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骨盤臓器脱ってどんな病気?

インタビュー 女性の病気

骨盤臓器脱ってどんな病気?

出産した女性が特にかかりやすい骨盤臓器脱について、多和田レディースクリニック院長の多和田哲雄先生に詳しく伺いました。

2018.11.29

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出産した女性が特にかかりやすい骨盤臓器脱。聞きなれない病名ですが、この病気に詳しい多和田レディースクリニック院長の多和田哲雄先生に、女性なら備えておきたいことを伺いました。




骨盤臓器脱ってなに?


女性の骨盤のなかには子宮、膀胱、直腸などの臓器があり、骨盤底筋群という靭帯や筋肉の複合体によって支えられています。それらがゆるんでしまうことで、骨盤内の臓器が下がってくる病気です。排尿・排便・性生活にも影響し、女性の日常生活の質を著しく損ないます。

バスケットに果物が収まっているのを想像してください。バスケットの底の網目が靭帯や筋肉で、果物が子宮や膀胱などです。底の網目がゆるんでしまうことで、果物が落ちそうになるイメージです。想像するとちょっと恐いように感じますが、じつは大昔からある病気で、有効な治療がなかった当時の女性はかなり困っていたのです。またアメリカの女性の10%は一生涯において骨盤臓器脱の何らかの治療を受けるといわれており、比較的よくある病気でもあります。

下がってくる臓器によって「子宮脱」「膀胱瘤(りゅう)」「直腸瘤」などとも呼ばれますが、1つの臓器だけが下がることは少なく、子宮と膀胱、あるいは全ての臓器が一緒に下がることもあり「骨盤臓器脱」と総称します。


いったい、どんな症状が現れるの?


たとえば膀胱瘤では、排尿障害が現れます。尿モレや頻尿、脱出した膀胱を自分で押し戻さないと尿が出ないなどです。直腸瘤では、便が出にくいなどの排便障害が現れます。ひどくなると便がモレたり、おならが止められないガス失禁もあります。

また、臓器の下がり具合(コラム参照)によっても症状はいろいろです。たとえば、臓器がまだ外に出ていない段階では、下腹部の違和感や腟の下垂感があります。それが、臓器が飛び出たり引っ込んだりする段階になると、気持ち悪さを訴えて受診する女性が多くなります。よく「お風呂に入った時、ピンポン玉みたいなのが出てびっくりした」といわれます。さらに、臓器が出ると、腟の先端の粘膜が乾燥して、下着に少しこすれただけでヒリヒリしたり出血したりします。

◆コラム/骨盤臓器脱の重症度◆
ステージⅠ…臓器は下がっているものの、まだ膣の奥のほうにおさまっている段階
ステージⅡ…膣の入り口まで下がってきて、臓器が引っ込んだり出たりする段階
ステージⅢ…つねに臓器が出た状態ではないが、ステージⅡより重症段階
ステージⅣ…膣とともに臓器がつねに体の外に飛び出ている段階


骨盤臓器脱になりやすい女性は?


骨盤臓器脱は、骨盤底筋がゆるんだり傷つくことが原因でおこります。そのため一番なりやすいのは、出産をした女性です。分娩は、骨盤底筋が伸びたり切れたりして、最もダメージがあるからです。1人出産すると骨盤臓器脱のリスクは2倍、2人目以降はさらにリスクが増えるというデータもあります。一方、帝王切開は分娩ほどのダメージはありませんが、妊娠中は赤ちゃんと子宮を支えるので、やはり骨盤底筋に負担をかけます。

出産以外では、1日中立っている仕事や、日常的に重いものを持ち上げる介護や農業の仕事に就く女性も骨盤底筋に負担をかけ、病気のリスクが増えます。また、体質も関係し、お母さんやお祖母さんが骨盤臓器脱だとあなたもなりやすいでしょう。


予防はできますか?


分娩で傷ついた骨盤底筋や、ゆるんだ臓器をきたえる体操があるので、これを行うと予防できます。逆にやらないでいると、更年期以降に骨盤臓器脱の発症リスクが増えます。

欧米の女性は出産が終わると、医療従事者から、将来的に骨盤臓器脱が起こる可能性を知らされ、予防のために体操も指導されます。しかし、日本はそうした環境にはまだなっていません。お産の入院でも、赤ちゃんのお世話の指導やお母さんの出血を診るだけにとどまります。この機会に、おなかのたるみを戻す体操とともに、骨盤臓器脱を予防する体操の重要性も知って欲しいと思います。体操は、肛門や腟などを強く締めたり、ゆっくり締めることをくり返すものです。

ほかに、毎日やわらかい便をスムーズに出すことが、病気の予防になります。慢性的な便秘は排便時にいきむため、骨盤底筋に負担をかけます。また、年齢とともに全身の筋肉がたるんでくるのと同じように、骨盤底筋もゆるんできます。30歳を過ぎたらすべての女性に予防体操をおすすめします。


受診するのは何科ですか?


骨盤臓器脱は泌尿器科(urology)と婦人科(gynecology)の2つの領域にまたがる病気で、欧米ではこの病気の診療に特化した診療科があり、ウロギネコロジー(urogynecology)と呼ばれます。日本では婦人科か泌尿器科を受診することになりますが、専門外来(POP外来、女性泌尿器外来など)がある病院を受診とすると良いでしょう。病院の規模に関係なく専門外来は存在します。

じつは、以前は骨盤臓器脱を専門にみる医師は少なく、婦人科と泌尿器科の間でたらい回しにあい、人知れず悩んでいた女性はたくさんいました。近年では新しい手術方法が導入されたのを機に、産婦人科医の私を含めて骨盤臓器脱を専門にみる医師も増えていますので安心してください。軽症のうちは手術以外の治療法もあるので、ひどくなる前に専門外来を受診してください。


まとめ


将来、出産を考えていたり、現在出産を控えている女性は、骨盤底筋ケアの重要性をこの機会に知ってください。骨盤臓器脱でトイレの問題をかかえると、外出や人に会うことに躊躇し、家にひきこもってしまいます。更年期以降も社会で活躍したり、旅行や生活を楽しむためには、妊活中の今こそ、知っていて欲しい病気です。


お話を伺った先生のご紹介

多和田哲雄先生(多和田レディースクリニック 院長)


順天堂大学医学部卒業。順天堂大学医学部産婦人科学教室を経て、横浜の国際親善総合病院で産婦人科医として活躍し、平成13年「産科セミオープンシステムの確立」に対して第23回母子保健奨励賞受賞。国際親善総合病院・副院長を経て、平成22年横浜市営地下鉄中田駅前に多和田レディースクリニックを開業。骨盤臓器脱をライフワークとし、専門性を持って診断・治療にあたる。クリニック休診日(水曜)は、国際親善総合病院で骨盤臓器脱の専門外来診療や手術を行い、数多くの患者を救っている。また、乳がん検診にも力を入れておりマンモグラフィー検診・エコー検診も実施。医学博士、日本産婦人科学会専門医。プライベートではジャズサックスを演奏。現在、プロのサックス奏者につきながら腕を磨く。

≫ 多和田レディースクリニック

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