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なかむらレディースクリニック こころとからだに優しい中村嘉宏先生の不妊治療はじめて講座

コラム 不妊治療

なかむらレディースクリニック こころとからだに優しい中村嘉宏先生の不妊治療はじめて講座

高度不妊治療には、体外受精や顕微授精などがあります。体外で卵子を受精(授精)させて受精卵を子宮にもどす治療です。いくつかのステップに分けることができます。また、凍結融解胚移植もよく行われています

2019.8.28

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高度不妊治療には、体外受精や顕微授精などがあります。体外で卵子を受精(授精)させて受精卵を子宮にもどす治療です。いくつかのステップに分けることができます。また、凍結融解胚移植もよく行われています


※2019年8月24日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.43 2019 Autumn」の記事です。


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高度不妊治療について
高度不妊治療には、体外受精や顕微授精などがあります。体外で卵子を受精(授精)させて受精卵を子宮にもどす治療です。いくつかのステップに分けることができます。また、凍結融解胚移植もよく行われています

「不妊治療の流れ」まとめ
●排卵誘発の選択は検査結果やライフスタイルを考慮
●35歳以上は妊娠率が急低下し、同時に流産率が上昇
●30代後半の方は、早めに体外受精を検討しましょう

お話を伺った先生のご紹介

中村 嘉宏先生(なかむらレディースクリニック)


大阪市立大学医学部卒業。同大学院で山中伸弥教授(現CiRA所長)の指導で学位取得。大阪市立大学附属病院、住友病院、北摂総合病院産婦人科部長を経て、2013 年より藤野婦人科クリニック勤務。2015年4月なかむらレディースクリニック開院。

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体外受精の妊娠率と治療の流れについて教えてください。


①排卵誘発法
体外受精は卵管や精子に問題がある方や、原因不明の不妊の場合に有効な治療法です。排卵誘発法は、おもに「低刺激法」と「高刺激法」があります。「低刺激法」は体内から出る自然なホルモンの作用を利用した方法です。体への負担が少ない治療法ですが、高刺激法にくらべると採卵できる卵子の数が少なくはなります。「高刺激法」は卵巣に命令を出す自然なホルモンを抑制し、注射で卵巣を直接刺激してたくさんの卵子を採る方法です。
当院では、それぞれの方法のメリットとデメリットをご説明します。そしてご年齢や過去の治療歴、AMHなどの検査結果から卵巣の反応性を推定し、希望されるお子さんの人数などのライフスタイルも考慮しながら、お一人ずつに合わせた誘発方法を提案しています。

②採卵
経腟超音波を使い、卵胞の中で排卵直前になった卵子を極細針で吸い出すのが採卵です。細い針を使用するため、麻酔が必要ない場合も多いのですが、痛みに弱い方や卵胞が多くて採卵に時間のかかる方は「静脈麻酔」(麻酔薬を静脈に注射)で眠っている間に採卵を行います。男性は採卵の日に、自宅または病院で精液を採取していただきます。

③通常媒精、顕微授精
体外受精では、選別した元気な精子と卵子を混ぜ合わせる通常媒精を行います。その後、培養器に入れて受精を待ちます。受精には1つの卵子に対して、約10万匹の精子が必要です。この精子数に満たない場合や前回の体外受精で通常媒精を行い受精率が低かった場合などは顕微授精を検討します。

④胚培養
受精後の卵子は細胞分裂を繰り返して3日目で8分割胚、4日目で桑実期胚、5日目で胚盤胞に成長します。当院ではタイムラプスインキュベーターを用いて胚の成長を動画で観察し、分割速度や分割様式を解析して良好胚の選別精度を高めています。同時に「WOWディッシュ」(受精卵を集合培養し、成長因子をシェアしあう相乗効果によって成長を促進させる)を併用し、培養成績が向上しています。

⑤胚移植
経腟超音波を使い、順調に育った胚を子宮内の最適な位置(底部から0.5〜1cmあたり)を狙ってカテーテルで移植します。移植には、「新鮮胚移植」(おもに3日目の初期胚を凍結せずに採卵周期で移植)と、「凍結融解胚移植」(胚(受精卵)をいったん凍結しその後採卵周期とは別の周期に凍結した胚を融解し移植する)があります。

⑥凍結融解胚移植
凍結融解胚移植を行う際、子宮内膜の調整が必要です。子宮内膜の調整には「自然周期」と「ホルモン補充周期」があります。
「自然周期」は自然な排卵を利用して、体内から出る自然なホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)と、それを補足する少量のホルモン製剤を通常胚移植後より開始します。妊娠が確認できた時点(4〜5週)でホルモン剤を中止します。「ホルモン補充周期」はエストロゲン製剤を月経初期から開始し、内膜が十分厚くなった時点でプロゲステロン製剤を開始して内膜を調整します。妊娠が成立した場合、ホルモン補充を10週ぐらいまで続けます。
「自然周期」は、胚移植する日程の調整はできませんが、使用するホルモン剤の量が圧倒的に少なくなります。「ホルモン補充周期」はホルモン剤の量が多くなりますが、日程の調整が簡単にできます。希望の移植日にあわせて来院日を決めることもできます。



顕微授精はどのような治療法ですか?


顕微鏡下にマニピュレーターという器械を用いて、精子を卵子の中に注入して授精させる方法です。男性の精子の状態に問題がある場合や、精子の受精能力が弱く、卵子の周りの透明帯などを通過できない受精障害の場合に有効です。ホールディングピペットで固定した卵子の中に、インジェクションピペットで吸引した精子を注入します。当院は、精子の頭部を超高倍率に拡大して形態のいい精子を選別します(IMSI)。また「紡錘体観察装置」で染色体が存在する紡錘体を確認し、紡錘体を避けて穿刺し、卵子の染色体を傷つけることなく顕微授精を行っています。
高度生殖医療は胚培養士の技術によって結果が左右されます。厳しいトレーニングを積んだ精鋭の胚培養士が、素早く丁寧な操作を心がけています。


体外受精へのアドバイスをお願いします。


体外受精の妊娠率は年齢と密接に関係します。妊娠率は30歳からゆっくり下りはじめ、35歳から急激に低下します。同時に35歳から流産率が上昇します。その大きな原因は卵子の加齢によって染色体異常が増えるためです。
「体外受精をなかなか決断できない」という方は多いと思います。でも、悩んでいる間にも時間は過ぎてしまいます。30代後半の方は早めに体外受精を考えましょう。不妊治療は大きく分けると、タイミング法、人工授精、体外受精の3つしかなく、妊娠率が一番高いのは体外受精です。とはいえ、たとえば40歳以上の方の体外受精の1回あたりの妊娠率はそれほど高くなく、「希望がもてない」と感じる方もいるかもしれません。しかし、当院のデータでは、治療の回数を重ねることで40代前半の方での累積の妊娠率は30〜40%に達します。必ずしも1回の治療で妊娠できるわけではありませんが、決して悪い数字ではありません。信頼できる施設で粘りづよく治療を続けることが大切です。


出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.43 2019 Autumn
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