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妊娠糖尿病の検査とは?

インタビュー 妊娠・出産

妊娠糖尿病の検査とは?

10人に1人いるともいわれている妊娠糖尿病。いつ検査を受ければ、よりよいタイミングで病気を発見できるのでしょうか。不安を解消する知識や、診断が出ても無事に出産するための心構えを井上レディースクリニックの井上裕子先生にお聞きしました。

2018.8.3

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妊娠糖尿病の検査とは?


いま、妊娠中にのみ糖尿病を発症する”妊娠糖尿病”が増えていて、それが深刻化しています。日本産婦人科学会では早期発見をするため、妊婦全員に尿糖検査とは別にスクリーニング検査をすることを推奨しています。検査は妊娠初期と中期の2回行いますが、自費での検査になるので、実施回数は医療機関によって異なります。


 


・初期


妊娠4~12週に、採血して随時血糖値を測ります。 基準値が100㎎/dL以上は妊娠糖尿病の可能性があり、再検査を行います。100㎎/dL以下は中期にまた検査を行います。


 


・中期


妊娠24~28週に採血か、ブドウ糖を飲んで随時血糖値を測る50gブドウ糖負荷検査(自費)を行います。基準値である140mg/dL以上は妊娠糖尿病の可能性があり、再検査を行います。


 


妊娠糖尿病の再検査とは? 気をつけることは?


再検査になると「75gOGTT」を行います。75gOGTTは「経口ブドウ糖負荷試験」ともいい、75gのブドウ糖が入った甘いサイダー水を飲んで、血糖値を下げるホルモンのインスリンが分泌された量を調べる検査です。


 


そしてブドウ糖水を「飲む前」「飲んだ1時間後」「2時間後」の計3回採血をして血糖値を測ります。検査前夜から検査の当日の朝までは空腹にし、朝食は食べないで受診します。測った数値が次の基準値を1つでもオーバーすると妊娠糖尿病と診断されます。


・空腹時血糖値:92mg/dL以上


・ブドウ糖摂取後1時間値:180mg/dL以上


・ブドウ糖摂取後2時間値:153mg/dL以上


 


妊婦さんは「妊娠糖尿病」と診断されると大きなショックを受け、不安になります。でも、決して落ち込まないでください。


 


妊娠糖尿病は糖尿病の一歩手前です。正確にいうと、「妊娠中に初めて発見や発症した糖尿病で、まだ糖尿病に至っていない糖代謝異常」の状態です。重症(2時間値が200㎎/dL以上はハイリスク)の場合は別として、食事療法を徹底して運動もすれば血糖値はコントロールできます。


 


当院では妊娠糖尿病と診断した妊婦さんには、管理入院(3日間)をしてもらい、1日4回の血糖値を測定しながら、血糖値をコントロールする食事と運動の具体的な内容を学んでもらいます。妊婦さんが主体になる治療なので、ひと通りの栄養知識が必要だからです。


 


退院してから分娩までは、医師とスタッフがしっかりサポートしますので、安心して出産に臨んでください。実際、薬物療法をしないで、元気な赤ちゃんを出産しているケースは多いのです。


 


妊娠糖尿病の原因、リスク、対策は?


原因は?


妊娠すると胎盤で血糖値を上げるホルモンが産生されるため、妊娠中期以後は血糖値を下げるホルモン(インスリン)が効きにくくなり、血糖値が上がります。症状はまったくなく、検査で初めてわかります。


 


リスクは?


妊婦さんには妊娠高血圧症候群、早産、難産などのリスクがあります。赤ちゃんにも影響が出て、出産前は巨大児化や、それにともなう肩甲難産(分娩の時に赤ちゃんの肩がつかえたり骨折する)の恐れがあり、出産後には低血糖などを起こしやすくなります。


 


対策は?


妊娠糖尿病の対策は、食事療法が基本です。それでも血糖コントロールが難しい場合は、経口の糖尿病治療薬は妊婦さんには使えないので、インスリン注射により管理が必要なこともあります。血糖値の上昇に関係するのは炭水化物なので、炭水化物に含まれる糖質の摂取量をひかえます。糖質は肉や魚、卵、豆類、海藻類、油にはほとんど含まれず、主食のご飯やパン、麺、根菜類、果物、調味料(みりん、ケチャップ、ハチミツなど)に多く含まれます。


 


ここで糖質に関するクイズです。


≪Quiz≫ 次の食べ物で、糖質が多いのはどちらでしょうか?


1)五穀米と玄米


2)ベーグルとクロワッサン


3)全粒粉パンとふすまパン(ブランパン)


4)串団子とシュークリーム




≪Answer≫


1)玄米


五穀米は糖質量約48gに対して、玄米は約54g。ヘルシーなイメージの玄米ですが意外に糖質は多いのです。ちなみに白米も約55gと多め。またもち麦なども歯ごたえがあり、腹満感をより得られます。同様にざる蕎麦もヘルシーと思われがちですが、蕎麦汁にはみりんと砂糖をたくさん使い、最後に飲む蕎麦湯も糖質たっぷりです。


 


2)ベーグル、3)全粒粉パン


全粒粉パンは糖質の多い胚芽を含んだ小麦粉で作るので、表皮だけ使うふすまパンより糖質が多くなります。またパン類は、たんぱく質、野菜が不足しやすいので、ブランパンなどを使ったサンドイッチが手軽でオススメです。


 


4)串団子


上新粉や白玉粉、あんこを使う和菓子も、意外に糖質多め。また、小麦粉やパン粉を使うフライも同様です。糖質が低めのおやつとしては、チーズ類や無糖ヨーグルト、ナッツ類も腹もちが良くオススメです。


 


いまは妊婦さんを含め、3度の食事をパンやおにぎりだけ、蕎麦やパスタだけで済ますというように糖質主体の食事スタイルが増えていて、他の栄養素が不足しがちです。


赤ちゃんの成長や発育にはタンパク質や脂肪、ビタミンなども大切です。糖質をひかえながら肉や魚、卵、野菜、乳製品、海藻類、豆類、油をまんべんなく食べることが大事です。


 






井上先生より まとめ



仮に妊娠中期で妊娠糖尿病と診断された場合、出産までは約3~4カ月間です。つまりこの期間だけ、食事療法を頑張ればいいのです。食事づくりの工夫などで努力したぶんは、生まれてくる赤ちゃんのすこやかな食事作りに必ず役立ちます。
また、妊娠中に見つかったトラブルは、20年後に改めて現れる可能性が高いといわれています。妊娠糖尿病は赤ちゃんからのメッセージです。「将来の糖尿病を防げる機会」ととらえ、私たちと一緒に血糖値の管理をして、出産にのぞみましょう。
妊娠糖尿病(GDM)は「妊娠が終わる」ことで改善します。しかし、GDMの既往がある女性、家族に糖尿病(DM)のある人は将来、本当のDMを発症しやすいという報告があります。
妊娠が終わっても健康に気をつけた食生活を続けることは大切です。





お話を伺った先生のご紹介

井上 裕子 先生(井上レディースクリニック 院長)


1977年、共立女子大学文芸学部卒業後、医師を志し1984年、帝京大学医学部を卒業。1919年に祖父が開業した医院3代目院長に就く。分娩、婦人科検診、不妊治療を柱にしながら「女性総合診療科」を目指し、女性の生涯寄り添った医療を施したいという姿勢を貫く。個人産婦人科で乳がんや子宮がんなど婦人科系の検診を受けられるのは全国でも希少。ほかの臓器のがんに比べて婦人科系がんは早期発見・早期治療で良くなる確率が高いので、検診を積極的にすすめる。

≫ 井上レディースクリニック

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