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【医師監修】不妊の原因から検査まで

インタビュー 不妊治療

【医師監修】不妊の原因から検査まで

日本では約3組に1組のカップルは不妊症に悩んだことがあるそうです。不妊の原因から検査まで、中村先生にうかがいました。

2020.1.1

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不妊の定義


WHO(世界保健機関)は「1年間、避妊をせずに性生活を試みても妊娠に至らない」ことを不妊と定義しています。


これは、避妊を行わず一般的な夫婦生活を持つ夫婦の80%が1年以内に、90%が2年以内に赤ちゃんを授かることができることから設けられた目安です。


 


国立社会保障人口問題研究所の調査により、日本ではおよそ約3組に1組のカップルは不妊症に悩んだことがあることがわかっています。近年では晩婚化が進み、不妊症はより身近な問題になってきています。


 


「まだ一年経っていないから、私たちは大丈夫」 そう思っていませんか?


 


赤ちゃんが欲しいと思っているにもかかわらずなかなか妊娠しない場合、あるいは結婚が遅かった場合などでは、早めに専門の医師等に相談することが大切です。


不妊症の原因


不妊症の原因は大抵、複数の因子が絡み合っています。下の図を見てわかるように、原因は多岐に渡り1人につきひとつだけとも限りません。




夫婦両方の検査の重要性


「卵子の老化」は、不妊の原因として今や多くの人が知るとなった一方で、男性側の因子に対しては、まだ女性側ほど周知されていないという現状があります。


 


WHOが発表した不妊症の原因をグラフ化してみると、不妊症の原因が男性側だけにある夫婦は約4組に1組、男女両方にある夫婦は約4組に1組であり、男性側の因子が関わっている夫婦が約半数にのぼることが分かります。


 


不妊症は女性だけの問題ではなく、夫婦ともに検査を受けることが重要になっています。


不妊症と検査


男性側の初期検査は、精液検査を行います。院内で採精するか、自宅で採精したものをクリニックまで持ち込んで検査をします。


 


女性側の検査は、生理周期に合わせて順次行われます。


 


経腟超音波下通水検査(子宮卵管造影検査)は排卵前、子宮口から細いチューブ(カテーテル)を通して、空気と混合させた生理食塩水を流し、エコーで卵管の様子を確認します。子宮卵管造影検査より痛みが少なく簡易な方法です。




卵管は、卵子が子宮まで送られる経路である他に、卵子と精子が受精する場所であり、卵巣から排卵された卵子を捕まえる役割を持つなど、様々な働きがあります。この経路が閉塞/狭窄することで、それらの役割が果たせない場合、不妊の原因になります。 




子宮頸管は、普段は外部からの細菌侵入を防ぐため関所のような役割を果たしています。排卵期には頸管粘液の分泌量が増え、精子が子宮内に遡上しやすい状態が整えられます。


 


ヒューナー検査は排卵の時期に合わせて、夫婦生活を行っていただき、翌朝に子宮頸部粘液を採取して顕微鏡で観察します。




頸管粘液検査は頸管粘液が排卵期に相応しい状態になっているかを調べます。


排卵期以外の頸管粘液は少量で粘度の高い状態ですが、排卵期が近づくと頸管粘液の分泌量が増えサラサラの状態になります。


 


もし、過去に他院で行なった検査があれば医師にきちんと伝えましょう。その際、検査データを提示できればよりスムーズです。


 


各種血液検査は以下の二つの時期に分けられます。




①生理周期3-5日頃


卵胞ホルモン、黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモン等のホルモンの基礎値を計測します。PRL(乳腺刺激ホルモン)、AMH(アンチミューラリアンホルモン)等もこの時期に計ります。


 AMHは残りの卵の総量の参考になる卵巣予備能を予測する血液検査として近年注目されています。


 


②排卵後7日頃


黄体ホルモン、クラミジア抗原/抗体等のホルモンを測定します。


①②のほかにも、甲状腺機能を測る検査や抗精子抗体検査などの検査を行う場合があります。


 


ご紹介した他にも、まだまだたくさんの検査がありますが、全ての検査を必ずしなくてはいけないわけではありません。中には、重視する/しないの判断が分かれる検査もあります。


 


「たくさん検査をしたのに、どちらにも原因は見当たらない」と悩むご夫婦が一定数おられますが、不妊症は検査を行えば必ず原因が分かるというものではありません。 



不妊症検査の意義


不妊症の原因となるものの多くは痛みも不快感もないため自覚が難しく、多少の自覚があっても放置されがちです。不妊という状態は、妊娠・出産に至るどこかのプロセスで問題が起きているのは確かなのですが同時に今の医学では検査で調べられない部分も多く残っており、原因の断定は非常に困難なのです。


 


多くの方は「妊娠できないのはなぜか?」「どこが悪いのか?」「何が原因か?」などが気になって、原因の特定の為、もしくは正常であることを証明する為の検査を希望されます。


しかし、実際のところは「検査に関しては問題ありません」とわかっても、「絶対妊娠できます、大丈夫」というわけではありません。つまり「正常」であれば「妊娠できる」ということにはならないのです。


 


では「そもそも検査は必要なのか」と疑問に思うかもしれません。しかし、漫然とステップアップをしていくだけでは時間を浪費してしまいます。治療の最初に行う検査は治療方針を立てる上で非常に重要な意味を持ちます。


 


統計などを見ると、治療の効果は一定の回数で頭打ちになって伸び悩む傾向にあります。したがって、最初から計画をしっかりと立てておいてステップアップしていくか、あるいは早めに体外受精を試みる方が最終的には早く良い結果が得られる場合もあります。


例えば、精液検査の所見が悪い場合、タイミング療法を試し続けるのは妊娠・出産に良い方法とは言えません。また、ヒューナー検査と精液検査に問題がなく、タイミング療法を一定の回数行っても妊娠しない場合には、人工授精を行うことにこだわらずに体外受精を行う方が妊娠への近道かもしれません。




これらの初期検査で分かる情報を元に、どの段階から治療を始めるか、もしくは一般不妊治療をどのくらい行うかを考え、最終的には夫婦の希望や事情を踏まえて決定していきましょう。


監修してくださった先生のご紹介

中村 嘉宏 先生(なかむらレディースクリニック)


大阪市立大学医学部卒業。同大学院で山中伸弥教授(現CiRA所長)の指導で学位取得。大阪市立大学附属病院、住友病院、北摂総合病院産婦人科部長を経て、2013 年より藤野婦人科クリニック勤務。2015年4月なかむらレディースクリニック開院。

≫ なかむらレディースクリニック



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