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タイムラプスで妊娠率向上を目指す

コラム 不妊治療

タイムラプスで妊娠率向上を目指す

受精卵の成長を観察して記録!
松本レディースクリニックは、2020年1月の施設拡張を機に先進培養機器「タイムラプスインキュベーター」を導入。医療側、患者側にとってどんなことが期待できるのか、同院の松本玲央奈先生にお話を伺いました。

2020.3.20

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※2020年2月25日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.45 2020 Spring」の記事です。


お話を伺った先生のご紹介

松本 玲央奈 先生


聖マリアンナ医科大学卒業。東京大学大学院卒業。2015年にはヨーロッパ生殖医学会において着床に関する研究で、最も権威のあるAwardなど国内外で多数受賞。2020年松本レディース リプロダクションオフィス院長就任。「患者さん一人ひとりにご納得いただける診断や治療を提供すること」が同院のモットー。


≫ 松本レディースクリニック

胚にストレスを与えず、安定した培養環境に


――「タイムラプスインキュベーター」とはどのようなものなのでしょうか。従来のインキュベーターとの違いは?

体外受精や顕微授精により受精した卵子は受精卵、もしくは胚と呼ばれ、その胚を培養する時に培養液を使います。培養液はインキュベーターという専用の培養機器によって温度・pH・浸透圧など、胚が成長するのに必要な環境を維持しています。
胚はお母さんのお腹に移植されるまでインキュベーター内で培養され、細胞分裂を繰り返して成長していきます。
その間、胚培養士がインキュベーターの中の胚を取り出し、3~5日間にわたって一定の時点で3~4回の観察や検査を実施するのですが、胚がインキュベーターの外に出ると、温度も空気もまったく違う環境にさらされるため、大きなストレスがかかります。そのため、観察時間は最小限に抑える必要があり、胚の動態的評価の時間は限られていました。
その点を改善できるのがタイムラプスインキュベーターです。タイムラプスシステムは内蔵カメラと顕微鏡を備えたインキュベーターの中で、胚の画像を10分ごとなどの一定間隔で写真撮影を行い、その写真を連続で写すことにより動画のように見る技術です。
これにより、大切な胚を外部の環境にさらすことなく、安定した培養環境で観察を行っていくことができます。


卵子の数の確保が難しい方、複数胚を持つケースにも有効


――タイムラプスインキュベーターはどんな患者さまが使うと有効なのでしょうか。

卵子の数がなかなか確保できないという患者さまにとって、胚はとても貴重なものになってきます。場合によっては胚の生死にもかかわってくる培養環境を整えることはとても重要。胚をよりよい状態におくことはそのような患者さまにとっても安心だと思います。
また、受精卵がたくさんできてもなかなか妊娠に至らないという方にも有効なのでは。タイムラプスで胚の成長を継続的に観ていくことで妊娠しやすい胚としにくい胚の違いがわかるといわれています。
複数個培養されているケースでも、胚の選択の順番というところでメリットがあればより早い妊娠につながる可能性があります。

――2020年1月、施設拡張、松本レディースクリニック リプロダクションオフィス開院に際して、タイムラプスインキュベーターを2台導入されるそうですね。

培養室の広さも2倍になるので、新たに導入を決めました。
2台ともヴィトロライフ社のものですが、1台は従来型、もう1台は新型の機種。培養環境や機能に変わりはないのですが、キャパシティが異なります。従来型は1つに16個の胚を収納できるディッシュが15枚、新型は6個の胚を収納できるディッシュが24枚。新型は受精卵があまりできないという方にも適していると考え、収納数の割合が異なるものを2種導入しました。


今ある治療をさらに改善し、妊娠率の向上を目指す


――妊娠において培養環境の重要性をどのように考えていますか。

不妊治療が始まって以来、排卵誘発をして卵子を育てて精子と受精させ、胚を培養して移植する、という一連の流れは大きく変わっておらず、今後もすぐに飛躍的に違う方法が開発されるということはないと思います。
不妊に関して解明されていることはまだほんの少しで、未知の部分のほうが多い状態。それでも手技やデバイスの向上により、10年、20年前と比べたら妊娠率は格段に上がってきています。つまり、現状でも改善できるところをよりよくしていけば、さらに妊娠率の向上が望めるということです。子宮内膜の詳しい解析のほか、今、培養環境も注目されており、そのなかでも胚の情報を詳しく探ることができるタイムラプスは、妊娠率向上を目指せる先進的な技術として、大いに期待がもてると思っています。

――最後に患者さまへのメッセージをお願いします。

結果が出にくいという方は、新たな選択肢の一つとしてぜひタイムラプスにトライしていただくことをおすすめします。妊娠に近づけるということ以外に、現代の医療技術でできうることをやったという治療に対する納得感も得られるのではないでしょうか。
導入後は患者さまに胚の成長過程の写真をお見せしながら、ご説明することも検討しています。後悔しない不妊治療を受けていただくためにもタイムラプスは大きな役割を果たすと考えています。




右は「EmbryoScope +(エンブリオスコーププラス)」で、最大15人分×16個の胚を観察・撮影できる。左は新型の「EmbryoScope Flex(エンブリオスコープフレックス)」で、最大24人分×6個の胚を収納でき、低刺激や自然周期の胚の個数が少ない患者さん向き。どちらも培養環境や機能は同じ。


「タイムラプスで、お預かりしている大切な胚を観察して、妊娠率向上につなげます」。胚培養士の佐藤 恵さんと。


タイムラプスを導入しているクリニックは全国70カ所以上!
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出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.45 2020 Spring
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