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4CCや4BCの胚盤胞とグレード1の初期胚、妊娠率が高いのはどっち?
4CCや4BCの胚盤胞とグレード1の初期胚、妊娠率が高いのはどっち? 相談者:いくみさん(35歳)凍結胚盤胞移植についての相談通院しているクリニックでは、評価がCCであろうと、やはり初期胚よりも胚盤胞のほうが妊娠率が高いという見解ですが、いろいろ調べてみると「胚盤胞のグレードがCCの場合は、染色体異常や流産の確率が上がる」という情報があるため、少し心配になりました。G1やG2のグレードが良い初期胚と、BCやCCなどのグレードの胚盤胞を比べた場合、どちらが妊娠率が高いといえるのでしょうか。クリニックの培養士さんには「胚盤胞までなっているので、4CCだったとしても、今ある初期胚よりは妊娠率は高い」といわれました。現在、凍結中の受精卵は、G1、G2の分割胚が1個ずつ、4BCと4CCの胚盤胞が1個ずつ、計4個あります。次はどの受精卵を移植したらいい? また、着床率を上げるためにはエンブリオ・グルーなども効果的なのでしょうか。 胚盤胞は4CCと4BCのものを凍結してあるそうですが、これらのグレードについてどう思われますか。 北村先生:まず4CCについてですが、このグレードだと着床する可能性が非常に低く、凍結しても変性してしまうリスクが高いので、移植の対象になることも少ないと思います。もちろん施設によって見解が違うので、なかには4CCの胚盤胞でも戻すケースはあると思いますが、やはり「4CCでは移植しても厳しい」というのが標準的な考え方だと思いますね。培養士の方の言葉には少し疑問を感じます。 4BCの胚盤胞の場合、当院の妊娠率はだいたい10~13%程度。BCのCの部分は胎盤になるほうの細胞で、Cのレベルではその数が少ないということです。妊娠率は低いのですが、可能性はゼロではないので、戻すか戻さないかは施設によって意見が分かれるところでしょう。 それらのグレードの胚盤胞を戻すより、良い状態の初期胚を選んだほうが妊娠の可能性は高まるのでしょうか。 北村先生:初期胚がグレード1ということは、きれいに分裂して7~8細胞までいっているのではないでしょうか。それだったら、当院なら初期胚で戻すことを検討すると思いますね。 胚盤胞のグレードが4CCレベルだと、染色体の異常が多く、流産の率がかなり高まるといわれています。中身を詳しく調べるためには着床前診断をしないとわかりませんが、「タイムラプス・エンブリオ・モニタリングシステム」なら、培養段階でもある程度、いいものかどうか選別することができます。 これは24時間継続して受精卵の観察が可能な培養器なのですが、4BCや4CCだと多核だったり、受精する時間や第一分割の状況が悪い場合が多い。あくまでも見た目の評価ということになりますが、やはり見た目が良くない受精卵は中身も良くないことが多いように思います。 初期胚でもそれほど妊娠率が低いわけではないので、「もしかしたら途中で成長が止まってしまうかもしれない」というマイナスの可能性を考慮しても、グレード1の初期胚を移植したほうが妊娠を期待できると思います。 エンブリオ・グルーについては、どのような考えをおもちですか? 北村先生:やった方とやらない方に大きな有意差はありませんが、妊娠率は数パーセント上昇するようなので、当院では移植する方全員に実施しています。エンブリオ・グルーは粘度のある、いわゆる接着剤のようなもの。使うことにより、受精卵が子宮内膜に接着している時間が長くなると思います。 極端な効果はなくても、着床を促すためにできることの一つだと思うので、「今できることはすべてやる」という意味では、おすすめしたいと思います。 荻窪病院 虹クリニック 北村 誠司先生慶應義塾大学医学部卒業。1989年からIVFおよび内視鏡手術に従事。子宮鏡下手術による胚移植の改善や、腹腔鏡下手術による子宮筋腫、内膜症の解消・改善を積極的に図ると同時に、妊娠困難症例に対しても新しい治療を取り入れて対応。本院(荻窪病院)泌尿器科の男性不妊専門医の協力により、TESE-ICSIや逆行性射精など、男性不妊の治療体制も整えている。 ≫ 荻窪病院 虹クリニック 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.32 2016 Winter≫ 掲載記事一覧はこちら 【PR】体外受精をお考えなら。田村秀子産婦人科医院 女性のための健康生活マガジン JINEKO 4CCや4BCの胚盤胞とグレード1の初期胚、妊娠率が高いのはどっち? 相談者:いくみさん(35歳)凍結胚盤胞移植についての相談通院しているクリニックでは、評価がCCであろうと、やはり初期胚よりも胚盤胞のほうが妊娠率が高いという見解ですが、いろいろ調べてみると「胚盤胞のグレードがCCの場合は、染色体異常や流産の確率が上がる」という情報があるため、少し心配になりました。G1やG2のグレードが良い初期胚と、BCやCCなどのグレードの胚盤胞を比べた場合、どちらが妊娠率が高いといえるのでしょうか。クリニックの培養士さんには「胚盤胞までなっているので、4CCだったとしても、今ある初期胚よりは妊娠率は高い」といわれました。現在、凍結中の受精卵は、G1、G2の分割胚が1個ずつ、4BCと4CCの胚盤胞が1個ずつ、計4個あります。次はどの受精卵を移植したらいい? また、着床率を上げるためにはエンブリオ・グルーなども効果的なのでしょうか。 胚盤胞は4CCと4BCのものを凍結してあるそうですが、これらのグレードについてどう思われますか。 北村先生:まず4CCについてですが、このグレードだと着床する可能性が非常に低く、凍結しても変性してしまうリスクが高いので、移植の対象になることも少ないと思います。もちろん施設によって見解が違うので、なかには4CCの胚盤胞でも戻すケースはあると思いますが、やはり「4CCでは移植しても厳しい」というのが標準的な考え方だと思いますね。培養士の方の言葉には少し疑問を感じます。 4BCの胚盤胞の場合、当院の妊娠率はだいたい10~13%程度。BCのCの部分は胎盤になるほうの細胞で、Cのレベルではその数が少ないということです。妊娠率は低いのですが、可能性はゼロではないので、戻すか戻さないかは施設によって意見が分かれるところでしょう。 それらのグレードの胚盤胞を戻すより、良い状態の初期胚を選んだほうが妊娠の可能性は高まるのでしょうか。 北村先生:初期胚がグレード1ということは、きれいに分裂して7~8細胞までいっているのではないでしょうか。それだったら、当院なら初期胚で戻すことを検討すると思いますね。 胚盤胞のグレードが4CCレベルだと、染色体の異常が多く、流産の率がかなり高まるといわれています。中身を詳しく調べるためには着床前診断をしないとわかりませんが、「タイムラプス・エンブリオ・モニタリングシステム」なら、培養段階でもある程度、いいものかどうか選別することができます。 これは24時間継続して受精卵の観察が可能な培養器なのですが、4BCや4CCだと多核だったり、受精する時間や第一分割の状況が悪い場合が多い。あくまでも見た目の評価ということになりますが、やはり見た目が良くない受精卵は中身も良くないことが多いように思います。 初期胚でもそれほど妊娠率が低いわけではないので、「もしかしたら途中で成長が止まってしまうかもしれない」というマイナスの可能性を考慮しても、グレード1の初期胚を移植したほうが妊娠を期待できると思います。 エンブリオ・グルーについては、どのような考えをおもちですか? 北村先生:やった方とやらない方に大きな有意差はありませんが、妊娠率は数パーセント上昇するようなので、当院では移植する方全員に実施しています。エンブリオ・グルーは粘度のある、いわゆる接着剤のようなもの。使うことにより、受精卵が子宮内膜に接着している時間が長くなると思います。 極端な効果はなくても、着床を促すためにできることの一つだと思うので、「今できることはすべてやる」という意味では、おすすめしたいと思います。 荻窪病院 虹クリニック 北村 誠司先生慶應義塾大学医学部卒業。1989年からIVFおよび内視鏡手術に従事。子宮鏡下手術による胚移植の改善や、腹腔鏡下手術による子宮筋腫、内膜症の解消・改善を積極的に図ると同時に、妊娠困難症例に対しても新しい治療を取り入れて対応。本院(荻窪病院)泌尿器科の男性不妊専門医の協力により、TESE-ICSIや逆行性射精など、男性不妊の治療体制も整えている。 ≫ 荻窪病院 虹クリニック 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.32 2016 Winter≫ 掲載記事一覧はこちら 【PR】体外受精をお考えなら。田村秀子産婦人科医院 専門家に相談してみる 【無料】100ページオールカラー 女性のための健康生活マガジン JINEKO
2016.11.1
コラム 不妊治療
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卵巣機能不全で卵子の質も悪いとのこと。妊娠の可能性はあるの?
「FSHは最高50代の値。タイミング1年半で、AIH6回、採卵8回、移植2回。卵巣機能不全で、卵子の質もすこぶる悪そうです。希望がもてません。」
2016.11.1
コラム 不妊治療
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hCGホルモン値が基準値を少し超えています。流産の可能性は?
hCGホルモン値が基準値を少し超えています。流産の可能性は? 相談者:むぎちゃかさん(30歳)体外受精のhCG ホルモン値について以前に化学妊娠を経験しているので、とても不安です。教えてください。今期はじめての体外受精をしました。6月10日に採卵をし、13日に8分割グレード3Bの胚を移植しました。その後、6月24日にhCGホルモン値を検査しました。結果は51.3mIU/mlで陽性でした。1週間後に袋の確認、その1週間後に胎動の確認とのことです。先生が言うには、50未満だと妊娠継続率は50%ほどということです。この結果は妥当なのでしょうか。その後、hCG5000単位を注射して、ジュリナⓇとルトラールⓇを処方してもらって帰宅しました。また24日は何週目になるのかの数え方がわかりません。最終月経は5月29日です。採卵日を基準とすると24日だと2週0日だし、最終月経を基準とすると3週5日目です。どちらが正しいのでしょうか。 hCGホルモンの値が51・3mIU/mlということについて、どのように考えればいいでしょうか。 福井先生:まず、むぎちゃかさんは化学妊娠と書かれていますが、おそらくこれは化学的流産のことだと思います。受精はしたものの、着床が続かなかった状態を化学流産といい、妊娠検査薬では陽性だったのに生理がきてしまったことで気づく方も多いようです。1〜2回なら着床することができる、妊娠の兆候がある、などとポジティブに考えられますが、化学流産を何度も繰り返す方は、不育症の検査をしたほうがいいかもしれません。 そして、むぎちゃかさんの主治医も言っているように、hCGホルモンの値は統計的に50mIU/ ml を超えていると妊娠が継続しやすいといわれています。 過去に流産を経験しているだけに、hCGホルモンの値がボーダーラインに近いと「また流産するのではないか」と考えてしまいそうです。 福井先生:採卵後14日目(妊娠4周0日)におけるhCGホルモンが50mIU/ml前後であった場合の妊娠継続の確率は50%程度とされていますから、少し心配かもしれませんね。でも、僕ならむぎちゃかさんに「50mIU/mlを超えて陽性が出たのだから継続すると考えましょう」とポジティブな言葉をかけて、経過をみるようにしますね。でも、妊娠と断定するのは時期尚早ではと考えています。 陽性と出ているのに妊娠と断定できないとは、どういうことでしょうか。また、妊娠を判定する方法や継続できる指標はあるのでしょうか。 福井先生:hCGホルモンの値は客観性があると思います。それ以外にも高齢の場合は受精卵側の因子で流産する場合があるのでhCGホルモンの値で一喜一憂できるわけではありませんが、むぎちゃかさんはまだその心配はないと思います。 もう一つの考え方として、この段階では「着床をしていて、妊娠の兆候がある」と判断し、妊娠とは断定しない医師もいます。実は僕もそう考えています。なにを基準にするかというと、もう少し日数をおいてから超音波検査をして、子宮の中に胎のうがしっかり見えれば妊娠していると判断するのです。 むぎちゃかさんも、主治医に一週間後に来院するよういわれているようですので、その際に超音波検査をされるのだと思いますよ。 また、妊娠の基準は採卵日と最終月経日どちらになるのでしょうか。 福井先生:採卵日を基準としますので、むぎちゃかさんがおっしゃるようにhCGホルモン値を調べた6月24日は2週0日にあたります。 このような基本的な質問は遠慮せず気軽に主治医に聞いたほうがいいですよ。聞いたほうが早く解決しますし、ご自身が事前に勉強しておく必要はありませんよ。 福井ウィメンズクリニック 福井 敬介先生1989年、日本大学医学部卒業。卒業と同時に愛媛大学産科婦人科に入局、愛媛大学大学院医学専攻科修了。2000年愛媛大学産科婦人科学助教授。2001年、「高度な生殖医療をより身近な医療として不妊カップルに提供したい」と、福井ウィメンズクリニックを開設する。≫ 福井ウィメンズクリニック 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.32 2016 Winter≫ 掲載記事一覧はこちら 【PR】体外受精をお考えなら。田村秀子産婦人科医院 専門家に相談してみる 【無料】100ページオールカラー 女性のための健康生活マガジン JINEKO hCGホルモン値が基準値を少し超えています。流産の可能性は? 相談者:むぎちゃかさん(30歳)体外受精のhCG ホルモン値について以前に化学妊娠を経験しているので、とても不安です。教えてください。今期はじめての体外受精をしました。6月10日に採卵をし、13日に8分割グレード3Bの胚を移植しました。その後、6月24日にhCGホルモン値を検査しました。結果は51.3mIU/mlで陽性でした。1週間後に袋の確認、その1週間後に胎動の確認とのことです。先生が言うには、50未満だと妊娠継続率は50%ほどということです。この結果は妥当なのでしょうか。その後、hCG5000単位を注射して、ジュリナⓇとルトラールⓇを処方してもらって帰宅しました。また24日は何週目になるのかの数え方がわかりません。最終月経は5月29日です。採卵日を基準とすると24日だと2週0日だし、最終月経を基準とすると3週5日目です。どちらが正しいのでしょうか。 hCGホルモンの値が51・3mIU/mlということについて、どのように考えればいいでしょうか。 福井先生:まず、むぎちゃかさんは化学妊娠と書かれていますが、おそらくこれは化学的流産のことだと思います。受精はしたものの、着床が続かなかった状態を化学流産といい、妊娠検査薬では陽性だったのに生理がきてしまったことで気づく方も多いようです。1〜2回なら着床することができる、妊娠の兆候がある、などとポジティブに考えられますが、化学流産を何度も繰り返す方は、不育症の検査をしたほうがいいかもしれません。 そして、むぎちゃかさんの主治医も言っているように、hCGホルモンの値は統計的に50mIU/ ml を超えていると妊娠が継続しやすいといわれています。 過去に流産を経験しているだけに、hCGホルモンの値がボーダーラインに近いと「また流産するのではないか」と考えてしまいそうです。 福井先生:採卵後14日目(妊娠4周0日)におけるhCGホルモンが50mIU/ml前後であった場合の妊娠継続の確率は50%程度とされていますから、少し心配かもしれませんね。でも、僕ならむぎちゃかさんに「50mIU/mlを超えて陽性が出たのだから継続すると考えましょう」とポジティブな言葉をかけて、経過をみるようにしますね。でも、妊娠と断定するのは時期尚早ではと考えています。 陽性と出ているのに妊娠と断定できないとは、どういうことでしょうか。また、妊娠を判定する方法や継続できる指標はあるのでしょうか。 福井先生:hCGホルモンの値は客観性があると思います。それ以外にも高齢の場合は受精卵側の因子で流産する場合があるのでhCGホルモンの値で一喜一憂できるわけではありませんが、むぎちゃかさんはまだその心配はないと思います。 もう一つの考え方として、この段階では「着床をしていて、妊娠の兆候がある」と判断し、妊娠とは断定しない医師もいます。実は僕もそう考えています。なにを基準にするかというと、もう少し日数をおいてから超音波検査をして、子宮の中に胎のうがしっかり見えれば妊娠していると判断するのです。 むぎちゃかさんも、主治医に一週間後に来院するよういわれているようですので、その際に超音波検査をされるのだと思いますよ。 また、妊娠の基準は採卵日と最終月経日どちらになるのでしょうか。 福井先生:採卵日を基準としますので、むぎちゃかさんがおっしゃるようにhCGホルモン値を調べた6月24日は2週0日にあたります。 このような基本的な質問は遠慮せず気軽に主治医に聞いたほうがいいですよ。聞いたほうが早く解決しますし、ご自身が事前に勉強しておく必要はありませんよ。 福井ウィメンズクリニック 福井 敬介先生1989年、日本大学医学部卒業。卒業と同時に愛媛大学産科婦人科に入局、愛媛大学大学院医学専攻科修了。2000年愛媛大学産科婦人科学助教授。2001年、「高度な生殖医療をより身近な医療として不妊カップルに提供したい」と、福井ウィメンズクリニックを開設する。≫ 福井ウィメンズクリニック 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.32 2016 Winter≫ 掲載記事一覧はこちら 【PR】体外受精をお考えなら。田村秀子産婦人科医院 専門家に相談してみる 【無料】100ページオールカラー 女性のための健康生活マガジン JINEKO
2016.11.1
コラム 不妊治療
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凍結胚移植の予定ですが、卵巣刺激が過剰に思え妊娠できるか心配です。
凍結胚移植の予定ですが、卵巣刺激が過剰に思え妊娠できるか心配です。 相談者:もち団子さん(37歳)凍結胚盤胞移植のための卵巣刺激について今周期、凍結胚盤胞2個を同時移植する予定ですが、採卵周期なみに卵巣刺激をされています。生理3 〜7日目にクロミッドⓇ1日2錠、8 〜12日目にHMG注射を毎日、排卵させるためHCG注射もする予定だそうです。せっかく採卵しない周期に胚移植するのに、こんなに卵巣刺激してはクロミッドⓇで子宮内膜が薄くなるし卵巣が疲弊するのではないかと思います。生理2日目の診察で、超音波も血液検査もなしで当然のようにクロミッドⓇ1日2錠を処方されたので、「基礎体温は二相になっているし、周期は28 〜30日、AMH4.8ng/ml、生理2日目のFSH8mIU/mlくらいなので自然排卵で移植したい」と先生に伝えると、「私のやり方でやらないなら移植しません」と。今日で生理11日目、15 〜17㎜の卵胞が5〜6個育ってきています。移植だけなのにこんなに卵を育てる必要があるのか、こんなに刺激してちゃんと着床できるか心配です。 もち団子さんのケースをご覧になって、どのように思われますか? 操先生:まず胚盤胞までいっていることはすごく有利なので、自然周期で戻すかホルモン補充周期で戻すか、ということですよね。ホルモン補充だとある程度子宮内膜の環境を整えて移植できるのでブレが少ない。そういうメリットがあるのでホルモン補充から入るのが一般的で、当院でもそうしています。それでなかなか子宮内膜が厚くならないとか結果が出てこなければ自然周期で戻すケースもあります。ただ自然周期の場合は厳重な管理が必要で、排卵に合わせてジャストのタイミングで合わせないといけません。当院では尿中のLHを測ってだいたいの排卵日を予測して、超音波の所見も合わせて日程を決めていくようにしています。 操先生はホルモン補充周期で移植する場合、治療はどう進められますか? 操先生:ファーストチョイスは貼り薬のエストラーナテープⓇを使います。それで内膜の厚みが出なければ、もうちょっと厚みが出るまで使ったり、あとはペントキシフィリンⓇやビタミンEとかビタミンC、そのあたりを重ねて、それでも移植できる状況にならなければ、一回自然周期で戻してみます。あと、黄体補充はそれぞれのプログラムの組み合わせによって3種類を使い分けています。厚みがなかなか出ない場合は、セキソビットⓇを使ってもいいかもしれませんね。ただクロミッドⓇの場合、排卵はうまくいくかもしれないけど、子宮内膜に関してはネガティブに働く可能性があります。全員が全員ではないですけどね。もち団子さんは月経不順もないし、きちんと基礎体温も二相になっているということなので自然周期でもいいと思いますよ。 やはり刺激しすぎなのでしょうか? 操先生:卵胞が5〜6個育ってきているっていうことは、E2のレベルがやたら高くなる可能性はありますね。採卵しないとなると、そのまま膨れていきますよね。そうすると黄体補充をよほど考えないと、黄体ホルモンと卵胞ホルモンのバランスの問題が出てくるし、結構難しいですね。そういうことを考えないということであれば、自然周期で移植するのが一番。それで黄体ホルモンだけを補充する。 先生の方針がはっきり決まっていて、希望を受け入れてもらえないようですが。 操先生:セカンドオピニオンでもいいので、一度、ほかの病院に行かれてもいいかなと思います。今は患者さんもある程度の知識をもっていますよね。ネットの情報がすべて正しいわけではないけど自分なりに知識がついて、「やっぱり自分はこうしたい」という患者さんもいます。自費診療ですし、かなり高額な医療になるわけなので、まったく的外れでなければ納得する治療をしてもらったほうがいいと思いますね。選択肢として、こういうふうでどうですかとメリットとデメリットを伝えて、その中で選んでもらうというのが一番あるべき姿ですよね。 操レディスホスピタル 操 良先生岐阜大学医学部卒業。岐阜大学附属病院で8年間、不妊専門外来を担当し、1992年には岐阜県下初の体外受精に成功。女性ホルモンに関する研究成果が認められ、平成9年度に岐阜県医学研究奨励賞を、平成11年に日本内分泌学会で研究奨励賞を受賞。現在、操レディスホスピタル院長。不妊治療だけでなく妊娠後の検診や出産までトータルで診る先生。休日には、緊急の事態にも即戻れるよう新幹線沿線の旅行をするのだとか。「東京や神戸などのホテルに1泊し、翌朝の朝食が何よりのリフレッシュです」。≫ 操レディスホスピタル 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.32 2016 Winter≫ 掲載記事一覧はこちら 【PR】体外受精をお考えなら。田村秀子産婦人科医院 専門家に相談してみる 【無料】100ページオールカラー 女性のための健康生活マガジン JINEKO 凍結胚移植の予定ですが、卵巣刺激が過剰に思え妊娠できるか心配です。 相談者:もち団子さん(37歳)凍結胚盤胞移植のための卵巣刺激について今周期、凍結胚盤胞2個を同時移植する予定ですが、採卵周期なみに卵巣刺激をされています。生理3 〜7日目にクロミッドⓇ1日2錠、8 〜12日目にHMG注射を毎日、排卵させるためHCG注射もする予定だそうです。せっかく採卵しない周期に胚移植するのに、こんなに卵巣刺激してはクロミッドⓇで子宮内膜が薄くなるし卵巣が疲弊するのではないかと思います。生理2日目の診察で、超音波も血液検査もなしで当然のようにクロミッドⓇ1日2錠を処方されたので、「基礎体温は二相になっているし、周期は28 〜30日、AMH4.8ng/ml、生理2日目のFSH8mIU/mlくらいなので自然排卵で移植したい」と先生に伝えると、「私のやり方でやらないなら移植しません」と。今日で生理11日目、15 〜17㎜の卵胞が5〜6個育ってきています。移植だけなのにこんなに卵を育てる必要があるのか、こんなに刺激してちゃんと着床できるか心配です。 もち団子さんのケースをご覧になって、どのように思われますか? 操先生:まず胚盤胞までいっていることはすごく有利なので、自然周期で戻すかホルモン補充周期で戻すか、ということですよね。ホルモン補充だとある程度子宮内膜の環境を整えて移植できるのでブレが少ない。そういうメリットがあるのでホルモン補充から入るのが一般的で、当院でもそうしています。それでなかなか子宮内膜が厚くならないとか結果が出てこなければ自然周期で戻すケースもあります。ただ自然周期の場合は厳重な管理が必要で、排卵に合わせてジャストのタイミングで合わせないといけません。当院では尿中のLHを測ってだいたいの排卵日を予測して、超音波の所見も合わせて日程を決めていくようにしています。 操先生はホルモン補充周期で移植する場合、治療はどう進められますか? 操先生:ファーストチョイスは貼り薬のエストラーナテープⓇを使います。それで内膜の厚みが出なければ、もうちょっと厚みが出るまで使ったり、あとはペントキシフィリンⓇやビタミンEとかビタミンC、そのあたりを重ねて、それでも移植できる状況にならなければ、一回自然周期で戻してみます。あと、黄体補充はそれぞれのプログラムの組み合わせによって3種類を使い分けています。厚みがなかなか出ない場合は、セキソビットⓇを使ってもいいかもしれませんね。ただクロミッドⓇの場合、排卵はうまくいくかもしれないけど、子宮内膜に関してはネガティブに働く可能性があります。全員が全員ではないですけどね。もち団子さんは月経不順もないし、きちんと基礎体温も二相になっているということなので自然周期でもいいと思いますよ。 やはり刺激しすぎなのでしょうか? 操先生:卵胞が5〜6個育ってきているっていうことは、E2のレベルがやたら高くなる可能性はありますね。採卵しないとなると、そのまま膨れていきますよね。そうすると黄体補充をよほど考えないと、黄体ホルモンと卵胞ホルモンのバランスの問題が出てくるし、結構難しいですね。そういうことを考えないということであれば、自然周期で移植するのが一番。それで黄体ホルモンだけを補充する。 先生の方針がはっきり決まっていて、希望を受け入れてもらえないようですが。 操先生:セカンドオピニオンでもいいので、一度、ほかの病院に行かれてもいいかなと思います。今は患者さんもある程度の知識をもっていますよね。ネットの情報がすべて正しいわけではないけど自分なりに知識がついて、「やっぱり自分はこうしたい」という患者さんもいます。自費診療ですし、かなり高額な医療になるわけなので、まったく的外れでなければ納得する治療をしてもらったほうがいいと思いますね。選択肢として、こういうふうでどうですかとメリットとデメリットを伝えて、その中で選んでもらうというのが一番あるべき姿ですよね。 操レディスホスピタル 操 良先生岐阜大学医学部卒業。岐阜大学附属病院で8年間、不妊専門外来を担当し、1992年には岐阜県下初の体外受精に成功。女性ホルモンに関する研究成果が認められ、平成9年度に岐阜県医学研究奨励賞を、平成11年に日本内分泌学会で研究奨励賞を受賞。現在、操レディスホスピタル院長。不妊治療だけでなく妊娠後の検診や出産までトータルで診る先生。休日には、緊急の事態にも即戻れるよう新幹線沿線の旅行をするのだとか。「東京や神戸などのホテルに1泊し、翌朝の朝食が何よりのリフレッシュです」。≫ 操レディスホスピタル 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.32 2016 Winter≫ 掲載記事一覧はこちら 【PR】体外受精をお考えなら。田村秀子産婦人科医院 専門家に相談してみる 【無料】100ページオールカラー 女性のための健康生活マガジン JINEKO
2016.11.1
コラム 不妊治療
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PCOS体質で、着床前診断で染色体異常も。良い卵子を得るには?
「もう良い卵子を採ることは難しいですか? また、短期間に何度も高刺激法で採卵することで、卵子の質が下がることはありますか?」
2016.11.1
コラム 不妊治療
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採卵4回、移植5回を実施。 卵巣刺激法を工夫して 採卵を優先すべき?
「少しでも若い卵子を確保するため、採卵から始めたほうがいい? また一般的に、39歳では残り3つの受精卵が正常である確率はどれくらいですか?」
2016.11.1
コラム 不妊治療
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正常値なのにホルモン補充、サプリメントも勧められ、薬を多用する医師を不信に
「「できるだけ早く授かりたい」と担当医にお願いはしましたが、腟剤もサプリメントも保険適用外なので、薬を多用する医師に少し不信感を抱いています。」
2016.11.1
コラム 不妊治療
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子宮内膜症を手術で治療、 それでも妊娠しません。 今後はどうすべき?
「クロミッドⓇなどを使用すると複数排卵し、内膜が薄くなる傾向にあるようです。不妊の原因と思われる子宮内膜症の治療をしたのに、妊娠しないのはなぜ?」
2016.11.1
コラム 不妊治療
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2016年10月2日横浜・10月23日静岡 妊活セミナーご報告レポート
10月2日In横浜 回を重ねるごとに大好評のジネコ主催「妊活セミナー」。10 月2 日に横浜で開催されました。先生のお話に、参加者の皆さんは熱心に聞き入っていました! <第1部>妊娠力アップのための妊活食講師:講師:管理栄養士 岡田明子先生 自身も働きながら36歳で妊娠をした岡田先生。管理栄養士の観点から「食」を通じて妊娠する体をつくる妊活メソッドについて、事例を交えながらお話しいただきました。 <第2部>不妊治療の真実講師:田中雄大先生 メディカルパーク湘南 お産だけ、不妊治療だけと特定分野を専門にしているクリニックが多いなか、出産までの過程を責任もってあたりたいとの考えから産科も併設しているメディカルパーク湘南の田中先生。事前にもらった質問をもとに、不妊治療の現実と患者さんへの想いをお話しいただきました。 ■ 参加者の声 ■ ・とてもわかりやすい講演で、自分は食生活は大丈夫と思っていましたが、何が足りないのかわかりました。ホルモンバランスの乱れや冷えがあるので、タンパク質をもっと多く摂るべきだと感じました。 ・今までコンサルされた事例など、具体的でわかりやすく、自分にあてはまることもあったので参考にさせていただきたいと思いました。 ・仕事をしながらの妊活と食事の仕度は大変だなと思っていましたが、実践編でいろいろパターンを教えていただき、わかりやすかったです。 ・妊活について本音で話してくださって、感涙でした。 ・最近よく耳にする卵子のことがよくわかりました。治療していくうえでもやもやが多々あったけれど、先生のお話を聞いて納得し、前向きに治療に進もうと思いました。 ・セミナー参加者の声から内容を組み立てていただいたので、あてはまるところがあり非常に参考になりました。まずは現在の先生にしっかり話をするところから始めたいと思いました。 ・治療の辞め時の話はギクリとしましたが、それを踏まえて続けていく勇気のある事例を聞けて頑張る気持ちが出てきました。 10月23日In静岡 回を重ねるごとに大好評のジネコ主催「妊活セミナー」。10 月23日に静岡で開催されました。先生のお話に、参加者の皆さんは熱心に聞き入っていました! <第1部>体にやさしい妊活漢方講師:講師:小島晃先生 小島薬局漢方堂 体の冷えがあったり、血流や気の流れが悪かったりなど、崩れたバランスを正常にもどして妊娠しやすい体質にするのが漢方。そんな漢方医学の考え方、妊娠しやすい体質にする最新の方法についてお話しいただきました。 <第2部>妊娠へ近づくために講師:俵史子先生 俵 IVF クリニック 妊娠しにくい原因はご夫婦によって異なります。また医師によっても治療に対する考え方、方針が異なり、どのような選択がベストか不安になることも少なくありません。俵史子先生が妊娠へ近づくために必要なこと、後悔しない治療を選択するために知っておきたいことについてわかりやすくお話しいただきました。 ■ 参加者の声 ■ ・漢方薬局に行く人の3 パターンが具体的でわかりやすかった。病院に行かずに、漢方に頼るという選択肢もあるのか!!…と目からウロコでした。 ・冷え性には漢方が良いとは聞いていましたが、いろいろな効果・効能を知ることができてよかったです。 ・漢方にもいろいろな種類があることがわかりました。「~を助ける」「~を補う」という表現が多く、体の機能を高めるための薬であることがわかりました。 ・喫煙者の妊娠率の差はショックでしたが、このデータをもとに主人に喫煙をやめてと強く言えそうです! ・科学的なデータを見せていただき、より現実的な治療について学べたと思います。治療方法についてももっと夫婦で理解を深めたりお互いに納得し前向きに頑張りたいです。 ・不妊治療の種類やメリット、デメリットなど詳しいお話が聞けてよかったです。不妊治療について少し怖さがあったのですが、今回お話をうかがえて安心しました。 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.32 2016 Winter≫ 掲載記事一覧はこちら 他のセミナーレポートも読む 【無料】100ページオールカラー 女性のための健康生活マガジン JINEKO 10月2日In横浜 回を重ねるごとに大好評のジネコ主催「妊活セミナー」。10 月2 日に横浜で開催されました。先生のお話に、参加者の皆さんは熱心に聞き入っていました! <第1部>妊娠力アップのための妊活食講師:講師:管理栄養士 岡田明子先生 自身も働きながら36歳で妊娠をした岡田先生。管理栄養士の観点から「食」を通じて妊娠する体をつくる妊活メソッドについて、事例を交えながらお話しいただきました。 <第2部>不妊治療の真実講師:田中雄大先生 メディカルパーク湘南 お産だけ、不妊治療だけと特定分野を専門にしているクリニックが多いなか、出産までの過程を責任もってあたりたいとの考えから産科も併設しているメディカルパーク湘南の田中先生。事前にもらった質問をもとに、不妊治療の現実と患者さんへの想いをお話しいただきました。 ■ 参加者の声 ■ ・とてもわかりやすい講演で、自分は食生活は大丈夫と思っていましたが、何が足りないのかわかりました。ホルモンバランスの乱れや冷えがあるので、タンパク質をもっと多く摂るべきだと感じました。 ・今までコンサルされた事例など、具体的でわかりやすく、自分にあてはまることもあったので参考にさせていただきたいと思いました。 ・仕事をしながらの妊活と食事の仕度は大変だなと思っていましたが、実践編でいろいろパターンを教えていただき、わかりやすかったです。 ・妊活について本音で話してくださって、感涙でした。 ・最近よく耳にする卵子のことがよくわかりました。治療していくうえでもやもやが多々あったけれど、先生のお話を聞いて納得し、前向きに治療に進もうと思いました。 ・セミナー参加者の声から内容を組み立てていただいたので、あてはまるところがあり非常に参考になりました。まずは現在の先生にしっかり話をするところから始めたいと思いました。 ・治療の辞め時の話はギクリとしましたが、それを踏まえて続けていく勇気のある事例を聞けて頑張る気持ちが出てきました。 10月23日In静岡 回を重ねるごとに大好評のジネコ主催「妊活セミナー」。10 月23日に静岡で開催されました。先生のお話に、参加者の皆さんは熱心に聞き入っていました! <第1部>体にやさしい妊活漢方講師:講師:小島晃先生 小島薬局漢方堂 体の冷えがあったり、血流や気の流れが悪かったりなど、崩れたバランスを正常にもどして妊娠しやすい体質にするのが漢方。そんな漢方医学の考え方、妊娠しやすい体質にする最新の方法についてお話しいただきました。 <第2部>妊娠へ近づくために講師:俵史子先生 俵 IVF クリニック 妊娠しにくい原因はご夫婦によって異なります。また医師によっても治療に対する考え方、方針が異なり、どのような選択がベストか不安になることも少なくありません。俵史子先生が妊娠へ近づくために必要なこと、後悔しない治療を選択するために知っておきたいことについてわかりやすくお話しいただきました。 ■ 参加者の声 ■ ・漢方薬局に行く人の3 パターンが具体的でわかりやすかった。病院に行かずに、漢方に頼るという選択肢もあるのか!!…と目からウロコでした。 ・冷え性には漢方が良いとは聞いていましたが、いろいろな効果・効能を知ることができてよかったです。 ・漢方にもいろいろな種類があることがわかりました。「~を助ける」「~を補う」という表現が多く、体の機能を高めるための薬であることがわかりました。 ・喫煙者の妊娠率の差はショックでしたが、このデータをもとに主人に喫煙をやめてと強く言えそうです! ・科学的なデータを見せていただき、より現実的な治療について学べたと思います。治療方法についてももっと夫婦で理解を深めたりお互いに納得し前向きに頑張りたいです。 ・不妊治療の種類やメリット、デメリットなど詳しいお話が聞けてよかったです。不妊治療について少し怖さがあったのですが、今回お話をうかがえて安心しました。 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.32 2016 Winter≫ 掲載記事一覧はこちら 他のセミナーレポートも読む 【無料】100ページオールカラー 女性のための健康生活マガジン JINEKO
2016.11.1
コラム 不妊治療
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妊活と美容は表裏一体!生活習慣を見直して妊娠力アップ
2016年7月10日に行われたジネコ 妊活セミナーより 妊活と美容は表裏一体!生活習慣を見直して妊娠力アップ 不健康だと体が子づくりをやめてしまう!? 私は新人医師の頃を含めて、36年近く不妊治療に携わってきました。始めた当初、不妊カップルの割合は全体の10%程度といわれていましたが、今は20%と倍近くの割合に。なぜ増えたかというと一つは晩婚化で、女性が高齢になるほど卵子の老化が深刻となるからです。もう一つ、これは15年ほど前に気づいたのですが、不妊の大元の原因は不健康から来ているということ。男女ともに、年齢がまだ若くても生活習慣が悪くて健康を害している人が増えてます。実は、不妊も不健康も老化も肌の不調も根底の原因は同じもので、我々のエネルギー源のもっとも中心の代謝が関係しています。逆にいえば、その部分を改善して健康になれば、妊娠もアンチエイジングも美肌も叶えられるということです。生き物には2つの命令があります。1つは「生きながらえろ」という個体保存本能。もう1つは「子どもをつくれ」という生殖本能です。どちらも大切なことですが、これには優先順位があり、最初に選択されるのは生命を保持することです。まず生き残って、それから子どもをつくれということです。従って、体調が悪くなった時に体は何をするかというと、生きるのに関係しない生殖を切り捨て、なるべく省エネして生きることに全エネルギーを使おうとします。つまり、不妊がおきます。おそらく全体の85%くらいの人は健康で子どもが自然にできる。しかし、健康のレベルをある程度割ってしまうと不妊が始まり、その状態がさらに進むと病気が始まるのです。すべての不妊が不健康から来るとはいいませんが、不妊の7~8割の人には不健康というバックグラウンドがあるのではないでしょうか。そこを修復しない限り、不妊症の様々な治療薬も十分な効果を発揮できません。他の施設でクロミッドという排卵誘発薬を数年使って妊娠しなかった患者さんが当院に転院されてくることがありますが、しばしば3ヵ月以内に同じ薬を使って妊娠に至ります。なぜかというと、生活習慣を正して健康になるよう指導したため、前に効かなかった薬が効くようになったからです。不妊治療の主役は高度な技術ではなく、患者さん自身です。船に例えたら、医師は船頭で重要ですが、エンジンであるみなさんが不調では、船はよく動きません。 不妊をはじめ、糖代謝は健康に深く関わっている では、不健康な状態はなぜ起こるのでしょうか。科学的にもう少し詳しくお話しします。不健康になる原因には、大きく分けて「遺伝的素因」「加齢」「悪い生活習慣」の3つの要素が影響しています。これらがあると体の中で何が起こるかというと、インスリンという大切なホルモンが効かなくなってしまいます。それをインスリン抵抗性といいます。体のあらゆる細胞はインスリンの命令で糖を取り込んでミトコンドリアで燃やし、そのエネルギーを使って生命活動をしています。インスリンが効かなくなると様々な臓器がうまく働かなくなり、健康に支障をきたします。糖尿病、高血圧、脂肪肝、高脂血症など、いわゆる成人病と呼ばれる病気やがんなどのほか、脳で効かなくなると脳神経の機能が低下してうつになったり、キレやすくなったり……。不妊に関連したものでは、卵巣の細胞でインスリンが効かないと正常に卵を発育できなかったり、子宮内膜で起これば着床の準備がうまくいかなくなります。最もよくある不妊原因のひとつであるPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)は、インスリン抵抗性との因果関係がよく証明されています。インスリンと健康の関係について、糖尿病を例にして説明します。今、40代の3人に1人が糖尿病、もしくはその予備群といわれています。この病気はインスリンが効かないことから始まりますが、効かないと筋肉でエネルギーを出せず、体温保持に問題をきたすため、膵臓が無理をしてインスリンをたくさん分泌するようになります。出せるうちはいいのですが、そのうち膵臓もくたびれて分泌できなくなります。そうすると、まず食後の血糖値が上がり、その後、空腹時も上がるようになります。高血糖が起こると、体の中に「AGE」という物質が形成されます。これはたんぱく質と糖が結合してできる終末糖化産物というもので、非常に危険な物質です。体内のさまざまな所に沈着し、活性酸素を増やし、これがさらにAGEを生み出し悪循環の末、組織障害が進みます。AGEは老化の原因物質で、AGEが貯まって細胞の機能が悪くなることが老化現象です。やっかいなことに、このAGEは一度できるとなかなか体から消えていきません。AGEの形成→活性酸素の増加→インスリンの感受性と産生の低下→血糖上昇→AGEの形成と、悪循環に陥ります。多くのAGEには茶色いという特徴があり、豚の皮膚にAGEを貯める実験を行うと、茶色くくすんできます。ヒトの肌にも同じことが起こると考えられ、シミやそばかす、くすみはAGEが原因の1つといわれています。このように不健康や老化、不妊、加えて肌の不調にも糖代謝が深く関わっており、これを調整することで、どの場合にも良いことが得られるのです。 AGE対策として期待される「ヒシ抽出エキス」 糖代謝を改善して、不妊を解消する方法ですが、インスリン抵抗性については25年ほど前にPCOSに対する特効薬としてメトフォルミンが有効と分かり、これを投与すると妊娠率も着床率も上昇しました。当院の体外受精でも、反復不成功者の20%に対して有効です。次に、食後血糖値を改善したら体外受精治療成績が良くなるのではないかと考え、数年前に出た糖尿病の新薬「シタグリプチン」を使用しました。これは食後の高血糖だけを下げる薬で、ある種の人には妊娠率の向上が見られました。また、AGEを貯めると重度の不妊症になるため、AGE形成そのものにも着目しました。強いAGEの形成抑制と分解作用を併せ持つヒシ抽出エキスを、ART反復不成功の高齢不妊の患者さんに説明と同意のもと投与しました。投与した32例(平均42.2歳/84%が40歳以上)のうち、24例(75%)で卵の形態が改善、5例(16%)が不変、3例(9%)が不良でした。臨床妊娠が7例(22%)、継続妊娠・出産が6例(19%)でした。国内の42歳のARTによる平均出生率は3.6%ですから、非常に高い効果が出たといえます。ただし、良くない結果の人もいましたので現在、ヒシ抽出エキスの有効性確認と有効な人の判別に関して、本研究を進めております。 夫婦で生活習慣を見直して妊娠力アップ! 科学技術や医学が格段に進歩したとはいえ、加齢を止めたり、DNAを変えることはまだできません。今、私たちがコントロールできるのは生活習慣だけ。運動・睡眠や体重、飲酒や喫煙、心の持ち方、食事など、以下のポイントを参考に、少しでも改善していくように心がけ、妊娠に近づく努力をしましょう。 生活習慣の重要ポイント 1. 歩く:毎日、連続45~60分、昼間に2. 体重の適正化:BMI=体重(kg)/身長(m)×身長(m) 19~25に3. 楽しく:ストレス対策、仕事量、人間関係4. 良く寝る:11時前就寝、7~8時間5. 飲酒の間隔をあける:3日以上6. 禁煙:0でないとだめ7. よい食事:新鮮, 偏らず,3回/日,ちゃんと作る ポイントを7つ上げましたが、なかでももっとも重要なのは3つめの「楽しく過ごす」ということ。健康でいるために精神面は極めて重要です。精神科の医師が行った有名な実験があります。あるグループには怖いフィルムを、もう一つのグループには楽しいフィルムを15分間見せました。見た後に採血してインスリン抵抗性を調べると、前者は悪くなり、楽しいフィルムを見たグループの人たちはインスリンの感受性が良くなっていました。たった15分間でも違いが出るのです。毎日楽しく幸せに過ごすことが健康に必須であることは容易に納得できます。不妊に悩むとますます不妊になります。人生を楽しく生きましょう。子供は、健康で幸せなカップルにできるのです。 ウィメンズクリニック神野 神野 正雄先生慶應義塾大学医学部卒業、慶應義塾大学病院、杏林大学医学部産婦人科助教授等を経て、平成16年、ウィメンズクリニック神野院長就任。平成23年、世界体外受精会議記念賞受賞(卵巣機能障害に対する新しい治療戦略 〜終末糖化産物 の重要性〜)難治性不妊症に対して独自の考え方と方法で、高い実績を挙げている。 ジネコ妊活セミナー 【人気コラム】ユーザーストーリー~あなたに伝えたいメッセージ~ 【人気コラム】田村秀子先生の心の玉手箱 【役立つ】不妊についてもっと知ろう!不妊とは? 【おすすめ】フリーマガジン「ジネコ」各号記事一覧 2016年7月10日に行われたジネコ 妊活セミナーより 妊活と美容は表裏一体!生活習慣を見直して妊娠力アップ 不健康だと体が子づくりをやめてしまう!? 私は新人医師の頃を含めて、36年近く不妊治療に携わってきました。始めた当初、不妊カップルの割合は全体の10%程度といわれていましたが、今は20%と倍近くの割合に。なぜ増えたかというと一つは晩婚化で、女性が高齢になるほど卵子の老化が深刻となるからです。もう一つ、これは15年ほど前に気づいたのですが、不妊の大元の原因は不健康から来ているということ。男女ともに、年齢がまだ若くても生活習慣が悪くて健康を害している人が増えてます。実は、不妊も不健康も老化も肌の不調も根底の原因は同じもので、我々のエネルギー源のもっとも中心の代謝が関係しています。逆にいえば、その部分を改善して健康になれば、妊娠もアンチエイジングも美肌も叶えられるということです。生き物には2つの命令があります。1つは「生きながらえろ」という個体保存本能。もう1つは「子どもをつくれ」という生殖本能です。どちらも大切なことですが、これには優先順位があり、最初に選択されるのは生命を保持することです。まず生き残って、それから子どもをつくれということです。従って、体調が悪くなった時に体は何をするかというと、生きるのに関係しない生殖を切り捨て、なるべく省エネして生きることに全エネルギーを使おうとします。つまり、不妊がおきます。おそらく全体の85%くらいの人は健康で子どもが自然にできる。しかし、健康のレベルをある程度割ってしまうと不妊が始まり、その状態がさらに進むと病気が始まるのです。すべての不妊が不健康から来るとはいいませんが、不妊の7~8割の人には不健康というバックグラウンドがあるのではないでしょうか。そこを修復しない限り、不妊症の様々な治療薬も十分な効果を発揮できません。他の施設でクロミッドという排卵誘発薬を数年使って妊娠しなかった患者さんが当院に転院されてくることがありますが、しばしば3ヵ月以内に同じ薬を使って妊娠に至ります。なぜかというと、生活習慣を正して健康になるよう指導したため、前に効かなかった薬が効くようになったからです。不妊治療の主役は高度な技術ではなく、患者さん自身です。船に例えたら、医師は船頭で重要ですが、エンジンであるみなさんが不調では、船はよく動きません。 不妊をはじめ、糖代謝は健康に深く関わっている では、不健康な状態はなぜ起こるのでしょうか。科学的にもう少し詳しくお話しします。不健康になる原因には、大きく分けて「遺伝的素因」「加齢」「悪い生活習慣」の3つの要素が影響しています。これらがあると体の中で何が起こるかというと、インスリンという大切なホルモンが効かなくなってしまいます。それをインスリン抵抗性といいます。体のあらゆる細胞はインスリンの命令で糖を取り込んでミトコンドリアで燃やし、そのエネルギーを使って生命活動をしています。インスリンが効かなくなると様々な臓器がうまく働かなくなり、健康に支障をきたします。糖尿病、高血圧、脂肪肝、高脂血症など、いわゆる成人病と呼ばれる病気やがんなどのほか、脳で効かなくなると脳神経の機能が低下してうつになったり、キレやすくなったり……。不妊に関連したものでは、卵巣の細胞でインスリンが効かないと正常に卵を発育できなかったり、子宮内膜で起これば着床の準備がうまくいかなくなります。最もよくある不妊原因のひとつであるPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)は、インスリン抵抗性との因果関係がよく証明されています。インスリンと健康の関係について、糖尿病を例にして説明します。今、40代の3人に1人が糖尿病、もしくはその予備群といわれています。この病気はインスリンが効かないことから始まりますが、効かないと筋肉でエネルギーを出せず、体温保持に問題をきたすため、膵臓が無理をしてインスリンをたくさん分泌するようになります。出せるうちはいいのですが、そのうち膵臓もくたびれて分泌できなくなります。そうすると、まず食後の血糖値が上がり、その後、空腹時も上がるようになります。高血糖が起こると、体の中に「AGE」という物質が形成されます。これはたんぱく質と糖が結合してできる終末糖化産物というもので、非常に危険な物質です。体内のさまざまな所に沈着し、活性酸素を増やし、これがさらにAGEを生み出し悪循環の末、組織障害が進みます。AGEは老化の原因物質で、AGEが貯まって細胞の機能が悪くなることが老化現象です。やっかいなことに、このAGEは一度できるとなかなか体から消えていきません。AGEの形成→活性酸素の増加→インスリンの感受性と産生の低下→血糖上昇→AGEの形成と、悪循環に陥ります。多くのAGEには茶色いという特徴があり、豚の皮膚にAGEを貯める実験を行うと、茶色くくすんできます。ヒトの肌にも同じことが起こると考えられ、シミやそばかす、くすみはAGEが原因の1つといわれています。このように不健康や老化、不妊、加えて肌の不調にも糖代謝が深く関わっており、これを調整することで、どの場合にも良いことが得られるのです。 AGE対策として期待される「ヒシ抽出エキス」 糖代謝を改善して、不妊を解消する方法ですが、インスリン抵抗性については25年ほど前にPCOSに対する特効薬としてメトフォルミンが有効と分かり、これを投与すると妊娠率も着床率も上昇しました。当院の体外受精でも、反復不成功者の20%に対して有効です。次に、食後血糖値を改善したら体外受精治療成績が良くなるのではないかと考え、数年前に出た糖尿病の新薬「シタグリプチン」を使用しました。これは食後の高血糖だけを下げる薬で、ある種の人には妊娠率の向上が見られました。また、AGEを貯めると重度の不妊症になるため、AGE形成そのものにも着目しました。強いAGEの形成抑制と分解作用を併せ持つヒシ抽出エキスを、ART反復不成功の高齢不妊の患者さんに説明と同意のもと投与しました。投与した32例(平均42.2歳/84%が40歳以上)のうち、24例(75%)で卵の形態が改善、5例(16%)が不変、3例(9%)が不良でした。臨床妊娠が7例(22%)、継続妊娠・出産が6例(19%)でした。国内の42歳のARTによる平均出生率は3.6%ですから、非常に高い効果が出たといえます。ただし、良くない結果の人もいましたので現在、ヒシ抽出エキスの有効性確認と有効な人の判別に関して、本研究を進めております。 夫婦で生活習慣を見直して妊娠力アップ! 科学技術や医学が格段に進歩したとはいえ、加齢を止めたり、DNAを変えることはまだできません。今、私たちがコントロールできるのは生活習慣だけ。運動・睡眠や体重、飲酒や喫煙、心の持ち方、食事など、以下のポイントを参考に、少しでも改善していくように心がけ、妊娠に近づく努力をしましょう。 生活習慣の重要ポイント 1. 歩く:毎日、連続45~60分、昼間に2. 体重の適正化:BMI=体重(kg)/身長(m)×身長(m) 19~25に3. 楽しく:ストレス対策、仕事量、人間関係4. 良く寝る:11時前就寝、7~8時間5. 飲酒の間隔をあける:3日以上6. 禁煙:0でないとだめ7. よい食事:新鮮, 偏らず,3回/日,ちゃんと作る ポイントを7つ上げましたが、なかでももっとも重要なのは3つめの「楽しく過ごす」ということ。健康でいるために精神面は極めて重要です。精神科の医師が行った有名な実験があります。あるグループには怖いフィルムを、もう一つのグループには楽しいフィルムを15分間見せました。見た後に採血してインスリン抵抗性を調べると、前者は悪くなり、楽しいフィルムを見たグループの人たちはインスリンの感受性が良くなっていました。たった15分間でも違いが出るのです。毎日楽しく幸せに過ごすことが健康に必須であることは容易に納得できます。不妊に悩むとますます不妊になります。人生を楽しく生きましょう。子供は、健康で幸せなカップルにできるのです。 ウィメンズクリニック神野 神野 正雄先生慶應義塾大学医学部卒業、慶應義塾大学病院、杏林大学医学部産婦人科助教授等を経て、平成16年、ウィメンズクリニック神野院長就任。平成23年、世界体外受精会議記念賞受賞(卵巣機能障害に対する新しい治療戦略 〜終末糖化産物 の重要性〜)難治性不妊症に対して独自の考え方と方法で、高い実績を挙げている。 ジネコ妊活セミナー 【人気コラム】ユーザーストーリー~あなたに伝えたいメッセージ~ 【人気コラム】田村秀子先生の心の玉手箱 【役立つ】不妊についてもっと知ろう!不妊とは? 【おすすめ】フリーマガジン「ジネコ」各号記事一覧
2016.10.25
コラム 不妊治療
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遺産卵胞は不妊の原因になりますか。
遺産卵胞は不妊の原因になりますか。 相談者:ユノさん(31歳)二人目妊活中で、半年間卵胞チェック、排卵検査薬でタイミングを取っているのですが、排卵検査薬が陽性になりません(数時間おきに検査薬を試したり、何種類かの検査薬を使ったりしています)。不妊検査は一通り済み、3か月間だけhCG、デュファストンⓇを使用したのですが、遺残卵胞ができてしまい、使用を辞めました。このような状況で妊娠できるのか心配です。 ユノさんのデータ【身長/体重】161cm/47kg【治療年数】0年【AMH(抗ミュラー管ホルモン:卵巣予備能)の値】1.98【月経について】26~27日周期、PMSあり【検査歴・治療歴】半年【精子の検査データ】問題なし【妊娠歴】あり さくらウィメンズクリニック 仲田 正之先生大学卒業後、静岡済生会総合病院産婦人科、名古屋大学付属病院産婦人科、静岡済生会総合病院産婦人科部長、山王病院リプロダクションセンターを経て平成25年8月より さくらウィメンズクリニック院長に就任。オーダーメイドな優しい診療を心掛けて行きたいと考えております。 仲田先生:まだ31歳ですし、質問シートを見る限り26~27日と生理周期もしっかりしています。無月経ではありませんから、後にご妊娠される可能性は大いにあると思います。大いに希望を持ってくださって良いと思いますよ。第一子のご年齢がわからないのですが、まだときおりでも授乳されることなどがあるとしたら、それが影響しているとも考えられます。ご懸念されている遺残(いざん)卵胞とは、生理でリセットされるはずの卵子が卵巣に残ってしまっている状態。前の周期の古い卵子が、排卵を促すhCG薬などの影響を受けるといったことで残ってしまうと、次の周期の排卵の邪魔をしてしまうのです。ご質問者のユノさんのケースなら、自然周期に合わせて、点鼻薬などのもっと穏やかな効き目の薬剤を使われた方が良いようにお見受けします。刺激の強いhCG薬などの注射を止めて、できるだけ自然周期に近づけた上でのタイミング法を試みてはいかがでしょうか。「数時間おきに数種類の検査薬を使用して」といった文面から推察すると、ユノさんはきっと几帳面な方なのでしょう。ストレスも大敵ですから、あまり思い詰めないようにストレス発散も心がけてください。 遺産卵胞は不妊の原因になりますか。 相談者:ユノさん(31歳)二人目妊活中で、半年間卵胞チェック、排卵検査薬でタイミングを取っているのですが、排卵検査薬が陽性になりません(数時間おきに検査薬を試したり、何種類かの検査薬を使ったりしています)。不妊検査は一通り済み、3か月間だけhCG、デュファストンⓇを使用したのですが、遺残卵胞ができてしまい、使用を辞めました。このような状況で妊娠できるのか心配です。 ユノさんのデータ【身長/体重】161cm/47kg【治療年数】0年【AMH(抗ミュラー管ホルモン:卵巣予備能)の値】1.98【月経について】26~27日周期、PMSあり【検査歴・治療歴】半年【精子の検査データ】問題なし【妊娠歴】あり さくらウィメンズクリニック 仲田 正之先生大学卒業後、静岡済生会総合病院産婦人科、名古屋大学付属病院産婦人科、静岡済生会総合病院産婦人科部長、山王病院リプロダクションセンターを経て平成25年8月より さくらウィメンズクリニック院長に就任。オーダーメイドな優しい診療を心掛けて行きたいと考えております。 仲田先生:まだ31歳ですし、質問シートを見る限り26~27日と生理周期もしっかりしています。無月経ではありませんから、後にご妊娠される可能性は大いにあると思います。大いに希望を持ってくださって良いと思いますよ。第一子のご年齢がわからないのですが、まだときおりでも授乳されることなどがあるとしたら、それが影響しているとも考えられます。ご懸念されている遺残(いざん)卵胞とは、生理でリセットされるはずの卵子が卵巣に残ってしまっている状態。前の周期の古い卵子が、排卵を促すhCG薬などの影響を受けるといったことで残ってしまうと、次の周期の排卵の邪魔をしてしまうのです。ご質問者のユノさんのケースなら、自然周期に合わせて、点鼻薬などのもっと穏やかな効き目の薬剤を使われた方が良いようにお見受けします。刺激の強いhCG薬などの注射を止めて、できるだけ自然周期に近づけた上でのタイミング法を試みてはいかがでしょうか。「数時間おきに数種類の検査薬を使用して」といった文面から推察すると、ユノさんはきっと几帳面な方なのでしょう。ストレスも大敵ですから、あまり思い詰めないようにストレス発散も心がけてください。 【人気コラム】ユーザーストーリー~あなたに伝えたいメッセージ~ 【人気コラム】田村秀子先生の心の玉手箱 【役立つ】不妊についてもっと知ろう!不妊とは? 【おすすめ】フリーマガジン「ジネコ」各号記事一覧
2016.10.6
コラム 不妊治療
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ストレスをためずに回避するためのコツとは? ~ジネコ妊活セミナー~
2016年5月29日に行われたジネコ 妊活セミナーより ストレスをためずに回避するためのコツとは? 2016年5月29日(日)、京都市内で「妊活セミナー in 京都」を開催しました。第1部では、ファイナンシャルプランナーの大曽真奈美先生に「妊活中に知っておきたいお金のこと」について、第2部では、田村秀子婦人科医院の田村秀子先生に「ストレスに負けない不妊治療」についてお話いただきました。今回は、第2部の一部をお届けします。 妊娠のメカニズムは神秘に包まれている! (はじめに)まず冒頭で、妊娠のメカニズムをドラマチックに描いた映像を上映された田村先生。たった一つの卵子を目指して数億の精子が旅をする、神秘に満ちた妊娠までの道のりをわかりやすく解説されました。すごいと思いません?みなさん!卵に向かう精子の旅で、卵の中に入っていけるのはたった一つの一番乗りの精子だけ。この映像で妊娠というものがいかにミラクルなことかわかっていただけたのではないでしょうか。不妊治療において、妊娠に対する感情は男性と女性では温度差を感じてしまうことが多いと思います。最初に女性の方に言っておきますけれど、女性は本能で子どもを持とうと思いますが、男性の父性は理性です。ですから、「なぜわかってくれないの?」ではなく、男性は女性の喜怒哀楽に付き合ってくれていると思っておいたほうがいいでしょう。女性の排卵後のイライラにもじっと耐え、そーっと嵐が過ぎ去るのを待ってくれています(笑)。そして、生理が終わったら人が変わったみたいに落ち込んでいるわけ。そういうときは後ろからそっと優しくハグしてあげてみてください。それも男性の大切な仕事だと私は思います。そして女性は自分の体ばかり眺めて毎日過ごさないこと。治療中だからといって、そのことばかりに縛られないことが大切です。毎月、きちんと生理がある人であれば、生理が来るのは当たり前。つまり生理が来ない確率のほうが低いわけです。生理が来る、来ないで一喜一憂すると必ずストレスにつながりますので、そう考えることで、少なからず心を平和に保つことができると思います。 ストレスはなぜ不妊の敵なのか 一般に「ストレスは体によくない」と言われていますけれど、では、どうしてストレスがかかると不妊にも影響が現れるのでしょうか?実はストレスが伝わるメカニズムと排卵が起こるメカニズムは、どのホルモンが分泌されるかという違いだけで、経路はすべて同じです。脳内から。つまり脳に強いストレスがかかって脳内のホルモンの乱れが起これば、同時に卵巣や子宮へのホルモンの乱れも起こっているわけですね。ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニン、これらはいわゆるストレスを司るキーとなる神経伝達物質ですが、中でも精神を安定させ、幸福感を生み出すセロトニンが不足すると体はバランスを崩し、健康が保てなくなります。よく言うのですが、不妊治療は受験勉強のようにはいきません。勉強は自分で到達度を決めて、それをやったらやっただけ「達成された!」という満足感が得られますが、不妊治療は“自分の努力の外”で結果が現れることがしばしばです。どんなに努力しようとも、妊娠という望んだ結果が得られるか得られないかわからない、そこに大きなストレスが生まれるのです。だからこそ、セロトニンを増やすことによって、自分の心の安定を図ることがとても重要です。 一番大切なのは平常心 では、セロトニンを増やすにはどうすればいいか?これはもうみなさんもよくご存知のことばかりかもしれませんね(笑)。早寝早起きなどの規則正しい生活、ウォーキングなどのリズム運動、太陽光を浴びる、バランスの取れた食事、呼吸を整えるなど……できるとことから少しでも取り入れていただけるといいでしょう。レーザー治療や鍼灸で思うように結果が出ないとき、最近、注目されている抗酸化物質、サプリメントなどを組み合わせることで効果が生まれる場合があります。でも妊活中のみなさんに私が心からお伝えしたいのは、一番大事なのは日々の生活で平常心を保つということ。みなさんは、目の前の「妊娠」に気を取られ、本来の自分の目標であるはずの「楽しい人生を送る」ということを忘れてはいないでしょうか。「子どもがいないと私の人生は完遂できない」そんな風に思っていませんか? 人生を形づくるジグゾーパズルの最後の一コマが妊娠ではないはず。たとえ妊娠できなくてもパズルは完成できるのです。先程お話したように、過剰な期待、過剰な不安はホルモンの乱れに通じ、幸福を感じるセロトニンの分泌を減らし、卵の質に影響を及ぼします。最近、夫婦で会話をしていますか?60歳になったときの夫婦の日常を想像してみたことはありますか?そのときを楽しく想像することができるよう、お互いを理解し合うことも大切です。子どもは巣立っていけば夫婦ふたりの生活なのですから。これは決して子どもを諦めるための考え方ではありません。あくまでもセロトニンを増やし、ストレスを軽減することで、卵の質を少しでもアップするための環境づくりと心得て実践してみてください。 「人間は弱いもの」という田村先生。ストレスをためない、回避するためのコツをすぐに実践できる身近なところから提案していただきました。人生の目標を見失わないためにも、目の前の妊娠だけにとらわれないこと、平常心が大切というお話に多くの参加者が勇気をもらうことができました。 田村秀子婦人科医院 田村秀子先生京都府立医科大学卒業。同大学院修了後、京都第一赤十字病院に勤務。1991年、自ら不妊治療をして双子を出産したのを機に、義父の経営する田村産婦人科 医院に勤め、1995年に不妊部門の現クリニックを開設。高度生殖医療を必要とする方には最高級の治療を行うことに尽力をしている一方、そのような治療が必要でない方には出来るだけストレスがなく、「治療をしている」という意識を持って頂かないような診療を目指しています。≫ 田村秀子婦人科医院 ジネコ妊活セミナー 2016年5月29日に行われたジネコ 妊活セミナーより ストレスをためずに回避するためのコツとは? 2016年5月29日(日)、京都市内で「妊活セミナー in 京都」を開催しました。第1部では、ファイナンシャルプランナーの大曽真奈美先生に「妊活中に知っておきたいお金のこと」について、第2部では、田村秀子婦人科医院の田村秀子先生に「ストレスに負けない不妊治療」についてお話いただきました。今回は、第2部の一部をお届けします。 妊娠のメカニズムは神秘に包まれている! (はじめに)まず冒頭で、妊娠のメカニズムをドラマチックに描いた映像を上映された田村先生。たった一つの卵子を目指して数億の精子が旅をする、神秘に満ちた妊娠までの道のりをわかりやすく解説されました。すごいと思いません?みなさん!卵に向かう精子の旅で、卵の中に入っていけるのはたった一つの一番乗りの精子だけ。この映像で妊娠というものがいかにミラクルなことかわかっていただけたのではないでしょうか。不妊治療において、妊娠に対する感情は男性と女性では温度差を感じてしまうことが多いと思います。最初に女性の方に言っておきますけれど、女性は本能で子どもを持とうと思いますが、男性の父性は理性です。ですから、「なぜわかってくれないの?」ではなく、男性は女性の喜怒哀楽に付き合ってくれていると思っておいたほうがいいでしょう。女性の排卵後のイライラにもじっと耐え、そーっと嵐が過ぎ去るのを待ってくれています(笑)。そして、生理が終わったら人が変わったみたいに落ち込んでいるわけ。そういうときは後ろからそっと優しくハグしてあげてみてください。それも男性の大切な仕事だと私は思います。そして女性は自分の体ばかり眺めて毎日過ごさないこと。治療中だからといって、そのことばかりに縛られないことが大切です。毎月、きちんと生理がある人であれば、生理が来るのは当たり前。つまり生理が来ない確率のほうが低いわけです。生理が来る、来ないで一喜一憂すると必ずストレスにつながりますので、そう考えることで、少なからず心を平和に保つことができると思います。 ストレスはなぜ不妊の敵なのか 一般に「ストレスは体によくない」と言われていますけれど、では、どうしてストレスがかかると不妊にも影響が現れるのでしょうか?実はストレスが伝わるメカニズムと排卵が起こるメカニズムは、どのホルモンが分泌されるかという違いだけで、経路はすべて同じです。脳内から。つまり脳に強いストレスがかかって脳内のホルモンの乱れが起これば、同時に卵巣や子宮へのホルモンの乱れも起こっているわけですね。ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニン、これらはいわゆるストレスを司るキーとなる神経伝達物質ですが、中でも精神を安定させ、幸福感を生み出すセロトニンが不足すると体はバランスを崩し、健康が保てなくなります。よく言うのですが、不妊治療は受験勉強のようにはいきません。勉強は自分で到達度を決めて、それをやったらやっただけ「達成された!」という満足感が得られますが、不妊治療は“自分の努力の外”で結果が現れることがしばしばです。どんなに努力しようとも、妊娠という望んだ結果が得られるか得られないかわからない、そこに大きなストレスが生まれるのです。だからこそ、セロトニンを増やすことによって、自分の心の安定を図ることがとても重要です。 一番大切なのは平常心 では、セロトニンを増やすにはどうすればいいか?これはもうみなさんもよくご存知のことばかりかもしれませんね(笑)。早寝早起きなどの規則正しい生活、ウォーキングなどのリズム運動、太陽光を浴びる、バランスの取れた食事、呼吸を整えるなど……できるとことから少しでも取り入れていただけるといいでしょう。レーザー治療や鍼灸で思うように結果が出ないとき、最近、注目されている抗酸化物質、サプリメントなどを組み合わせることで効果が生まれる場合があります。でも妊活中のみなさんに私が心からお伝えしたいのは、一番大事なのは日々の生活で平常心を保つということ。みなさんは、目の前の「妊娠」に気を取られ、本来の自分の目標であるはずの「楽しい人生を送る」ということを忘れてはいないでしょうか。「子どもがいないと私の人生は完遂できない」そんな風に思っていませんか? 人生を形づくるジグゾーパズルの最後の一コマが妊娠ではないはず。たとえ妊娠できなくてもパズルは完成できるのです。先程お話したように、過剰な期待、過剰な不安はホルモンの乱れに通じ、幸福を感じるセロトニンの分泌を減らし、卵の質に影響を及ぼします。最近、夫婦で会話をしていますか?60歳になったときの夫婦の日常を想像してみたことはありますか?そのときを楽しく想像することができるよう、お互いを理解し合うことも大切です。子どもは巣立っていけば夫婦ふたりの生活なのですから。これは決して子どもを諦めるための考え方ではありません。あくまでもセロトニンを増やし、ストレスを軽減することで、卵の質を少しでもアップするための環境づくりと心得て実践してみてください。 「人間は弱いもの」という田村先生。ストレスをためない、回避するためのコツをすぐに実践できる身近なところから提案していただきました。人生の目標を見失わないためにも、目の前の妊娠だけにとらわれないこと、平常心が大切というお話に多くの参加者が勇気をもらうことができました。 田村秀子婦人科医院 田村秀子先生京都府立医科大学卒業。同大学院修了後、京都第一赤十字病院に勤務。1991年、自ら不妊治療をして双子を出産したのを機に、義父の経営する田村産婦人科 医院に勤め、1995年に不妊部門の現クリニックを開設。高度生殖医療を必要とする方には最高級の治療を行うことに尽力をしている一方、そのような治療が必要でない方には出来るだけストレスがなく、「治療をしている」という意識を持って頂かないような診療を目指しています。≫ 田村秀子婦人科医院 ジネコ妊活セミナー 【人気コラム】ユーザーストーリー~あなたに伝えたいメッセージ~ 【人気コラム】田村秀子先生の心の玉手箱 【役立つ】不妊についてもっと知ろう!不妊とは? 【おすすめ】フリーマガジン「ジネコ」各号記事一覧
2016.9.12
コラム 不妊治療
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採卵前3周期が卵の質を左右する!?~山下先生にインタビュー~
サンマットで5日目の胚盤胞到達率を改善。 温熱療法により胚のクオリティが改善! サン・ビーマーを用いた温熱療法により卵子の質がなぜ改善されたのか、卵子を育てる血流のことを、山下先生にお伺いしました。 山下 正紀 先生【山下レディースクリニック院長】1997年に山下レディースクリニックを開院。一般不妊治療から体外受精、顕微授精、そして凍結融解胚移植まで、あらゆる段階の不妊治療を手がける。信頼される不妊治療専門施設として着実に実績をあげ、治療成果は2009年には4千組を超え、ここ数年は、年間400組をこえるペースで成果を出している。 実際の我々の手応えとしては「あったぞ!」と 「この臨床研究を行ったきっかけを教えてください。」 山下先生:1997年に開業してからほどなく、関先生(群馬県セキールレディースクリニック)にご紹介をいただきましてサン・ビーマーを導入しました。当初は来院された際に、1か月に、1回か、2回、10分程度の治療でしかしていなかったので、本当に効果があるのかを自分の手応えとして検証できればいいなとは思っていました。ところが、まとまった治療となるとサン・ビーマーを購入している方は可能だとしても、毎日1回以上3周期(3か月)にわたって使用するというのは現実的にはなかなかできない。ですから残念なことに、この発表では5例と症例は少ないのです。その代り症例をセレクトして、長く治療してもなかなか妊娠しないという方を選んでやってみたらどうかということになりました。ですから結果としては、たったの5例ですけども、実際の我々の手応えとしては「あったぞ!」という思いに至りましたので学会で発表し、現在は患者さんにも「やった方がいいですよ」と薦めています。 「対象になった患者さまの属性について年齢、治療歴、今までの治療内容はどうでしょうか?」 山下先生:妊娠できるかどうかは良い受精卵ができるかどうかでほぼ決まると思います。良い受精卵ができなければいくら上手に戻しても妊娠できないということがあります。採卵を複数回繰り返してもなかなかいい卵ができない、そういう方に試してみたらどうかということになりました。 対象となった患者さまの年齢は39歳以下で、長期にわたり妊娠がうまくいかず、全員が体外受精を行っていて採卵回数が2回から4回、良好胚を得られずに残念ながら1回も妊娠したことがない、という方に絞ってみました。不妊期間は短い方でも3年、長い方だと10年です。 5例中3例は妊娠、さらに2例は妊娠が継続! 「サンビーマーの使用期間、回数、使用時間について解説をお願いします。」 山下先生:採卵を行う3周期前から自宅で1日、1回30分以上サン・ビーマーの使用をお願いしました。月経が始まってからスタートして全員の方に毎月1回来院していただいて状況を聞いたり、内膜や排卵の状況を診たりしました。また、その時に効果が出ている(良い卵になっている)としたら、たぶん血流が良くなっているということではないかと考えたので、それをどうやって証明するかを検討しました。なかなかいい方法が思いつかなかったのですが、血流が良くなると血管抵抗が下がっていくだろうと仮定し、この血管抵抗値を一つのデータにするということで測定しました。 「培養5日目の胚盤胞到達率の結果についてですが」 山下先生:問題はここですね。今の主流は5日目まで待って、胚盤胞凍結をしてコンディションのいい時に戻すのがベストな方法、妊娠率が高いやり方です。ほとんどの施設はそうだと思います。ですから、5日目の胚盤胞の到達率が本当の意味で、胚のクオリティが改善されたかどうかを表す指標になると思うのです。そして、これは温熱療法によって改善されたと言えます。 統計的な有意差もそうですし、写真を見ても全例胚盤胞になっているし、これまで胚盤胞まで到達できなかった症例2.3.5も到達していますね。例えば、この方だとどうなったかというと、これは5日目の写真ですが前周期の写真は胚盤胞に到達していない状態ですが、こちらの写真ではこのようにきちんと胚盤胞になっています。 このように5日目の胚盤胞への到達率だと有意差があるといえるし、手応えにしても実際に自分で卵を見ていますから。2回、3回、4回と採卵を繰り返して来て良い卵が採卵できなかった時点で、妊娠はもう難しいと言っていた方の卵がこういう状態までなった。この卵なら妊娠のチャンスが十分にあるといえます。このときの手応えとしては「あるぞ!」と思いましたね。結果、終わってみれば難しい症例ばっかりだったわけですから、本当に手応えを感じた5例でした。 「その後、移植した結果がこちらですね」 山下先生:そうですね、これまで一度も妊娠の経験のなかった5例中3例は妊娠し、さらに2例は妊娠が継続して産科にご紹介しました。1例は化学妊娠しましたが残念な結果に終わりました。この結果は、続けるということ、それも数か月続けるということに本当の意味があると思います。 例えば、今回体外受精やりましょうということで、月経の3日目から注射を始めて温熱療法もスタートしましょうと、そういうものではありませんね。それではたぶん効果はないと思います。それぐらいから毎日やったとしても、卵の質の改善に効果は大して期待できないと思いますね。それはどうしてかと言いますと、もし、血流が改善して良い卵子ができるとしたら、月経がはじまった時点では、卵の質というのはかなりというかほとんど決まっているわけです。そのもっと前の泡状卵胞、前泡状卵胞とかそのもっともっと前の原始卵胞から来て、泡状卵胞になる、その採卵の周期になる前のところが大事だと思いますね。だから数ヶ月間が必要だと思います。それこそサン・ビーマーだけでなく、サプリメントや最近ではレーザー治療なども同じですが、色々なことに関して効果があるとしても、それは急に治療周期に始めてすぐ効果が期待できるかというと最低でも3か月続けないとそれらの本当の効果は出ないと思います。ある一定期間に注射を打って、卵がリクルートされて育ってくる間にはもうかなりのことが決まっているんじゃないかと思いますね。だからこそもっと前の何ヶ月間が大事なのです。 妊娠のために自分でできること 「この考察の中で採卵された卵は2次卵胞からグラーフ卵胞への発育過程でサン・ビーマーを使用したと考えられる、この間が大事だとおっしゃっていますね。」 山下先生:その通りです。2次卵胞からグラーフ卵胞への発育過程ではコントロールする術がないのです。原始卵胞から1次卵胞、2次卵胞、前泡状卵胞、泡状卵胞があって、泡状卵胞を月経の3日目くらいにエコーで見てみると3mmとか5mmとかの大きさで見えます。その見えた卵でないとゴナドトロピン製剤(hMG製剤やFSH製剤)は効かないのです。要するに原始卵胞という顕微鏡でないと見えないところから、3mm、5mmのエコーで見える胞状卵胞までの間。ここの間をどうやってコントロールするかということですが、残念ながらそのためのお薬もなければ、方法論も確立してないのです。もし、うまくここまでたくさんコントロールして卵を持ってくることができれば泡状卵胞からは薬が効くわけですから、もっと効率よく卵が採れるはずです。ところが原始卵胞からここまで来る間がうまくいかないということがあるとすれば、その間を埋める話が血流ということでしょう。 「採卵周期以前に血流を上げておくことは卵の質を良くする意味において重要であると?」 山下先生:そうですね。サン・ビーマーは血流を上げる一つの手段ではあると思いますがそれだけじゃなくて、日頃の運動とかストレッチ、サプリメント、バランスのとれた食事なんかも重要かもしれません。今回のケースでは温めるということも大事だったかもしれませんが、それ以上に1日に1回30分以上リラックスしてサン・ビーマーの下にいた、ということがストレスを受けない時間を毎日続けて、3ヶ月間も持ったということも効果を生んだ要因のひとつかもしれません。それから、もうひとつ大事なことは今回参加してくださったみなさんはとても一所懸命なのですが、毎日、決まった通りにやって記録をつけて、それをクリニックに持ってきてという大変なことを3か月も続けられた。それは気持ちが良いから3ケ月間も温熱療法が続けられたという一面もあると思いますね。この方たちには大きなモチベーションがあります。一生懸命やっていい卵を作ってその次の大きな目標へ行こうという熱心な方です。ということは、これだけではなくてきっと記録にはつけていないけれど自分でできる自助努力をなにか続けられていたのだと思います。自発的に規則的な生活をする、運動をする、不摂生をしないとか、バランスの良い食事をするとか検証はしていませんがきっとしていると思います。すべてが繋がっていると思いますね。 「ということは、妊娠のために自分でできることはかなりあるということなのでしょうか?」 山下先生:ええ、そう思いますね。もし、毎日サン・ビーマーができないとしても、日常の自分の努力というものは決して無駄にならないと思います。実際に治療でできることすべてが卵子の改善には寄与していないということもあるわけですから、やはり先ほどお話しした治療以前のところも大事だと思いますね。ストレスなんかも数値化して証明できるわけはないですけどそういうことも関わっていると思います。しかし、なにより妊娠ができるかどうかの大きなポイントは卵の質です。それは、何に関係しているかというと年齢なんです。年齢を若くすることはもちろんできませんが、条件は同じだと思いますね。人それぞれの努力とか、逆に年齢が高い分、余計に自分でできることに頑張るとか、そういうことは必要かもしれませんね。 「自分では何もすることがないと思って絶望している人も多いかと思いますがとても勇気の出るお話ですね。それと、AMH,FSH,LH,の値に変化は見られなかったということですが。」 山下先生:そうですね。AMHは変わるはずがありあませんが、これは卵子の質とはあまり関係がありません。これらのホルモンの数値が変わることによって卵子の質が変わるといった類のものではありませんね。ホルモン値を検査すると多くの方は大体、適切なホルモン値の枠の中に入っているのです。だけども卵の質は良い人も悪い人もいるんです。ですからこれらの数値の変化によって卵子の質も胚の質も改善の指標にはならないし、AMHは前胞状卵胞の数ですからもちろん改善しません。 血流を良くすることは不妊治療にとっていい 「子宮への影響についてはいかがでしょうか?」 山下先生:子宮内膜の厚みについてはデータを一応取りましたが、改善を見ておりません。今回は、温熱療法によって良い卵がとれるようになることが目的ですが、子宮内膜の改善という点でも厚みだけでなく血流という意味において、ある程度期待ができるのではないかと思います。たとえば厚みが変わらないのに、年齢が上がるに従って月経の量が減ったと訴えられる方が結構多くいらっしゃいます。それは人と比べているのではなく、自分のもっと若い時に比べて、月経の量が少なくなったと言われているわけですね。つまり、年齢が上がっていくにしたがって多くの方は、経血量の少なさを自覚されるのですね。ところが、経血量が減ったと訴えられる方の内膜をエコーで見てみると、それほど実際は内膜の厚みは減っていないのですね。でも実際の経血量が減るということは何を意味しているかというと、内膜は形の上では変わってないので機能的な問題、つまり血流が減ってくるということですね。それは血管の形成の問題なのかもしれないし、血管構造によって血管抵抗が増えたりしているのかもしれない……。もし年齢が上がるに従って経血量が増えたということがあったとしたら、子宮筋腫や内膜症などの病的な状態であるといえるでしょう。 仮に卵子が良くなるという理由が、血流が改善されるということなら、同じように子宮の血流も増えるはずだと考えられますね。それをデータとして証明したわけではありませんが、一応そのことが推察できるとは思いますね。 「ということは、年齢が上がって月経の量が減ってきたと自覚される方でも、血流を良くすれば、また経血量が増えるということもあるかもしれないですね。」 山下先生:それは、ほぼ証明された話で、実際は多くの方が海外へ行ってドネーションを受けられて、卵子の提供を受けて、妊娠して帰ってこられますね。日本ではまだ難しい話ですが、海外では非常に盛んですね。コマーシャルベースでどんどんやっています。日本人も、アメリカは費用が高いので、最近はタイやインドなどへ行かれています。精子はほとんどの場合自分の配偶者のものですが、卵子は若い人のものを使い、それを受精させて良い胚盤胞を作って移植したら、施設によっては90%の妊娠率といっているところもあります。ということは何を意味するかというと、子宮も大事ですが、胚のほうがもっともっと大事ということですね。50歳くらいの人でも妊娠して帰ってこられていますね。ただ、別の問題がいろいろ起こっていますが… 「そうすると、血流を良くすることは不妊治療にとって良い、ということがいえるのでしょうか。」 山下先生:私は今まで、血流は関係ないという人を見たことはないし、多くの不妊治療医は血流が大切だと思っていると思います。でも、それをなかなかデータで示すことができない、ということがありましたので、今回の「遠赤外線照射器(サン・ビーマー)を用いた温熱療法がART不成功症例にもたらす効果」での検証は、それを明らかにする一つの試みだったと思います。 ■ ながいきや本舗おすすめコラム ■ サンマットのご紹介 サンマット体験者様インタビュー 着床しない、不妊の悩みなら大豆イソフラボンの効果に期待 サンマットで5日目の胚盤胞到達率を改善。 温熱療法により胚のクオリティが改善! サン・ビーマーを用いた温熱療法により卵子の質がなぜ改善されたのか、卵子を育てる血流のことを、山下先生にお伺いしました。 山下 正紀 先生【山下レディースクリニック院長】1997年に山下レディースクリニックを開院。一般不妊治療から体外受精、顕微授精、そして凍結融解胚移植まで、あらゆる段階の不妊治療を手がける。信頼される不妊治療専門施設として着実に実績をあげ、治療成果は2009年には4千組を超え、ここ数年は、年間400組をこえるペースで成果を出している。 実際の我々の手応えとしては「あったぞ!」と 「この臨床研究を行ったきっかけを教えてください。」 山下先生:1997年に開業してからほどなく、関先生(群馬県セキールレディースクリニック)にご紹介をいただきましてサン・ビーマーを導入しました。当初は来院された際に、1か月に、1回か、2回、10分程度の治療でしかしていなかったので、本当に効果があるのかを自分の手応えとして検証できればいいなとは思っていました。ところが、まとまった治療となるとサン・ビーマーを購入している方は可能だとしても、毎日1回以上3周期(3か月)にわたって使用するというのは現実的にはなかなかできない。ですから残念なことに、この発表では5例と症例は少ないのです。その代り症例をセレクトして、長く治療してもなかなか妊娠しないという方を選んでやってみたらどうかということになりました。ですから結果としては、たったの5例ですけども、実際の我々の手応えとしては「あったぞ!」という思いに至りましたので学会で発表し、現在は患者さんにも「やった方がいいですよ」と薦めています。 「対象になった患者さまの属性について年齢、治療歴、今までの治療内容はどうでしょうか?」 山下先生:妊娠できるかどうかは良い受精卵ができるかどうかでほぼ決まると思います。良い受精卵ができなければいくら上手に戻しても妊娠できないということがあります。採卵を複数回繰り返してもなかなかいい卵ができない、そういう方に試してみたらどうかということになりました。 対象となった患者さまの年齢は39歳以下で、長期にわたり妊娠がうまくいかず、全員が体外受精を行っていて採卵回数が2回から4回、良好胚を得られずに残念ながら1回も妊娠したことがない、という方に絞ってみました。不妊期間は短い方でも3年、長い方だと10年です。 5例中3例は妊娠、さらに2例は妊娠が継続! 「サンビーマーの使用期間、回数、使用時間について解説をお願いします。」 山下先生:採卵を行う3周期前から自宅で1日、1回30分以上サン・ビーマーの使用をお願いしました。月経が始まってからスタートして全員の方に毎月1回来院していただいて状況を聞いたり、内膜や排卵の状況を診たりしました。また、その時に効果が出ている(良い卵になっている)としたら、たぶん血流が良くなっているということではないかと考えたので、それをどうやって証明するかを検討しました。なかなかいい方法が思いつかなかったのですが、血流が良くなると血管抵抗が下がっていくだろうと仮定し、この血管抵抗値を一つのデータにするということで測定しました。 「培養5日目の胚盤胞到達率の結果についてですが」 山下先生:問題はここですね。今の主流は5日目まで待って、胚盤胞凍結をしてコンディションのいい時に戻すのがベストな方法、妊娠率が高いやり方です。ほとんどの施設はそうだと思います。ですから、5日目の胚盤胞の到達率が本当の意味で、胚のクオリティが改善されたかどうかを表す指標になると思うのです。そして、これは温熱療法によって改善されたと言えます。 統計的な有意差もそうですし、写真を見ても全例胚盤胞になっているし、これまで胚盤胞まで到達できなかった症例2.3.5も到達していますね。例えば、この方だとどうなったかというと、これは5日目の写真ですが前周期の写真は胚盤胞に到達していない状態ですが、こちらの写真ではこのようにきちんと胚盤胞になっています。 このように5日目の胚盤胞への到達率だと有意差があるといえるし、手応えにしても実際に自分で卵を見ていますから。2回、3回、4回と採卵を繰り返して来て良い卵が採卵できなかった時点で、妊娠はもう難しいと言っていた方の卵がこういう状態までなった。この卵なら妊娠のチャンスが十分にあるといえます。このときの手応えとしては「あるぞ!」と思いましたね。結果、終わってみれば難しい症例ばっかりだったわけですから、本当に手応えを感じた5例でした。 「その後、移植した結果がこちらですね」 山下先生:そうですね、これまで一度も妊娠の経験のなかった5例中3例は妊娠し、さらに2例は妊娠が継続して産科にご紹介しました。1例は化学妊娠しましたが残念な結果に終わりました。この結果は、続けるということ、それも数か月続けるということに本当の意味があると思います。 例えば、今回体外受精やりましょうということで、月経の3日目から注射を始めて温熱療法もスタートしましょうと、そういうものではありませんね。それではたぶん効果はないと思います。それぐらいから毎日やったとしても、卵の質の改善に効果は大して期待できないと思いますね。それはどうしてかと言いますと、もし、血流が改善して良い卵子ができるとしたら、月経がはじまった時点では、卵の質というのはかなりというかほとんど決まっているわけです。そのもっと前の泡状卵胞、前泡状卵胞とかそのもっともっと前の原始卵胞から来て、泡状卵胞になる、その採卵の周期になる前のところが大事だと思いますね。だから数ヶ月間が必要だと思います。それこそサン・ビーマーだけでなく、サプリメントや最近ではレーザー治療なども同じですが、色々なことに関して効果があるとしても、それは急に治療周期に始めてすぐ効果が期待できるかというと最低でも3か月続けないとそれらの本当の効果は出ないと思います。ある一定期間に注射を打って、卵がリクルートされて育ってくる間にはもうかなりのことが決まっているんじゃないかと思いますね。だからこそもっと前の何ヶ月間が大事なのです。 妊娠のために自分でできること 「この考察の中で採卵された卵は2次卵胞からグラーフ卵胞への発育過程でサン・ビーマーを使用したと考えられる、この間が大事だとおっしゃっていますね。」 山下先生:その通りです。2次卵胞からグラーフ卵胞への発育過程ではコントロールする術がないのです。原始卵胞から1次卵胞、2次卵胞、前泡状卵胞、泡状卵胞があって、泡状卵胞を月経の3日目くらいにエコーで見てみると3mmとか5mmとかの大きさで見えます。その見えた卵でないとゴナドトロピン製剤(hMG製剤やFSH製剤)は効かないのです。要するに原始卵胞という顕微鏡でないと見えないところから、3mm、5mmのエコーで見える胞状卵胞までの間。ここの間をどうやってコントロールするかということですが、残念ながらそのためのお薬もなければ、方法論も確立してないのです。もし、うまくここまでたくさんコントロールして卵を持ってくることができれば泡状卵胞からは薬が効くわけですから、もっと効率よく卵が採れるはずです。ところが原始卵胞からここまで来る間がうまくいかないということがあるとすれば、その間を埋める話が血流ということでしょう。 「採卵周期以前に血流を上げておくことは卵の質を良くする意味において重要であると?」 山下先生:そうですね。サン・ビーマーは血流を上げる一つの手段ではあると思いますがそれだけじゃなくて、日頃の運動とかストレッチ、サプリメント、バランスのとれた食事なんかも重要かもしれません。今回のケースでは温めるということも大事だったかもしれませんが、それ以上に1日に1回30分以上リラックスしてサン・ビーマーの下にいた、ということがストレスを受けない時間を毎日続けて、3ヶ月間も持ったということも効果を生んだ要因のひとつかもしれません。それから、もうひとつ大事なことは今回参加してくださったみなさんはとても一所懸命なのですが、毎日、決まった通りにやって記録をつけて、それをクリニックに持ってきてという大変なことを3か月も続けられた。それは気持ちが良いから3ケ月間も温熱療法が続けられたという一面もあると思いますね。この方たちには大きなモチベーションがあります。一生懸命やっていい卵を作ってその次の大きな目標へ行こうという熱心な方です。ということは、これだけではなくてきっと記録にはつけていないけれど自分でできる自助努力をなにか続けられていたのだと思います。自発的に規則的な生活をする、運動をする、不摂生をしないとか、バランスの良い食事をするとか検証はしていませんがきっとしていると思います。すべてが繋がっていると思いますね。 「ということは、妊娠のために自分でできることはかなりあるということなのでしょうか?」 山下先生:ええ、そう思いますね。もし、毎日サン・ビーマーができないとしても、日常の自分の努力というものは決して無駄にならないと思います。実際に治療でできることすべてが卵子の改善には寄与していないということもあるわけですから、やはり先ほどお話しした治療以前のところも大事だと思いますね。ストレスなんかも数値化して証明できるわけはないですけどそういうことも関わっていると思います。しかし、なにより妊娠ができるかどうかの大きなポイントは卵の質です。それは、何に関係しているかというと年齢なんです。年齢を若くすることはもちろんできませんが、条件は同じだと思いますね。人それぞれの努力とか、逆に年齢が高い分、余計に自分でできることに頑張るとか、そういうことは必要かもしれませんね。 「自分では何もすることがないと思って絶望している人も多いかと思いますがとても勇気の出るお話ですね。それと、AMH,FSH,LH,の値に変化は見られなかったということですが。」 山下先生:そうですね。AMHは変わるはずがありあませんが、これは卵子の質とはあまり関係がありません。これらのホルモンの数値が変わることによって卵子の質が変わるといった類のものではありませんね。ホルモン値を検査すると多くの方は大体、適切なホルモン値の枠の中に入っているのです。だけども卵の質は良い人も悪い人もいるんです。ですからこれらの数値の変化によって卵子の質も胚の質も改善の指標にはならないし、AMHは前胞状卵胞の数ですからもちろん改善しません。 血流を良くすることは不妊治療にとっていい 「子宮への影響についてはいかがでしょうか?」 山下先生:子宮内膜の厚みについてはデータを一応取りましたが、改善を見ておりません。今回は、温熱療法によって良い卵がとれるようになることが目的ですが、子宮内膜の改善という点でも厚みだけでなく血流という意味において、ある程度期待ができるのではないかと思います。たとえば厚みが変わらないのに、年齢が上がるに従って月経の量が減ったと訴えられる方が結構多くいらっしゃいます。それは人と比べているのではなく、自分のもっと若い時に比べて、月経の量が少なくなったと言われているわけですね。つまり、年齢が上がっていくにしたがって多くの方は、経血量の少なさを自覚されるのですね。ところが、経血量が減ったと訴えられる方の内膜をエコーで見てみると、それほど実際は内膜の厚みは減っていないのですね。でも実際の経血量が減るということは何を意味しているかというと、内膜は形の上では変わってないので機能的な問題、つまり血流が減ってくるということですね。それは血管の形成の問題なのかもしれないし、血管構造によって血管抵抗が増えたりしているのかもしれない……。もし年齢が上がるに従って経血量が増えたということがあったとしたら、子宮筋腫や内膜症などの病的な状態であるといえるでしょう。 仮に卵子が良くなるという理由が、血流が改善されるということなら、同じように子宮の血流も増えるはずだと考えられますね。それをデータとして証明したわけではありませんが、一応そのことが推察できるとは思いますね。 「ということは、年齢が上がって月経の量が減ってきたと自覚される方でも、血流を良くすれば、また経血量が増えるということもあるかもしれないですね。」 山下先生:それは、ほぼ証明された話で、実際は多くの方が海外へ行ってドネーションを受けられて、卵子の提供を受けて、妊娠して帰ってこられますね。日本ではまだ難しい話ですが、海外では非常に盛んですね。コマーシャルベースでどんどんやっています。日本人も、アメリカは費用が高いので、最近はタイやインドなどへ行かれています。精子はほとんどの場合自分の配偶者のものですが、卵子は若い人のものを使い、それを受精させて良い胚盤胞を作って移植したら、施設によっては90%の妊娠率といっているところもあります。ということは何を意味するかというと、子宮も大事ですが、胚のほうがもっともっと大事ということですね。50歳くらいの人でも妊娠して帰ってこられていますね。ただ、別の問題がいろいろ起こっていますが… 「そうすると、血流を良くすることは不妊治療にとって良い、ということがいえるのでしょうか。」 山下先生:私は今まで、血流は関係ないという人を見たことはないし、多くの不妊治療医は血流が大切だと思っていると思います。でも、それをなかなかデータで示すことができない、ということがありましたので、今回の「遠赤外線照射器(サン・ビーマー)を用いた温熱療法がART不成功症例にもたらす効果」での検証は、それを明らかにする一つの試みだったと思います。 ■ ながいきや本舗おすすめコラム ■ サンマットのご紹介 サンマット体験者様インタビュー 着床しない、不妊の悩みなら大豆イソフラボンの効果に期待
2016.9.12
コラム 不妊治療
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不妊治療の妊娠率 (不妊治療実態調査レポート)
不妊治療を行っている女性の3人に1人は妊娠、メディア報道により治療意欲の向上が見られる 日本産科婦人科学会では体外受精を行っている医療機関から報告されたデータをまとめ、治療件数や出生数を毎年発表しております。2013年は、体外受精の治療件数が36万8764件で、その結果4万2554人が生まれました。しかし、不妊治療は治療が長期になったり、転院して複数の医療機関にまたがるケースも少なくないため、治療者の人数を把握することが難しく、日本国内の患者数や患者数あたりの妊娠率は明らかになっておりません。そこでジネコでは不妊治療経験者からアンケートを行い、不妊治療の実態について調査いたしました。 【調査概要】・対象期間:2016年7月5日~22日(インターネット調査)・対 象 者:不妊治療経験者 813名(有効回答数796件)【まとめ】①不妊治療経験者のうち、27%が妊娠 、体外受精は32.5%②体外受精で妊娠した方の約6割が3回までの治療で妊娠③体外受精で妊娠した方の0.9割は、10回以上治療を行っている④不妊治療経験者の55%が100万円以上の治療費⑤不妊治療を開始した年齢は4年間で1歳若くなった【総評】今回の調査では、不妊治療経験者の27%が妊娠・出産されておりました。体外受精だけで見ると32.5%の方が妊娠・出産されておりました。また、体外受精で妊娠した方の約6割が3回までの治療で妊娠している一方、0.9割は10回以上治療を行っていました。半数以上は治療費が100万円以上かかっており、身体的、経済的な負担の大きさが改めて明らかになりました。不妊治療を開始した年齢は平均33.1歳。4年前の調査より1歳若くなっており、近年増加したマスメディアの報道などによって、不妊に対する意識が高まったと考えられます。 <レポートの内容>・回答者の年齢・現在の状況・高度生殖医療の経験・不妊の原因・治療内容・治療を始めた年齢・各治療を開始した年齢・各治療の妊娠率、治療の回数・不妊治療にかかった治療費・特定不妊治療費助成制度の利用有無 不妊治療実態調査2016年PDFご希望の方は、担当:長友 nagatomo@jineko.co.jp までお問合せください 【ジネコ 妊活セミナー】ジネコでは、お子さまを望まれるご夫婦に向けて妊活セミナーを毎月開催しています!昨年は約1000名のご夫婦が参加。後ろ向きな気持ちになりがちな妊活を前向きで元気にしてくれるセミナーです。ご夫婦で気軽にご参加ください。≫ 詳細はこちらから 不妊治療を行っている女性の3人に1人は妊娠、メディア報道により治療意欲の向上が見られる 日本産科婦人科学会では体外受精を行っている医療機関から報告されたデータをまとめ、治療件数や出生数を毎年発表しております。2013年は、体外受精の治療件数が36万8764件で、その結果4万2554人が生まれました。しかし、不妊治療は治療が長期になったり、転院して複数の医療機関にまたがるケースも少なくないため、治療者の人数を把握することが難しく、日本国内の患者数や患者数あたりの妊娠率は明らかになっておりません。そこでジネコでは不妊治療経験者からアンケートを行い、不妊治療の実態について調査いたしました。 【調査概要】・対象期間:2016年7月5日~22日(インターネット調査)・対 象 者:不妊治療経験者 813名(有効回答数796件)【まとめ】①不妊治療経験者のうち、27%が妊娠 、体外受精は32.5%②体外受精で妊娠した方の約6割が3回までの治療で妊娠③体外受精で妊娠した方の0.9割は、10回以上治療を行っている④不妊治療経験者の55%が100万円以上の治療費⑤不妊治療を開始した年齢は4年間で1歳若くなった【総評】今回の調査では、不妊治療経験者の27%が妊娠・出産されておりました。体外受精だけで見ると32.5%の方が妊娠・出産されておりました。また、体外受精で妊娠した方の約6割が3回までの治療で妊娠している一方、0.9割は10回以上治療を行っていました。半数以上は治療費が100万円以上かかっており、身体的、経済的な負担の大きさが改めて明らかになりました。不妊治療を開始した年齢は平均33.1歳。4年前の調査より1歳若くなっており、近年増加したマスメディアの報道などによって、不妊に対する意識が高まったと考えられます。 <レポートの内容>・回答者の年齢・現在の状況・高度生殖医療の経験・不妊の原因・治療内容・治療を始めた年齢・各治療を開始した年齢・各治療の妊娠率、治療の回数・不妊治療にかかった治療費・特定不妊治療費助成制度の利用有無 不妊治療実態調査2016年PDFご希望の方は、担当:長友 nagatomo@jineko.co.jp までお問合せください 【ジネコ 妊活セミナー】ジネコでは、お子さまを望まれるご夫婦に向けて妊活セミナーを毎月開催しています!昨年は約1000名のご夫婦が参加。後ろ向きな気持ちになりがちな妊活を前向きで元気にしてくれるセミナーです。ご夫婦で気軽にご参加ください。≫ 詳細はこちらから 【人気コラム】ユーザーストーリー~あなたに伝えたいメッセージ~ 【人気コラム】田村秀子先生の心の玉手箱 【役立つ】不妊についてもっと知ろう!不妊とは? 【おすすめ】フリーマガジン「ジネコ」各号記事一覧
2016.9.5
コラム 不妊治療
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数字が表す中医学の不妊治療の効果
数字が表す中医学の不妊治療の効果 前回、お話しした「周期調節法」は、受精卵をより確実に着床させるための治療法です。治療に必要な条件は各ホルモンが分泌される性腺軸の流れが正常に働いていることです。当然、受精や受精卵の分割が正常でなければなりません。そして、それらの良し悪しを決める鍵のひとつが血流です。血液はよく使う場所に多く流れる特徴があります。食事をした後には胃や腸などの消化器官に血液が集まるといったように……。問題となるのは、現代ではIT機器の発達からパソコン、スマートフォンなどを長時間使用している人が少なくないことです。常に使っているのは脳や目となり、血液は頭部に集中しがちです。その一方で、卵巣や子宮は日常的に使う場所ではないため、血流の優先順位が低くなるわけです。こうして現代人は必然的に卵巣(男性なら精巣)、子宮の血流が悪くなってしまいます。血流が悪くなった部位は萎縮していき機能も低下しやすくなっていきます。加えて女性は35歳以降、卵巣や子宮への血流が悪くなっていきます。つまり卵巣や子宮の老化とは血流が減ることなんです。解決法はよく使うことですが、卵巣や子宮は自分ではどうすることもできません。そこで鍼灸による「三焦調整法」で子宮や卵巣の血流をあげることをおすすめしたいのです。三焦とは、上焦(脳や視床下部)、中焦(肝・脾・胃腸)、下焦(卵巣・子宮・精巣)のことで、この治療で自律神経の調整、ホルモン分泌の調整、卵巣(精巣)・子宮の血流量を高めることができます。結果、性腺軸の流れがよくなり、卵巣に残っている大切な卵子を守ることができるのです。しかし西洋医学ではホルモンの分泌が悪い場合、ホルモン剤を投与し血液中のホルモンの濃度を補います。当然、即効的に血中濃度は変化します。中医学では自分の機能を改善してホルモンを分泌させるのですから、どうしても時間はかかります。もちろん、卵を元気にするのにも時間が必要です。卵の数が少ないとなれば、あせって採卵をする人は多いのですが、元気のない卵巣では採卵のリスクや卵子の質にも注意が必要です。特に40歳代になっても不妊が続けば、時間がないとあせるでしょう。しかし、そういう人ほど、残っている卵を傷つけないようにしながら、元気にするために6カ月くらいは時間をかけて欲しいのです。最後に誠心堂で周期調節法と三焦調整法などを併用した場合と西洋医学の不妊治療の違いを数字で見ていきましょう。2015年は、誠心堂にご相談された1600人のうち452名の方がご妊娠されました。相談された方の平均年齢は35.8歳、総平均妊娠率は28%でした。年代別では30歳~35歳未満の方で42%、35歳~40歳未満の方42%、40歳~45歳未満の方18%、45歳以上の方4%です。各年代別の漢方・鍼灸による自然妊娠の方の占める割合は、30歳~35歳未満の方で55%、35歳~40歳未満で38%、40歳~45歳未満で24%、45歳以上で16%です。さらに注目してほしいのは流産の確率です(右の数字が誠心堂で左は日本産婦人科学会の発表)。30〜34歳 6.8%→約20%35〜39歳 14.1%→約25%40〜44歳 23.7%→約45% 45〜50歳 50.0%→約65% ≫ 周期調節法で問われるのは基礎体温のリズムと卵子の質 株式会社誠心堂薬局代表取締役 西野 裕一先生株式会社誠心堂薬局代表取締役。 薬剤師・鍼灸師。北里大学薬学部卒。東京医療福祉専門学校鍼灸科卒。中国漢方普及協会会長。日本中医学会評議員。漢方・鍼灸をはじめとする中医学の有用性を啓発・普及させる活動に尽力。著書多数。≫ 誠心堂薬局 関連コラム ≫ 「補腎」で弱った卵巣を元気にする ≫ 妊活に欠かせない血流と自律神経をつかさどる「肝」とは ≫ 血液を体全体に分布させる「誠心堂式 三焦調整法」で子宮・卵巣の機能回復を ≫ さまざまなことから生じる不妊の原因 ≫ 西洋医学と中医学が結合した不妊治療法 ≫ 月経周期に合わせたそれぞれの漢方薬を服用する ≫ 周期調節法で問われるのは基礎体温のリズムと卵子の質 <外部サイト>店舗で相談してみる→ 誠心堂薬局 http://www.seishin-do.co.jp/rd/ 数字が表す中医学の不妊治療の効果 前回、お話しした「周期調節法」は、受精卵をより確実に着床させるための治療法です。治療に必要な条件は各ホルモンが分泌される性腺軸の流れが正常に働いていることです。当然、受精や受精卵の分割が正常でなければなりません。そして、それらの良し悪しを決める鍵のひとつが血流です。血液はよく使う場所に多く流れる特徴があります。食事をした後には胃や腸などの消化器官に血液が集まるといったように……。問題となるのは、現代ではIT機器の発達からパソコン、スマートフォンなどを長時間使用している人が少なくないことです。常に使っているのは脳や目となり、血液は頭部に集中しがちです。その一方で、卵巣や子宮は日常的に使う場所ではないため、血流の優先順位が低くなるわけです。こうして現代人は必然的に卵巣(男性なら精巣)、子宮の血流が悪くなってしまいます。血流が悪くなった部位は萎縮していき機能も低下しやすくなっていきます。加えて女性は35歳以降、卵巣や子宮への血流が悪くなっていきます。つまり卵巣や子宮の老化とは血流が減ることなんです。解決法はよく使うことですが、卵巣や子宮は自分ではどうすることもできません。そこで鍼灸による「三焦調整法」で子宮や卵巣の血流をあげることをおすすめしたいのです。三焦とは、上焦(脳や視床下部)、中焦(肝・脾・胃腸)、下焦(卵巣・子宮・精巣)のことで、この治療で自律神経の調整、ホルモン分泌の調整、卵巣(精巣)・子宮の血流量を高めることができます。結果、性腺軸の流れがよくなり、卵巣に残っている大切な卵子を守ることができるのです。しかし西洋医学ではホルモンの分泌が悪い場合、ホルモン剤を投与し血液中のホルモンの濃度を補います。当然、即効的に血中濃度は変化します。中医学では自分の機能を改善してホルモンを分泌させるのですから、どうしても時間はかかります。もちろん、卵を元気にするのにも時間が必要です。卵の数が少ないとなれば、あせって採卵をする人は多いのですが、元気のない卵巣では採卵のリスクや卵子の質にも注意が必要です。特に40歳代になっても不妊が続けば、時間がないとあせるでしょう。しかし、そういう人ほど、残っている卵を傷つけないようにしながら、元気にするために6カ月くらいは時間をかけて欲しいのです。最後に誠心堂で周期調節法と三焦調整法などを併用した場合と西洋医学の不妊治療の違いを数字で見ていきましょう。2015年は、誠心堂にご相談された1600人のうち452名の方がご妊娠されました。相談された方の平均年齢は35.8歳、総平均妊娠率は28%でした。年代別では30歳~35歳未満の方で42%、35歳~40歳未満の方42%、40歳~45歳未満の方18%、45歳以上の方4%です。各年代別の漢方・鍼灸による自然妊娠の方の占める割合は、30歳~35歳未満の方で55%、35歳~40歳未満で38%、40歳~45歳未満で24%、45歳以上で16%です。さらに注目してほしいのは流産の確率です(右の数字が誠心堂で左は日本産婦人科学会の発表)。30〜34歳 6.8%→約20%35〜39歳 14.1%→約25%40〜44歳 23.7%→約45% 45〜50歳 50.0%→約65% ≫ 周期調節法で問われるのは基礎体温のリズムと卵子の質 株式会社誠心堂薬局代表取締役 西野 裕一先生株式会社誠心堂薬局代表取締役。 薬剤師・鍼灸師。北里大学薬学部卒。東京医療福祉専門学校鍼灸科卒。中国漢方普及協会会長。日本中医学会評議員。漢方・鍼灸をはじめとする中医学の有用性を啓発・普及させる活動に尽力。著書多数。≫ 誠心堂薬局 関連コラム ≫ 「補腎」で弱った卵巣を元気にする ≫ 妊活に欠かせない血流と自律神経をつかさどる「肝」とは ≫ 血液を体全体に分布させる「誠心堂式 三焦調整法」で子宮・卵巣の機能回復を ≫ さまざまなことから生じる不妊の原因 ≫ 西洋医学と中医学が結合した不妊治療法 ≫ 月経周期に合わせたそれぞれの漢方薬を服用する ≫ 周期調節法で問われるのは基礎体温のリズムと卵子の質 <外部サイト>店舗で相談してみる→ 誠心堂薬局 http://www.seishin-do.co.jp/rd/
2016.8.31
コラム 不妊治療
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【ジネコ厳選】話題の人気妊活ブログ Part5
妊活中の女性に人気の妊活ブログ。その理由は、本音で語る彼女たちの姿にあります。そんな彼女たちの真の声に、多くの女性が共感しコミュニティも活発化。人気が高いブログを紹介します。
2016.8.31
コラム 不妊治療
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【ジネコ厳選】話題の人気妊活ブログ Part4
妊活中の女性に人気の妊活ブログ。その理由は、本音で語る彼女たちの姿にあります。そんな彼女たちの真の声に、多くの女性が共感しコミュニティも活発化。人気が高いブログを紹介します。
2016.8.30
コラム 不妊治療
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妊娠力を上げるカギになる?注目の栄養素ビタミンD
身近な“卵”で手軽に摂取!妊娠力を上げるカギになる?注目の栄養素ビタミンD いま注目の栄養成分「ビタミンD」。近年の研究で、妊娠力を高める働きがあることがわかってきました。草津レディースクリニックの森敏恵先生に詳しく話をお聞きしました。 栄養バランスのとれた食事で妊娠力を高めましょう 妊娠・出産を望まれる方にとって何より大切なのは、健康な体づくりです。なかでも食事は妊娠力を高めるための基本。ダイエットによる食事制限、外食やファストフード、インスタント食品の摂取など、不規則な食生活で栄養バランスが偏っていませんか?食事の量があり、カロリーは充分とれていても、必要な栄養素が不足していることがあります。必要な栄養素が不足すると、貧血や冷え性をまねいて妊娠力の低下、胎児の成長、出生児の成人後の成長にも影響を及ぼすといわれています。また、食事には気をつけているから大丈夫という方も、その方向性が間違っていることもありますので、時々見直しが必要です。妊娠力を高めるおもな栄養素には、皮膚・血管・筋肉など体の土台や、質の良い卵子をつくる「たんぱく質(肉・魚・卵)」、血液中のヘモグロビンをつくる「鉄(レバー・あさり)」、抗酸化作用があり、卵子の若返りや、血流・ホルモンの働きをうながす「ビタミンE(カボチャ・アボカド・ナッツ類)」、男性ホルモンを合成し、精子数や運動性を高める「亜鉛(カキ・ホタテ)」、赤ちゃんの健全な発育を助ける「葉酸(ほうれん草・レバー)」、子宮内膜をととのえる「ビタミンA(うなぎ・ほうれん草)」、精神を安定させる「カルシウム(牛乳・チーズ・小魚)」などがあります。何かを重点的に摂取するのではなく、それぞれの栄養素をバランスよく摂ることがポイントです。1日3食の規則正しい食生活を基本に、少量多品種の食事を心がけましょう。 妊娠力を高める栄養素いま話題のビタミンDとは? 最近注目されている栄養素のひとつに、ビタミンDがあります。日光を浴びることで皮膚のコレステロールから生成されるビタミンDは、血液中のカルシウム濃度を上げる働きがあり、健康な骨の形成にかかわっていることが知られています。ビタミンDが不足すると、骨の病気である骨軟化症、骨粗しょう症が増えます。一方、ビタミンDを補うことで、がんの予防、感染症の予防、2型糖尿病の予防の可能性、さらに、子宮・卵巣・精巣・精子にもよい働きをすることがわかってきました。妊娠中にビタミンDが不足すると、母体や胎児へのリスク、出産のリスクが高くなります。また、卵胞発育障害、着床障害、免疫性の不育症といった不妊要因にもビタミンDが深く影響しているという報告もあります。ビタミンDについては、1日15分の日光浴で必要量を生成できるといわれますが、女性にはむずかしい課題かもしれません。むしろ日焼け対策として、日焼け止めや日傘で、あえて日光を避けている人のほうが多いのではないでしょうか。日光を避ける生活がビタミンDの生成を抑え、ビタミンD不足につながっている皮肉な現状があります。とはいえ、日焼けはできるだけ避けたいというのが女性の本音でしょう。そこで、不足するビタミンDを身近にある食品から摂取する方法もあります。ビタミンDを含む食品には、鮭・カツオ・しらす干し・鶏卵・きくらげなどがあり、これらの食品を積極的にとることもひとつ。ただし、ビタミンDは油と一緒に調理することで吸収を高める脂溶性の栄養素。水溶性のように体内の余分な栄養素を尿として排出できないため、過剰摂取には注意が必要です。ビタミンDについて気になる方には、まずは血液検査をおすすめします。検査の結果、ビタミンDが不足しているようであれば、ビタミンDを含む食品やサプリの摂取をはじめ、ほかの栄養素とのバランスを考えた食事を心がけ、妊娠力を高めていきましょう。 ビタミンDをしっかり摂って妊娠力を高めよう ビタミンDは妊娠力を高めるために、どんな働きをしているのでしょうか。AMH、PCOS、着床率との関係など、近年のさまざまな研究報告に基づき、森先生にご説明いただきました。 ビタミンDでPCOSを改善 ビタミンDはインスリン抵抗性との関連があり、ビタミンD不足は、遺伝的な要因をはじめ、食生活や生活習慣が起因しやすい、PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)でも検討されています。ビタミンDとカルシウムの投与で、インスリンの抵抗性、男性ホルモン値、月経周期の乱れ、排卵の改善が見られたという報告もたくさんあります。 血液中のビタミンDと着床率ビタミンD濃度と 海外の研究では、血液中と卵胞液中のビタミンDは互いに影響しており、ビタミンD濃度が高いと妊娠率が上がるという報告があります。詳細なデータによると、卵胞液中のビタミンDが1ng/mg上がると、妊娠率が6%上昇したとのこと。一方、習慣性流産の方のビタミンD濃度は低いとの報告もあります。ビタミンD濃度が低下すると抗リン脂質抗体、NK活性、抗核抗体、抗DNA抗体の数値が上昇するそうです。あくまで海外の文献ですので、日本人の研究ではどのような結果が出るのか、今後もビタミンDと妊娠率について注目していきます。 ビタミンD濃度とAMHの関係 40歳以上の女性では、ビタミンDの濃度が低いと、AMHの値も低くなることがわかりました。ビタミンDは日光と関係しているため、夏は血液中のビタミンD濃度が高く、冬は低くなるという特徴があります。AMHもビタミンDと同様の季節性変化を示しており、AMHの値が低くなる冬にビタミンDを食事で摂取すると、この変動がなくなったという報告があります。また別の実験でも、ビタミンDによりAMH値が増加することが示されています。ビタミンD不足の女性にとって、ビタミンDの補充は、妊娠力を高める有効な方法かもしれません。AMHとは?AMH(抗ミュラー管ホルモン)は、発育途中の卵胞から分泌される女性ホルモンの一種で、卵巣機能の予備能(卵巣に残っている卵子の数)を知るための指標とされています。 妊活の強い味方D-upプロジェクト・サイトOPEN !! これまであまり知られてこなかったビタミンDの優れた力についてさまざまな切り口で紹介するサイトがオープンしました。妊娠力とビタミンDの関係についても詳しく解説しています。ビタミンDの上手な摂取の仕方もここでチェックして!≫ http://d-up.life/ 草津レディースクリニック 森 敏恵先生日本産科婦人科学会専門医、日本生殖医学会会員、日本受精着床学会会員、日本卵子学会会員。滋賀県内の産婦人科などを経て、草津レディースクリニック院長に就任。「お産は感動の連続。自身も妊娠・出産で感じた喜びを、より多くの方に経験してほしい」と、現在は産婦人科医から不妊治療専門医として活躍中。 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.31 2016 Autumn≫ マガジンの記事がすべてご覧いただけます! 【人気コラム】ユーザーストーリー~あなたに伝えたいメッセージ~ 【人気コラム】田村秀子先生の心の玉手箱 【役立つ】不妊についてもっと知ろう!不妊とは? 【おすすめ】フリーマガジン「ジネコ」各号記事一覧 身近な“卵”で手軽に摂取!妊娠力を上げるカギになる?注目の栄養素ビタミンD いま注目の栄養成分「ビタミンD」。近年の研究で、妊娠力を高める働きがあることがわかってきました。草津レディースクリニックの森敏恵先生に詳しく話をお聞きしました。 栄養バランスのとれた食事で妊娠力を高めましょう 妊娠・出産を望まれる方にとって何より大切なのは、健康な体づくりです。なかでも食事は妊娠力を高めるための基本。ダイエットによる食事制限、外食やファストフード、インスタント食品の摂取など、不規則な食生活で栄養バランスが偏っていませんか?食事の量があり、カロリーは充分とれていても、必要な栄養素が不足していることがあります。必要な栄養素が不足すると、貧血や冷え性をまねいて妊娠力の低下、胎児の成長、出生児の成人後の成長にも影響を及ぼすといわれています。また、食事には気をつけているから大丈夫という方も、その方向性が間違っていることもありますので、時々見直しが必要です。妊娠力を高めるおもな栄養素には、皮膚・血管・筋肉など体の土台や、質の良い卵子をつくる「たんぱく質(肉・魚・卵)」、血液中のヘモグロビンをつくる「鉄(レバー・あさり)」、抗酸化作用があり、卵子の若返りや、血流・ホルモンの働きをうながす「ビタミンE(カボチャ・アボカド・ナッツ類)」、男性ホルモンを合成し、精子数や運動性を高める「亜鉛(カキ・ホタテ)」、赤ちゃんの健全な発育を助ける「葉酸(ほうれん草・レバー)」、子宮内膜をととのえる「ビタミンA(うなぎ・ほうれん草)」、精神を安定させる「カルシウム(牛乳・チーズ・小魚)」などがあります。何かを重点的に摂取するのではなく、それぞれの栄養素をバランスよく摂ることがポイントです。1日3食の規則正しい食生活を基本に、少量多品種の食事を心がけましょう。 妊娠力を高める栄養素いま話題のビタミンDとは? 最近注目されている栄養素のひとつに、ビタミンDがあります。日光を浴びることで皮膚のコレステロールから生成されるビタミンDは、血液中のカルシウム濃度を上げる働きがあり、健康な骨の形成にかかわっていることが知られています。ビタミンDが不足すると、骨の病気である骨軟化症、骨粗しょう症が増えます。一方、ビタミンDを補うことで、がんの予防、感染症の予防、2型糖尿病の予防の可能性、さらに、子宮・卵巣・精巣・精子にもよい働きをすることがわかってきました。妊娠中にビタミンDが不足すると、母体や胎児へのリスク、出産のリスクが高くなります。また、卵胞発育障害、着床障害、免疫性の不育症といった不妊要因にもビタミンDが深く影響しているという報告もあります。ビタミンDについては、1日15分の日光浴で必要量を生成できるといわれますが、女性にはむずかしい課題かもしれません。むしろ日焼け対策として、日焼け止めや日傘で、あえて日光を避けている人のほうが多いのではないでしょうか。日光を避ける生活がビタミンDの生成を抑え、ビタミンD不足につながっている皮肉な現状があります。とはいえ、日焼けはできるだけ避けたいというのが女性の本音でしょう。そこで、不足するビタミンDを身近にある食品から摂取する方法もあります。ビタミンDを含む食品には、鮭・カツオ・しらす干し・鶏卵・きくらげなどがあり、これらの食品を積極的にとることもひとつ。ただし、ビタミンDは油と一緒に調理することで吸収を高める脂溶性の栄養素。水溶性のように体内の余分な栄養素を尿として排出できないため、過剰摂取には注意が必要です。ビタミンDについて気になる方には、まずは血液検査をおすすめします。検査の結果、ビタミンDが不足しているようであれば、ビタミンDを含む食品やサプリの摂取をはじめ、ほかの栄養素とのバランスを考えた食事を心がけ、妊娠力を高めていきましょう。 ビタミンDをしっかり摂って妊娠力を高めよう ビタミンDは妊娠力を高めるために、どんな働きをしているのでしょうか。AMH、PCOS、着床率との関係など、近年のさまざまな研究報告に基づき、森先生にご説明いただきました。 ビタミンDでPCOSを改善 ビタミンDはインスリン抵抗性との関連があり、ビタミンD不足は、遺伝的な要因をはじめ、食生活や生活習慣が起因しやすい、PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)でも検討されています。ビタミンDとカルシウムの投与で、インスリンの抵抗性、男性ホルモン値、月経周期の乱れ、排卵の改善が見られたという報告もたくさんあります。 血液中のビタミンDと着床率ビタミンD濃度と 海外の研究では、血液中と卵胞液中のビタミンDは互いに影響しており、ビタミンD濃度が高いと妊娠率が上がるという報告があります。詳細なデータによると、卵胞液中のビタミンDが1ng/mg上がると、妊娠率が6%上昇したとのこと。一方、習慣性流産の方のビタミンD濃度は低いとの報告もあります。ビタミンD濃度が低下すると抗リン脂質抗体、NK活性、抗核抗体、抗DNA抗体の数値が上昇するそうです。あくまで海外の文献ですので、日本人の研究ではどのような結果が出るのか、今後もビタミンDと妊娠率について注目していきます。 ビタミンD濃度とAMHの関係 40歳以上の女性では、ビタミンDの濃度が低いと、AMHの値も低くなることがわかりました。ビタミンDは日光と関係しているため、夏は血液中のビタミンD濃度が高く、冬は低くなるという特徴があります。AMHもビタミンDと同様の季節性変化を示しており、AMHの値が低くなる冬にビタミンDを食事で摂取すると、この変動がなくなったという報告があります。また別の実験でも、ビタミンDによりAMH値が増加することが示されています。ビタミンD不足の女性にとって、ビタミンDの補充は、妊娠力を高める有効な方法かもしれません。AMHとは?AMH(抗ミュラー管ホルモン)は、発育途中の卵胞から分泌される女性ホルモンの一種で、卵巣機能の予備能(卵巣に残っている卵子の数)を知るための指標とされています。 妊活の強い味方D-upプロジェクト・サイトOPEN !! これまであまり知られてこなかったビタミンDの優れた力についてさまざまな切り口で紹介するサイトがオープンしました。妊娠力とビタミンDの関係についても詳しく解説しています。ビタミンDの上手な摂取の仕方もここでチェックして!≫ http://d-up.life/ 草津レディースクリニック 森 敏恵先生日本産科婦人科学会専門医、日本生殖医学会会員、日本受精着床学会会員、日本卵子学会会員。滋賀県内の産婦人科などを経て、草津レディースクリニック院長に就任。「お産は感動の連続。自身も妊娠・出産で感じた喜びを、より多くの方に経験してほしい」と、現在は産婦人科医から不妊治療専門医として活躍中。 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.31 2016 Autumn≫ マガジンの記事がすべてご覧いただけます! 【人気コラム】ユーザーストーリー~あなたに伝えたいメッセージ~ 【人気コラム】田村秀子先生の心の玉手箱 【役立つ】不妊についてもっと知ろう!不妊とは? 【おすすめ】フリーマガジン「ジネコ」各号記事一覧
2016.8.30
コラム 不妊治療
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“特別養子縁組”というもうひとつの選択
“特別養子縁組”というもうひとつの選択1年半の里親期間を経て特別養子縁組に。同じ時間を過ごすうちに出自も、血の繋がりも、関係ないと思えて。 毎日愛して、毎日笑って、ときには叱って……。血の繋がりがなくたって、私たちは親子。最近、夫の表情に似てきたのもなんだか可笑しい。Iさんは「日々、私が育てられている」とも。 『ジネコ』で知った、特別養子縁組制度 Iさん(49歳)は、10年前に同い年のご主人と結婚。長いお付き合いでしたが、周囲をやきもきさせてやっとのご入籍。「子どもについてもまったくのノー・プランで、すでにアラフォーだったのに“ 不妊”が頭になく、42歳で慌てて治療を開始。でも、うまくはいかなくて」と、Iさんは振り返ります。治療のためにクリニックに通い続けるなか、待合室で偶然に手にしたのが『ジネコ』でした。「不妊治療を諦めて養子縁組を選択したご夫婦の記事があり、持ち帰って“こういうご夫婦もいるんだね”と、夫に見せたのを覚えています。その時は、“こういう制度があるんだ”という知識を得た程度でした」 被災した子供たちに手を差し伸べたいと思い 心配をかけたくないと、不妊治療中であることをあえて伏せていたIさんですが、ある日実家で悩みを打ち明けました。「すると祖母が“もらいっ子は?”と。昔は、親戚や知り合いから養子をもらうなど、よくあった話だとか。さらに、“子どもの存在や子育ては、人として成長の糧になる。親を経験できるものなら経験してほしい”とも言われ、心が動きました」それからしばらくして、2011年3月に起きた東日本大震災は、東京在住のIさんご夫婦の心も大きく揺さぶりました。「母が石巻市出身で、実際に被災した身内の話を聞くうちに、“親御さんを亡くされたお子さんに、私たち夫婦が手を差し伸べることはできないだろうか”と思い至ったのですとIさん。しかし、他県に戸籍を持つ子との養子縁組は難しいと知り、改めて都の制度に目を向けました。不妊治療はまだ継続していましたが、もう一つの選択肢として、「もっと深く知りたい」と、Iさんご夫妻は一歩踏み込んで、都の特別養子縁組について調べ始めたのです。 子どもは“授かる”もの養子でも、出会いは縁 調べてみると、さまざまなあっせん団体が見つかりましたが、この時すでにIさんご夫妻はともに44歳。民間をはじめとしたあっせん団体は養親の上限年齢を40歳としているところが多く、Iさんご夫婦は上限年齢を50歳未満としている都の児童相談所を急ぎ訪ねました。その後、里親認定研修(座学2日間、乳児院見学)の受講申し込みを済ませて受講。その上で、里親認定登録申請、調査を経て里親認定されます。しかし、認定されてもすぐに養子を紹介してもらえるわけではありません。Iさんご夫婦に要請があったのは、2年後。養子縁組で好まれるのはできるだけ新生児に近い女の子、とも聞いていましたが、Iさんはあえて年齢や性別などの条件は付けないことにしていました。「自分自身で子供を得るのも、養子という形で私たちに訪れるのもいずれも縁だと思えまして」と、Iさん。紹介されたのは2歳半の男の子、N君。超低体重児で生まれたために発達障害の心配があるとのことでしたが、万が一の可能性も伝えるのが都の方針。それも含め、連絡があってからは夫婦で何度も話し合いを重ね、悩んで眠れない日々を過ごしました。しかし、実際に乳児院ではしゃぎまわるN君の姿を遠巻きに目にすると不安は払拭され、「あの子と仲良くなりたいね、まずはそれから始めよう」と、Iさんご夫妻はN君との距離を縮めます。面会、外出、お泊まりなどの交流を重ね、やがて委託として一緒に暮らすように。「子どもは授かるもので、選ぶものではありません。体が弱いからというのは、断る理由になりませんでした。同じ時間を共有するうちに、血の繋がりなどは関係ないと思わせてくれた」と、Iさんは言います。 「ニセモノだけど、本物」健気な成長ぶりに感動! 特別養子縁組では、約半年間の養育期間を経て、家庭裁判所への申し立てをし、実親・里親双方の調査後、特別養子縁組の審判が確定されます。縁組後の戸籍には、普通養子縁組では“養子・養女”と記載されるのとは異なり、“長男・次女”などと実子として記載されます。縁組後は改名することも可能ですが、Iさんご夫婦はN君の名前をそのまま残しました。「生みの親がこの子にくれた大切なギフトだから」と。自分たちが本当の両親でないことも、今のうちからN君にも、周囲にも伝えています。縁組が成立したときN君はすでに4歳半でしたから、「ごまかさずにいよう」と、N君の記憶を尊重しました。「“実は養子”と言ったら好奇な目で見られるかも、と思っていましたが取り越し苦労でした。子育てのために辞めた職場も、上司や仲間が“潔い決断”と、励ましの言葉をくれました。どうお付き合いしたものか、と神経質になっていたママ仲間にもすんなり受け入れてもらい、“先進的な選択”とまで言われることもあり、今はフォローさえしてくださいます」とIさん。子どものいる生活は毎日が新鮮ですが、去年は突然“おもらし” をするようになり、病気を心配したことも。ところが、“お母さんはニセモノだけど、本物のお母さん”と突然宣言して以来、ぴたりと止んだとか。「当時、幼稚園でお兄さんやお姉さんになる子が多かったのが原因かも。“お母さんは、赤ちゃんが産めない体なの”と事実を伝えてあったので、葛藤があったのでしょう。でも、息子なりに導き出した答え。その成長ぶりが嬉しい」と目を細めるIさんは、すでに母の顔でした。 多くの人の愛で今がある それを“誇り”にして! N君が育った乳児院には、年4回は親子で訪れます。最初に出会った2歳半まで“親子一緒”の写真こそありませんが、担当者は成長記録をきちんとアルバムに残してくれていました。「やがて思春期や反抗期が訪れたとき、息子は“もうここへは来たくない、出自は忘れたい”と言い出すかもしれません。そのときは彼の意志を尊重しますが、息子をこれまで大事に育ててくださったのは乳児院の職員の方々ですから、私たち夫婦は一生感謝し続けます。息子には多くの人の愛情を受けて今あることを、むしろ誇りとしてもらえるよう育てていきたい」さらに、「運命などというドラマチックなものではなく、覚悟を持って一歩踏み出したからこそ得られた“縁”であり、まだこつこつと育んでいる過程」と、Iさんは謙虚に言います。親子の絆をつむぐのは愛情の積み重ね。それは実子でも、養子でも、変わりはないのかもしれません。 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.31 2016 Autumn≫ こちらからマガジンの記事がすべてご覧いただけます! 他のユーザーストーリーも読む 【人気コラム】ユーザーストーリー~あなたに伝えたいメッセージ~ 【人気コラム】田村秀子先生の心の玉手箱 【役立つ】不妊についてもっと知ろう!不妊とは? 【おすすめ】フリーマガジン「ジネコ」各号記事一覧 “特別養子縁組”というもうひとつの選択1年半の里親期間を経て特別養子縁組に。同じ時間を過ごすうちに出自も、血の繋がりも、関係ないと思えて。 毎日愛して、毎日笑って、ときには叱って……。血の繋がりがなくたって、私たちは親子。最近、夫の表情に似てきたのもなんだか可笑しい。Iさんは「日々、私が育てられている」とも。 『ジネコ』で知った、特別養子縁組制度 Iさん(49歳)は、10年前に同い年のご主人と結婚。長いお付き合いでしたが、周囲をやきもきさせてやっとのご入籍。「子どもについてもまったくのノー・プランで、すでにアラフォーだったのに“ 不妊”が頭になく、42歳で慌てて治療を開始。でも、うまくはいかなくて」と、Iさんは振り返ります。治療のためにクリニックに通い続けるなか、待合室で偶然に手にしたのが『ジネコ』でした。「不妊治療を諦めて養子縁組を選択したご夫婦の記事があり、持ち帰って“こういうご夫婦もいるんだね”と、夫に見せたのを覚えています。その時は、“こういう制度があるんだ”という知識を得た程度でした」 被災した子供たちに手を差し伸べたいと思い 心配をかけたくないと、不妊治療中であることをあえて伏せていたIさんですが、ある日実家で悩みを打ち明けました。「すると祖母が“もらいっ子は?”と。昔は、親戚や知り合いから養子をもらうなど、よくあった話だとか。さらに、“子どもの存在や子育ては、人として成長の糧になる。親を経験できるものなら経験してほしい”とも言われ、心が動きました」それからしばらくして、2011年3月に起きた東日本大震災は、東京在住のIさんご夫婦の心も大きく揺さぶりました。「母が石巻市出身で、実際に被災した身内の話を聞くうちに、“親御さんを亡くされたお子さんに、私たち夫婦が手を差し伸べることはできないだろうか”と思い至ったのですとIさん。しかし、他県に戸籍を持つ子との養子縁組は難しいと知り、改めて都の制度に目を向けました。不妊治療はまだ継続していましたが、もう一つの選択肢として、「もっと深く知りたい」と、Iさんご夫妻は一歩踏み込んで、都の特別養子縁組について調べ始めたのです。 子どもは“授かる”もの養子でも、出会いは縁 調べてみると、さまざまなあっせん団体が見つかりましたが、この時すでにIさんご夫妻はともに44歳。民間をはじめとしたあっせん団体は養親の上限年齢を40歳としているところが多く、Iさんご夫婦は上限年齢を50歳未満としている都の児童相談所を急ぎ訪ねました。その後、里親認定研修(座学2日間、乳児院見学)の受講申し込みを済ませて受講。その上で、里親認定登録申請、調査を経て里親認定されます。しかし、認定されてもすぐに養子を紹介してもらえるわけではありません。Iさんご夫婦に要請があったのは、2年後。養子縁組で好まれるのはできるだけ新生児に近い女の子、とも聞いていましたが、Iさんはあえて年齢や性別などの条件は付けないことにしていました。「自分自身で子供を得るのも、養子という形で私たちに訪れるのもいずれも縁だと思えまして」と、Iさん。紹介されたのは2歳半の男の子、N君。超低体重児で生まれたために発達障害の心配があるとのことでしたが、万が一の可能性も伝えるのが都の方針。それも含め、連絡があってからは夫婦で何度も話し合いを重ね、悩んで眠れない日々を過ごしました。しかし、実際に乳児院ではしゃぎまわるN君の姿を遠巻きに目にすると不安は払拭され、「あの子と仲良くなりたいね、まずはそれから始めよう」と、Iさんご夫妻はN君との距離を縮めます。面会、外出、お泊まりなどの交流を重ね、やがて委託として一緒に暮らすように。「子どもは授かるもので、選ぶものではありません。体が弱いからというのは、断る理由になりませんでした。同じ時間を共有するうちに、血の繋がりなどは関係ないと思わせてくれた」と、Iさんは言います。 「ニセモノだけど、本物」健気な成長ぶりに感動! 特別養子縁組では、約半年間の養育期間を経て、家庭裁判所への申し立てをし、実親・里親双方の調査後、特別養子縁組の審判が確定されます。縁組後の戸籍には、普通養子縁組では“養子・養女”と記載されるのとは異なり、“長男・次女”などと実子として記載されます。縁組後は改名することも可能ですが、Iさんご夫婦はN君の名前をそのまま残しました。「生みの親がこの子にくれた大切なギフトだから」と。自分たちが本当の両親でないことも、今のうちからN君にも、周囲にも伝えています。縁組が成立したときN君はすでに4歳半でしたから、「ごまかさずにいよう」と、N君の記憶を尊重しました。「“実は養子”と言ったら好奇な目で見られるかも、と思っていましたが取り越し苦労でした。子育てのために辞めた職場も、上司や仲間が“潔い決断”と、励ましの言葉をくれました。どうお付き合いしたものか、と神経質になっていたママ仲間にもすんなり受け入れてもらい、“先進的な選択”とまで言われることもあり、今はフォローさえしてくださいます」とIさん。子どものいる生活は毎日が新鮮ですが、去年は突然“おもらし” をするようになり、病気を心配したことも。ところが、“お母さんはニセモノだけど、本物のお母さん”と突然宣言して以来、ぴたりと止んだとか。「当時、幼稚園でお兄さんやお姉さんになる子が多かったのが原因かも。“お母さんは、赤ちゃんが産めない体なの”と事実を伝えてあったので、葛藤があったのでしょう。でも、息子なりに導き出した答え。その成長ぶりが嬉しい」と目を細めるIさんは、すでに母の顔でした。 多くの人の愛で今がある それを“誇り”にして! N君が育った乳児院には、年4回は親子で訪れます。最初に出会った2歳半まで“親子一緒”の写真こそありませんが、担当者は成長記録をきちんとアルバムに残してくれていました。「やがて思春期や反抗期が訪れたとき、息子は“もうここへは来たくない、出自は忘れたい”と言い出すかもしれません。そのときは彼の意志を尊重しますが、息子をこれまで大事に育ててくださったのは乳児院の職員の方々ですから、私たち夫婦は一生感謝し続けます。息子には多くの人の愛情を受けて今あることを、むしろ誇りとしてもらえるよう育てていきたい」さらに、「運命などというドラマチックなものではなく、覚悟を持って一歩踏み出したからこそ得られた“縁”であり、まだこつこつと育んでいる過程」と、Iさんは謙虚に言います。親子の絆をつむぐのは愛情の積み重ね。それは実子でも、養子でも、変わりはないのかもしれません。 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.31 2016 Autumn≫ こちらからマガジンの記事がすべてご覧いただけます! 他のユーザーストーリーも読む 【人気コラム】ユーザーストーリー~あなたに伝えたいメッセージ~ 【人気コラム】田村秀子先生の心の玉手箱 【役立つ】不妊についてもっと知ろう!不妊とは? 【おすすめ】フリーマガジン「ジネコ」各号記事一覧
2016.8.29
コラム 不妊治療
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高齢出産のリスクを恐れず、“夫の子”が欲しい
高齢出産のリスクを恐れず、“夫の子”が欲しい夫を父親にしてあげたい。ほんの少しでも希望があるのなら私はチャレンジし続けたい。 40代で再婚。まだ若い年下の夫を「父親にしてあげたい」そう心に決めて、キヨミさんは不妊治療を開始。可能性が0%でないのなら、諦めたくないけれど、治療費のために、働かなくてはならない実状も。 「子ども、産めますか?」に、「必ず産む!」と決意 梅雨明け間近の取材当日は折しもキヨミさん(45歳)の結婚記念日。4年前に入籍されたご主人は7歳年下で、なんと現在でも同じ会社に勤める上司と部下の間柄。バツイチ同士で、お互いに「そろそろ再婚を」と考えていた当時、「一緒に婚活しよう」とプライベートでも会うようになり、職場で見るのとは違う一面を知るうちに自然と惹かれ合うようになったそう。「その時私はすでに40歳を過ぎていました。交際が進み、真剣に結婚を考えるようになった時、彼が口にしたのは“子ども、産める?”との言葉でした。夫は今では“そんな失礼なこと言ったかな?”と記憶が薄れているようですが」と、苦笑いするキヨミさん。それを受け、「絶対に産んでみせるからね!」と誓い、キヨミさんは結婚後すぐに不妊治療をスタートさせました。 夫の優しさを受け継いだ血のつながった子が欲しい キヨミさんの初婚は21歳の時。若いうちにママになりたいという思いがあったのと、生理不順を気にされて、念のため婦人科で検診を受けましたが、「真剣に取り合ってもらった記憶がないんです。若かったこともありますが、もう20年以上前のことで、まだ不妊治療というものが今ほど浸透していない時代でしたし、専門クリニックも情報もほとんどありませんでした。当時は太っていたこともあって、“適正体重に近づけるよう努めなさい”と食事指導されただけ」と、キヨミさん。特には問題ないと診断され、そのままやり過ごすうちに、職場では仕事ぶりが認められて、女性でありながら異例の昇進。仕事にやりがいや責任を感じるにつれ、「このまま夫婦二人でも、子どもがいない生活でもいいかな」と思うように。ところが、結婚生活は16年でピリオドを迎えます。離婚の原因は、子どもができなかったことではありませんでした。一方、キヨミさんのご主人と前妻との間には、お子さんがいます。男の子で、今年で6歳。「いわゆる“できちゃった婚”だったそうですが、わずか半年で離婚。複雑な事情があり、前の奥様は出産後すぐに実家のご両親のもとへ。だから、夫は生まれたばかりの赤ちゃんの姿を見ただけで、“父親になった”という実感を味わっていないのです」と、キヨミさんはご主人の心の内を慮ります。「今は会うことすらできない息子さんですが、いつかのためにと、夫は毎年お誕生日のたびに積み立てをしています。残高を見れば今何歳かがわかるようにと。こんなに子どもを思いやれる人なのですから、何としても父親にしてあげたくて」 妊娠反応に、一喜一憂 でも、可能性があるなら! 年齢を考慮し、キヨミさんはすぐに顕微授精に挑戦。最初に通ったクリニックでの治療で、半年もしないうちに妊娠反応が。しかし喜びもつかの間、稽留流産という結果でした。その後も治療を続けましたが、病院の方針で胚盤胞に至らない卵子は凍結すらしてもらえず、やむなく転院することに。インターネットの口コミサイトを参考に、「ここなら!」と選んだクリニックも通いやすい場所ではなく、通院も一苦労なのだそう。「管理職でストレスも多いことから、思い切って2年間の休職を願い出ました。それでもその間には妊娠に至らず、この春に職場復帰。すると、なぜか採った卵子が続々と順調に胚盤胞に成長するという嬉しい兆しが!仕事のストレスがなければ、と思い込んでいましたが、私にとっては不妊治療に専念するのもストレスだったのかもしれませんね。実は、取材のお話をいただいた時も約3年半ぶりに妊娠反応があり、今日は良いご報告ができると思っていたのですが残念な結果に」と、キヨミさん。不妊治療を始めて4年。最初の病院では採卵8回、移植4回。現在の病院では採卵16回、移植5回。これまでにかかった治療費は、交通費などを除いて約1千万円とのこと。幸いなことにキヨミさんの場合はお仕事が励みになっていますが、高額な治療費を捻出するために、経済的な不安を少しでも軽くするために、女性も“働かなければならない”のが現状なのです。 羊水検査はしないという45歳で妊活する覚悟 不妊治療では、「もう諦めてください」と医師が言うことはありません。患者さんが希望をもつ限りは、患者さんの気が済むまで付き合わざるを得ません。「妊娠の可能性がゼロなら、不妊治療費が払えなくなったら、子をもつことを諦めるきっかけになるのでしょうけれど、今はそうではない。ほんの少しでも希望があるのなら、私はチャレンジし続けたい」と、キヨミさんの決意は揺るぎません。今回の妊娠反応も、「年齢が年齢ですから、約6割は流産の可能性があるので、喜ぶのはまだ早い」と担当医に言われていたとか。高齢=卵子の老化、という事実は重くのしかかります。「45歳で採った卵子ですから、妊娠が難しいのは理解しています。妊娠できたとしても、高齢出産のリスクが高いのも十分心得ています。それでも、夫の血を受け継いだ子どもが欲しいのです。もちろん妊娠後も羊水検査などは受けるつもりはありませんし、万一何かしら障がいのある子だとしても“私たち夫婦なら大丈夫”と受け入れる覚悟もあります」と、キッパリ。キヨミさんの願いはただひとつ。「子ども好きの夫を父親にしてあげたい」、ただそれだけ。「子どもがいない今の二人だけの生活も十分に幸せ。だから、子どもは欲しいけれど、養子を迎えるまでは考えていません。私たちの性格からして、可愛がることはできても、叱ったりはできないだろうから」とも。「もう、そんなに頑張らなくていいよ」とご主人は言ってくれますが、「私の気の済むまで、頑張ってみてもいい?」と、キヨミさん。“自分の年齢”に負けたくない!と、闘いを続けます。 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.31 2016 Autumn≫ マガジンの記事がすべてご覧いただけます! 他のユーザーストーリーも読む 高齢出産のリスクを恐れず、“夫の子”が欲しい夫を父親にしてあげたい。ほんの少しでも希望があるのなら私はチャレンジし続けたい。 40代で再婚。まだ若い年下の夫を「父親にしてあげたい」そう心に決めて、キヨミさんは不妊治療を開始。可能性が0%でないのなら、諦めたくないけれど、治療費のために、働かなくてはならない実状も。 「子ども、産めますか?」に、「必ず産む!」と決意 梅雨明け間近の取材当日は折しもキヨミさん(45歳)の結婚記念日。4年前に入籍されたご主人は7歳年下で、なんと現在でも同じ会社に勤める上司と部下の間柄。バツイチ同士で、お互いに「そろそろ再婚を」と考えていた当時、「一緒に婚活しよう」とプライベートでも会うようになり、職場で見るのとは違う一面を知るうちに自然と惹かれ合うようになったそう。「その時私はすでに40歳を過ぎていました。交際が進み、真剣に結婚を考えるようになった時、彼が口にしたのは“子ども、産める?”との言葉でした。夫は今では“そんな失礼なこと言ったかな?”と記憶が薄れているようですが」と、苦笑いするキヨミさん。それを受け、「絶対に産んでみせるからね!」と誓い、キヨミさんは結婚後すぐに不妊治療をスタートさせました。 夫の優しさを受け継いだ血のつながった子が欲しい キヨミさんの初婚は21歳の時。若いうちにママになりたいという思いがあったのと、生理不順を気にされて、念のため婦人科で検診を受けましたが、「真剣に取り合ってもらった記憶がないんです。若かったこともありますが、もう20年以上前のことで、まだ不妊治療というものが今ほど浸透していない時代でしたし、専門クリニックも情報もほとんどありませんでした。当時は太っていたこともあって、“適正体重に近づけるよう努めなさい”と食事指導されただけ」と、キヨミさん。特には問題ないと診断され、そのままやり過ごすうちに、職場では仕事ぶりが認められて、女性でありながら異例の昇進。仕事にやりがいや責任を感じるにつれ、「このまま夫婦二人でも、子どもがいない生活でもいいかな」と思うように。ところが、結婚生活は16年でピリオドを迎えます。離婚の原因は、子どもができなかったことではありませんでした。一方、キヨミさんのご主人と前妻との間には、お子さんがいます。男の子で、今年で6歳。「いわゆる“できちゃった婚”だったそうですが、わずか半年で離婚。複雑な事情があり、前の奥様は出産後すぐに実家のご両親のもとへ。だから、夫は生まれたばかりの赤ちゃんの姿を見ただけで、“父親になった”という実感を味わっていないのです」と、キヨミさんはご主人の心の内を慮ります。「今は会うことすらできない息子さんですが、いつかのためにと、夫は毎年お誕生日のたびに積み立てをしています。残高を見れば今何歳かがわかるようにと。こんなに子どもを思いやれる人なのですから、何としても父親にしてあげたくて」 妊娠反応に、一喜一憂 でも、可能性があるなら! 年齢を考慮し、キヨミさんはすぐに顕微授精に挑戦。最初に通ったクリニックでの治療で、半年もしないうちに妊娠反応が。しかし喜びもつかの間、稽留流産という結果でした。その後も治療を続けましたが、病院の方針で胚盤胞に至らない卵子は凍結すらしてもらえず、やむなく転院することに。インターネットの口コミサイトを参考に、「ここなら!」と選んだクリニックも通いやすい場所ではなく、通院も一苦労なのだそう。「管理職でストレスも多いことから、思い切って2年間の休職を願い出ました。それでもその間には妊娠に至らず、この春に職場復帰。すると、なぜか採った卵子が続々と順調に胚盤胞に成長するという嬉しい兆しが!仕事のストレスがなければ、と思い込んでいましたが、私にとっては不妊治療に専念するのもストレスだったのかもしれませんね。実は、取材のお話をいただいた時も約3年半ぶりに妊娠反応があり、今日は良いご報告ができると思っていたのですが残念な結果に」と、キヨミさん。不妊治療を始めて4年。最初の病院では採卵8回、移植4回。現在の病院では採卵16回、移植5回。これまでにかかった治療費は、交通費などを除いて約1千万円とのこと。幸いなことにキヨミさんの場合はお仕事が励みになっていますが、高額な治療費を捻出するために、経済的な不安を少しでも軽くするために、女性も“働かなければならない”のが現状なのです。 羊水検査はしないという45歳で妊活する覚悟 不妊治療では、「もう諦めてください」と医師が言うことはありません。患者さんが希望をもつ限りは、患者さんの気が済むまで付き合わざるを得ません。「妊娠の可能性がゼロなら、不妊治療費が払えなくなったら、子をもつことを諦めるきっかけになるのでしょうけれど、今はそうではない。ほんの少しでも希望があるのなら、私はチャレンジし続けたい」と、キヨミさんの決意は揺るぎません。今回の妊娠反応も、「年齢が年齢ですから、約6割は流産の可能性があるので、喜ぶのはまだ早い」と担当医に言われていたとか。高齢=卵子の老化、という事実は重くのしかかります。「45歳で採った卵子ですから、妊娠が難しいのは理解しています。妊娠できたとしても、高齢出産のリスクが高いのも十分心得ています。それでも、夫の血を受け継いだ子どもが欲しいのです。もちろん妊娠後も羊水検査などは受けるつもりはありませんし、万一何かしら障がいのある子だとしても“私たち夫婦なら大丈夫”と受け入れる覚悟もあります」と、キッパリ。キヨミさんの願いはただひとつ。「子ども好きの夫を父親にしてあげたい」、ただそれだけ。「子どもがいない今の二人だけの生活も十分に幸せ。だから、子どもは欲しいけれど、養子を迎えるまでは考えていません。私たちの性格からして、可愛がることはできても、叱ったりはできないだろうから」とも。「もう、そんなに頑張らなくていいよ」とご主人は言ってくれますが、「私の気の済むまで、頑張ってみてもいい?」と、キヨミさん。“自分の年齢”に負けたくない!と、闘いを続けます。 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.31 2016 Autumn≫ マガジンの記事がすべてご覧いただけます! 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2016.8.26
コラム 不妊治療