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採卵ごとに刺激法を変えると受精率も変わる?

コラム 不妊治療

採卵ごとに刺激法を変えると受精率も変わる?

採卵時にはいくつか刺激法がありますが、一つの刺激法で結果が出なかった場合、別の刺激法を試せば受精率は上がるのでしょうか。そんな質問に対し、福井ウィメンズクリニックの福井先生が意外な視点からアドバイスをしてくれました。

2018.12.20

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※2018年11月22日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.40 2018 Winter」の記事です。


相談者:夢さん(29歳)
● 採卵ごとに刺激法を変えること。
先日、①アンタゴニスト法で16個採卵しましたが、受精できたのはたったの3個でした。しかも1個は異常受精で廃棄になり、残った2つともG3で3日目9分割と3分割という結果になりました。②採卵時に16個も採れたのでいくつ胚盤胞になるかなと期待していたのですが、正直このような結果が出てしまい落胆しています。
夫が③乏精子症のため、手術をして凍結保存した精子を使用していますが、④受精時は卵子の質に左右されると知りました。今回がこのようなよくない結果になっても、次に採卵した時は受精率が高くなるようなことはありえますか。また、刺激法を変えれば、受精率が変わる可能性はあるのでしょうか。
顕微授精の受精率は70〜80%と聞いたことがありますが、私の場合は今後も毎回このような確率になってしまうのではと思うと、諦めたほうがいいかもしれないと思いはじめています。

ドクターにはこう聞いてみよう!
夫婦で疑問をまとめ、
書き出してみましょう
普段から疑問に思っていることを夫婦で話し合いながら整理する。それを、メモ書きでいいので、ドクターもしくは窓口に渡すことをおすすめします。次回の来院時までに調べて回答してくれると思いますよ。

お話を伺った先生のご紹介

福井 敬介 先生(福井ウィメンズクリニック)


1989年、日本大学医学部卒業。卒業と同時に愛媛大学産科婦人科に入局、愛媛大学大学院医学専攻科修了。2000年愛媛大学産科婦人科学助教授。2001年、「高度な生殖医療をより身近な医療として不妊カップルに提供したい」と、福井ウィメンズクリニックを開設する。

≫ 福井ウィメンズクリニック

アンタゴニスト法のメリットは多くの採卵が期待できること


①アンタゴニスト法で16個採卵しました

アンタゴニスト法は、ホルモン剤を注射して卵胞を育て、一方で排卵抑制の注射をしながら採卵に適した卵胞の大きさになるのを待つ方法です。薬剤を使う期間が短いことや採卵日のコントロールがしやすいこと、また多くの卵子を採卵できることがメリットとして挙げられています。16個も採卵できたのは、アンタゴニスト法ならではの結果かと思います。
刺激法は、ドクターがその方のAMHや年齢はじめさまざまなデータをみながら選択しているはずなので、それがベストと判断したうえでの結果ではないかと思います。実際に実施してみないとわからないため、アンタゴニスト法で結果が出なかった場合、次回はショート法、あるいはその他の刺激法に変えながら、採卵していく場合が多いです。


発育の状況をみて男性不妊の可能性も


②採卵時に16個も採れたのでいくつ胚盤胞になるかなと期待していた

顕微授精の受精率はもっと高いはずなので、採卵数に対して受精できた数が期待どおりとならず、落胆される気持ちはよくわかります。
ですが、採卵時に16個も採れたことにこだわる必要はないと思いますよ。採卵数が少なくても卵子の質がよければ、たとえ1個の受精卵でも、胚盤胞まで育ち妊娠できればいいのです。
また、アンタゴニスト法のほかにショート法、ロング法とそれぞれ刺激法にはメリット・デメリットがあるため、haniさんにとって最善の方法はAMHなどのデータをみながら試す価値はあるでしょう。
ただ、受精卵がG3で3日目9分割と3分割とのことで、発育の状況からも男性不妊の可能性がうかがえます。原因はご自身だけにあると考える必要はないと思いますよ。


男性不妊の対処法にも目を向けてみては


③乏精子症のため、手術をして凍結保存した精子を使用

精子の数が少ない人を乏精子症、精子の運動性が悪い人のことを運動無力症といいます。精液1mlあたり1500万以上の精子数、40%以上の運動率が基準となります。数の少なさと運動率の低さは併発されることが多く、奇形精子も併発していることがよくあります。
乏精子症の方による顕微授精の場合は、運動精子がわずかながらも存在するので、基本的には男性みずから射出した精液から精子を採取する方法が採られます。そのなかから、運動性が良好で奇形のない精子を選んで凍結保存し、後日その精子を融解してから顕微授精に使用します。
haniさんのご主人の場合は、手術をされたとのことなので、精巣を切り開いて精子を採取したのだと思います。この方法は、どちらかというと自分で精子をほとんど射出できない無精子症に近い方にあてはまる方法だと思います。


精子の質が受精率の低さにつながる場合も


④受精時は卵子の質に左右される

体外受精の場合、採卵時により質のよい卵子を選ばれているのは事実です。しかしそれは、精子が良好な状態であることが前提です。精子の質についても考えるべきではないでしょうか。
やはり、射出したてのフレッシュな精子をそのまま受精する方法が一番自然に近く受精率も高いのではないかと思います。乏精子症の方の場合、ご自身で射出した精子を使うこともできるはずですが、ご主人の場合は手術によって精巣から精子を採取しているので、どうしても質は落ちてしまいます。さらに凍結保存の場合は、運動性の高い精子を集めるため洗浄濃縮してから凍結するといった過程を踏まえており、融解した際に精子が若干疲れてしまう可能性があります。
受精時に元気な精子というわけではないので、卵子の質だけにこだわらず精子の質を上げることも考える必要があると思います。手術までされているので、担当の先生も泌尿器科医と連携しながら治療を進めていると想像します。そのあたりのことを質問されてみてはいかがでしょう。


卵子・精子ともに良好なのが理想
卵子の質や採卵数ばかりに注目しがちで刺激法を模索しているhaniさんの質問全文を読んで、「ポイントは排卵誘発の方法ではなく、男性不妊ではないか」と福井先生は指摘します。乏精子症は多少なりとも射出した精液の中に良好な精子があるということ。
「受精率を高めるには、射出したてのフレッシュな精子を使うのがベストですが、わざわざ手術して精巣から精子を採り凍結保存しています。おそらく、そうせざるを得ない理由があるのだと思います」
すでに泌尿器科医と連携をしながら治療を進めていると想像しつつも、「主治医には採卵だけでなく採精方法についても質問しておくことをおすすめします」と福井先生。
「診療は先生に質問できる絶好のタイミングですが、質問によっては、過去のデータを調べなければ判断しづらいなどの理由で即答できない場合があります。一度、ご夫婦で質問したいことをまとめて、クリニックのコーディネーターや受付に渡しておくとよいでしょう」と、主治医とのコミュニケーションについてもアドバイスがありました。

出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.40 2018 Winter
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