低AMHでモデレート法をすすめられたけど、ショート法にチャレンジしたい!
コラム 不妊治療
低AMHでモデレート法をすすめられたけど、ショート法にチャレンジしたい!
福井 敬介 先生(福井ウィメンズクリニック
相談者:はるさん(41歳)からの投稿
「ショート法かモデレート法?」
39歳で自然妊娠を経て出産、流産を1回経験しており、FSH等のホルモン値は正常値内です。2人目不妊でタイミング療法を5回試して結果が出なかったので体外受精に進む予定です。病院の方針で初回は顕微なし凍結融解胚移植のショート法かモデレート法になり、私はAMHが0.16ng/ml以下と低いためモデレート法をすすめられました。ですが、私としてはショート法を試したいと思っています。医師診察後に看護師さんに「初回はショート法を試したい」と伝えたところ、「低AMHなので採卵数が少ないと思われるため、医師は費用が負担にならないようにモデレートをすすめた可能性があるが、希望すればショート法に変更できる」とのことでした。自分の不妊の原因は高齢による卵子の老化で、今は良い卵子を待っているところだと仮定して、検査の意味も含めてどこまで採卵し受精できるのか挑戦してみたいと思っています。そして、その後にモデレート法で回数を重ねればいいのではと考えています。この考えに問題はありますか。
ショート法は刺激周期モデレート法は低刺激周期
体外受精の採卵における排卵誘発には、ショート法、ロング法、アンタゴニスト法などいくつか方法があります。どれも薬を使って人工的に排卵周期を作り出します。はるさんのご相談にもあるショート法について少し説明しますと、採卵周期の1~3日目頃からGnRHアゴニスト製剤の点鼻薬を始めて、HMG製剤やFSH製剤の注射をして卵胞の発育を促した後、HCG製剤を投与したのち採卵します。
ロング法に比べると短期間で卵胞が育ちやすいため治療期間が短く、薬の使用量も少なくて済むため、時間的にも経済的にも負担が少ないほうだと思います。一方で、卵巣の機能が低下していると、卵胞が十分に発育しないというデメリットもあります。また、点鼻薬の効果がなかなか抜けないため、1回ショート法を行うと2~3周期は排卵誘発を行わず体を休める必要があります。
ショート法よりも刺激が少ない方法がモデレート法です。マイルド法や低刺激周期とも言われます。クロミッド®やフェマーラ®などの内服薬を投与し、HMG製剤を注射して低刺激で排卵を促す方法です。モデレート法は低刺激なのでショート法に比べると比較的作用が穏やかで、費用はもちろんですが体への負担が少ないのがメリットです。
まずは採卵に集中して移植に移行する方法も
はるさんは、ご自身が低AMHなので刺激を与えたほうがたくさん採卵できると思われているのかもしれませんね。よく誤解をされる方が多いのですが、排卵誘発の刺激に応じて採卵数が増えるというわけではありません。特にAMHが低い方は、ショート法で刺激を与えて排卵誘発をしたとしても、採卵できる数はモデレート法とそれほど変わらないと思います。むしろ、刺激が強いので必要以上に卵胞が大きく育ってしまい採卵できずにキャンセルとなる可能性もあります。
また、ショート法の大きな欠点は、刺激が強いために毎周期の採卵ができないことです。41歳という時間のない状況で2~3周期も不妊治療をストップするのは、非常にもったいないですね。はるさんには、毎周期にわたって継続的に採卵できるモデレート法のほうが適していると思いますよ。モデレート法については、これといったデメリットはないと思います。まずはモデレート法をやってみて、その反応をみてからショート法を考えてはいかがでしょうか。
刺激の強さと採卵数は必ずしも比例しない
また、40代の方や低AMHの方の不妊治療の計画として、少しでも若いうちに採卵して、良い受精卵をストックしておくという考え方があります。先にどんどん採卵をして胚盤胞を凍結し、次に凍結胚の移植に集中するということです。
モデレート法の場合、クロミッド®などを使うとどうしても子宮の内膜が薄くなるので、すぐに移植というわけにはいきません。ですから、凍結胚がたまるまでモデレート法を続けて、クロミッド®をやめる。子宮内膜がちゃんと元のように厚くなって、準備が整った時点で移植を始めればいいのです。時間のない方にはおすすめの不妊治療計画です。はるさんも凍結融解胚移植を予定されていますね。ちなみに、ショート法の場合は、子宮の環境が整っていれば新鮮胚移植と凍結融解胚移植どちらも選ぶことができます。
体に刺激の少ない方法から始めて原因と対策を考える
これまでの話は、刺激を与えて排卵誘発をする採卵方法ですが、モデレート法よりさらに刺激のない方法として排卵誘発を行わない自然周期があります。私なら、モデレート法もしくは自然周期から始めることをおすすめします。自然周期とは、排卵誘発を行わずに、自然な月経周期の中で育ってくる卵子を採卵して受精させる方法です。この方法は、原則として新鮮胚で移植します。それで妊娠できるかもしれませんし、うまくいかなくてもできるだけ自然に近い方法なので、その間にホルモンや子宮環境を診ながら不妊の原因を探ったり次のステップを考えたりすることもできます。
もし、それでうまくいかなければ、モデレート法のように低刺激で排卵誘発を続けます。自然周期もモデレート法も毎周期続けてチャレンジできるので、治療をしながら原因と次の対策を練るという意味では、AMHが低い方や時間のない高齢の方にはとても有効だと思います。
排卵誘発法のファーストチョイスは(体外受精)
最初の2回までは自然周期で様子をみます。
最初の2回までは自然周期から始めます。最初から薬で排卵誘発をするのもいいのですが、それでは不妊の原因がわかりづらいからです。また、当院のデータでは、自然周期で妊娠する人の多くが2回までで成功していることから、2回やってみてうまくいかなければ次のステップに進みます。自然周期なら治療をしながら排卵の環境を診るなどデータを取れるので不妊の原因を探ることができ、次の対策を考えやすい点で有効です。
クロミフェンについて
よく使われている製品例:スプレキュア®。
●どの誘発方法で使われるの?
モデレート法などの低刺激療法で使用します。クロミフェン製剤の効果を補うためにHMG、HCGを投与する場合もあります。
●副作用はあるの?
頭痛や吐き気を感じる場合があります。かすみ目の症状が出たら使用を中止して、主治医に知らせてください。
福井先生より まとめ
まずはモデレート法で回数を重ねて次にショート法に進んでみては
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.36 2017 Winter
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