HOME > 不妊治療 > 治療デビュー > 子宮の検査
HOME > 不妊治療 > 治療デビュー > 子宮の検査

子宮の検査

コラム 不妊治療

子宮の検査

なかなか着床してくれない子宮には、どんな原因があるのでしょうか。また、それを調べる検査法や治療法、子宮の状態を改善する方法はあるのでしょうか 。セントマザー産婦人科医院の田中温先生にくわしく教えていただきました。

2018.2.20

あとで読む

子宮の状態を調べる検査にはどのようなものがありますか?


まずは月経の検査からスタートします。月経が正常かどうかは子宮の状態を知るうえでもっとも大切です。調べ方については、まず月経の有無で、自分が不順かどうかの判断ができます。そして、月経痛、経血量、月経周期。本人が自覚できるのはこの3つですね。
着床に大きく影響する子宮内膜の厚さや状態は、超音波検査で診断します。超音波(=エコー)のメカニズムは反射ですから、吸収すれば内膜が柔らかく、跳ね返れば硬いということがわかります。組織学的な差によって、エコーの映像も当然変わってきますから、子宮内膜の厚さのみならず、内膜の状態がいいかどうかもこの検査でわかります。


病院で必須の子宮の検査はほかにどのようなものがありますか?


子宮の検査に限っていうなら子宮鏡は必須です。またクスコと呼ばれる腟鏡があり、内視鏡を用いずに腟分泌物や子宮頸部などの性状を観察できるので、性交渉未経験の女性でもあまり抵抗感をもたずにできるでしょう。
最近は子宮鏡で検体を採取して、子宮内フローラ検査やERA(子宮内膜着床能)検査などで子宮内膜の状態を調べます。体外受精で何度も良い受精卵を戻しても着床しない場合に子宮内膜の異常が考えられ、そこを判断するための一つのアプローチとしてもやはり子宮鏡は大事だと考えられます。


子宮のトラブルや病気にはどのようなものがありますか?


子宮内膜症やクラミジア感染などによる炎症、癒着、慢性子宮内膜炎などが主なトラブルや病気です。そして、最近になって不妊症の原因の一つにサイトカインという炎症にかかわる生理活性物質が関わっていることもわかり、この物質が腹水と一緒にお腹の中に溜まっている場合があります。精子は良い。月経は規則正しい。卵管も通っている。夫婦生活も問題ない。それなのに人工授精を複数回して結果が出ないという患者さんは大勢います。では次のステップに何を選択するのか。このような場合、次に体外受精をすすめるクリニックは多いようですが、私なら必ず腹腔鏡検査を受けていただきたいと患者さんにお伝えしています。腹腔鏡検査では生理食塩水でお腹の中を念入りに洗うので、それだけでサイトカインなどを取り除くことができます。軽い癒着が見つかる確率も高く、その場で対処します。そして、腹腔鏡検査を受けた患者さんの半数が、その後、自然妊娠したこともデータが示しています。
ですから、異常が見当たらないのに人工授精で妊娠に至らない患者さんには、腹腔鏡検査をするべきだと思います。通院している施設の設備ではできないのであれば、腹腔鏡検査ができる施設を紹介してもらってください。患者さん自身にもそういった知識を進んで身につけてもらいたいと思います。
腹腔鏡検査は保険適用で2〜3万程度と料金が低めというメリットもあります。一泊入院のみですから、生活や仕事のリズムにあまり影響はないでしょう。人工授精の次は体外受精ではなく、人工授精の次に腹腔鏡検査、それでも妊娠できなければ体外受精などの治療を考える。不妊治療の根底はART(高度生殖医療)ではなく、自然妊娠です。若い人はなおさら、なるべく自然妊娠を目指していただきたいですし、医師もそのための努力をするべきだと私は考えます。


子宮内膜症や子宮筋腫が増えた原因と予防法は?


特に若い女性に増えたということではなく、数字的に増えたということもありませんが、考えられるのは、検査をする人が増えて表出するようになったということではないでしょうか。以前は、よほど症状がひどくならない限りは病院に行かなかっただけで、今は若い女性でも子宮内膜症や子宮筋腫の知識があります。予備知識がなければ気づかなかった症状も「なんだか変だな。病院に行ったほうがいいのかな」と、気づくことができるようになりました。医療知識の情報が増え、自分の体への意識があるということですから、とても良い傾向だと思いますよ。
予防法に関しては、特にはありません。ただ、早く検査するということは、悪化しないうちに治療を始められるということになります。子宮内膜症の治療には黄体ホルモン製剤「ジエノゲスト」という専用の内服薬を使用します。長期間使用可能ですし、副作用の心配もさほどありませんから、今はこれが主流です。
また、医師によって「手術したほうがいい」「手術しないほうがいい」と考えは二分しますが、できれば両方の考えをもつ医師の意見を聞いて、最良の判断をしていただきたいです。手術に関しては、技術の進歩で本当に良い機器が登場しています。従来の機器は周りの正常な組織も取ってしまうものでしたが、今はレーザーで内膜症の部分のみを治療できるので、傷が浅いうえに正常な組織を以前よりたくさん残すことができます。機器の進化で外科的な治療が積極的に取り入れられ、「何が何でも体外受精」という時代ではなくなるでしょう。





体外受精へのステップアップの前に腹腔鏡検査を


「腹腔鏡検査」は保険適用で比較的安く受けることができます。原因を明確にすることで、最良の治療法を選択することができ、より自然妊娠につながる可能性が高くなりますから、ぜひ皆さんに受けていただきたいですね。



 





先生から


受けるべき治療の知識をもつことと、
自分の子宮=体の状態を自らの意思で知る姿勢が大切です



 


 


 


お話を伺った先生のご紹介

田中 温 先生 (セントマザー産婦人科医院)


順天堂大学医学部卒業。越谷市立病院産科医長時代、診療後ならという条件付きで不妊治療の研究を許される。度重なる研究と実験は毎日深夜にまで及び、1985 年、ついに日本初のギフト法による男児が誕生。1990 年、セントマザー産婦人科医院開院。日本受精着床学会副理事長。順天堂大学医学部客員教授。アジア太平洋生殖医学会の一員として、アジア各国の研修生を受け入れている田中先生。「男性不妊の治療をはじめ、当院の技術を学ぼうとトルコやイスラエルなどから来ている彼らが母国の不妊カップルの一助になることを期待しています」と語ってくださいました。

≫ セントマザー産婦人科医院

出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.37 2018 Spring
≫ 掲載記事一覧はこちら


あとで読む

この記事に関連する記事

この記事に関連する投稿

女性のためのジネコ推薦商品

最新記事一覧

Page
top