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痛みを感じないけど産む感覚はあり 完全無痛分娩とは?

インタビュー 妊娠・出産

痛みを感じないけど産む感覚はあり 完全無痛分娩とは?

無痛分娩を選んでも結局痛かったという人は少なくないようです。「完全無痛分娩」について海老原 肇先生にお話を伺いました。

2019.9.18

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痛いお産を避けて無痛分娩を選んでも結局あまり痛みが減らなかったような気がする、無痛分娩にしたいが赤ちゃんを産む実感が得られないような気がして迷う、という方は少なくないようです。長年「完全無痛分娩」に取り組んでおられる新中野女性クリニック院長の海老原 肇先生にお話を伺いました。


 


痛みをとって感覚は残す「完全無痛分娩」とは?




皆さんは無痛分娩についてどのようなイメージをおもちでしょうか? インターネットなどでは「出産の実感がない」という経験談や、反対に「麻酔はしてもらったけれど、あまり痛みが変わらなかった」という感想も多かったりして、こうした口コミから無痛分娩を諦める人がいるとしたら非常に残念なことだと考えています。

当クリニックでは、現在扱っている分娩全体の7割程度が無痛分娩です。残り約3割の自然分娩は、この地域にお住まいで、地元で産みたいと希望される方のケースがほとんどです。
皆さんにどうしても無痛分娩にしたほうがいいです、とおすすめしているわけではありませんが、ありがたいことに評判を調べて、「無痛分娩で産みたいから」と来院される妊婦さんもいらっしゃいます。それだけ、無痛分娩ができる施設がまだ少なく、「無痛分娩にしてよかった」と感じた方も少ないということが大きいようです。
私が無痛分娩を行う際には、「痛みをとって感覚は残す」ことができるようにしています。約20年前にこれを可能にする麻酔薬ができたことで、無痛分娩を手掛けていきたいと考えるようになりました。

昔は下半身の感覚がまったくなくなる麻酔をかけて出産していたため、産んだ感じがしなかったという感想も多かったと思いますが、今は、出産時の痛みだけを取り除いて感覚を残しているので、お母さんは赤ちゃんが産道を降りてきて、生まれる感覚をしっかり味わうことができます。皮肉なことに、自然分娩では痛みが強すぎて、赤ちゃんがどこをどう通っていつ生まれたかがはっきりわからない場合も多いのです。


 


痛みがなく感覚がある状態とは?


当クリニックでは先に述べたように、痛みをとって感覚は残す硬膜外麻酔をして分娩を行っています。感覚があるので、自然分娩と同じようにいきむことができ、吸引分娩・鉗子分娩のリスクはかなり低くなります。分娩後には分娩室で2時間ほど経過観察をしてから病室に戻っていただきますが、運動神経も消えていないため、分娩台からご自分で降りて、病室に歩いていくことができます。

初産の方の中には「麻酔をしているのに痛いような気がする」という方もいらっしゃいますが、これは出産の際には腹部や産道周辺に強い圧迫感を感じるため、これを痛みと取り違えてしまうようです。痛みを感じているかテストをしてみても、反応はありません。赤ちゃんが出てくる時を実感できれば一番ですが、あまりにも痛みへの不安を感じている場合には、リラックスしてお産をしていただくのが最優先ですから、感覚もとるようにすることがあります。
ちなみに、一度でも出産時の圧迫感を経験している経産婦の方は、無痛分娩時にこうした痛みを訴えることはあまりありません。


 


「完全無痛分娩」の大きなメリットは2つ


「完全無痛分娩」のメリットの1つは、なんといっても赤ちゃんが生まれてくるのをしっかりと感じられること。もう1つは、産後の体の痛みを最小限に抑えることができるということです。

人間は激しい痛みを感じると、体にぎゅっと力を入れて我慢します。その時の筋肉の緊張は非常に強いので、その後には筋肉痛が生じます。また、分娩時にはいきむのにも普段ほとんど使っていない筋肉が働くので、それも筋肉痛の原因になります。筋肉の余分な緊張を防ぐ「完全無痛分娩」によって筋肉痛を最小限まで減らせるのは、産後の回復のためにもよいことです。

さらに、硬膜外麻酔のカテーテルは産後も入れてありますので、産後の子宮収縮や傷などの痛みが強い場合や、腰痛などがあるお母さんには、必要があれば追加で麻酔薬を投与することもできます。


 


無痛分娩は簡単で難しい


近年はニーズも徐々に増え、無痛分娩に対応する医療施設も増えてきました。硬膜外麻酔は医師であれば誰しも行えるものですが、疼痛を取り除けるよう効果的に行うのは難しい一面もあります。私自身も、硬膜外麻酔の経験豊富な医師のもとで2,000~3,000例の無痛分娩を行った後に、1人で対応するようになりました。

これから無痛分娩をしたいという希望がある方は、無痛分娩の取り扱い数が多く経験豊富な施設を探すことが、よりよいお産を迎えるポイントではないでしょうか。
また、初産の場合は特に、計画分娩の予定日にお産をするのは難しい人が多くいます。赤ちゃんが生まれる兆候がまったくないのに予定日だからといって陣痛を起こしてしまうと、分娩の時間が長引いて母子の体力を消耗してしまいます。

ぜひ、体の状態を見ながら柔軟に対応を考えてくれるドクター選びをして、妊娠・出産を安心して乗り越えてほしいと思っています。


 


海老原先生より まとめ


無痛分娩への不安や不満の口コミから、痛みのないお産を諦めてしまうのはとてももったいないと思います。妊娠・出産はけっして強制されるようなものではありませんが、痛みへの恐怖から子どもをもつことを避けている方、1人産んで痛いお産はもう嫌だと思っている方にとって、安心して出産を迎えるための手段として「完全無痛分娩」が役立つことを願っています。


 


お話を伺った先生のご紹介

海老原 肇 先生(新中野女性クリニック 院長)


産婦人科学会専門医/母体保護法指定医。1988年聖マリアンナ医科大学卒業。1988年聖マリアンナ医科大学大学院卒業、医学博士号取得。1989年聖マリアンナ医大横浜市西部病院周産期センター医長および産婦人科医長を兼務。2001年10月新中野女性クリニック開院。2004年10月医療法人化(医療法人社団千房会)。

≫ 新中野女性クリニック

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