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カバサールⓇを中止。排卵誘発をしても排卵できません【特集:排卵障害の不妊治療】

コラム 不妊治療

カバサールⓇを中止。排卵誘発をしても排卵できません【特集:排卵障害の不妊治療】

不妊の原因となる高プロラクチン血症は一度の検査で診断しづらいもの。福井先生に自覚症状の大切さや対処法などをお聞きしました。

2018.5.18

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不妊の原因となる高プロラクチン血症は、一度の検査では診断しづらいもの。
福井先生に、高プロラクチン血症と判断する際の自覚症状の大切さや対処法、
予防のために気をつけたい点をお聞きしました。


※2018年5月25日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.38 2018 summer」の記事です。





相談者:ななさん(28歳)からの相談


▶ 高プロラクチン血症。HCG製剤を注射しても排卵しません。


不妊治療を始めて3カ月ほどになります。血液検査、卵管造影検査ともに異常がなく、夫の精子運動率も少し低めではあるものの妊娠可能との結果が出ました。また、高プロラクチン血症と診断され、カバサール®を服用していましたが、現在は中止しています。先日、卵胞が18mmだったためHCG製剤を注射しましたが、5日後に確認しても排卵しませんでした。原因を教えてください。また、いずれ排卵できるのでしょうか。






Doctor’s advice


〜あらゆる検査で原因を探り対処しましょう〜

高プロラクチン血症かどうかは、検査の値よりもまず自覚症状があるかどうかが大切です。数値が高くても自覚症状がない場合は、HCG製剤の量や、子宮内膜症、多囊胞性卵巣の検査をするなどほかの原因も探ってみては。




お話を伺った先生のご紹介

福井 敬介 先生(福井ウィメンズクリニック)


1989 年、日本大学医学部卒業。卒業と同時に愛媛大学産科婦人科に入局、愛媛大学大学院医学専攻科修了。2000 年愛媛大学産科婦人科学助教授。2001 年、「高度な生殖医療をより身近な医療として不妊カップルに提供したい」と、福井ウィメンズクリニックを開設する。

≫ 福井ウィメンズクリニック

妊娠〜産後の一定期間妊娠を防ぐためのホルモン


高プロラクチン血症とは、脳下垂体で産生・分泌されるプロラクチンというホルモンが過剰に分泌され血液中に増加している状態です。脳下垂体にプロラクチノーマ(プロラクチン産生腫瘍)ができることにより、プロラクチンが過剰に産生されます。後述する特有の症状に加え、プロラクチンの血中濃度が高い場合に高プロラクチン血症と診断されます。
本来、妊娠〜産後に新たな妊娠をしないようプロラクチン濃度が高くなります。ところが妊娠をしていない女性のプロラクチン濃度が高くなると、排卵障害が起こり、不妊の原因となってしまいます。所見としては、月経不順、無月経、黄体機能不全、乳汁が出続けることなどが挙げられます。これらは産後の女性にみられる状態でもあるため、2人目不妊の場合は自覚しづらいと思います。たとえば、出産後、乳離れをしてしばらく経つのにいつまでも乳汁が出続ける場合は、高プロラクチン血症を疑ったほうがいいでしょう。



 



プロラクチン血中濃度は変動しやすく診断が難しい


プロラクチンの血中濃度は条件によって変動しやすく、月経周期やストレスを受けた時、睡眠時間、朝と夕方など時間によっても変動します。ですから、一度の検査で高プロラクチン血症と診断するのはなかなか難しいのです。1回目の検査で高プロラクチンの結果が出ても、数日後に違う時間帯で検査をすると正常値が出ることも多いからです。このように検査時の状況によって変動がある場合は、一定の条件下で複数回、検査をしたほうがいいでしょう。
また、服用している薬がプロラクチンの血中濃度を高める原因になっている場合があります。胃潰瘍の薬や吐き気止め、また、心療内科で処方されるような気分をリラックスさせる薬を内服している場合は、問診の際に医師に知らせてください。


薬で治す場合は長期の服用が必要


そのうえで、やはり高プロラクチン血症だという結果が出れば、原因は何かということを考えます。一番多いのは、脳下垂体にできたミクロプロラクチノーマによるもので、その場合はカバサール®などの薬でプロラクチンの産生を抑えていきます。ただし、薬の服用は、少なくとも半年~3年くらい続けなければ治らないと思います。
ななさんの場合は不妊治療を始めて3カ月の時点でカバサール®を中止されたのなら、高プロラクチン血症ではなかった、ということが後から判明した可能性もないとはいえません。薬の服用をやめると、リバウンドによりプロラクチンの血中濃度が極端に上がる危険性もあります。薬の服用方法や中止するタイミングは十分に注意する必要があり、医師と相談しながら行いましょう。
一方、マクロプロラクチノーマの場合は、薬では対処できないので、手術で切除することになります。


基本は、数値よりも自覚症状があるかどうか


これまでお話ししてきたように、プロラクチンの血中濃度は、病的因子のほかに、検査時の状況といった変動因子、薬剤といったさまざまな要因によって変化します。これらの背景を照らし合わせ適切な対処をするためには、不妊に直接関係のないと思われることでも医師に伝えてください。
まずは、月経不順、無月経、黄体機能不全、乳汁が出続けるなどの自覚症状があるかどうかがポイントです。そのうえで、プロラクチンの血中濃度を調べる際には、十分な睡眠をとり、ストレスのない状態で検査をするのがベストです。数値が正しいかどうか疑わしい場合は、何度か検査をします。そして、高プロラクチン血症と診断されたら、原因に応じた治療をします。薬剤性なら原因となっている薬を中止し、甲状腺機能低下症によるものなら甲状腺ホルモンを補充します。プロラクチノーマならば薬物療法と場合によっては手術をします。
ななさんが排卵しなかったのは、高プロラクチン血症が原因というわけではないのかもしれませんね。HCG製剤を増やしてみるなどの対処もできますし、子宮内膜症や多囊胞性卵巣の検査をするなど、ほかの要因も探ってみてはいかがでしょうか。


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