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体外受精で卵胞が育ちません。 次はどんな誘発方法が望ましい?

コラム 不妊治療

体外受精で卵胞が育ちません。 次はどんな誘発方法が望ましい?

「卵胞が1つしか育っておらず、あとは10㎜程度が数個でした。点鼻薬を行い、14日目に採卵しましたが変性卵でした。自己注射ですが、あまりに育たずショックでした。」

2018.2.25

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相談者:トモさん(33歳)からの相談


▶アンタゴニスト法での体外受精


前夫との間に10歳の子どもが1人いますが、現在の夫とは妊娠経験はありません。AMH値が8.12ng/ml、また多嚢胞性卵巣症候群です。タイミング法、人工授精をそれぞれ7回行いましたが、いずれも陰性。今回転院し、アンタゴニスト法で体外受精を試みました。生理3日目より4日間、フォリルモンP®を150単位。7日目より2日間、フェリング®150単位。9日目より3日間、フェリング®225単位とガニレスト®。12日目、卵胞が1つしか育っておらず、あとは10㎜程度が数個でした。点鼻薬を行い、14日目に採卵しましたが変性卵でした。自己注射ですが、あまりに育たずショックでした。このような場合、次はどのような誘発方法で臨むのがいいでしょうか?



トモさんは多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)を抱えています。


体外受精で複数の卵子を採取するために排卵誘発剤の注射を打ったものの、発育した卵胞は1つ、ほかは10㎜程度が数個で、採卵した卵子も変性卵だったのですね。PCOSでは卵胞数は多いですが、排卵誘発剤に反応しにくい場合もあります。治療前に次のことをチェックする必要があります。
まず、PCOSの方は血中LH値が高い場合が多いので、月経初期の血中LH値を調べましょう。月経開始2〜3日目のLH値が10 mIU/ ml以上と高値の場合、卵胞が閉鎖しやすく卵胞の発育不良が考えられるので、低用量ピルを約10日間服用するか、カウフマン療法でLH値を正常化させます。GnRHアンタゴニスト剤のガニレスト®やセトロタイド®を2〜3日皮下注射して下げる方法もあります。
 また、半数近くが2型糖尿病の予備軍であるインスリン抵抗性をもつことがあります。空腹時の血糖値とインスリン値を測定し、HOMAーR値が2.0以上だと、排卵誘発剤の反応が不良だったり卵子の質の低下が予想されます。その場合、メトホルミン剤を1〜2カ月服用すると卵胞発育は改善するでしょう。
さらにPCOSの特徴に、男性ホルモン高値があります。数値が高いと、卵胞の発育不良や卵子の質の低下につながるため、月経が始まったら副腎皮質ホルモン剤であるプレドニゾロン®やデカドロン®を2週間服用し副腎皮質由来の男性ホルモンの分泌を低下させ、血中男性ホルモン値を改善させます。
以上のように、まずはホルモン環境を整えたうえで排卵誘発をスタートすれば、卵巣の反応も良くなり好結果が期待できると思います。


PCOSの方の場合、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)への注意も必要ですよね。


トモさんは、AMH値が8・12 ng / mlと高く、このレベルの方でしたら通常20個以上卵子が採れています。OHSSの重症化予防のため、今回FSH製剤(フォリルモンP®)を150単位と少量使用されたようですが、次は225単位から始めて、もっと多く発育させてもいいかもしれません。ただしOHSSの危険もあるため、アンタゴニストを隔日投与し、受精卵は全胚凍結して別の周期に戻すほうがいいでしょう。また、FSH製剤投与開始日からレトロゾールを5日間服用して点鼻薬によるLHサージを起こす日に血中E2値が高ければ再度レトロゾールを服用。採卵日からレトロゾールを約1週間服用し、これに加えて、カバサール®を1日1~2錠、1週間服用することでOHSSの重症化予防になります。


「あまりに育たずショック」とありますが、ほかにアドバイスはありますか。


BMIの値が25・3と、やや肥満傾向にあるので、減量によっても卵巣の反応が良くなるのではと思います。食事は3食バランス良く。そしてストレスをためないこと。以前の結婚では妊娠経験があるのに今回は何故できないのかなど、もしプレッシャーになっていることがあれば、カウンセラーによる心のケアも行ってみてはどうでしょう。





Doctor’s advice


●PCOSの人は、血中LHや男性ホルモンが高値になりやすい。
●まずホルモンバランスを整えたうえで、排卵誘発を開始してみては。



 


お話を伺った先生のご紹介

蔵本 武志 先生(蔵本ウイメンズクリニック)


久留米大学医学部卒業、山口大学大学院修了。山口県立中央病院産婦人科副部長、済生会下関総合病院産婦人科部長を経て、1990年オーストラリア・PIVEメディカルセンターへ留学。帰国後、1995年蔵本ウイメンズクリニック開院。最近は好きな観劇や旅行する時間も取れないほど多忙な日々を送っているそう。「今後、子宮内フローラやERAなど新たな検査も試していきたい」と意気込みを語ってくださいました。

≫ 蔵本ウイメンズクリニック

出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.37 2018 Spring
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