HOME > 不妊治療 > 顕微授精 > 転院する場合、 凍結胚・精子は 移送できますか?
HOME > 不妊治療 > 顕微授精 > 転院する場合、 凍結胚・精子は 移送できますか?

転院する場合、 凍結胚・精子は 移送できますか?

コラム 不妊治療

転院する場合、 凍結胚・精子は 移送できますか?

転勤や転職などで引っ越ししなければならず、現在のクリニックに通えなくなった場合、今ある凍結胚や凍結精子はどうしたらよい? ファティリティクリニック東京の小田原先生に伺いました。

2019.3.2

あとで読む

※2019年2月25日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.41 2019 Spring」の記事です。


ピエロさん(31歳)からの相談
1人目を顕微授精で授かりました。そろそろ2人目の治療にかかる予定でしたが、夫に転勤の辞令が下り、それにともなって引っ越すこととなったため、現在お世話になっているクリニックへの通院が難しくなってしまうので、転院を考えています。しかし、通院中のクリニックには1人目を授かった時に採卵した凍結胚、また男性不妊のため凍結精子も保管していただいているので、それを置いて行くのが心残りです。できることなら転院先に移送したいのですが、可能でしょうか。できるとしたら、どんな手続きが必要かなど教えてください。

Doctor’s advice
まずは、現在通われているクリニックに相談し、
転院先としっかり連携してもらうことが大切

Message
○凍結胚・精子などの移送は可能。現在と今後通うクリニックにまずは相談を!

○移送は専門業者へ依頼するのが安全だが、その分費用が高いのでよく検討・比較を。

培養液や凍結方法が標準化し、凍結胚・精子の移送は以前よりやりやすくなっています。まずは遠慮なく、現在の担当医に相談してみましょう。引っ越し先の地域にも、理解のあるクリニックは必ずあるはず。諦めないで、最善の治療法を探ってくださいね。

お話を伺った先生のご紹介

小田原 靖 先生(ファティリティクリニック東京)


東京慈恵会医科大学卒業、同大学院修了。1987 年、オーストラリア・ロイヤルウイメンズホスピタルに留学し、チーム医療などを学ぶ。東京慈恵会医科大学産婦人科助手、スズキ病院科長を経て、1996 年恵比寿に開院。

≫ ファティリティクリニック東京

凍結胚・精子などの移送は、難しいものなのでしょうか


一昔前は、クリニックによって培養液や凍結方法などに若干の違いがあったため、連携が難しかったのですが、現在では培養液にも差がなくなり、15年ほど前からは凍結方法も急速ガラス化法(ビトリフィケーション)が主流になるなど標準化しています。そのため、15年以上前の卵子や精子でない限りは、移送は難しいことではありません。海外から日本へ、日本から海外へ、といった移送も問題なく行われています。
ちなみに、溶解して使用する胚や精子にとって、凍結方法の違いがなぜ問題になるかというと、保存する容器の違いにあるから。以前の容器の扱いに慣れていないと、大切な胚や精子を傷つけてしまう恐れがあり、敬遠される場合があるのです。


どのように話を進めればよいですか


まずは、現在通っているクリニックと転院先に事情を説明し、移送が可能か、移送した場合に受け入れてくれるかを確認してください。それ以前に、現在のクリニックには、お引っ越し先の地域で紹介してもらえるクリニックがないかをご相談されるとよいでしょう。医師同士のつながりがあると、移送もスムーズです。そこから先は、医師ではなく、培養士の連携が重要になります。現在通院中のクリニックの培養士が転院先の培養士としっかりと連絡を取り合い、凍結方法やデータなどの詳しい情報を提供します。


具体的な移送方法、費用などについて教えてください


ドライシッパーという、いわば魔法瓶のようなタンク状のケースを貸し出し(有料)しますので、それに入れて移送します。タンクの内側に液体窒素を充填するので温度が保たれますが、周囲のクッション状のものが吸収するので液体窒素が染み出る心配はなく、安全に運ぶことができます。
移送としては、ご自分で運ぶ、宅配便などに依頼する、専門業者に依頼するといった方法があります。電車や飛行機などの公共交通機関に持ち込むことも許されているので、費用面から考えるとご自分で持って行かれるのがもっとも安価です。宅配便を利用することもできますが、何かあった場合の免責や補償などが付いていないので若干の心配がともないます。ドライシッパーの扱いに長けた専用の業者もあります。目安として、専用容器の貸し出し込みで、東京―大阪間の片道で15万円ほどです。海外への移送では、やはり専門業者に委託するのが安心かと思います。


クリニックによっては、移送を断られる場合もありますか


現在ではまれだと思いますが、ないとは言い切れません。万が一大切な胚や精子が破損してしまった場合は責任問題になりかねず、またどちらのクリニックに責任の所在があるのかといった問題になることも考えられます。クリニック側も、できれば患者さんが妊娠されるまで見届けたいですし、プロセスを把握しておきたいという気持ちもありますから。
しかしながら、絶対的に凍結胚・精子の所有権をもつのは患者さん側ですから、同意なしに勝手に廃棄することが許されないのと同じように、クリニック側の都合で移送や受け入れを拒否することもあってはなりません。ただし、胚や精子を凍結した際の覚書などに「移送はできないと」という一文があり、そういった同意書にサインをしていたとしたら面倒なことになるかもしれません。過去には裁判になったケースもあるようですが、やはりあくまでも所有権は患者さん側にあると私は思います。




ドライシッパーは、凍結卵子や凍結精子を
液体窒素温度で保持しながら移送するための専用の容器です。


移送が難しい場合、どうすればよいでしょうか


子宮内膜のチェックなど、基本的な検査や準備を転院先でやっていただき、移植の日だけもともと通われていたクリニックにいらっしゃるという手段もあるのでは? 移送をためらわれる必要はありませんが、慣れ親しんだクリニックで治療されたほうが安心な場合もあるでしょう。移植で里帰りされたついでにお引っ越し前に仲良くされていたご友人にも会うなど、リラックスできれば治療にも好影響がおよぶかもしれません。


出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.41 2019 Spring
≫ 掲載記事一覧はこちら


あとで読む

この記事に関連する記事

この記事に関連する投稿

女性のためのジネコ推薦商品

最新記事一覧

Page
top