未成熟卵が多く受精しないのは多嚢胞性卵巣症候群だから?
永井 泰 先生(永井マザーズホスピタル)
相談者:夏恋さん(29歳)
受精ゼロでした

受精しなかった原因はどんなことが考えられますか。

卵子はたくさん採れたけれど未成熟卵が多かったということは、全体的に卵子が小さかったのではないでしょうか。成熟卵に関しても、成熟する一歩手前の状態だったのでは。もしかしたら採卵するタイミングがずれていて、もう1日程度採卵を遅らせれば結果は変わっていたかもしれません。LHやFSHなど、この時のホルモンのデータがないのではっきりとはいえませんが、まだ未成熟の卵子も、成熟するまで引き延ばしていけば良かったのかなと思います。
卵巣刺激法はロング法を選択されていますが、この方法だとだいたい一定に「この日が採卵」というのが決まってしまうんですね。ほかの刺激法、たとえばアンタゴニスト法だとほぼ毎日ホルモンをチェックして進めていくので、タイミングがピタッと合う。また、アンタゴニスト法でなくても、クロミッド®だけで抑えていって、LHサージをつくってあげればうまく調節できると思います。
体外受精をするなら、卵巣刺激法を変えたほうがいいということですね。

生理3日目の卵胞の大きさと数を見て、かなり多い場合は低い刺激に。FSHの注射を50~75単位から始めて、数が揃うようになったら量をぐっと上げて、3~4個の卵子をつくるようにしていきます。そうすれば、いいものが採れると思いますね。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は妊娠の大きな障害になるのでしょうか。

また、高アンドロゲン血症などが背景にあるPCOSだったら、メトホルミンなどのお薬を3カ月ほど服用すると排卵誘発もいい状態で行えて、しっかり卵子がつくれるようになります。
悲観されることはありませんが、PCOSは年齢を重ねると急に卵子が採れなくなることがありますから、なるべく早めに治療を進めていったほうがいいでしょう。
永井先生より まとめ
●採卵のタイミングを1日程度遅らせても良かったのでは
●数は少なくても、もう少し低い刺激で確実に成熟卵を採っていく
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.33 2017 Spring
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