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私の高齢と夫の無精子症。 卵子・精子は採れても いい受精卵ができません

コラム 不妊治療

私の高齢と夫の無精子症。 卵子・精子は採れても いい受精卵ができません

女性には問題はなく、夫の無精子症で顕微授精に臨んだものの、
なかなかいい受精卵ができない場合、
どのような治療を選択したらよいのでしょうか。
かしわざき産婦人科の柏崎祐士先生に伺いました。

2019.3.26

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※2019年2月25日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.41 2019 Spring」の記事です。


さくらさん(39歳)からの相談
相談内容
採卵1回目はアンタゴニスト法で6個採卵、正常卵が2個、顕微授精するも胚盤胞まで育たず、前核期と初期胚盤胞で発育停止。2回目はショート法で12 個採卵、正常卵が12 個、顕微授精するも非受精9個、受精した3個も分割期と初期胚盤胞で発育停止。3回目もショート法で9個採卵、正常卵は8個で受精したのは5個、うち1個は単核で破棄、分割胚を凍結し、8分割と5分割を移植するも陰性。次回は残りの4分割を2個移植予定ですが、このまま同じ治療を繰り返していても妊娠はできないのではないかと思っています。精子採取は精巣内精子採取術(TESE)より顕微鏡下精巣内精子採取術(MD-TESE)のほうがいい、3日目で4分割の胚は妊娠率が低い……など、不安はたくさんあります。

●これまでの治療データ
【検査・治療歴】結婚して13 年間子どもができず、2年前から不妊治療を開始。女性側の検査結果は問題なく、2年近く前のAMH値は5.97ng/ml。これまで採卵3回、凍結初期胚移植を1回実施(陰性)。
【不妊の原因となる病名】男性不妊(閉塞性無精子症、重度の両側精索静脈瘤)。
【精子データ】無精子症。精索静脈瘤の手術と4カ月間のホルモン治療後、TESEで精子を10 本採取し凍結。動いているものが少ないため、担当医からは「カルシウムイオノフォア」をすすめられている。
【サプリメントの使用】受精卵凍結まではメラトニン、ミトコンドリアサプリ、ビタミンC・D、葉酸、亜鉛、コエンザイムQ10 を使用

まとめ
●受精するなら精子側の影響はないのでは。
●TESEで精子が採れるなら問題ありません。
●低刺激法で少数精鋭にしてみては。

お話を伺った先生のご紹介

柏崎 祐士 先生(かしわざき産婦人科)


京都府立医科大学医学部卒業。2000 年まで日本大学板橋病院で主に不妊治療に従事し、その間、米国エール大学医学部産婦人科で研修。その後、「かしわざき産婦人科」副院長に。日本生殖医学会生殖医療専門医、日本産科婦人科内視鏡学会認定医。

≫ かしわざき産婦人科

採卵を3回行って、卵子が採れてもなかなかいい受精卵にならないようです。これは男性不妊が影響しているのでしょうか。


受精してしまえば男性不妊でもそうでなくても同じ。精子の質はそれほど影響していないと思います。3回目は卵子8個のうち5個受精して4個が正常分割し、8分割までいった受精卵も1個あったとのこと。率はよくありませんが移植まで行ったので、ここまできたら精子側の問題とかは関係がないと思います。とはいえ、影響はゼロとはいいきれません。女性側も年齢が高く、卵子の質が低下していることが考えられるので、どちらが悪いとはいえないでしょう。


無精子症のため、TESEで精子を採取して10本凍結したそうですが、動いているものがほとんどなく、活性化させるためにカルシウムイオノフォアをすすめられたそうです。これはどんな方法ですか?


受精させるためにはカルシウムイオンという物質が不可欠です。精子が卵子の中に入ってきた時、卵子の細胞内のカルシウムが一つのシグナルになって活性化し、それが受精に導くといわれているんですね。カルシウムイオノフォアという薬剤を使って細胞内のカルシウムイオンを増加させ、受精を促すのがこの方法です。
国内の不妊治療専門施設でもカルシウムイオノフォアを実施している所は少なくありませんが、効果についてオフィシャルな報告はまだありません。つまり、きちんとしたエビデンスはないということですね。
また、安全性も100%だと証明されていませんので、先生からよく説明を伺ってから決められたほうがいいかもしれません。個々の報告ではうまくいったという例もあるようですから、確かに一つの方法としては考えられると思います。


TESEかMDーTESEかという選択についてはどう思われますか。


どちらも無精子症を対象とした外科的な精子採取術で、TESEは陰嚢部分に小さくメスを入れ、精巣の組織から精子を直接採取する方法です。一方、micro(MD)ーTESEは手術用の顕微鏡を用いて、精子が存在している精細管を見つけ出し採精する方法なんですね。
さくらさんのご主人のような閉塞性無精子症で、比較的精子が見つかりやすい方の場合はTESEで採取することが多いですね。実際にご主人も精子はちゃんと採れており、どちらの方法でも精子の質に差はないので、あえてMDーTTESEを選択する必要はないと思います。


これまでの治療で、ほかに変えるべき点はあるでしょうか。


さくらさんは年齢の割に、強めの刺激で採卵されているようですね。2年近く前のAMH値が5.97ng/mlで、38歳にしては少し高めの数値です。もしかしたらPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)で、それにより卵子の数も多く採れていたのかもしれません。もしかしたら、これまでの刺激法が体質や年齢に合っていなくて、刺激することで逆に卵巣を疲れさせていたということも考えられます。
当院でしたら、この年代の方で一度刺激して悪い結果になったら、次は刺激を弱くしていくことを考えます。採れる卵子の数は減ってしまうかもしれませんが、少数精鋭の考えで質のよい卵子の獲得を目指していくと思いますね。ショート法が2回続いているので、次回はクロミッド®などを使う低刺激法、もしくは自然周期でトライしてみてはいかがでしょうか。


移植はなるべく胚盤胞になるまで待ったほうがいいですか。


なかなか胚盤胞までいかなかったら、初期胚で戻すことを考えてもいいと思います。「胚盤胞になるまで待って戻すべき」という意見もありますが、培養器よりはお腹の中の環境のほうがよいと考えて、当院では初期胚の移植も実施しています。


サプリメント摂取や運動、低糖質の食事など、治療以外のことも積極的にされているようですが。


サプリメントや運動と妊娠についてのエビデンスはないので、「これをすると妊娠する」ということははっきりいえません。ですが、ご自身が納得されているなら続けてもいいと思います。もしPCOSだった場合、低糖質の食事は望ましいですね。甘いものなど間食は控え、バランスのよい食生活を送ってください。


先生から
年齢の割に強い刺激で卵巣が疲れているのかも。
次は刺激を弱くして採卵を

出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.41 2019 Spring
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