着床障害と不育症について
石川 弘伸 先生(醍醐渡辺クリニック)
不育症の定義とは?着床障害と不育症の違い
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一方、受精卵が子宮内膜に着床することができず、妊娠そのものがスタートしないのが着床障害です。排卵誘発を行い、体外受精や顕微授精によって培養した良好な胚を移植したにもかかわらず、妊娠しない、化学流産などに終わってしまう状態が着床障害と考えられます。化学流産とは、妊娠反応が陽性となった後、超音波で診察しても子宮内に胎嚢が確認できない状態で、これは流産の回数には含めないことになっています。
では、不育症や着床障害の検査や治療に至るまでの流産の回数が、なぜ2回、3回と決められているのでしょうか。それらは単純に確率の問題であり、統計的な考え方によります。日本では自然流産の起こる頻度はだいたい全体の15%くらいとされています。妊娠しても1割以上の人が流産する確率があるということです。それが2回までなら偶発的に起こりうることと考えてもよいですが、3回以上となると、何かほかに原因があると考えたほうがよいという考え方です。
女性にとって流産はつらいものですが、その半数以上はリスク因子が不明のものです。あまりご自身を責めずに、思わぬ原因が隠れていることもありますので、まず検査を受けてみることをおすすめします。
原因を探るためのさまざまな検査
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ご夫婦の染色体異常については、具体的な治療を受けるかどうかは十分なカウンセリングが必要です。染色体異常があっても普通に生活されている方なら大きな異常が見つかることはあまりありません。軽微な異常であれば最終的には赤ちゃんが生まれることも多いのです。統計的には5人中、4人までは正常、つまり流産は繰り返すけれども最終的には出産できるというデータとなっています。
話は少しそれますが、現在、注目されている検査の一つに着床前診断というものがあります。これはまだ日本では重い遺伝性疾患をもつ方にのみ認められている治療で、一般的には行われていません。ご夫婦に染色体異常があった場合、そのご夫婦の受精卵にも染色体異常が起こる確率が高くなりますので、それを調べて正常な受精卵だけを戻すことで流産を防ぐというものです。
流産を2度、3度と繰り返すと、女性は体だけでなく、精神的にも大きなストレスを抱えることになり、現在その解決策として議論が進んでいます。近い将来には日本でも有効な検査法となりうるでしょう。
詳しく調べても原因が特定できないケースも
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たとえば、子宮に着床を妨げる筋腫などの異常があれば、外科的な手術によってそれを取り除くことは可能です。免疫異常の抗リン脂質抗体症候群であれば、アスピリンの内服やヘパリン注射など、抗凝固療法がある程度は有効であることがわかっています。ですから、それらがリスク因子となっている場合には、有効な治療法となるでしょう。しかし、実際の症例では何が流産や不育症のリスク因子となっているのか、詳しく調べてもわからないケースが多く、原因を明らかにして治療することが困難なのが不育症においては実状なのです。
体外受精や顕微授精の技術が確立し、受精まではかなりサポートできるようになりましたが、移植に関してはほとんど進歩がないというのが今の生殖医療の現状です。着床そのものをサポートする有効な治療法は今のところ、まだ出現していないのです。当たり前のことではありますが、まず検査によってできるだけ着床不全や不育症の原因となりうるリスク因子を取り除いたうえで、適切な排卵誘発を行い、体外受精や顕微授精で得られた受精卵を、できるだけダメージを与えることなく移植する、そのことがよい結果につながると考えています。
石川先生より まとめ
・早めに検査を受けること
・検査で着床を妨げる可能性のある要因を少しでも明らかに
・適切な排卵誘発を行い、体外受精で良質な受精卵を移植
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.33 2017 Spring
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