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下垂体への働きかけが全く効かず。排卵さえあれば妊娠できる?

コラム 不妊治療

下垂体への働きかけが全く効かず。排卵さえあれば妊娠できる?

「排卵さえできれば妊娠すると思いたいのですが、このままの治療でよいでしょうか?」

2017.4.21

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下垂体への働きかけが全く効かず。排卵さえあれば妊娠できる?


蔵本 武志 先生(蔵本ウイメンズクリニック)







相談者:ちゃんもさん(26歳)


下垂体性無月経について


現在24歳で不妊治療をしています。昨年末、低用量ピルの服用中止後、自然生理が起こりません。検査の結果、LHとFSHが共に0.1mIU/ml以下の異常低値を示しており、下垂体性無月経による排卵障害であることがわかりました。他のプロラクチンやAMH等の値は正常で、子宮や卵巣にも問題なく、卵管造影検査でも詰まりはありませんでした。4年前に自然妊娠(やむなく中絶)したことがあります。今周期は、クロミッド®にゴナールエフ®を併用し、D14の段階で20㎜まで育ちましたが、複数の卵胞があったため点鼻薬での排卵を試みました。しかし下垂体への働きかけが効かずリセットに。排卵さえできれば妊娠すると思いたいのですが、このままの治療でよいでしょうか?



 



自然生理が起こらないということです。


ちゃんもさんは4年前に自然妊娠されたとのことですので、少なくともその頃までは自然排卵があったのだと思います。ピル中止後に何らかの原因で下垂体機能不全になった可能性も考えられますが、もしそうならTSH(甲状腺刺激ホルモン)や、プロラクチン、ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)値なども低下して、甲状腺機能、副腎皮質機能などが阻害され、他のいろいろな症状が出てもおかしくないと思います。下垂体のさらに上位の視床下部への強い抑制による排卵障害(強い視床下部性排卵障害)が長く続けば、結果的に下垂体性無月経のような状態(LH、FSHが非常に低値、GnRHテストで下垂体障害型、前値・30分値とも低値)になることもあります。ダイエットでの体重変化はそれほどなかったとのことで、体重減少性無月経ではないようです。体重減少がひどい場合は、体重を元に戻さないと、排卵誘発剤は効かないことが多いです。

今回は、ピルを服用されていたとのことで、原因としてはやはり視床下部性の可能性が高いのではないかと思います。服用期間がわかりませんが、ピルは長期間服用すると、服用をやめてもすぐには視床下部の働きが戻らないことがあります。視床下部の機能が目覚めるまで少し時間をかけることが必要です。下垂体だけを刺激する方法は、保全が効きませんがGnRHアゴニスト(ブセレキュア®など)を希釈して連日点鼻投与する方法もあります。


どのように治療すればよいでしょうか。


視床下部性無月経であれば、クロミッド®を何周期か投与すると視床下部が刺激され、下垂体が反応してくることもあります。AMH値が高く、ゴナールエフの注射で複数の卵胞が発育することから、卵巣内には多数の卵子があると考えられますし、卵巣機能も良いと言えるのではないかと思います。したがって、直接排卵させる方法としては、FSH製剤のゴナールエフペンを用いて自己皮下注射を行うことが有効です。このゴナールエフペンは保険も適用されるので、費用的にも治療しやすいといえます。ゴナールエフペンはまず低用量より投与を開始します。具体的には、50単位を1週間投与して経腟エコー検査で卵胞の発育を見ながら、多少でも卵胞が発育していれば、そのまま50単位を連日注射していく方法です。2週間くらいで1個程度の卵胞が育つと思います。平均卵胞径が18㎜以上になれば、HCGを3000~5000単位注射します。50単位1週間で少しも卵胞の発育が見られなければ、1日量を75単位に増やして様子を見ていきます。多くの卵胞が育った場合、排卵させるためにHCGを投与すると卵巣が腫れる卵巣過剰刺激症候群になったり、妊娠した場合、多胎妊娠(特に、三つ子)になる可能性があるので、15㎜以上の発育卵胞数は2個までとするようにコントロールする必要があります。

現時点で下垂体への働きかけがまったく効かず、排卵しないとのことですが、ゴナールエフ®ペンの少量継続投与を治療に取り入れ、さらにクロミッドⓇにより視床下部を刺激することで、これらの働きが回復する可能性は十分にあると考えられます。




蔵本先生より まとめ


●ピル中止後、自然月経起こらないのは強い視床下部性排卵障害が考えられます。
●ゴナールエフ®ペンの少量継続投与で卵巣を軽く刺激することで、1〜2個の排卵が誘発されます。



 



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お話を伺った先生のご紹介





蔵本 武志 先生(蔵本ウイメンズクリニック)


山口県柳井市出身。1979年久留米大学医学部卒業。1985年山口大学大学院修了。医学博士。1995年6月蔵本ウイメンズクリニック開院。開院当時より、体外受精、顕微授精をはじめ、一般不妊治療や生殖医療の研究を広く行う。山口大学非常勤講師、久留米大学医学部臨床教授。


≫ 蔵本ウイメンズクリニック


出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.33 2017 Spring
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