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抗体による染色体異常があったにもかかわらず、妊娠できた!

コラム 不妊治療

抗体による染色体異常があったにもかかわらず、妊娠できた!

【her story vol.60】
不妊の原因は、初めて知った抗セントロメア抗体。
もう子どもを授かるのは不可能と思いましたが、
奇跡が起きて一児の母親になれました。

2019.8.27

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体内に今までに聞いたことのない名前の抗体があり、
それによって妊娠できない可能性のほうが高いと言われた菊美さん。
どん底の気持ちを味わいつつもその困難を乗り越え、妊娠。
今年6月、無事女の子を出産しました。


※2019年8月24日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.43 2019 Autumn」の記事です。


早く子どもが欲しくて人工授精も早めに開始


今年4月下旬、気持ちのよい快晴の日、臨月を迎えた菊美さん(35)がご主人の寛之さん(35)と共に取材場所へ現れました。
「去年の今頃を思えば、この幸せはまさに奇跡です」(寛之さん)
同い年の二人が結婚したのは3年前。子どもが欲しかったため、すぐに妊活を開始しましたが、3カ月経っても子どもができませんでした。
「それで、ジネコに掲載されていた不妊治療の総合レディースクリニックへ行き、診察してもらったんです。先生からは3、4カ月では何ともいえない、年齢的にもまだそんなに焦らなくてもいいからタイミング法で様子をみましょうと言われました」
半年経ったものの、やはり妊娠の兆しがないため、再び医師に相談。そこで初めて不妊検査をひと通り受けます。結果はまったく問題なし。医師からは、タイミング法を続けることを勧められました。
「ただ、私はもともとせっかちな性格。早く次のステップに行きたいからと先生にお願いし、人工授精を始めました」
人工授精も休むことなく、立て続けに4回チャレンジ。しかし、結果が出ませんでした。
「4回が終わった時点で34歳になろうとしていました。年齢的にも早く次に進んだほうがいいと思い、体外受精にステップアップさせてもらいました」
とにかく早く結果が出したかったという菊美さん。しかし、思いもよらない事態が待ち受けていました。


 


初めて聞いた「抗セントロメア抗体」


体外受精の初回は、ショート法で排卵を誘発。卵子は18個も採れました。しかし、ほとんどが異常受精。正常受精した3個も、胚盤胞まで育ちませんでした。卵子は採れるのに受精卵ができなかったのです。
「正常な受精卵だと前核は2つ、精子が飛び込み過ぎて多核になっても3つ。でも私は4つ以上できてしまう。たぶん、体内に抗セントロメアという抗体をもっている可能性があると先生に言われて。セントロメアって初めて聞く言葉だったので最初はよくわからず、戸惑いを隠せませんでした」(菊美さん)
セントロメアとは染色体の中央部分のこと。細胞分裂の際、この部分と紡錘体との結合がうまくいけば正常な受精卵ができます。しかし、抗セントロメア抗体があると結合がうまくいかず、異常受精卵になってしまうというのです。採血検査で、先生の言うようにその抗体があることが判明しました。
菊美さんが通院しているのは比較的規模の大きな神奈川県のレディースクリニック。患者数も多いのですが、それでも抗セントロメア抗体の患者は一年に数名程度。しかも、過去に出産にまで至った人はいないとのことでした。
「そもそも抗セントロメア抗体が、なぜ体内にできるのか原因不明なんです。薬を飲めば治るわけでもなさそうで。もう子どもは授かることはできないんだと暗澹たる気持ちになりました」
菊美さんは体外受精が最後の砦、体外受精さえすれば、子どもができると心のどこかで思っていました。それだけにショックは計り知れませんでした。


 


培養士の励ましで最後まで努力することに


「あの頃、僕もどう気持ちの折り合いをつけていいのかわからず、苦しみましたが、妻は本当につらそうでした。彼女は子どもができなければ、暗闇の人生だと思っていたところがあったから。僕が仕事から帰ると落ち込んでいるし、朝起きると泣いているし。だから、子どもができないとしても二人で楽しく明るく生きていこうと話したりしていましたね」と寛之さんは当時を振り返ります。
菊美さんは不妊治療のNPO法人の相談サービスや病院でカウンセリングを受けたり、お寺の人生相談にも行き、悲しみを乗り越えようとしました。そんななか、菊美さん夫婦の気持ちに希望の光を照らしてくれたのが培養士の存在でした。知識が豊富で、抗体について理論的に説明してくれました。
実は抗セントロメア抗体が不妊の原因になることを知っている人は、医師ですら少ないのです。そのため、この培養士と出会えたことは菊美さん夫婦にとって非常にラッキーなことでした。
「培養士さんに、“医学的にも抗セントロメア抗体に有効な方法は今のところない。でも、顕微授精にすれば、少なくとも精子が飛び込みすぎてしまうのを防げる。数多く卵子を採って受精し、その中から抗体の影響を受けていない受精卵が出てくるまで頑張るしかない”と教えてもらったんです」
ただし、同時にこう釘も刺されました。「10回トライしてもダメなこともあり得る。だから、二人で終わりは決めておいた方がいいですよ」と。そのアドバイスを受けて菊美さんたちは話し合い、市の補助金が出る6回まで挑戦しようと決めました。
「同時に主人の言うように二人だけで生きていく将来も考え始めました。そのほうが治療もつらくなりすぎなくていいかなと思えてきたんです」


 


2回目の顕微授精で奇跡が起こる!


初回は排卵誘発をアンタゴニスト法にして9個卵子を採り、顕微授精を行いましたがうまくいきませんでした。しかし、奇跡が起きたのは2回目の時。ショート法に戻したら卵子が18個採れました。そのうち3個が正常受精卵、そして2個が胚盤胞までいき、さらにその1つが4AAという極めて優れたグレードだったのです。医師も「抗セントロメア抗体があってこのグレードはあり得ない」と絶賛。「もう一生出会えないかもしれないから、完璧な状態で移植したほうがいい」と言われたため、受精卵を凍結して、移植前に再度子宮をひと通り検査することになりました。
「2018年の5月末から3カ月ほどかけて子宮内フローラ(細菌バランス)検査、ERA(着床能)検査、NK細胞活性検査などを受けました。この間に二人でヨガに通ったり国内旅行を楽しんだり。不妊治療中、ずっと気持ちが張り詰めていたので、よい休息になりました」と菊美さんが言うと寛之さんも「移植できる卵があるという、前向きな状態で休めたのはよかったよね」と言葉を添えます。
そして9月に入ってから移植し、月末にはうまくいったことが判明。ただ、抗セントロメア抗体をもっている人は流産の確率が高いと聞いていたので、その時はまだ不安のほうが大きかったと言います。
喜びを実感したのは6週目に入り、心音を確認した瞬間。そして安定期に入った3カ月目あたりからようやく安心できるようになりました。
臨月のお腹をなでながら菊美さんは「今はとにかくワクワクしています。女の子なんですよ」とうれしそう。寛之さんも「のびのびと明るく自由に育ってくれれば十分です」と喜びを隠せない様子。手をつないで帰るお二人の後ろ姿からも幸せオーラがあふれ出ていました。
その後、6月に無事出産しましたと菊美さんからご報告がありました。


 


 



出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.43 2019 Autumn
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