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治療に行き詰まった人、進む道がわからなくなった人へのメッセージ「選択に迷った時の決断」

コラム 不妊治療

治療に行き詰まった人、進む道がわからなくなった人へのメッセージ「選択に迷った時の決断」

不妊治療は、その時の状況によって「決断しなければいけない」選択の連続です。その岐路に立った時、どう決断すればいいのでしょうか? 読者の方から寄せられた「選択に迷う」質問に、HORACの森本義晴先生が答えてくれました。

2019.3.4

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※2019年2月25日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.41 2019 Spring」の記事です。


お話を伺った先生のご紹介

森本 義晴 先生(IVF JAPAN CEO)



「IVF大阪クリニック」「IVFなんばクリニック」「HORACグランフロント大阪クリニック」を運営。西洋医学に心理療法、運動療法、栄養療法を組み合わせた統合医療を実践している。不妊治療におけるミトコンドリア研究の第一人者である森本先生。卵子のミトコンドリアの中に抗酸化作用のあるものを封じ込めて活性化させる研究をスタートするそうです。



不妊治療の考え方


不妊治療がはじまると、思い通りにならない状況に直面することも。そんな時の支えになる、心構えを教えていただきました。


【Q】赤ちゃんはどうやってくるの?
【A】偶然という奇跡によって誕生します
30年間も医療現場にたずさわっていると、患者さんなどから不思議なお話をたくさん聞きます。たとえば、ある助産師さんは、4歳と5歳のお子さんに「僕たちはママが小さい頃から知っていたよ。ママが大きくなって赤ちゃんを産めるようになったから、僕たちが先にくることになったんだよ。実はママのお兄ちゃんだったんだ」と言われたそうです。赤ちゃんは精子と卵子の遺伝子が融合して誕生すると考えられています。しかし、私はタイミングを待っていた赤ちゃんが、ある偶然によって、その人のもとにくるのではないかと思っています。前世があるとすれば、自分の身近な人は、生まれ変わっても一緒にいる可能性があり、自分のお母さんだった人が、次は自分の息子になって出会ったりするのかもしれません。
不妊治療をするうえで、受精、分割、着床…という、一つひとつのプロセスを赤ちゃんととらえてしまうと、これがうまくいかない時はつらいものです。しかし、グレードがよい胚盤胞で妊娠しない時もあるし、グレードが悪い胚盤胞で妊娠する時もあります。世の中には、人間の力を超えた不思議なことがあると思えば、少し気が楽になるのではないでしょうか。そういう意味では、不妊治療は「赤ちゃんがくる準備をする」ことだと思います。心と体をゆるめて、赤ちゃんを迎えるスペースをつくる。その心構えがあるかないかで、赤ちゃんに出会えるかどうかが決まってくると思います。

病院・主治医選び


治療の成否にかかわる病院選び。自分に合う病院をどうやって見分ける? また、どんな時に転院を考えればいいのでしょうか。


【Q】病院はどうやって選ぶ?
【A】複数の病院をたずねて、先生などに話を聞いて判断を
インターネットは真偽がわからない情報も多いので、あくまでも参考程度に。実際に複数の病院をたずねて、先生や看護師さんと話してみましょう。自分に合う病院が感覚的にわかると思います。

【Q】転院したほうがいいの?
【A】医師の対応に疑問を感じたら、転院を視野に入れて
治療の成否は、医師との相性によって決まります。まず不親切だと感じたら我慢しないこと。治療に疑問を感じた時も、確認する勇気が必要です。それでも解決しない時は転院を考えましょう。治療に大切なのは時間です。とくに30代後半の方は、最初の病院を慎重に選んでください。

仕事との両立


最近は仕事をもつ女性が多く、治療との両立で悩む人が増えています。治療に専念? 仕事と両立? どちらがいいのでしょうか。


【Q】治療に専念するために仕事は辞めたほうがいい?
【A】理のないペースで、治療と両立を
治療には費用がかかりますから、仕事を辞めて収入がなくなると、かわりに経済的なストレスが生じることも。職場の理解を得て時短勤務にしたり、融通がきく職種に転職するなど、まずは仕事の負担を減らすことを考えましょう。通勤はいい運動になりますし、治療中のストレスの解消にもなります。

夫とのこと


治療中はどうしても女性側の負担が大きくなりがち。夫婦で一緒に取り組むためには、どのようなことを心がければいいでしょうか。


【Q】夫の協力は必要?
【A】子どもは二人でつくるもの。ご主人の協力は大前提
まずは「二人とも子どもが欲しいのか?」を明確にしておくことが大切。そのうえで、一度はご主人にも主治医と面談してもらいましょう。医師側もご夫婦の関係に応じた治療アプローチができます。たとえば、ご主人が協力的でない場合は、奥さんがご主人に伝えにくいことを、代わりに医師から伝えることもできます。

ストレスについて


治療中は心身のストレスがつきものといわれます。ストレスは妊娠に影響するのでしょうか。コントロールする方法はあるの?


【Q】カウンセリングはどんな時に利用するの?
【A】不妊症に限らず、どんなことでも相談を
最近は、国家資格をもつ心理カウンセラーが常駐する病院が増えています。彼らは聞き役のプロなので、相談内容は不妊症だけでなく、仕事、家庭、夫婦のことなど、何でもかまいません。話を聞いてもらうだけでストレスから解放されることもあります。身近にあれば積極的に利用してください。

【Q】ストレスは不妊の原因になる?
【A】卵子の質に大きく影響します
ストレスは、脳内で全身の細胞の毒になる活性酸素をたくさんつくり、卵子の質に大きく影響します。そのためコントロールが重要で、当院では自律訓練法という心理療法や、治療から気をそらす方法を提案しています。人によっては3カ月程度、基礎体温の測定や通院を休んでいただくと、この期間にストレスが軽減し、妊娠することがあります。

治療のこと


タイミング法、人工授精、体外受精…と治療が進むほど、選択する場面が増えていきます。そんな時の決断のヒントを紹介します。


【Q】妊娠しやすい性交のタイミングを教えて
【A】排卵日の前後3〜4日間に、複数の機会を
【一般治療】排卵が起こるのは、LH(黄体化ホルモン)のピークから36時間後というのが定説です。しかし、LHのピークや卵管に卵子が入るまでの時間には個人差がありますから、排卵日とされる前後の3〜4日間がタイミングと考えましょう。

【Q】何度も人工授精するとよくないの?
【A】目安の回数を超えたら、体外受精に切り替えを
【一般治療】人工授精の妊娠率は10%程度とそれほど高くありません。30代前半は6回、30代後半は3回が目安。これ以上繰り返しても治療に限界がありますから、体外受精への切り替えをおすすめします。

【Q】FTと体外受精どちらがいいの?
【A】どちらを選択するかは、卵管の詰まり具合で判断
【一般治療】片方の卵管がやや細い場合は、FT(卵管鏡下卵管形成術)が有効です。30分程度の外来手術で痛みが少なく、術後の妊娠率は30%。当グループの研究でFT後の体外受精で、さらに妊娠率が高くなるというデータもあります。

【Q】胚移植後は安静にしたほうがいい?
【A】職場や家族の理解を得て、できる限り安静に
【高度治療】移植後は約20%の人に子宮収縮が起きやすく、子宮内の血流が妨げられて赤ちゃんの成長に影響します。自転車の運転や風呂掃除など、お腹に力を入れる動きは控えましょう。これを心がけるだけで、移植後に結果が出ない方が妊娠した例はたくさんあります。

【Q】いい精子を採取するためには?
【A】精子のDNAを傷つけないことが重要
【高度治療】採取は禁欲期間が短いほどいいとされ、精子の質を高めるためには、射精後の翌日に自宅でリラックスして行うのが理想です。密封性や保温性にすぐれ、精子のDNAを保護する専用容器が開発されていますので、病院までの持ち運びも安心です。

【Q】自然周期と刺激周期どちらがいいの?
【A】その人の年齢や状態によって異なります
【高度治療】自然周期は1つの卵子、刺激周期は複数の卵子で妊娠をめざす方法です。刺激周期が可能な人に自然周期だけを行うと、妊娠のチャンスを減らすことになります。一つの方法に限定せず、その人に合わせたテーラーメードな卵巣刺激が重要です。

【Q】体外受精と顕微授精どちらがいいの?
【A】顕微授精で卵子のストレスを軽減できる可能性も
【高度治療】卵子に多量の精子を合わせて自然の受精にまかせるのが体外受精。精子の受精能力が弱い場合、人工的に受精させるのが顕微授精です。体外受精では、培養液の中で多量の精子がさまざまな物質を出し、それが活性酸素を生んで卵子にストレスを与えることがあります。一方、顕微授精は精子を極細針で卵子に直接注入するので、活性酸素のストレスを受けにくいとの考え方もあります。

【Q】何度やっても胚盤胞に育たない時は?
【A】初期胚を移植して、胚盤胞に育てる方法も
【高度治療】なかなか胚盤胞にならない場合、初期胚を移植して妊娠することもあります。体内の培養環境には未知のことが多くあり、体内で初期胚から胚盤胞になる可能性は十分あります。胚盤胞にとらわれず、その方に合った方法を選択するのが重要です。

着床障害について


体外受精などで移植を繰り返しても妊娠しない時に考えられる着床障害。どのような検査や治療があるのでしょうか。


【Q】リンパ球の免疫療法とは?
【A】流産の一因になる、夫婦間の免疫にアプローチ
夫婦間の免疫の相性を調べて、相性が悪い場合はご主人のリンパ球を奥さんの体内に注入する免疫療法です。賛否両論ある方法ですが、当院では効果を上げています。すべての検査をしても原因が見つからない方には一度検査をおすすめします。

【Q】着床障害検査はどういう時に受ける?
【A】流産、化学流産を繰り返す30代後半の人は必須
血液検査で子宮の血液の凝固異常や、赤ちゃんを異物とみなす免疫の異常などを調べる検査です。複雑な着床のメカニズムにともなって検査項目も多いですが、これ以上、流産を繰り返さないためにも、すべての検査を受けましょう。

【Q】化学流産は重要因子?
【A】早期の流産ととらえ、不育症検査を行いましょう
化学流産を流産としてカウントしない考え方もありますが、当院では流産を起こすメカニズムは早期から始まっており、流産の重症型と考えます。化学流産を繰り返す場合は、不育症検査で原因を調べることが大切です。

高齢になって迷うこと


妊娠のリミットが近づいた時、治療を諦める? それとも、このまま続けてみる? ほかにも選択肢はあるのでしょうか。


【Q】40歳になっても治療はできる?
【A】いまの40歳は若いので、まだ治療は可能です。
大切なのは自分から老け込まず、若さを保つ意識とケアを心がけることです。ミトコンウォークなどの有酸素運動をすると、まず肌にハリが生まれ、AMH(卵巣の予備能の指標)の数値も上がる場合があります。

【Q】卵子提供のことを考えてみたい
【A】治療を諦める前の最後の選択肢
日本では未認可のため、ドナーの選定が厳重なアメリカの施設を紹介しています。自分の子宮で育てて出産するので家族、ご紹介したご夫婦は、皆さんいいご家庭を築いておられます。ただ、生まれたお子さんは出自を知る権利があるので、幼児の時にきちんと伝える必要があります。

妊娠体質になるために


治療以外にも妊娠しやすい体づくりが大切だといわれます。運動や漢方、サプリメントを取り入れる時のポイントを紹介します。


【Q】サプリメントは飲んだほうがいい?
【A】有酸素運動とセットで、効果を発揮します
サプリメントの有用成分を細胞に届けるには、有酸素運動と組み合わせて摂取するのがポイント。ただ飲んでいるだけでは卵子の中に入らず、尿へ流れ出てしまいます。効果が出るまでに1〜3カ月かかります。

【Q】漢方は効果がある?
【A】血流の改善が期待できる、あくまでも補助的なもの
漢方の効果には個人差があるので、専門家のもとで体質に合わせて選ぶことが大切です。3カ月服用しても変化がない場合は種類を変えたり、中止すること。ストレスを感じながら飲むのが一番よくありません。

【Q】体力づくりはしたほうがいい?
【A】ゆったりと動く、有酸素運動がおすすめです
細胞内のミトコンドリアを活性化するためには、当院が開発した「ミトコンウォーク」をはじめ、有酸素運動であるスイミング、ヨガなどがおすすめです。

【Q】禁煙したほうがいい?
【A】喫煙は卵子の老化を促進します
禁煙は大前提です。ご本人の禁煙はもちろん、ご主人が屋外で喫煙しても、呼気のなかにニコチンが残るので、その呼気を吸った奥さんも受動喫煙になります。そしてニコチンは卵子の質の低下をもたらします。

出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.41 2019 Spring
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