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野田聖子先生×吉村泰典先生『もう待っていられない!日本の少子化問題を考える』

コラム 不妊治療

野田聖子先生×吉村泰典先生『もう待っていられない!日本の少子化問題を考える』

野田聖子先生×吉村泰典先生『もう待っていられない!日本の少子化問題を考える』

2014.10.7

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-- 今年6月、厚生労働省から、2013年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産むとされる子どもの人数)が、前年に比べて0・02ポイント高い1・43だったと発表がありました。2年連続の上昇ですが、これについてどう思われますか?


吉村先生●合計特殊出生率は2005年に1・26と過去最低を記録し、非常に危険な水準まで下がりました。それが徐々に1・43まで回復したのは前回の自民党政権の功績でもあると思っています。一時期、妊婦のたらい回し事件や未受診妊婦など、周産期医療について様々な問題が起こりました。

未受診とは、お金がないから妊婦健診に行けないということ。その時、僕は何度も厚生労働大臣にお願いに行って深刻さを訴えたら、妊婦健診を5回から14回に、都道府県によって違いはありますが、8~12万円ほど健診中にお金を出してくれることになったんです。さらに、出産育児一時金のアップも。当時38万円だった金額を4万円引き上げて42万円に。妊娠・分娩する時にお金がかからないということが未受診妊婦を減らし、少なからずとも合計特殊出生率の上昇につながっていったのではないかと思います。


野田先生●日本はちゃんと費用対効果というのを出しますよね。たとえば介護保険は世界に冠たるもので、高齢者に対しては相当社会保障で取り組んできました。それにより、日本の高齢者は超長寿になってきています。同じように、今度は子どもたちのためにしっかり費用を出す。やった分だけ必ず成果が出ると思います。


吉村先生●そうですね。それを早く実現していかなければいけません。実は合計特殊出生率は上昇しましたが、今、産んでくださる女性の数が少ないということから、子どもの出生数は前年より7400人減り、過去最少の102万9800人に。僕は勝手に2055年問題といっているんですが、2055年には日本の人口が9000万人を切る。人口が減るのはいいのですが、そのバランスが問題。65歳以上の人が全体の40%を超え、生まれてくる子どもの数は50万人を切ってしまう。4割の高齢者を支えていく社会なんて、世界のどの国を見てもありません。国としての存続さえ厳しくなると思います。


野田先生●ただ人口が減るのではなく、減ると同時に支える側と支えられる側のバランスが壊れてしまうのは大変なこと。そこがあまり議論されていないなという感じはしますね。子どもたちは成長して労働者になり、納税者になって必ず将来返してくれる。それを考えたら、国は借金をしてでも先行投資をすることが必要で、今すぐにでも始めないといけないと思います。


吉村先生●女性と子どものために費用をかけることはもちろんですが、女性が産みたいと思うような環境作りも大切だと思います。日本では女性は仕事との両立に悩まされて結婚や出産が遅れることが多いようですが、世界を見ると女性が活躍している国、つまり女性の高い就労率を示す国は出生率も高い傾向があるんです。女性の就業率が70%を超える北欧諸国は合計特殊出生率も2・0前後を示している。それだけ働く女性が子どもを産める環境が整っているのだと思います。


野田先生●実はアメリカは、日本では当たり前の産休や育休といった制度がありませんから、わが国のほうが先を行っている気がするのに、子どもを産む女性が少ない。日本は制度以前に、ほとんどの男性たちに「女性は働かないもの」という考えがまだ根強くあるようです。女性が働くことはオプションみたいなもので、ハードもソフトもまだ男性が中心。子どもを産み育てるための職場は依然として少ない気がします。少子化を食い止めるにはここもどんどん変えていかないと。「働く人は子どものいる人」という定義のもと、職場から公共機関まですべての施設に子どもがいられる空間を作る。最初にコストはかかると思いますが、女性が働き、子どもが増えることでそれ以上の収入が入ってくると思います。政治の中でもしっかり決断していく必要がありますね。

話題は変わりますが、厚生労働省は2016年度より不妊治療の公費助成に43歳未満という年齢制限を設けることになりました。これについてはどうお考えですか? 少子化対策に影響は出ないのでしょうか。


吉村先生●40歳以上になるとだいたい3分の1くらいの人が、43歳になると約半数の人が流産してしまう。赤ちゃんを連れて帰れる割合、生産率でいったら43歳で50人に1人、45歳だと100人に1人になってしまうんですね。助成回数も10回から6回に減りましたが、これは助成を受けて妊娠した人の9割以上は6回までで妊娠したというデータを受けてのこと。このような医学的判断などで年齢制限が提起されました。しかし、良い点もあり、1年に最大6回も助成を受けられるようになったんですね。これにより長期にわたって治療を続けるのではなく、短期決戦で治療に集中する方が増えてくるはずです。


この年齢制限は税金を有効に使っていくということだけではなく、妊娠の最良な適齢期を教えていくという意味もあります。40歳を超えた妊娠は非常にリスクが高く、できれば25~35歳の間に妊娠をしていただくという啓発でもあるんですね。


野田先生●恥ずかしながら、私も妊娠や出産に関しての正しい知識はほとんど持っていませんでした。40歳から不妊治療を始めて、息子に出会うまで体外受精を16回。もっと早く治療を始めていればと後悔しています。同じ思いをして欲しくないので、教育は大切だと思っています。実際に総務会長になった初仕事は、文部科学省へ小学校の保健体育の時間に「女性は適正な時期しか妊娠しない」と教えるべきだとかけあったことですから。

女性だけではなく、もちろん男性の教育も必要です。教育、そして職場や社会の環境作りなど、少子化問題に特化した拠点を政府に作り、10年間に限定して人・もの・お金を集中的に注いで対策するべきだと考えています。指をくわえて待っていたら産める人が産めなくなってしまう。各省庁や議員と連携して迅速に進めていきたいと思っています。



衆議院議員(自由民主党) 野田 聖子 先生


1960年、福岡県生まれ。上智大学卒業。岐阜県議を経て1993年に衆院議員初当選。自民党政権の下、郵政相、消費者相を歴任し、2012年12月から自民党総務会長を務める。40歳から16回にわたる体外受精を経験し、アメリカで卵子提供を受けて2011年に長男を出産。




産婦人科医 吉村 泰典 先生


慶應義塾大学医学部卒業。これまで数多くの不妊症治療や分娩を担当。2013年内閣官房参与に就任し、政府の少子化対策・子育て支援をサポート。自らも、女性と子どもの未来を考える「生命の環境研究所」を立ち上げ、SNSなどで積極的に情報を発信している。




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