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受精卵が育たず、移植に進めません。この先も治療を続けられる?【40代の不妊治療】

コラム 不妊治療

受精卵が育たず、移植に進めません。この先も治療を続けられる?【40代の不妊治療】

体外受精に進んでも「卵子が採れない」「受精卵が成長しない」などの悩みを抱えている方は多いようです。その原因は年齢だけでなく、妊娠前の健康管理が大きく影響している可能性も。うめだファティリティークリニックの山下能毅先生にお話を伺いました。

2020.1.21

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※2019年11月25日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.44 2019 Winter」の記事です。


ジュン大好きさん(41歳)からの相談
●相談内容
7月初期に採卵をして5個中グレード1の受精卵が2つでき、先生の考えで胚盤胞に育つまで様子をみることになりました。残念ながらそこから分割などに至らず、2個ともダメになり、移植に進めませんでした。年齢的なこともあるのは理解していますが、まだ続けたい気持ちがあるのなら、休まずに次に進むべきでしょうか。2カ月間お休みをしてからとかでは遅いでしょうか。

●これまでの治療データ

【検査・治療歴】
SLE(全身性エリテマトーデス)にともなう肺高血圧症の疑い。(13歳でSLEを患ってから、プレマリンⓇやルトラールⓇなどの薬を使用しないと生理がこない)

【妊娠歴】
流産

【精子データ】
不明

【サプリメントの使用】
葉酸、ザクロジュースなど

まとめ
●BMIが19未満の痩せすぎも不妊の原因に。
●卵子が採れていれば治療の継続は可能。
●刺激法の変更や初期胚の移植も試しては。

お話を伺った先生のご紹介

山下 能毅 先生(うめだファティリティークリニック)


大阪医科大学医学部を卒業後、北摂総合病院産婦人科部長・大阪医科大学産婦人科病棟医長、医局長、講師として、不妊治療や腹腔鏡手術に積極的に取り組む。2014 年、宮崎レディースクリニックの副院長に就任し、2017年4月、同院の院長に。

≫ うめだファティリティークリニック

ーージュン大好きさんは「SLEにともなう肺高血圧症の疑い」があるそうです。これが不妊の原因と考えられるのでしょうか?


そのお話をする前に、この方は154㎝、40㎏と痩せているのが気になります。妊娠にはBMIが大きくかかわっています。BMIとは「体重(㎏)÷身長(m)÷身長(m)」でわかる体格の指標です。標準的なBMIの値は「22」とされていますが、この方のBMIは「16」とかなり低いですね。体重に換算すると12㎏少ないことになります。BMIは卵巣年齢の目安になるAMH(抗ミュラー管ホルモン)とも深くかかわっていて、「卵巣予備能」を示すともいわれています。BMIは高すぎてもよくありませんが、19未満の痩せすぎの方は無月経や無排卵のリスクが高まり、標準体重の女性に比べて妊娠しにくい傾向があります。
最近は、妊娠前の女性の健康管理によって妊娠結果を改善させる「プレコンセプションケア」が注目されています。この考え方には運動、食事、喫煙などいくつかのポイントがありますが、この方は栄養バランスのよい食事を心がけるなどして、適正体重にしっかり戻すことが重要です。
SLE(全身性エリテマトーデス)は、自己免疫性疾患である膠原病の一つです。SLEが不妊の原因ではないと思いますが、この病気が原因で体重が減少しているのであれば、専門医と相談して体重をコントロールする必要があります。また、SLEは不妊より流産の原因になりやすく、SLEのうち40%の方が抗リン脂質抗体症候群を合併して発症するといわれています。抗リン脂質抗体の検査をしたうえで、妊娠をめざしていかれるといいですね。


ーー治療の諦め時について、先生はどう思われますか?


医学的な閉経と判断した時はこちらからお伝えします。しかしそうでない場合の諦め時は、ご本人やご夫婦のお気持ちによると思います。当院で40代の方の治療をする時は、ご本人が希望される限りは治療をサポートします。卵子が採れている方にはご希望に沿ったオーダーメードな治療をご提案します。一方、卵子が採れない方には、卵子提供や養子縁組という選択肢をご提示することもあります。相談者さんは卵子が採れていますので、妊娠を諦める必要はないと思います。


ーー今後どのような治療が可能でしょうか?


相談者さんのAMHの値がわかりませんが、AMHによっては排卵誘発の刺激法が合っていないことも考えられます。ほかの刺激法に変えてみるのも一つです。また、あまり胚盤胞にこだわらず、初期胚の移植を繰り返してみてもいいと思います。年齢が高くなると卵子が採れにくくなり、胚盤胞の到達率も低くなります。一般的に胚盤胞までの到達率は40%といわれています。つまり、10個の受精卵のうち4個しか胚盤胞にならないことになります。相談者さんのように2個とも胚盤胞をめざすのはリスクが高いと思います。2個とも胚盤胞にならずに移植ができなくなると、妊娠の可能性はゼロになってしまうからです。
当院では1回目の移植でなかなか胚盤胞に到達するのが難しい方は、移植のキャンセルを防ぐために、初期胚と胚盤胞の移植をそれぞれ行います。たとえば5個採卵できた時は、受精卵の1個は初期胚で凍結して移植します。2個採卵できた時は1個を初期胚で凍結して、2個目は胚盤胞までいけば、それで凍結することをご提案します。


ーー2カ月間のお休みを希望されています。休まずに治療を続けたほうがいいでしょうか?


お休みされるのであれば、繰り返しになりますが、その間に食生活などを見直して、少しでも体重を増やしていかれるといいですね。また、DHEA、Lーカルニチン、ビタミンD、レスベラトロールなど、抗酸化・抗加齢作用が期待できるサプリメントも併せて摂取されてはいかがでしょうか。
近年、日本の赤ちゃんは、生まれた時の体重が平均300g少なくなっています。なかでも妊娠前に痩せている女性からは、2500g未満の低出生体重の赤ちゃんが生まれる傾向があります。低出生体重の赤ちゃんは脳性麻痺による運動障害や知的障害などの合併症を引き起こす可能性が高いとされています。一番の目的は健康な赤ちゃんを授かることです。妊娠前から生活環境を見直して、妊娠しやすい体に整えていただきたいですね。


先生から
痩せすぎも不妊の原因になります。食事の栄養バランスを見直すなど
適正体重をめざして妊娠しやすい体づくりを

出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.44 2019 Winter
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