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未成熟卵が多く受精しないのは多嚢胞性卵巣症候群だから?

コラム 不妊治療

未成熟卵が多く受精しないのは多嚢胞性卵巣症候群だから?

2017春号

2017.5.19

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未成熟卵が多く受精しないのは多嚢胞性卵巣症候群だから?


永井 泰 先生(永井マザーズホスピタル)







相談者:夏恋さん(29歳)


受精ゼロでした


 多嚢胞性卵巣症候群です(AMHの値は4ng/ml)。28歳の時に自然妊娠しましたが、初期流産という結果に。その後1年間タイミングをとり続けても妊娠しませんでした。卵管はきれいに通っており、主人の精子も元気いっぱい。思い切って体外受精に進み、ロング法で採卵したところ12個の卵子が採れましたが、そのうち6個は未成熟卵。残りは成熟卵でしたが、医師から「未成熟卵が多すぎて良くない!」といわれました。主人の精子はすごく良く、「振りかけで十分」とのことでしたが、結果は受精ゼロ。精子が良くても受精障害ということはあり得ますか? それとも卵子側に問題があるのか、もしくは多嚢胞性卵巣が関係しているのでしょうか。



 



受精しなかった原因はどんなことが考えられますか。


年齢がまだお若いし、精子の状態も良好なようですから、1回の体外受精で受精障害だと決めてしまうことはないと思いますね。

卵子はたくさん採れたけれど未成熟卵が多かったということは、全体的に卵子が小さかったのではないでしょうか。成熟卵に関しても、成熟する一歩手前の状態だったのでは。もしかしたら採卵するタイミングがずれていて、もう1日程度採卵を遅らせれば結果は変わっていたかもしれません。LHやFSHなど、この時のホルモンのデータがないのではっきりとはいえませんが、まだ未成熟の卵子も、成熟するまで引き延ばしていけば良かったのかなと思います。

卵巣刺激法はロング法を選択されていますが、この方法だとだいたい一定に「この日が採卵」というのが決まってしまうんですね。ほかの刺激法、たとえばアンタゴニスト法だとほぼ毎日ホルモンをチェックして進めていくので、タイミングがピタッと合う。また、アンタゴニスト法でなくても、クロミッド®だけで抑えていって、LHサージをつくってあげればうまく調節できると思います。


体外受精をするなら、卵巣刺激法を変えたほうがいいということですね。


当院だったら、アンタゴニスト法、もしくはクロミッド®にゴナドトロピンを少し加えた方法で刺激することを提案すると思います。これらの方法はロング法と比べると採れる卵子の数は少なくなりますが、この方は年齢が若く、卵子の質も悪くないはず。流産されましたが過去に受精の経験があるし、卵管因子もない。2、3個の採卵でも妊娠する可能性は十分あるのではないでしょうか。

生理3日目の卵胞の大きさと数を見て、かなり多い場合は低い刺激に。FSHの注射を50~75単位から始めて、数が揃うようになったら量をぐっと上げて、3~4個の卵子をつくるようにしていきます。そうすれば、いいものが採れると思いますね。


多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は妊娠の大きな障害になるのでしょうか。


以前妊娠されて、卵子も採れています。AMH(抗ミュラー管ホルモン)の値も4ng/mlとそれほど高くないので、PCOSでもそれほど重症ではないのでは。排卵誘発をうまく工夫していけば、タイミング法でも妊娠は可能かもしれません。

また、高アンドロゲン血症などが背景にあるPCOSだったら、メトホルミンなどのお薬を3カ月ほど服用すると排卵誘発もいい状態で行えて、しっかり卵子がつくれるようになります。

悲観されることはありませんが、PCOSは年齢を重ねると急に卵子が採れなくなることがありますから、なるべく早めに治療を進めていったほうがいいでしょう。




永井先生より まとめ


●採卵のタイミングを1日程度遅らせても良かったのでは
●数は少なくても、もう少し低い刺激で確実に成熟卵を採っていく



 



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お話を伺った先生のご紹介





永井 泰 先生(永井マザーズホスピタル)


東京医科大学医学部卒業。産婦人科・麻酔科認定医。1989年、埼玉県三郷市に開院。さらに環境を整え、より良い医療を提供するために、2015年に診療所から病院へ改組。産科、婦人科をはじめ、不妊治療、形成・美容外科、小児科と、女性が生涯関わる総合的な医療を、温かく、優しい環境の中で提供。2月に誕生日を迎えた永井先生。最近、ガールフレンドとの間にベビーが生まれたミック・ジャガーより1歳年下。そのバイタリティに負けず劣らず、先生もお元気で、取材の後は卓球の練習に向かわれました。

≫ 永井マザーズホスピタル


出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.33 2017 Spring
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