改善している間に体調不良になると体調を戻す方にエネルギーは使われてしまう 卵胞が膨らみ初めて排卵するまでに少なくとも半年以上かかります。つまり刺激をしても反応しにくくなるくらい疲れている卵巣を整えるには、少なくとも半年以上かかるし、その期間に体調不良などがあると、どうしても卵巣より体調を戻す方にエネルギーは使われますから卵巣にも影響がでやすいのです。今飲まれている漢方で排卵しなくなることはちょっと考えにくいと思います。3か月目でおりものがあるようになり、体温のグラフもまずまずになってきたという変化を感じたのなら良いきざしと考えて、毎日の体調管理(睡眠、ストレス、食生活など)に気を使いながら漢方を続けてみたらどうでしょうか。ただし、排卵しなくなった原因については、FSH、LH、E2などのホルモン数値を確認してみることをおすすめします。周期調節法をする場合、体質、基礎体温表、状況に加えて、ホルモン数値も参考にするので、ホルモン数値の確認はとても参考になるからです。 深谷 幹子先生 湖北民族大学客員教授。薬剤師。妊娠授乳サポート薬剤師。2012年 妊娠出産報告数130名。周期調節法の第一人者夏教授、男性不妊専門病院曹先生の元で外来研修を受ける。妊娠出産に向け母体の健康維持も考えながら行う身体にあったアドバイスと漢方処方には定評がある。 ■ あわせて読みたい ■ どこの鍼灸院も不妊のツボは同じで同じ治療をするのでしょうか? 漢方の病院と温灸に通って治療中だけど温灸と鍼灸ではどちらがいいの? 漢方を取り入れながら体外受精、人工授精で出産 深谷薬局養心堂 女性のための健康生活マガジン JINEKO 相談者 rikopin さん(39歳) 34歳で結婚し1年経っても妊娠しないため、不妊治療をし2か月で妊娠しました。その後二人目と思っても妊娠しないので 再び不妊治療を行いました。4周期目のチェックで卵が育っていなかったため、排卵誘発剤などの治療に卵巣が疲れているのではと思い、治療をやめて漢方の周期療法を試しています。現在服用5か月目ですが、血流が良くなり、排卵やおりものもあったのに、4、5か月目は排卵がないのです。その間風邪をひき体調を崩しましたが、2か月も排卵がなくて不安です。使用している漢方は、イスクラの婦宝当帰膠、冠元顆粒、逍遙丸、杞菊地黄丸、参茸補血丸です。何故こうなったのか心配です。 刺激に反応しないほど疲れている卵巣を整えるには、少なくとも半年以上かかる 周期調節法で頑張っているのに排卵しないので不安になっているのですね。ご存じかと思いますが、周期調節法は月経周期に合わせて漢方を飲み分ける方法です。周期は月経期、卵胞期、排卵期、高温期の4期に分かれます。周期調節法は本人体質や状況にあった漢方を月経周期に合わせて飲むことで妊娠しやすい体作りをするのですが、rikopin さんは出産後、年齢によって妊娠率が下がることをご存知できちんと早めに対応してみえます。 4周期目で卵が育たなくなったのは不妊治療で卵巣が疲れているしるし 不妊治療の4周期目で卵が育たなくなったとのこと。これは排卵誘発剤で卵が育つ刺激をしても反応しなくなってきた、つまり卵巣が疲れているしるしです。卵巣の疲れは体調不良も影響します。漢方的に言うと、外からの影響として六淫(風、寒、暑、湿、燥、火)、体の中の原因として六鬱(気鬱、血鬱、火鬱、食鬱、痰鬱、湿鬱)があります。それぞれの原因によって漢方の治療法も違います。また、それ以外に体にとって必要な物が不足している場合が考えられます、気(エネルギー)、 血、陰(潤い)、陽(温める力)の不足も考えられます。これらの症状を総合して漢方薬を選んでいきます。 漢方で体質改善している間に体調不良になると体調を戻す方にエネルギーは使われてしまう 卵胞が膨らみ初めて排卵するまでに少なくとも半年以上かかります。つまり刺激をしても反応しにくくなるくらい疲れている卵巣を整えるには、少なくとも半年以上かかるし、その期間に体調不良などがあると、どうしても卵巣より体調を戻す方にエネルギーは使われますから卵巣にも影響がでやすいのです。今飲まれている漢方で排卵しなくなることはちょっと考えにくいと思います。3か月目でおりものがあるようになり、体温のグラフもまずまずになってきたという変化を感じたのなら良いきざしと考えて、毎日の体調管理(睡眠、ストレス、食生活など)に気を使いながら漢方を続けてみたらどうでしょうか。ただし、排卵しなくなった原因については、FSH、LH、E2などのホルモン数値を確認してみることをおすすめします。周期調節法をする場合、体質、基礎体温表、状況に加えて、ホルモン数値も参考にするので、ホルモン数値の確認はとても参考になるからです。 深谷 幹子先生 湖北民族大学客員教授。薬剤師。妊娠授乳サポート薬剤師。2012年 妊娠出産報告数130名。周期調節法の第一人者夏教授、男性不妊専門病院曹先生の元で外来研修を受ける。妊娠出産に向け母体の健康維持も考えながら行う身体にあったアドバイスと漢方処方には定評がある。 ■ あわせて読みたい ■ どこの鍼灸院も不妊のツボは同じで同じ治療をするのでしょうか? 漢方の病院と温灸に通って治療中だけど温灸と鍼灸ではどちらがいいの? 漢方を取り入れながら体外受精、人工授精で出産 深谷薬局養心堂 女性のための健康生活マガジン JINEKO
2015.4.22
コラム 不妊治療