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知りたかった男性不妊! 精索静脈瘤って?

インタビュー 不妊治療

知りたかった男性不妊! 精索静脈瘤って?

「なかなか子どもができない…」という時、女性だけでなく男性側に原因がある場合があります。どんな原因が考えられるのか男性不妊の専門医である元町宮地クリニックの宮地系典先生に伺いました。

2019.3.22

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不妊の原因は男女ほぼ半々ぐらい




子どもが欲しいと思って夫婦生活を送っているのに1年以上授からない場合、不妊症と診断されます。
今やその数は、妊娠を希望する全カップルの約15%にも上るといわれています。
不妊の原因を探ってみると、その割合は男性側、女性側ともに半々ぐらいですが、かつては「妊娠できないのは女性側に問題がある」と考えられる傾向がありました。

その後、メディアなどで不妊症が取り上げられるようになった20年前くらいから、男性側にも不妊の原因があるということが認知され始めました。今では不妊症への意識の高い男性も増え、自ら率先して不妊の検査を受けに来る方もいらっしゃいます。


 


男性不妊の原因の30~40%を占める精索静脈瘤


男性不妊を引き起こす原因はさまざまありますが、なかでも原因の30~40%を占めるのが「精索静脈瘤」という病気です。

精索静脈瘤とは、精子がつくられる精巣のすぐ上の蔓状静脈叢という静脈に血流障害が起こり、そのせいで精巣のまわりに瘤(こぶ)ができてしまう病気のことをいいます。一般男性の約15%にみられます。

左にのみ症状が現れるのが88%、右のみが2%、両側が10%と、圧倒的に左にのみ瘤ができやすいのも特徴の一つです。

精索静脈瘤ができると、本来、心臓に戻るはずの汚れた血液が精巣内にたまりがちになり、精巣内が酸化されやすくなったり、温度が上昇します。そのため、精子をつくる能力が落ちたり、つくられる精子の質が下がるため、不妊の原因になるといわれています。

1人目は普通に授かったのに、なかなか2人目が授からないという理由で不妊症の検査を受け、精索静脈瘤が判明するケースも多く見受けられます。

鏡を見ながらセルフチェックをし、精巣や陰嚢のサイズが左右で明らかに違う、違和感があるなど、異変に気づいた時は、すみやかに男性不妊の専門医を受診するようにしてください。


 


手術することで約7割の人の精液の所見が良くなる


精索静脈瘤と診断された場合、程度に応じて3つのグレードに分類します。また、触診ではわからず超音波検査で認められた精索静脈瘤はサブクリニカルといわれています。
サブクリニカルともっとも軽度なグレードⅠと診断された場合は、経過観察になり、場合によっては漢方などを服用しながら精液の状態をチェックしていきます。
グレードⅡ、グレードⅢの場合は、手術が必要になります。

精索静脈瘤の手術にはさまざまな方法がありますが、当院では、合併症が少ないという理由から鼠径部あたりを切開して行う「顕微鏡下低位結紮術(けんびきょうかていいけっさつじゅつ)」という方法で手術を行っています。

1時間半くらいで終わるため、その日のうちに自宅に帰ることができるのも、この手術の特徴の一つです。

手術後、半年ほど経過すると、約7割の人の精液の所見が改善され、4~5割の人が自然妊娠できるといわれています。

ただし、精索静脈瘤の手術は、執刀医の経験数や熟練度によって所要時間や術後の経過などが異なってくるため、経験豊富な男性不妊専門医に行ってもらうのが望ましいでしょう


 


その他の男性不妊の原因


男性不妊の原因は精索静脈瘤以外にもいくつかあります。
WHO(世界保健機関)による正常な精液の所見は、
・精液量…1.5ml以上
・精子濃度…1500万/ml以上
・運動率…40%以上
・総精子数…3900万/ml以上
・正常形態率…4%以上
となっています。

上記に比べて量、数が少ない場合は「乏精子症」、運動率が低い場合は「精子無力症」と診断されます。
いずれの場合も内服と注射を行い、精液の所見が改善されるかを確認します。

また、まったく精子が認められない場合は「無精子症」となります。無精子症は大きく2種類に分けられます。
精子はつくられているけれど通り道が両方ふさがっている閉塞性無精子症の場合は、比較的容易に精巣から精子を取り出すことができます。したがって、顕微授精することで受精、妊娠が可能です。

一方、もともと精子をつくる機能が下がっている非閉塞性無精子症の場合は、精巣から精子を採取できる確率が3~4割になります。この場合は、採取できた精子の中からより良好な精子を選別し、顕微授精することで、妊娠できる確率を高めます。

ただし良好な精子を選別できる医療施設は限られているため、事前に対応してもらえるか確認しておくといいでしょう。


 


暴飲暴食を避け適度に運動することが大切


「なかなか妊娠に至らないな」と感じたら、早めにご夫婦で専門の医療機関を受診することが大切ですが、日常生活の中でも意識できることはあります。

コレステロール値や尿酸値が高いと薬を服用して数値を下げることになりますが、それらの内服薬が精子の状態に悪影響を及ぼすことがあります。
そのため、日頃から飲みすぎ、食べすぎを避け、健康的な生活を心がけてください。

また、筋肉を動かすとテストステロンという男性ホルモンが増加します。それにより精子の状態が良くなる傾向にあるので、毎日 適度な運動をすることも効果的です。

そして「妊娠」ばかりにとらわれず、気持ちに余裕をもって男性不妊とつきあうことが、とても大切です。


 


女性だけでなくカップルで不妊症と向き合うことが大切


かつては「不妊症は女性側の問題」と考えられていましたが、不妊の原因は男女半分ずつくらいなので、カップルで治療に取り組むことが妊娠への近道です。

男性不妊症は、30~40%を占める精索静脈瘤をはじめ、乏精子症、精子無力症、無精子症などがありますが、何が原因かをできるだけ早く見極め、適切な治療を行うことが重要です。

「なかなか妊娠できない」「女性側には原因が見当たらないのに妊娠に結びつかない」と思ったら、男性不妊専門医にぜひ相談してみてください。


 


お話を伺った先生のご紹介

宮地 系典 先生(元町宮地クリニック院長)


日本泌尿器科学会専門医・指導医。日本生殖医学会指導医。
東邦大学医学部卒業後、慶應義塾大学医学部泌尿器科入局。助教を経て、横浜の警友総合病院、けいゆう病院に勤務。その後、東京歯科大学市川総合病院に在職中に医学博士を取得。医長、講師を歴任し、泌尿器科手術や男性不妊手術などを多数行う。2009年に元町宮地クリニックを開院し、院長に就任。
「穏やかな口調でわかりやすく治療方針などを説明してくれる」と、不妊症で悩む男性患者さんからの信頼も厚い。


≫ 元町宮地クリニック

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